「そのような発音では全くダメ!お客さんには聞かせられない!」

とあるリハーサル会場。合唱隊が歌いだすとすぐに指揮者から厳しい指摘が飛びます。グスタフ・マーラーが作曲した第2番交響曲、第5楽章後半。いよいよ合唱が入り最後のクライマックスを決めていく最初の出だし。完全な静寂から、非常に小さな音で合唱が歌い始めますが(後の動画1:12:27~)出だしのドイツ語の発音が良くないようです。


指揮は日本を代表する有名な指揮者。発音だけでなく一見聞くとわからないような細かい音形、音色も何度も繰り返しながらも確実に作り上げていく。真の指揮者の実力を垣間見ることができる瞬間でした。実際マネージャーさんは名前でなく「マエストロ」と呼んでいましたが、まさにそれにふさわしい実力者です。

著名な指揮者は本当に「マエストロ」と呼ばれる



今回私はこの曲の1番トランペットのアシスタント兼舞台裏のバンダ隊として参加しました。

まるで「最後の審判」を思わせる壮大な曲想は、数あるクラシック音楽の中でも非常に際立っています。力強い1楽章から始まり、最終楽章では合唱を伴った圧倒的な盛り上がりを見せますがこの点はまさにベートーヴェンの第9交響曲のような感動があります。

さらに近代の洗練された大規模なオーケストラや、作曲者による細かな舞台設定の指示など聴く側にも強い感動を与える演奏効果です。

それゆえに大変人気の高い曲で、実際にアメリカのある出版社の社長は音楽の専門的な教育を受けていませんでしたが研究、練習に長年取り組み、遂にこの曲の指揮を振ることができた、という夢のような実話もあります。


多くの人に感動を与えるマーラーの交響曲第2番「復活」。今回はオーケストラトランペット席、そして豪華な(?)舞台裏からもご紹介しましょう。

若き指揮者の活躍と初めての専業指揮者ハンス・フォン・ビューロー

ハンス・フォン・ビューロー(1830~1894)。指揮者がオーケストラに様々な表現を求めるようになった初めての指揮者。これまで指揮者は作曲者が拍子を振るだけだった。


この交響曲第2番は1888年から約6年かけて作曲されました。その間マーラーは指揮者として多忙な日々を送ります。作曲がスタートした当時まだ28歳の若きマーラーはブダペスト王立劇場の芸術監督となります。この時にワーグナーの「ラインの黄金」と「ワルキューレ」を初めてカット無しで演奏するなど目覚ましい活躍をし、名声を高めていきました。

この時に「葬礼」という標題を付けられるはずだった単一の大曲が作曲されました。これが後に交響曲第2番の第1楽章となります。

ところが3年後マーラーはこのブダペスト王立劇場の支配人と折が合わず、絶えず衝突した結果、芸術監督をクビにされます。それでも指揮者としての実力があったマーラーはすぐに次のポストが決まります。ブラームスの生まれ故郷でもあるドイツ北部の湾口都市ハンブルクの市立劇場の指揮者として就任します。

このハンブルクでマーラーは当時の指揮者の大家であるハンス・フォン・ビューローに実力を見出されより活躍の場を広げていきます。ビューローはワーグナーの弟子でもあり、近代の指揮法を確立し、初めての指揮のみを専門とする専業指揮者でもありました。「ドイツ3B」など様々な命名はクラシック音楽を親しみやすくする言葉として現在でも使われています。


しかしビューローはマーラーを指揮者としては認めていましたが作曲者としては全く理解できなかったようです。

ブダペスト時代に作曲した「葬礼」と題した曲を聴かされたとき、ビューローは先進的なこの音楽に拒絶反応を示しました。「ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』もこの曲に比べればハイドンの交響曲のようなもの。しかしこれが音楽だと言うなら私は音楽を全くわからない」

確かに、この曲は現代でも人によってオドロオドロしく感じ、苦手な人もいます。今回演奏した際もあるクラリネット奏者の人が「この曲不気味だから吹きたくない」と言っていました・・・私自身も初めてこの曲を聴いたとき「いかにも、大げさな」感じがして始めは苦手意識がありました。今では最も好きな曲の一つです。


ビューロに酷評されたマーラーですが、それでも諦めることなく、美しい自然に囲まれた避暑地「アッター湖」湖畔のシュタインバッハに小さな小屋を建て作曲に専念するようになります。第1番交響曲の改訂、第2番交響曲の第2~第4楽章までの完成、そして次の第3番交響曲を作り上げるのでした。


