さて、今年もこの季節がやってまいりました!クリスマスですよ。街の様子はクリスマスムード一色ですね。10月末のハロウィンが終わると間もなくいたるところでクリスマスの飾り付けが始まりました。早すぎでないかい?しかしこれで「あわてんぼうのサンタクロース」も安心できる良い時代になりました。

クリスマスシーズンにぴったりのクラシック音楽と言えば様々な曲が思い浮かびますが、その中でも特にオススメな名作、それはチャイコフスキー(1840~1893)が作曲した最後のバレエ音楽「くるみ割り人形」でしょう!

クラシック音楽をあまり聴かないという人でも必ず聴いたことがある宝玉のような、メルヘンチックな名曲がちりばめられています。時に楽しく、時にスペクタクルに、そして時に涙が出るほど美しい「くるみ割り人形」。そんな感動的な大名曲を今回もオーケストラのトランペット席からご紹介しましょう!


■ 目次

全米が感動した!全米No. 1ヒットの「くるみ割り人形」ディズニーバージョン


ディズニー映画版「くるみ割り人形と秘密の王国」。ウム!面白そう!多少筋書きは変わっていますが、モーガン・フリーマン演じるドロッセルマイヤーのモノゴッツい存在感―ッ!



2018年、「くるみ割り人形」を題材としたディズニー映画が公開されました。もともとがメルヘンチックな世界観の「くるみ割り人形」ですが、最近技術のCGグラフィックとあいまって、ディズニーらしいかなりスペクタクルな「くるみ割り人形」となっています。

そして何と言ってもチャイコフスキーの音楽が最新技術のファンタジーあふれる映像にピッタリ!やはり偉大な作曲家の音楽は時も国境も超えて色褪せることはないな、と改めて実感させられます。

バレエを通して「くるみ割り人形」の世界に浸るのもいいですが、エンターテイメントあふれるディズニー映画から親しむのもいいものです。

メルヘンチックだぜ!3分でわかる!かもしれない!「くるみ割り人形」あらすじ紹介


バレエの踊りで展開される「くるみ割り人形」は2幕からなる物語です。原作はドイツの作家エルンスト・テオドール・アマデウス(E・T・A)・ホフマンが1816年に発表した童話「くるみ割り人形とねずみの王様」となっています。


ホフマンが偏愛したバロック時代の版画家ジャック・カロの版画
E・T・A・ホフマン(1776〜1822)作家としてだけでなく、オペラや交響曲を作曲したり画家としても活躍した万能の天才。
※画像はホフマンが偏愛したバロック時代の版画家ジャック・カロ(1592~1635)によるものです。


ホフマンの友人の子供にクララとフリッツ、そしてマリーという3人の子供がいました。ホフマン自身は娘を亡くしており、そのためもあってかこの友人の子供達を大変可愛がっていました。特に末っ子のマリーを溺愛しており、このマリーのためにクリスマスプレゼントとして、即興でこの「くるみ割り人形とねずみの王様」を作り出したといわれています。

このチャイコフスキーやディズニーなどの「くるみ割り人形」での主人公は長女のクララになっていますが、原作は末っ子のマリーが主役だったのですね。

このホフマンが即興で作り出した童話を元に、有名な「三銃士」、「ダルタニャン物語」の作者アレクサンドル・デュマ(1802~1870)が小説にしました。その筋書きがこのバレエ音楽の大筋なストーリーとなっています。

第1幕


子供達が一年の中で最も楽しみなクリスマスイヴ。とあるお屋敷でクリスマスパーティーが開かれています。主人公クララは親愛なるドロッセルマイヤーお爺さんからくるみ割り人形をプレゼントされますが弟のフリッツが「ボクも欲しいよォォォ!!」と取り合いになり、せっかくのプレゼントのくるみ割り人形が壊れてしまいます。


