詩歌集「カルミナ・ブラーナ(Carmina Burana)」に描かれた「運命の輪」

詩歌集「カルミナ・ブラーナ(Carmina Burana)」に描かれた「運命の輪」




「おお!フォルトゥーナ!」

運命の女神に呼びかける強烈で印象的な旋律。映画やCM、はたまた悪役プロレスラーの登場BGMなど様々な場面で使われるこの有名な曲は1936年にドイツの作曲家カール・オルフ(Carl Orff/1895-1982)が作曲した「カルミナ・ブラーナ」の第一曲目と最終曲で歌われます。


さてこの「カルミナ・ブラーナ」、旋律は非常に親しみやすいことも魅力ですが、なんと言ってもこの何度も繰り返される強烈なリズムが最大の特徴です。

そして歌われる歌詞はラテン語。ラテン語で歌われる曲といえばモーツァルトなどのレクイエムやミサなど神聖な旋律が多いのですね。しかし「カルミナ・ブラーナ」は繰り返される話し言葉のようなリズムによって歌われるため、非常に独特な歌詞となって聞こえてきます。ときにそれは日本語で歌われているようにも聞こえてきます。まるで空耳アワーのようでもあります。

その内容は、中世の人々の生活の中でのことや恋のこと、楽しいことや悲しいこと、酒のことやお笑いギャグなどなど。一般に中世は暗黒の時代と呼ばれることがありますが、ここで歌われているのは現代の私達と同様の人間らしい活き活きとした内容です。

さらには豊富な打楽器や色彩豊かな大編成オーケストラも聴きごたえがあります。その大編成オーケストラゆえに、合唱との音量バランスをとるのが難しい曲でもあります。

またオルフは作曲家でもありますが音楽教育者としても大きな貢献を残しています。その理念はこの「カルミナ・ブラーナ」にも表れています。その理念とは?


笑いあり涙あり、スペクタルさ溢れ、全米が感動した(?)「カルミナ・ブラーナ」。今回もオーケストラ、そして吹奏楽のトランペット席からもご紹介しましょう!デンドゴドゴドゴドン、ハイッ♪

■ 目次

世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」とは?演奏者視点であらすじと背景を解説!

ノルウェーのトロンハイムシンフォニーオーケストラ。演奏する人全てが一体となった素晴らしい演奏です!まさにオルフが言わんとした音楽がここにあります。特に打楽器が熱いゼ!


1803年、ドイツのバイエルン州にある「ボイレン修道院」で中世の歌や詩が書かれた書物が大量に発見されました。

今から約1000年前の11世紀ごろに書かれたもので、当時の人々の赤裸々な心情が書き綴られていました。「カルミナ・ブラーナ」と題されたこの歌詩集の中からカール・オルフは24編を選びカンタータ形式の大作を作り上げたのです。「カルミナ・ブラーナ」とは「ボイレンの歌集」という意味です。

2分〜5分くらいの全24曲の小曲から成り立っており、全体としては、導入部、第1部~第3部とつづき、最後に第1曲と同じ曲が繰り返されます。ソプラノ、テノール、バリトンの3人のソリスト(かなり広い音域と演劇性が求められます)に合唱、大編成のオーケストラにほぼ全ての種類の打楽器が駆使されます。ピアノは2台(!)使用されます。

基本的に同じ歌が2回か3回繰り返して歌われます。

全世界の支配者なる運命の女神(Fortuna Imperatrix Mundi)

・おお!運命の女神よ(O Fortuna)
ガツンと力強いティンパニとともにド派手な合唱から始まります(0:37~)。誰もが一度は耳にしたことがある曲ではないでしょうか。占いで有名なタロットカードに第10のカード、大アルカナ「運命の輪」があります。そのモチーフになっているローマ神話の運命の女神「フォルトゥーナ」に語りかける内容です。

【参考記事】
大アルカナは9分割すると読み方が簡単になる!タロット占いのやり方☆カードの絵柄と意味!

定められた「運命の輪」に逆らうことはできないのだ、と・・・しかし・・・

運命の女神
運命の女神



さて、クラシック音楽だけでなく特にジャスやポップスなどで「日本人は裏打ちのリズムが欧米人に比べて苦手だ」とよく言われるのを聞いたことはありませんでしょうか?