「復活」という標題

このマーラーの交響曲2番には「復活」という標題がついています。リヒャルト・ワーグナーの弟子であり、近代の指揮法を初めて実践したハンス・フォン・ビューローの葬儀の際に歌われた讃歌から影響を受けて付けられたようです。

その讃歌の歌詞はドイツの詩人フリードリヒ・クロプシュトック(1724~1803)による「復活」。ビューローの葬儀に参列したマーラーはその歌詞に強く感銘を受けました。そしてこの歌詞に手を加え第5楽章の合唱の歌詞としたのです。

しかし実際にはこの「復活」という標題はマーラー自身によって付けられたものではありません。また第1楽章になる「葬礼」という標題も後に取り除かれています。

楽譜に書き込まれた細かい指示

この曲は次の第3番交響曲のように親しみやすく印象的な旋律、曲想となっています。しかし美しい自然を歌い上げる3番交響曲とは対照的に荒々しく厳かな曲想です。合唱を伴った圧倒的な盛り上がりを見せる大曲はマーラーの作品の中この2番と8番のみといえます。

そして楽譜には奏者に向けて事細かな指示が多数書かれています。

例えば第1楽章と第2楽章の間に5分以上の休憩を挟むこと。合唱隊、ソプラノとアルトのソリストが入場するタイミングや立ち上がるタイミングなども指定されています。交響曲というよりはまるでオラトリオかオペラの様な「見る」という演奏効果にもこだわっています。

現在では全てマーラーの指示に従うことはなくある程度の所は指揮者の判断で指示されます。第1楽章後の5分休憩も実際にはそこまで長くなく、その間は合唱隊が入場する時間に当てられます。

一息つきましょう

交響曲第2番「復活」

SWR Sinfonieorchester(南西ドイツ放送交響楽団)による演奏。かつてのシュトゥットガルト放送交響楽団と合併したオーケストラ。指揮はピアニストとしても有名なクリストフ・エッシェンバッハ。4楽章のビブラートを抑え気味に歌うアルトが素晴らしい!大変素晴らしい演奏です!


実際には「復活」も「葬礼」も標題としては使用されていないとされていますが、やはりマーラーが作曲した時点でこれらの標題を元に作曲したので、曲を理解するのに大きなガイドとなります。

いきなり第1楽章が「葬礼」で始まります。そして最終楽章では「復活」という詩からインスピレーションを受けた合唱で締めくくられます。

この「死」から「復活」がこの曲の大きなテーマなのです。

第1楽章「葬礼」(0:07~)


叩きつけるような激しい弦楽器のトレモロからはじまります。そして間髪入れず低弦の短い動機(0:11~)。緊張感あふれる出だしです。その後張り詰めた旋律が続きます。この曲のもつ「仰々しさ」を強く印象付ける素晴らしい開始部です。

低弦の旋律に乗せてオーボエ、イングリッシュホルンによる第1主題(0:58~)。この旋律が他の楽器によって次第に展開されていき、一旦クライマックスを築きます(2:05~)

この旋律が重要


(2:24)で木管楽器が楽器を水平に上げて演奏しています。管楽器奏者は「ベルアップ」と呼んでいます。マーラーの交響曲で管楽器はこの姿勢で演奏する指示が頻繁に出てきます。

ここまでの物々しい雰囲気が変わり美しい曲想に(6:15~)。ホルンアンサンブルが聴きどころ。

ここから再び緊張感あふれる曲想に(8:09~)。神秘的な弦楽器の伴奏。そしてイングリッシュホルンの旋律(8:20~)

そしてホルン6本のパワフルな動機(9:14~)


続いてトランペットが引き継ぎます。次第に高まっていき嵐のような行進へ(10:14~)。一旦静まったかと思うと突如激しい爆発(11:45~)。また静まり返ります。そしてトランペットとトロンボーンによる哀れむ様な旋律(12:47~)

再び荒れ狂う行進(14:01~)。そして非常に重々しく何かを引きずるような全合奏(15:20~)。強烈な全合奏のオーケストラヒット2発でクライマックス。


再び静かな雰囲気へ。夢見るようなホルンが印象的(18:43~)

ハープの重苦しい伴奏でまたも葬送へ。6本のホルンの重厚なアンサンブル(19:16~)。そしてトランペットの神秘的なソロ(20:00~)。余談ですがこのソロを練習していたらこの曲を知らない人に「何かの時代劇の音楽みたい」と言われました・・・

「必殺仕事人」??



