皆さん、曲を弾く時に何調で弾いているのか理解して弾いていますか?調号を見て♯や♭がついているところを半音上げたり下げたりして弾いているだけになっていませんか?

自分が何調で弾いているのかも分からずに弾いている人は意外と多いのではないでしょうか?

調や調号の説明をするのはなかなか難しいです。「そういうルールなんだから覚えて!」と言ってしまえば簡単なのですが、それではよくわかりませんよね。

調号のつき方などはどうしてそのようになったのかというのは楽典の本にも書いてなくて音楽を専門的に学んで来た人達も知らないことが多いです。

わかりやすく説明するのは難しいのですが今回は調について書いていきたいと思います。

調号はなぜつくのか?


調号とはト音記号やヘ音記号の横についている♯や♭のことです。曲の途中に出てくる♯や♭は臨時記号と言います。

現代曲など無調の曲でない限り、調が決められています。

調には長調と短調の2つがあります。(長調は明るい雰囲気、短調は暗い雰囲気です。)長調は長音階という音の並びでできており、短調は短音階という並びでできています。

長音階


まずは基本となる「ド」の音から並べてみました。音と音の間の間隔が半音(短2度)の場合と全音(長2度)の場合がありますね!

次に音の始まりをずらしてみましょう。

「レ」から音を並べてみました。これでは先ほどの音程関係とは違いますよね。音程関係を同じにして並べてみます。


このようにどの音から始まっても全音、半音の音程を変えないように並べなくてはいけません。

つまり始まりの音をずらすだけではいけないということです。音程が違っているものは音を半音上げたり下げたりしないといけなくなるということがわかると思います。

短音階


これが短音階の並び方です。長音階とは並びが違うのがわかると思います。この並びの差が雰囲気の違いです。

長音階で書いたように始まりの音をずらすだけでは音程が違う部分が出てきます。そこを半音上げたり下げたりすると♯や♭をつけなくてはいけなくなります。

このように♯や♭をつけた部分が調号ということになります。

調号はつく順番が決まっている

調号をよく見ると少しずつずらして書いてあると思います。左側(音部記号のすぐ隣)に書いてあるのが1番最初につく調号です。次につくものは縦に書くのではなく、横に少しずつずらしながら書いていきます。

調号にはつく順番が決まっています。♯系と♭系ではつく順番が異なります。

♯系


♯系はこのような順番になります。


♭系


♭系はこのような順番になります。


♭系を反対側から見てみるとファ、ド、ソ、レ…となっているのがわかると思います。

実は♯のつく順番と♭のつく順番は逆になっているんです!

長調と短調のちがいは何か

長音階と短音階のそれぞれの音階の音の並びがどうなっているのかは先ほど書きましたが、ここでは長音階と短音階の音の始まりを一緒にして何が違うのかを比べてみます。


どちらも「ド」の音から始まっています。長音階の方はハ長調(Cdur)、短音階の方はハ短調(cmoll)です。短調の方は「シ、ミ、ラ」の3つに♭がついていますね。これがハ短調(c:)の調号です。

比べてみると音程の違いがよくわかると思います。

明るい響きになるのかそれとも暗い響きになるのかを決めるのは音階の3番目の音です。

ハ短調(c:)でいうと「♭ミ」です。調号をつけ忘れてしまい「ミ」で弾いてしまったとしたらそこだけ明るい響きになってしまいます。

逆もできます。長調の曲を短調で弾こうと思えば音階の3番目の音を半音下げれば短調にすることができるのです。試してみて下さいね。

短調の方が複雑

短調の音階、短音階は実は1種類ではなく3種類あります。

先ほどから書いている短音階は「自然的短音階」と言います。♯や♭がそのまま調号になります。

◆自然的短音階


この他に「和声的短音階」(三和音を作る時に用いる)と「旋律的短音階」(旋律で用いられる)の2つがあります。

◆和声的短音階


増2度は全音(長2度)よりもさらに広い音程になります。

◆旋律的短音階


「自然的短音階」と「和声的短音階」は上りも下りも一緒ですが、「旋律的短音階」だけは上りと下りの音が違います。下りは「自然的短音階」で下ります。

どうしてこのように3種類もあるのかははっきりしたことはよくわかりませんが、音の響きがきっと不自然に聴こえ、手を加えて心地いい響きにしようと試行錯誤した結果、3種類もできてしまったのではないかと思います。