もちろん、欧米人だからといって全ての人が「裏拍が得意」というわけではありませんが、この有名な一曲目で裏拍の難しさがよくわかる箇所があります(2:19~)

トランペットが伴奏を吹きます。交互に拍を吹くのですが、これがなかなか合わせられない!遅れたり突っ走ったり…

「ねぇねぇ、あなたの裏拍ちょっと遅れてるよ?」

と得意げに他の人を指摘しているとさらに他の人から

「遅れてるのはあなたの方だよ!」

とツッこまれたりします…


・運命の女神の痛手を(Fortune plango vulnera)
1曲目が終わるとそのままの雰囲気で2曲目に突入します(3:14~)

ここでも激しく戦闘的なオーケストラの饗宴が展開されます。

第1部「初春に」(I – Primo vere)(5:54~)

導入部はここまで。ここからは静かな曲だったり楽しい曲だったりとバラエティに富んだものとなっていきます。CDなどで聴くときは静かな曲は飛ばして派手な曲を聴くのではないでしょうか?私は時間がないときはそうしています^^吹奏楽版でも管楽器が活躍する曲を抜粋して演奏されることがほとんどです。

第1部「初春に」
・春の愉しい面ざしが(Veris leta facies)
木琴とフルートによる鋭い動機から、沈鬱な曲となります。トランペットが印象的な短いフレーズを吹きます。

・万物を太陽は整えおさめる(Omnia Sol temperat)
続く2曲目はバリトンがソロを歌います(9:14~)

・見よ、今は楽しい(Ecce gratum)
そして3曲目(10:53~)。これは聴き応えのある明るく盛り上がる曲です。

芝生の上で(Uf dem anger)(13:35~)

ここで「芝生の上で」と題された4曲の舞曲風の曲が入ります。歌詞は一部中世のドイツ語が用いられます。

・踊り(Tanz)
オーケストラのみの小曲ですが、聴かせどころです。ド~ミ~ソ!の単純な前奏から始まるやや複雑な変拍子の曲です。4/4拍子と3/8拍子が交互に入れ替わるので、難しそうですが、曲を覚えてしまえばさほど難しくはありません。(14:43)からのホルンが熱いゼ!

そして最後はトランペットのミーソドー!!のハイCでキメます。

・森は花咲き繁る(Floret silva nobilis)(15:20~)
雄大な合唱から始まります。(17:30)あたりから合唱団が体を揺らしながら歌っているのが良いですね。

・小間物屋さん、色紅を下さい(Chramer, gip die varwe mir)(18:19~)
鈴を伴った、可愛らしい女声合唱が印象的です。そして時には穏やかに・・・ここでは女性が男性に「愛のあり方について」語りかけます。

・円舞曲(Reie)、ここで輪を描いて回るもの(Swaz hie gat umbe)(21:29~)
穏やかな「円舞曲」と特徴的な伴奏を伴った激しい曲調の「ここで輪を描いて回るもの」が交互に演奏されます。最大に盛り上がったところで切れ目なく最大の見せ場の曲へ!

・たとえこの世界がみな(Were diu werlt alle min)(25:52~)
トランペットを始めとする金管楽器の素晴らしいファンファーレ!盛大な合唱!一分もかからない短い曲ですが最大の聴かせどころでもあります。最後はファンファーレとなだれ込む打楽器からの、合唱気合一発で第一部を締めくくります。デンドゴドゴドゴドン、ハイッ♪

第2部「酒場で」(II – In Taberna)(26:43~)

切れ目なく第二部に突入します。神秘さと愛らしさの多い第一部とは打って変わってここでは酒場の場面となります。しかも合唱独唱とも男声のみ。野郎達の「ぶっちゃけ話」が飛び交う、むさ苦しく楽しい曲となります。人間以外の動物も登場するよ!

それだけでなく演劇的な要素も加わってきます。「体を動かし演奏する」という点もオルフの音楽の特徴でもあります。

・最初の「胸のうちは抑えようもない(Estuans interius)」は若者達のムカつく話がバリトンによって歌われます。これもかなり熱く激しい曲です。昭和歌謡曲のような感じの曲です!

・騒がしい前曲から急に寂しげなファゴット(29:09~)。そしてここでの歌い手は人間ではなく、これから丸焼きにされる白鳥です!しかもカウンターテノールという非常に高音域のテノールによって歌われます。「昔は湖に住んでいたのに・・・(Olim lacus colueram)」と嘆いています。そこに男声合唱がチャチャをいれてきます。

この曲が唯一のテノール歌手の出番ですが、動画のテノール歌手の演技が見どころです!

・次に語り出すのは偉そうな修道院長(32:22~)。バリトンによるほぼ伴奏なしのアカペラです。「わしは修道院長さまだぞ(Ego sum abbas)」と威張りますが、どうやら酔っぱらいが集まる修道院のようです・・・かなりの威張りようで歌います。そこに男声合唱が「いいぞいいぞー!」と囃し立てます。もうどうしようもない連中です・・・


・第2部の最後の曲も名曲です(33:57~)。シンプルなリズムの、酔っぱらい男たちによる歌!「酒場に私がいるときにゃ(In taberna quando sumus)」とドンチャン騒ぎ。曲は行進曲風になりドンドン激しくなっていきます(35:35~)。最後はイヨーイヨーイヨー!と連呼して、金管楽器の超ピアニッシモからの大クレシエンド!