張り詰めた音楽はここで堰を切ったように3連付の下降音形でなだれ込み、弦楽器の小さなピチカートであっけなく終わります(22:06~)

この第1楽章は時に沈鬱に時に激しく、目まぐるしく変貌してゆく曲です。非常に盛り込まれた曲なので聴く方も集中力を要します。そのためか次の楽章まで5分以上の休憩を入れるように作曲者は指示しています。

さて今回私が演奏した際は、やはりここで合唱隊とソプラノ、アルト歌手が入場、着席します。客席からは拍手が沸き起こります。

私はというと・・・ここで2名のトランペットと2名のホルン、打楽器奏者と共に拍手の音に紛れて舞台裏へとコッソリ移動するのでした。来るべき第5楽章のバンダ部隊として・・・

第2楽章(23:07~)

これまでとはうって変わって、のどかで牧歌的な曲です。この、のびのびとした雰囲気は自然豊かなアッター湖の風景が目に浮かぶようです。他の楽章にはない天国的な音楽です。

第3楽章(34:06~)

強烈なティンパニの強打から始まります。どこか不気味な感じのするスケルツォ。この旋律はマーラーの歌曲「子供の不思議な角笛」の中の「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」を使用しています。しかしのどかな歌もあります(36:04~)。ここで一度クライマックス(37:50~)。そして夢見るようなトランペットアンサンブル(38:50~)

再び盛り上がりを見せます(41:57~)がさらに白熱していき、うねるようなホルンの後最高潮に(42:20~)。ここの部分は後に第5楽章で再現されます。

このまま曲は途切れず最後まで続きます。

第4楽章「原光」(44:36~)

弦楽器のざわめきが静まると同時にアルトが「O Röschen rot!(小さな赤いバラよ)」と歌い始めます。続いてトランペットのきれいなコラールが奏されます(44:59~)

この楽章も「子供の不思議な角笛」の中の「原光」が使われています。

次作の第3交響曲、続く第4交響曲もこの歌曲から使用されている楽章があり、2,3,4交響曲を「角笛3部作」と呼ぶこともあります。

最後は静かに曲を締めくくります。大変美しい曲です。

第5楽章「復活」(50:47~)

前楽章の静けさを突き破るように突如爆発的に第5楽章が始まります。まるでベートーヴェンの第9交響曲のようです。

この楽章だけで40分近くかかる大曲です。

舞台裏の遠く、2箇所別々のところからホルンのシグナルが聞こえてきます(52:31~)。これからなにか大きなことが始まる予兆のようです。

ここでフルートがコラールを奏します(54:01~)。次第に他の楽器が加わっていき雄大な景色が目の前に広がります(54:58~)

沈鬱な雰囲気の中イングリッシュホルンが不安げな旋律を奏します(56:11~)。この旋律が後でアルト独唱で歌われます。

ここからトロンボーンアンサンブルのコラール(57:36~)。このコラールも後にクライマックスを作っていきます。そして雄大なホルンアンサンブル(58:51~)

小さな音からドラム、パーカッションのロールが次第に次第にクレッシェンド(1:00:30~)、そして行進曲が始まります。

曲は静まりかえりますが舞台裏からトランペットの行進のリズムが聞こえてきます(1:05:46~)。次第に近づいてくるようです。そしてここからさらに曲が隆盛していき(1:06:46~)、ここで最初の爆発的な再現部(1:07:15~)。指揮者の指示にもよりますが、ここで合唱隊が一斉に立ち上がります。(動画では座ったまま)まるでベートーヴェンの第9交響曲のように。非常に圧巻です。でもまだここでは歌いません。



水を打ったような静寂の中、再びホルンのシグナルが聞こえてきます(1:09:08~)。ここからの部分は舞台裏のアンサンブルが聞こえにくいのでヘッドフォンで聴くことをオススメします。


次はトランペットのシグナル(1:09:55~)。2箇所から別々に聞こえてきます。

まるで虚無僧が吹くようなフルートの旋律を機に、「最後の審判」を知らせるかのような4本のトランペットがなだれ込みます(1:10:20~)。非常に神秘的で最大の見せ場でもあります。


合唱(1:12:27~)

よみがえる、そうだ、おまえはよみがえるだろう、
私の塵よ、短い憩いの後で。
おまえを呼ばれた方が
不死の命を与えてくださるだろう



ここからいよいよ合唱が歌い始めます。非常に小さな音で。冒頭のマエストロが言うように、この合唱の出だしがシッカリしないとここまでの演奏が台無しになってしまいます。この最初の部分はクロプシュトックの詩を忠実に歌います。