この長音階、短音階は実はたくさんある教会旋法の中から2つを抜き出したものです。(イオニア→現在の長音階、エオリア→現在の短音階)

教会旋法とは中世の頃にローマ教会が古代ギリシャの旋法をもとにして旋法を定め、教会音楽に用いた音階のことです。

初めは8種類しかなかったようですが、16世紀頃には12種類にまでに増えたようです。その中の2つが現在の長音階と短音階となっているのです。

音楽はやはりキリスト教とは切り離せないものなんですね。

調号を見たら何調かだいたいわかる

無調の曲などの現代曲のような特殊な曲でない限り、調号が初めに書いてあると思います。その調号を見るだけで2つの調にしぼることができます。

例えば調号がついていない場合はハ長調(C:)かイ短調(a:)ということになります。(調号のないものは何調かというのを覚えておいて下さいね。)

調号はつく順番と一緒に何調なのかも覚えておくといいのですが、なかなか覚えらないと思いますので、覚えていなくてもわかるようになる方法を書きますね。


♯系の場合

♯系はついた調号の1つ上の音(半音上)がその調の音階の初めの音(主音)となります。

(例)♯が1つの場合
♯のつき方は「ファ、ド、ソ、レ、ラ、ミ、シ」の順番でしたよね!調号が1つの場合「ファ」に♯がつきます。この場合、「ファ」の1つ上の音(半音上)というと「ソ」の音になりますよね。♯1つは「ソ」の音が主音になる音階ということになります。つまりト長調(G:)ということになります。

♭系の場合

♭系は1つ目の♭はへ長調(F:)と覚えて下さい。2つ目からはとても簡単です。最後の調号の1つ前の調号の音がその音階の主音になります。

(例)♭が2つの場合
♭のつき方は「シ、ミ、ラ、レ、ソ、ド、ファ」の順番でしたよね!♭が2つということは「シ」と「ミ」につくということですね。最後の♭は「ミ」のことですのでその1つ前の♭というと「シ」になりますね!主音は「♭シ」ということになり、その調は変ロ長調(B:)です。

これは長調の場合のことです。調号を見たらまずはこの方法で長調だと何調になるのかを考えてみましょう。

短調だった場合はどうすればいいのかというと、長調の主音から短3度下がった音が短調の主音となります。

♭1つのヘ長調だった場合、「ファ」の音から短3度下がった音がその調の主音になります。この場合は「レ」の音になりますのでニ短調(d:)ということになります。

覚えられればこのようなことはする必要ないのですが、覚えられなかったり、その調の短調が何調になるのかわからなくなったりした場合にはこの法則を覚えておくと役に立つと思います。

曲の調を調べてみよう

曲の調を調べるときの手順を書いていきますね。

① 調号を見る
調号を確認するとたくさんある調の中からまずは2つにしぼることができます。

② 長調か短調か調べる
調号から2つの調にしぼることができましたが、まだ長調なのか短調なのか調号だけからでは答えがわかりませんよね。

長調か短調か見分けるには曲の最初(調号が最初と変わらなければ最後でもOK)を弾いたり、聴いたりして明るい響きなら長調、暗い響きなら短調と予想をつけることができます。

③ 曲の最初や最後の音を確認する
響きからではよくわからない場合は最初または最後のバスの音や和音を確認してみて下さい。(調号が最初と最後が違っていれば最後は確認しなくて良いです)