詩歌集「カルミナ・ブラーナ」に描かれている、カードで遊ぶ酔っぱらい達
詩歌集「カルミナ・ブラーナ」に描かれている、カードで遊ぶ酔っぱらい達

第3部「愛の誘い」(III – Cour d’amours)(37:08~)

第3部では中世の人々の赤裸々な恋愛が歌われます。

・フルートの非常に綺麗な旋律から、児童合唱が愛らしく「恋はどこへでも飛んで行く(Amor volat undique)」と歌います。急にフルートが対照的な暗い旋律(38:40~)、ここで初めてソプラノ独唱が歌います。そして再びフルートの美しい旋律へ。





次の3曲は一つの流れになっています。恋に苦しむ若者(バリトン)と美しい乙女(ソプラノ)の対比がとても神秘的で美しい曲です。

・バリトンが「昼夜全てが私に背を向けている(Dies, nox et omnia)」と若者の恋の苦しさを歌い上げます(40:07~)。この曲、バリトンにとっては非常に高い音が要求される難曲です。カウンターテノールなみに高い音です。

・バリトンに応えるように、今度はソプラノが「乙女が立っていた(Stetit puella)」と歌います(42:36~)。こちらも素晴らしいハイトーンボイスです。苦しそうに歌うバリトンに対して余裕を見せるソプラノです。

・再びバリトンが「心にはため息ばかり(Circa mea pectora)」と歌います(44:19~)。すると今度は合唱が慰めるように明るく激しい旋律を歌います(44:49~)。それが最高潮に達すると・・・




・さて!曲は急にガラッとかわります(46:31~)。男声6人によるアカペラです。「もし男の子が女の子と一緒に部屋に泊まったら(Si puer cum puellula)」といきなりヤバイ歌を歌います。きっと第2部の酔っぱらい共が歌っているのでしょう。しかし曲は超絶に難しいアンサンブルです。超絶変態紳士達の素晴らしい歌を堪能しましょう!



そして!ここから終曲に向かって一つの流れになっています。どれも超名曲ぞろい。是非最後まで続けて聴いて欲しいです。最後は若者の恋が実るのですが・・・


・ピアノによるリズミカルでカッコいい伴奏から合唱が「来て、来て、来ておくれ(Veni, veni, venias)」と恋人に猛アプローチです(47:28~)。リズムもこれまで以上に強烈で激しくなっており歌詞の発音もハッキリ聞こえます。なんか変な日本語にも聞こえてくるから不思議!

♪ベニ、ベーニベニベニアス!エネゴリエネゴリエーネーゴーリー貸しやす♪ナザザッナザザッ♪

と、私には聞こえてきます^^

・ナザザ♪で盛り上がったところで非常に美しい曲に変わります。若者の猛アプローチにソプラノが「天秤棒に心をかけて(In trutina)」と心の迷いを乙女らしく、美しく歌い上げます(48:27~)。歌い上げるという言葉にふさわしい、おそらく数々のクラシック音楽の中でも最も美しい曲の一つではないでしょうか。

・脈ありか!?大勢で盛り上がりながら「楽しい時だ!(Tempus est iocundum)」とバリトン、合唱が歓喜します(50:24~)。楽しい合唱、これもワクワクしてくる名曲です!男声、女声交代で繰り返しながら次第に合唱の人数が増えて行きます。さらに再アプローチ!

そして最後は!オーケストラ団員も一緒に、そしてお客さんも一緒に!みんなで盛大に歌います!!(52:24~)皆さんご一緒にハイッ!!

♪ヨ、ホ、ホー!ヨホホイホー、山盛りエビなり函館よ〜♪


「みんなで音楽に参加する」これこそオルフの言わんとした事です。


盛大な大合唱がピタッと止んで・・・

・ついに!恋が叶いました!!わずか4小節のソプラノの超絶技巧カデンツァで愛を受け入れます。「とても愛しい人(Dulcissime)」(52:45)。とても高い音です。

白い花とヘレナ(Blanziflor et Helena)(53:23~)

・「カルミナ・ブラーナ」最後のクライマックです。愛を受け入れてくれた恋人を全合唱で「ようこそ!美しい人(Ave formosissima)」と讃えます。その美しさは栄光であり、世界の光であると高らかに歌われるのです。

春に戯れる少女たちも、酒場の酔っぱらい達も、変態紳士達も、恋が叶った若者達も、最後の大団円を迎えようとしたその時・・・

全世界の支配者なる運命の女神(Fortuna Imperatrix Mundi)(54:53~)