ドロッセルマイヤーお爺さんが修理してくれたものの、クララはガッカリ。真夜中にくるみ割り人形の様子を見にきます。すると時計が12時の鐘を打つと同時になんとクララの体がみるみる小さくなっていきます!そして人形くらいの大きさになってしまいます。

「クリスマスツリーが大きくなってくゥゥ?!いや、アタシが小さくなっちゃった!」



そこに突如ハツカネズミの王が大軍勢を率いて押し寄せてきます!するとあの壊れたくるみ割り人形が動き出し、部屋に置いてあった人形達を指揮し始めます。そしてハツカネズミ軍との壮絶な戦いが始まるのです!レディ、ファイッ!!




・ハツカネズミさん「クルミばっか割ってんじゃねェぞコラァ!今日はクリスマスだぞコラァ!オメェの頭をカチ割ったろか?ア゛ア゛⤴?」
・くるみ割り人形さん「上等だゴルェェ!テメェは千葉のランドのネズミとでも踊ってろやゴルェェ!メリークリスマッスェェ!」



ハツカネズミの王とくるみ割り人形の壮絶なタイマン勝負、一騎討ちが始まります!そこにクララがネズミ王にスリッパを投げつけ、くるみ割り人形を助けます。ネズミ達は撤退!倒れていたくるみ割り人形が起き上がると・・・



なんということでしょう!くるみ割り人形がイケメン王子に変わっているではありませんか!


さらにはクララも綺麗なお姫様に!イケメンくるみ割り人形王子は助けてくれたお礼にと、クララを「雪の国」と「お菓子の国」に招待します。


そして旅立ち。その美しい道中が描写され、第一幕が感動的に締めくくられます。

第2幕

ここからはストーリー的にはほとんど動きはなく、クララを歓迎するお菓子の妖精達の踊りが次々と披露されます。くるみ割り人形王子に連れられ、たどり着いたのはお菓子の国の魔法の城。歓迎してくれたのはドラジェというロシアのお菓子の妖精であり、この城の女王。日本語ではドラジェというお菓子は無いため「金平糖の精」とされています。



そこの大広間では色々なお菓子の妖精達が歓迎のバレエを踊ります。非常にメルヘンチックで、夢のような饗宴。その中でも最高のおもてなしはバラの花の妖精達による超名曲「花のワルツ」。そして最後はコンペイトウの女王とくるみ割り人形王子の踊りによって全米が涙するほど圧倒的に、感動的に幕を閉じます。


ラストにはもう一つのバージョンがあります。最後の踊りの後、突如クララは現実世界にもどります。全ては夢だった・・・クララは楽しいクリスマスのひと時をプレゼントしてくれた「くるみ割り人形」に感謝し、抱きしめて幕となります。


まさにクリスマスにふさわしい夢のある宝玉の物語ですね!

バレエ音楽「くるみ割り人形」op71

ロッテルダムシンフォニックオーケストラによる演奏会形式での演奏。もう楽しいとしか言いようがない!


全曲版とチャイコフスキー自身が編集した組曲版がありますが、ぜひ全曲を通して聴くことをオススメします。時間は1時間半ほど。マーラーやブルックナーの交響曲一曲を聴き通すくらいの長さです。組曲には収録されていないアルルカンなどの機械人形の踊りやネズミさんとのバトル、「雪のワルツ」、感動的なラストなどなど、聴かなきゃもったいない名曲があります。

序曲 (0:05~)

メルヘンな世界の幕開けにふさわしい、可愛らしい三分ほどの序曲です。ザワザワしたリズムがこれから起こる楽しいことを予感させるようです

この「くるみ割り人形」は全体的にフルートが活躍する作品です。この序曲から早速きらびやかな見せ所があります(0:20~)

第1幕

クリスマスツリー(3:21~)

のびやかな歌!お客さんたちが舞踏会のお屋敷に集まってきます。楽しい舞踏会の始まりです。

行進曲(7:21~)

ここで子どもたちの登場です。一度は耳にしたことがある曲ではないでしょうか。トランペットの可愛らしいマーチは吹いていて楽しい旋律です。

子供たちの小ギャロップとコスプレ両親の登場 (9:51~)

子どもたちが挨拶代わりに華麗なギャロップを踊ります。それが終わるとタランテラという6/8拍子の音楽に。堂々とした3拍子の曲です。(12:00~)のトランペットが聴かせどころ!