曲は基本的に主和音で始まり、主和音で終わります。

メロディーの方は単音なら主音で終わっている場合が多いと思いますが、重音だったり和音になっていたりする場合、1番上の音が必ずしも主音で終わるとは限らないので、バスの音の方が確実だと思います。

それではこの手順で曲の調を実際に確認してみましょう。

▼クレメンティー「ソナチネOp.36,No.1」



① 調号はありませんね。調はハ長調かイ短調ということですよね。

② 曲の感じを確認してどうでしたか?これは明るい響きでしたよね!ということはきっとハ長調でしょう。


③ 確認してみましょう。最初と最後のバスの音は「ド」になっていますね!

この曲はハ長調で書かれているということになります。

▼ベートーヴェン「エリーゼのために」



① 調号はこちらもありませんね。調はハ長調かイ短調ということですよね。

② 曲の感じはどうですか?これは暗い響きですよね!ということはイ短調でしょう。

③ 確認してみましょう。初めは右手しかないので左手が出てきたところを確認してみましょう。「ラ」の音になっていますね。


最後はどうですか?こちらも「ラ」ですね!

この曲はイ短調で書かれているということになります。

難しくなかったのではないかなと思います。いろんな曲がどんな調で書かれているのか調べてみて下さいね!(途中で調号が変わっていたとしてもその曲の全体的な調は初めの調で大丈夫です。)

ここまで書いてきたのは基本の形です。実は基本の形に当てはまらないものも多くあるんです…

調の主和音で始まらず、主和音で終わらない曲というものもあります。

▼ショパン「エチュード 革命」



この曲の場合は右手の方に和音があるので、右手の初めの和音を確認しましょう。調号や曲の雰囲気からハ短調のはずなのに、主和音「ド、♭ミ、ソ」が出てこないのです。

この曲は実は主和音から始まらず属七の和音から始まる曲なのです。


そして最後に注目してみると主和音で終わっているように見えますが、よく見ると「ミ」がナチュラルになっていることがわかります。この曲はハ短調の主和音で終わるのはなく、ハ長調の主和音で終わっているのです。

ずっと同じ調で進む曲もありますが、多くは調が変わります。

調が変わることを転調と言いますが、調号が途中で変わるものもあれば、調号を変えずに臨時記号で調を変える場合もあります。

ただやみくもに調を変えているわけではなく、自然に転調できるように工夫されています。

調には近親調と遠隔調というのがあり、近親調は共通音が多いので転調したときに自然に聴こえます。

◆近親調


遠隔調は共通音が少なくなるので転調するのが難しいです。

しかし転調できないわけではありません。上手く遠隔調に転調させるのは高度な作曲技術が必要で、作曲家の腕の見せ所でもあります。

曲の中には転調までしっかり調が変わってはいないけど、少し雰囲気が変わっているなと感じる部分があると思います。そのような部分は他の調から一時的に和音を借りる借用和音が使われていると思われます。

ずっと同じ調で進むというのではなく、このように和音を他の調から借りたり、転調したりしながら曲はできています。

曲を細かく分析するのはとても難しいことですが、何調で書かれているのかくらいは理解して弾いてみましょう。

まとめ

◆曲の調を調べるにはまず調号をみること
◆曲の雰囲気から長調か短調か判断する
◆最初のバスの音か最後のバスの音を確認してみる



本記事で用いたIMSLP無料楽譜
  • クレメンティ「ソナチネ」Op.36-1(楽譜リンク
    1904年にシャーマー社から出版された楽譜です。Op.36全6曲が収録されています。
  • ベートーヴェン「エリーゼのために」WoO.59(楽譜リンク
    1888年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版された楽譜です。
  • ショパン「革命のエチュード」Op.10-12(楽譜リンク
    1879年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版された楽譜です。ショパン「エチュード」Op.10全12曲が収録されており、Op.10-12は41ページからです。

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