ここからマーラーがクロプシュトックの詩を元にした歌詞をアルトとソプラノが歌います(1:20:26~)

その後も合唱隊は前半でオーケストラが奏したコラールを歌い上げていきます。そして(1:24:34)から高まっていきます。

大いに決断するように

「Sterben werd’ ich, um zu leben!(私は生きるために死のう!)」

と歌い上げます。

最後はコラールと共に

「Aufersteh’n, ja aufersteh’n wirst du,(よみがえる、そうだ、おまえはよみがえるだろう)」

とより高らかに歌い上げられ(1:27:06~)、大きな感動とともにオーケストラの後奏によって圧巻のラストを締めくくります。

(歌詞、対訳ウィキペディアより)

チョイと吹いてみる?すばらしいオーケストラトランペット奏者とは。

この演奏に参加させていただいた私は当時オーケストラ経験も浅い学生。何度目かのフル編成でのリハーサル練習、第5楽章にさしかかったとき、突如一番トランペット奏者が私に「僕はちょっと休むから代わりに吹いて」とどこかへ行ってしまいました。突然大編成オーケストラのトランペットトップ奏者となったのです。

周りを見渡せば隣は経験豊富なトロンボーン奏者達。眼の前はフルートからコントラファゴットまでズラッと並ぶ木管奏者の猛者たち。弦楽器の海。後ろを見れば物々しい打楽器群に前面よりはるかに多人数の合唱隊。門番の如くこちらを見下ろしているソプラノとアルト歌手の二人。そしてさらにその上に君臨するかのようなオルガン奏者・・・

100人近い歴戦の奏者(半分以上プロ)が私に注目します。き・・緊張ッ!!

ウルトラハイCをキメろ!

どうやら力を試されているようです。この第5楽章でトランペットは高いCの音をきれいに力強く吹くことが求められます。それも何度も出てきます(動画59:25、1:00:11、1:04:06など)。音は出るもののフル編成のオーケストラを突き抜けるほどの音量が出せませんでした。その後も何度も音を外したり、この時は本当にトランペットトップ奏者とはこんなに度胸のいるポジションなのだな、と大変勉強になったものです。

豪華な舞台袖とバンダ隊の裏事情

さて、第1楽章が終わると私を含め何人かの金管楽器奏者は観客の拍手の音に紛れて舞台裏上手側の2階へ移動します。ここにバンダ部隊として計4人のトランペットと一対のティンパニ。向こうの舞台裏下手側(客席から見て右)にホルンが数人。ここまで豪華な舞台裏バンダ隊はこの曲くらいでしょう。

通常のホールの舞台裏であれば少々狭く暗い場所なのですが、今回のこのホールは舞台裏兼待合室になっており非常に広く、ソファや自動販売機までありくつろげる場所となっていました。第5楽章までここで待機です。本番中でありながらなんとも不思議な気分です。

そして「最後の審判」のアンサンブルが終わり、合唱隊が歌い始めソプラノ歌手が歌い始めた頃に再びオーケストラ席へと戻ります(これはおそらくマーラーによって書かれた指示だと思います)。足音と床がギシギシ鳴るのを極力避けながらの移動も緊張するものです。

名盤

稀に見る感動的な大曲であり様々な指揮者、オーケストラ、更には社長さんの演奏まで多くの名盤があります。その中でも特にオーケストラの機能をフルに発揮させた名盤をご紹介。

レナード・バーンスタイン/ニューヨークフィル



この曲の「雄大さ、感動、仰々しさ」を最も大きなスケールで演奏しています。舞台裏の楽器群も含め全ての音がハッキリと聞こえます。音が歪むくらいのホルンの音が強力で、その暗めの音色がまたこの曲の雰囲気にピッタリ。テンポは非常にゆっくりで、ラストの合唱の盛り上がりはとてつもない感動を与えてくれます。賛否両論あるかもしれませんがこの曲の理想的な演奏の一つです。

ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団



バーンスタインの演奏スタイルとほぼ同じで、さらにアンサンブルが緻密です。コチラも理想的な演奏だと思います。特に合唱を伴ったスケールの大きい曲はショルティのとくいとする所です。バーンスタインとこのショルティの演奏は特に非の打ち所のない完璧な演奏です。