ドロッセルマイヤーの贈り物(12:21~)

突如音楽がストップ。ドロッセルマイヤーおじいさんの登場です。印象的な堂々とした旋律。

ドロッセルマイヤーおじいさんは子どもたちにプレゼントを渡します。そして数々のバネ仕掛けのロボットを披露します。

ここで少し前進するようなリズム感の曲想に(13:12~)。人形劇を見せます。

次にドロッセルマイヤーおじいさんはバネ仕掛けの人形アルルカンを取り出します(15:05~)。クラリネットのロボットっぽい不思議な旋律(15:23~)。次に女の子の人形コロンビーヌを取り出し(15:57~)、優雅な踊り。やっぱりどこかロボットっぽい・・・

そして最後の熱い音楽は兵隊人形のソルジャー(17:23~)。シンコペーションが熱い激しい踊りを披露します。チャイコフスキーらしいカッコいい音楽です。

祖父の踊り(18:10~)

華麗なワルツ。子どもたちはもう寝る時間ですよ~とお知らせします。ここでドロッセルマイヤーおじいさんがクララに「くるみ割り人形」をプレゼントします。クララは喜び優雅な踊り(19:43~)。しかし弟のフリッツも「くるみ割り人形」を欲しがり、取り合いになります。そして壊れてしまうのです。悲しい気持ちのクララ(20:51~)

そこに勝ち誇ったようにラッパを鳴らして騒ぐ弟フリッツ(22:11~)。チッこの・・・

再び悲しい気持ちのクララ。「くるみ割り人形」をベットに寝かせますが・・・しかしまたフリッツがウェーイ♪とラッパを鳴らして騒ぎ立てます(22:57~)。このクソガk・・・

そこで両親は子どもたちを静かにさせるために、お客さんたちにパーティの終わりの踊り「グロースファーター」を始めてもらいます(23:10~)。「今日はもうおしまい!もう寝なさい!」

招待客の帰宅、そして夜(24:39~)

お客さん達は続々と帰ってゆきます。子どもたちもすでに眠っています。優雅な踊りも次第に静かになっていきます。

クララは静かな夜の中こっそりと「くるみ割り人形」の様子を見に行きます。神秘的な音楽…その時、12時の鐘が鳴らされます(27:48~)!!

ザワザワとネズミたちが現れ駆け回り始めます。そしてさらに、クララの目の前にあるものがだんだんと大きくなっていきます(28:58~)。曲が白熱して盛り上がり、クライマックスで巨大な「ハツカネズミの王」が堂々と登場します(30:52~)

そう、これは周りの世界が巨大になったのではなく、不思議な魔法でクララがおもちゃ達と同じくらい小さくなってしまったのです!

くるみ割り人形とねずみの王様の戦い(31:28~)

鉄砲の音を合図に「くるみ割り人形」が指揮する兵隊のおもちゃ達が進撃します。ネズミ軍との戦いです。

チャイコフスキーの戦闘的な音楽が遺憾なく発揮されている曲のように思えますが、どこかおもちゃの兵隊が戦っているようなカチコチ感のある曲となっています。

ちょっとわかりにくいですが、ここでクララが死闘を繰り広げるハツカネズミさんにスリッパを投げつけて、くるみ割り人形を助けます(34:24)

松林の踊り(34:58~)

ここでおもちゃだったはずの「くるみ割り人形」が突如立派な王子へと変わります。さらにクララもきれいなお姫様の姿に!ここから王道的なプリンシパルとプリマドンナのバレエの衣装となるのです。ここではとても美しい感動的な音楽が展開されます。映画音楽も顔負けの壮大な音楽に浸りましょう!!

雪のワルツ (39:10~)

第二幕の名曲「花のワルツ」と同じくらい感動的で美しい曲です。フルートなどの木管楽器が粉雪の舞う様子を表現します。

そして24人の児童合唱が歌詞のない歌を歌います。本当に天国のような美しさ!そして感動的に第一幕の幕が閉じるのです。


第2幕

お菓子の国の魔法の城(46:20~)

第2幕の序曲的な曲です。この旋律は後の全曲のラストで再び歌われます。

クララと王子の登場(50:37~)

華麗な姿へと変わったクララとくるみ割り人形王子が登場。

ディヴェルティスマン(登場人物たちの踊り)

ここで様々なお菓子の妖精達が次々に踊りを披露します。楽しい舞踏会、ディヴェルティスマンです。この曲全体の中心となる6曲の饗宴です。この6曲はテレビなどで頻繁に流れる有名な曲ばかりが揃っています。きっと誰もが一度は耳にしたことがある超メジャー曲のオンパレードをお楽しみください!

最初の一番手はチョコレートの妖精です。

チョコレート の妖精(55:28~)
「どうも、チョコレートの妖精です。ボレロを踊ります。あ、逃げないで」


チョコレートの妖精さんがスペイン舞曲のボレロを踊ります。ここでトランペットの重要で難しいソロがあります。

コーヒーの妖精(56:49~)

コーヒーの妖精がアラビアの神秘的な踊りを踊ります。これまでの明るく楽しい曲調とは打って変わって、アラビアの夜を思わせるような神秘的な曲です。

お茶の妖精(1:00:50~)

中国の色彩豊かな灯籠を思わせるカラフルなフルート。低音のリズムはまるで古き良き時代の中国の賑やかな街を思わせます。

それにしても私達が思い描く五音音階の中国風音楽とは違いますね。西欧の人がイメージする中国風音楽ってこんな感じなんだな、と面白い発見ができる曲です。

トレパック(1:01:52~)

ロシアの代表的な民族舞踊。軽快な音楽です。メッチャ足上がります!メッチャアクロバットです!

ちなみに、昔ファミコンゲームに「パロディウスだ!」というゲームがありその中でこの曲が使われていました。私がこのチャイコフスキーの「くるみ割り人形」と「ピアノ協奏曲」を初めて聴いたのがこのときでした。ゲームの音楽なのに凄く感動したものです。

葦笛の妖精(1:03:04~)

華麗なフルートアンサンブル。白戸家のお父さんもニッコリ。

ジゴーニュおばあさんと道化たち(1:05:40~)
靴の中に住んでいるジゴーニュおばあさんが子どもたちと踊ります。タンバリン付きの楽しい音楽。途中で道化師が素朴な民謡調の歌を歌います。

花のワルツ(1:08:37~)

金平糖の女王の侍女24人による世にも華麗なワルツです。

まさに全曲中の白眉であり、チャイコフスキーが生み出した数ある名曲の中でも最も素晴らしい曲の一つでしょう。さらにいえばクラシック音楽を代表する曲と言っても過言ではないでしょう。

ハープのカデンツから始まり、誰もが耳にしたことがあるあのワルツがホルンで歌われます(1:09:57~)。そして感動的な中間部!!(1:12:28~)もう涙腺崩壊です!

後半では金管楽器なども活躍するシンフォニックな盛り上がりを見せます。ここはトランペットの目立つところ。2本の和音をしっかり聞かせましょう。


聴いたあとのこのスッキリ感!!6分ほどの短い曲ながらチャイコフスキーの魅力が詰まった超名曲です!