ピエール・ブーレーズ/ウィーンフィル

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ユニバーサル ミュージック


非常にいい意味でスッキリ、スマートな演奏です。響きを膨張させるのではなく固く引き締めた演奏と言えます。ウィーンフィルはこういった演奏スタイルが最も効果的だと思います。特に第1楽章でその演奏はハリがあり「力強さ」を堪能できます。

ちなみに、明記はされていませんがこの盤では次にご紹介する「キャプラン版」の楽譜を使用しているようです。

新たな解釈?夢を叶えた社長さんと「復活」専業指揮者

ギルバート・キャプラン/ウィーンフィル



以前、オーケストラを指揮する事を夢見た老人が夢叶い大いに振りまくるソーシャルゲームのCMがありました。音楽の教育は受けてないもののオーケストラの指揮を振ってみたい、自分の愛する曲をこの手で演奏してみたいという夢は誰にでもあると思います。

実際にその夢を叶えた人物がいます。それもただ一度切りの演奏ではなく、この第2番交響曲のみをレパートリーとして指揮活動を行った人物がいました。アメリカのある出版社の社長ギルバート・キャプランです。

ギルバートはこの曲に人生観を変えるほどの感動を受けいつの日かこの曲を指揮することを夢見て30代になってから指揮法を学び始めます。師事した指揮者はゲオルグ・ショルティ。

しかもただ演奏するだけではありません。この曲を愛するあまり自らマーラーの自筆譜を買い取り、長年見過ごされてきた楽譜の矛盾点を校訂、マーラーの意図に忠実に沿った「キャプラン版」として世に生み出されたのでした。

演奏は大変素晴らしいものですが、ところで実際この「キャプラン版」とこれまで使われてきた楽譜とどこが違うのか?


僅かな管楽器の付け加えが随所に見られますが、これは残念ながら(?)耳で聴いてもほとんど違いがわかりません。唯一ハッキリわかるのは第5楽章の合唱が歌い出す所の弦楽器の動きなどです。(1:12:27~おそらくこの動画はキャプラン版だと思われます)

参考URL
https://jurassic.exblog.jp/18309267/

楽譜スコア

こちらが「キャプラン版」


1970年にウニバーサル出版社から出版され、長年使われてきた「全集版」


・・・これでもちょっとわかりにくいですね・・・・いつの日か「キャプラン版」を演奏する機会があればしっかり聴いてみたいです。

滅びたものは必ずよみがえる

この曲が人の心に強く訴えかけるテーマは「死」からの「復活」でしょう。これはベートーヴェンのテーマでもある「苦悩」から「歓喜」へのテーマと通じるものがあります。


第5楽章の合唱の歌詞でとくに印象的なのは

生まれたら必ずいつかは死ぬ
死んだら必ずいつか蘇る
だから恐れず日々生きることに備えよう
自分が勝ち取った翼で飛んでいこう

ブダペストでの指揮者としての華々しい活躍の裏で、この曲が作曲されていた最中の1889年、マーラーの父と母、そして妹までもが立て続けに亡くなります。また自身の健康も芳しくなく、「死」というものが身近にある環境での活動でした。

しかしマーラーはどんなに悲しく困難な境遇であっても、今目の前にある「自分がすべきこと」をやり遂げることを行動に移しました。家族が亡くなりどんなに悲観していようとも、マーラーが指揮を務めるコンサートを聴くために観客は来ています。彼の演奏を聴くことを待ち望んでいるのです。

度重なる不幸や死に怯えることなく、むしろビューローの葬儀で歌われていた讃歌をこの曲に盛り込むなど、躊躇することなく「自分が勝ち取った翼で」前に進んだのです。マーラーは決して厭世的な、悲観的な曲を作ったのではないのです。

いつの時代でも人々は日々多くのストレスや不安と戦う必要があります。時に人生には突然思わぬ逆境に立たされることもあります。「生きるために死ぬ」は「幸せになるために逆境に落ちる」とも当てはめられるでしょう。逆境であっても眼の前の事からやり遂げる、それがわずかな一歩であっても小さな種として人の心に残れば、その人の心に永遠に残ります。それはいつの日か大きく花咲くことでしょう。

それが本当の意味での「復活」なのです。


The picture of Attersee By No machine-readable author provided. Bascon assumed (based on copyright claims). [GFDL, CC-BY-SA-3.0 or CC BY-SA 1.0 ], via Wikimedia Commons.
The picture of conductor’s score By Lupin at Wikipedia [CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons.

「交響曲第2番」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1897年にフリードリッヒ・ホフマイスター社から出版され、その後再版されたパブリックドメインの楽譜です。


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