組曲版ではこの曲でラストになりますが、この先最後の大団円に向けてさらに音楽は感動的になっていきます。

パ・ド・ドゥ(1:15:30~)

前曲の「花のワルツ」を引き継ぐような美しい曲です。旋律は単純な下降する音階ですが、感動的に展開していきます。チャイコフスキーの手腕といったところです。

ヴァリアシオン I タランテラ(1:21:03~)
三拍子の速い舞曲「タランテラ」。短い間奏曲です。くるみ割り人形王子がソロでおどります。

ヴァリアシオン II ドラジェ(金平糖)の精の踊り(1:22:00~)
こちらも有名曲です。特記すべきは、この曲は「チェレスタ」がオーケストラで活躍する初めての曲だという点です。つまりチェレスタという楽器をチャイコフスキーが初めて世に知らしめた最初の曲なのです。

「くるみ割り人形」が完成する前年の1891年チャイコフスキーは「金平糖の精」の踊りにふさわしい華麗な音色の楽器をさがしていました。カーネギーホールのこけらおとしのためニューヨークに向かう途中でパリに寄った際のことです。楽器制作者のヴィクトル・ミュステルが最近開発した、鉄琴を鍵盤で弾く楽器を見に行ったところチャイコフスキーはすぐにこの楽器の音に魅了されます。

そしてすぐその場で注文。しかしチャイコフスキーはこのことを誰にも知られないように、内密に楽器を輸送させます。それも大急ぎで。

チャイコフスキーはライバル作曲家に先を越されないように、チェレスタを世に広める第一人者になろうとしていました。特に恐れていたのは天才的なオーケストレーションの技術を持つリムスキーコルサコフとグラズノフ。この二人にだけは負けたくないと思っていたようです。

コーダ(1:24:36~)
疾走感のある短い曲。くるみ割り人形王子とクララが華麗に、踊ります!飛びます!回ります!

クリスマスなのでいつもより多めに回しております!

終幕のワルツとアポテオーズ(1:26:00~)

さあ、曲はいよいよ大詰め、最後のクライマックスの盛大なワルツです。終曲にふさわしい壮大なワルツです。オーケストラも重厚さを増しグイグイと盛り上がります。これも超々名曲です!

(1:27:25~)ここからディヴェルティスマンでダンスを披露したお菓子の妖精たちが再び順番に踊ります。楽しい!こんな幸福な時がいつまでも続いてほしい!華麗なチェレスタと木管楽器の後、2本のトランペットのきれいな旋律(1:28:07)。ここも和音を綺麗に響かせましょう。

再び壮大なワルツ(1:28:37~)!感動の渦は最高潮まで盛り上がります!


そして曲が突然ストップ。クララは気がつくといつものベッドの上に。現実の世界に戻った・・・そう、あのネズミも魔法のお城も、楽しい舞踏会も「くるみ割り人形」王子も、すべて夢だったのでした。そして第2幕の最初で流れた可愛らしい旋律がシンプルに歌われます(1:29:36~)

ラストをシンプルな旋律で締めくくる、このチャイコフスキーの音楽センス!!!まさにクリスマスの夜にふさわしい歌です。そして「くるみ割り人形」からの最高のクリスマスプレゼントをもらったクララは最高の幸福感とともに「くるみ割り人形」を抱きしめるのでした。


組曲版op71a

この組曲版はチャイコフスキー自身が全曲の中から、第二幕のディベルティスマンを中心に8曲を編集し、組曲作品71aとして全曲初演に先立ち同年の1892年に発表しました。コンサートでもこの組曲版で演奏されることが多いですね。

全曲を通して演奏するのは人手的にも楽器手配的にも大変ですが、組曲版ならば20分くらいのちょうど良い演奏時間となっています。作曲者自身が編集したということもあり、演奏会用のプログラムとしてもまとまりのある非常に良いものとなっています。全曲中の魅力的でゴキゲンなダンスナンバーをチャイコがチョイス!

ロッテルダムシンフォニアによる演奏。


第1曲 小序曲(0:16~)
第2曲 行進曲(3:53~)
第3曲 金平糖の精の踊り(6:42~)
第4曲 ロシアの踊り(8:41~)
第5曲 アラビアの踊り(10:03~)
第6曲 中国の踊り(13:56~)
第7曲 葦笛の踊り(15:16~)
第8曲 花のワルツ(18:00~)

バレエの魅力を堪能せよ!バレエは間近で見るべし。


こちらはバレエ付きの、100%の「くるみ割り人形」。やはりバレエがあると物語の流れがよくわかります。これであらすじを理解してから音楽のみを聴くとより理解が深まります。動画からはわかりませんが、実演ではかなり力強く感じられます。結構舞台上も足音でドカドカ鳴っています。(18:23~)のソルジャーが凄い!


チャイコフスキーの亡くなる前年の1892年に完成し初演されたバレエ音楽の傑作ですが、初演そのものはもう一つの傑作「白鳥の湖」の様に台本や演出などが今ひとつで、失敗に終わったそうです。

そのためかバレエダンスの振り付けや演出にはこれといった、「定番」の様なものが存在せず、現在でも多少の配役の違いがある場合があります。


以前バレエの魅力について、ヴェルディ作曲、歌劇「アイーダ」の凱旋行進曲でも説明しましたが、やはりバレエの本当の魅力を知りたければ、間近で見ることを強くオススメします。

「アイーダ」ではあくまでも行進曲の中間のオマケの様なものなのに対しこの「くるみ割り人形」はバレエのための作品、バレエ音楽そのものの代表格的な傑作です。他の名作群と違うのはバレエの振り付けに決まったものがなく、現在でもさまざまな解釈での演出や振り付けが試みられています。

特に第二幕はストーリーそのものに大きな動きはないもののボレロやアラビアの踊り、中国の踊り、さらにはお菓子の妖精達の踊りなど、実に多様で現実世界にはない幻想的なバレエを堪能できます。

どうしてもテレビなどの小さなモニター画面を通してバレエをみると、何かこじんまりした感じがして、正直なところ「チョコチョコ踊ってるだけじゃね?」と感じてしまうかもしれません。

しかし!!チョコチョコとなどとんでもない!実演を、しかもできるだけ近くで見た時、その優雅さ力強さ儚さ・・・人間の身体はこんな表現ができるのか!!とド肝を抜かれるでしょう。

まず舞台上のダンサーたちの力強い足音にビックリします。まさに「舞踏」という感じです。それだけでなく優雅に踊るときの、あの空気感といったらいいでしょうか、これはその場の実演でしか味わえないものです。ぜひぜひ!機会があればバレエは実演で観て欲しいと思います。本当に感動します!

名盤ランキング

チャイコフスキーを、というよりもクラシック音楽ひいてはバレエ音楽を代表する超名曲。全曲版も組曲版もオーケストラの機能を十分に発揮した名盤ばかりです。どの演奏を聴いても満足度は最高です。

全曲盤

リチャード・ボニング/ナショナルフィルハーモニー



全曲を通してこれほどバランスの良い演奏はないでしょう。オーソドックスな音色と歌い方、それでいてリズム感も安定しています。オーソドックスだからこそこの曲のキラキラした魅力を味わえる名盤です。トランペットの音色もシッカリ主張しています!第一幕最後の合唱の綺麗さは逸品です。

ワレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場合唱団



モノゴッツい髯オヤジが振るメルヘンファンタジー!力強い金管アンサンブルが1番の聴きどころですが、ゲルギエフの特徴はなんといっても「踊れる演奏」という所です。

全体的にテンポは速めで、本当にこれでバレエダンサーの皆さんは踊れるのか?と思ってしまうほどですが、このスピード感がバレエの華麗さを引き立てているように思います。


それでいて、抑えるところはシッカリとテンポを落として堂々と演奏しています。「踊れる演奏」とはこの盤の事を言うのでしょう。イキイキとした、楽しくなれる演奏としてはベストな盤ですね。

アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団



聴きやすさという点ではベストな演奏です。オーケストラの機能性を重視した演奏で、何度聴いても飽きない演奏です。こちらもオーソドックスなオーケストラの音です。だからこそ何度聴いても新たな発見がある名盤です。

組曲版

シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団



とにかく華麗な音色です。バレエ音楽そのものを体現した様な流れる様なリズムです。チャイコフスキーの音楽は低音が目立つ曲が多いのが特徴で、華麗なバレエ音楽でも、どこかゴツゴツした印象を受けるのですが、デュトワ/モントリオール響の演奏はそれを全く感じさせない、軽快な音楽となっています。

ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団



力強い!そしてスキのないアンサンブル!これに限ります。リズム感を重視するショルティの指揮姿は、細かいビートまでをも刻むかのような、それこそ「くるみ割り人形」の様にカチコチしている指揮姿が特徴的です。それが音楽にあらわれています。

かのリヒャルト・シュトラウスにも「チミはどうしてそんなにせわしなく振るのかね?」と突っ込まれたこともあるそうですが、その緻密なアンサンブルを要求する指揮こそがショルティの最大の魅力でもあります。

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリンフィル



チャイコフスキーを得意としていたカラヤンの音楽作りは非常に独特だと私は思います。他の指揮者ではやらない様な楽器のバランスで演奏するのが特徴的です。楽器を目一杯鳴らし、その上で普通なら聞き逃してしまう様な低音や中音域を際立たせた音量バランスは他の著名な指揮者では決して聴くことはできない点です。

名盤として名高い1961年、ウィーンフィルの演奏も素晴らしいのですが、やはり他とは良い意味で違った演奏を聴きたければこの1982年録音の演奏をオススメします。

カラヤン4回目の「くるみ割り人形」の録音であまり語られることのない盤ですが、私はこの様な他には聞けない楽器バランスで演奏できる点こそが帝王カラヤンと呼ばれた所以だと思います。

クラシック音楽の最高傑作とは

もし、悠久の数あるクラシック音楽の中でもっとも美しくて感動できる、後世に残すべき永遠の音楽があるとしたら何が思い浮かぶでしょうか?ベートーヴェンの第九、J.S.バッハのマタイ受難曲などなど・・・


イスラエルにある病院にて、突如1人のハープ奏者がロビーで弾き始めます。すると次々とどこからか楽器を持った人達が現れ、最後は素敵な演奏会となります。最初は驚いて怪訝な表情をしていた人達も音楽が進むにつれてニッコリ。こんなフラッシュモブはとても良いですね!聴いている人達も、バレエに参加している老夫婦達もとても楽しそうです。

こういう演奏のされ方こそ、この「花のワルツ」の持つ魅力が最大限に発揮されていると思います。私は個人的に、これこそが最も素晴らしい音楽なのではないかなと思うのです。演奏の上手い下手よりも、この空気感、感動こそが音楽に最も大切なもの。これを求めて日々楽器を練習するのですね!

この動画中間部の(2:36~)、切なくも力強い歌を聴くたびに人生って、世界って、そして音楽って素晴らしくて美しいものだな!と強く思うのです。「花のワルツ」は誰もが聴いたことのある有名曲ですが、私はこの曲があらゆるクラシック音楽の中で最も好きな曲です。そうだよ、好きだよ「花のワルツ」が、文句あンのかこのヤロウ(涙)


今年も残すところあと少し。「今年のクリスマスは家族や恋人と過ごすんだー!」というリア充の人達も、「クリスマス?苦しみマス!クリスマスは中止!」という私を筆頭とするクリボッチの人達も、ぜひ今年のクリスマスはこの「くるみ割り人形」を聴いて!観て!楽しく過ごしましょう!



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