・「おお、運命の女神よ(O Fortuna)」

「おお、運命の女神よ(O Fortuna)」
ガツンと力強い打楽器とともにド派手な第一曲目の合唱が始まります。冒頭の「運命の女神」がラスボスのごとく再び人間の前に現れたのです。

そう、運命の女神、定められた「運命の輪」に逆らうことはできないのだ・・・

「運命の輪」は月のように変幻自在で、邪悪に回転し、どのような力も氷のように溶かす・・・

しかし、人間も負けてはいません!この時にこそ「運命の輪」の回転に遅れることなく弦をかき鳴らせ!「運命の輪」はどんな強者も打ち倒すのだということを嘆きつつも皆で歌い上げよう!と戦いに立ち向かっていくように曲は疾走して、この「カルミナ・ブラーナ」は締めくくられるのです。

名盤紹介

かなりの数の名盤がありますがその中でも良い特徴があり、印象深い盤をご紹介しましょう!

オイゲン・ヨッフム/ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団

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ユニバーサル ミュージック


古くから名演として知られている盤です。非常に熱い演奏です。曲の最後の方になってくると合唱団の音程がずれてもおかまいなしに全力で歌い上げます。この雰囲気がまたいい!バリトンのフィッシャー=ディースカウも素晴らしいですが、ソプラノのグンドゥラ・ヤノヴィッツの天から響いてくるような歌声が聴きどころです。

ミシェル・プラッソン/トゥールーズ・カピトール管弦楽団



これは少し珍しい演奏なのかもしれません。一見地味な演奏に聴こえるかもしれませんがしかし!非常に素晴らしい盤です。聴きどころは合唱の素晴らしさです。とにかく綺麗!ヴィブラートを抑えた歌い方は中世の雰囲気バッチリです。

繰り返しの多い曲ですが、随所にテンポを変えていき盛り上げる手法も大変素晴らしく聴いていてワクワクしてきます。特に動画の(10:53)からの曲が素晴らしい。

そしてこの盤で絶対聴くべきはソプラノのナタリー・デセイです。「天秤棒に心をかけて」(動画の48:27~)は是非聴いて欲しい演奏です。思わず涙が溢れるほどです。

ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送交響楽団

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キングレコード


これは是非オーケストラを聴いて欲しい名盤です。金管楽器のバランスが良く、各パートがしっかり綺麗に吹いているのがよく聴こえてくる演奏です。ブルックナーを演奏するのと同じアプローチですが、シンプルな曲だからこそその味が活かされます。

クルト・アイヒホルン/ミュンヘン放送管弦楽団

Orff オルフ / カルミナ・ブラーナ アイヒホルン&ミュンヘン放送管弦楽団 輸入盤 【CD】


おそらくテレビ放送などの録音でしょうか、弱音から全合奏の音が全てハッキリ聞こえてくる珍しい録音です。聴くべきはなんと行ってもバリトンのヘルマン・プライ。動画(32:22~)の「わしは修道院長さまだぞ」が素晴らしい!ガッツリ演技しています!そしてルチア・ポップの歌も素晴らしいです。

リカルド・シャイー/ベルリン放送交響楽団



音量のバランスに細心の注意を払っているのがよく分かる理想的な演奏です。合唱とオーケストラ、そして打楽器のバランスがこれほど良い盤は他にありません。一見地味に感じる演奏かもしれませんが、冒頭のティンパニの熱さ、オーケストラの精度、特にホルンの素晴らしさは一聴の価値があります。特に「踊り」(動画13:35~)は完璧!何度聴いても飽きが来ない盤はこれかもしれません。

ジャイムス・レヴァイン/シカゴ交響楽団

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ユニバーサル ミュージック


オーケストラ、特に金管楽器が完璧な演奏を聴きたければこれです!シカゴ交響楽団はレヴァインの指揮も文句なしの素晴らしいものですが、是非ゲオルグ・ショルティの演奏が聴きたかった・・・詳しくは後ほど!

ストラヴィンスキーとは違うのだよ、ストラヴィンスキーとは!

非常に人気のあるこの「カルミナ・ブラーナ」ですが、この名曲を苦手とする有名指揮者がいました。ハンガリー出身の巨匠ゲオルク・ショルティです。

大編成オーケストラに合唱が付き、なおかつリズム感のある曲に強味があるショルティ。この「カルミナ・ブラーナ」こそ最も得意としそうな曲ですが巨匠にとってこの曲の執拗に繰り返されるリズムは辟易するものでした。

実際に作曲者であるオルフ立会いのもとリハーサルを行っていた時、ショルティはあまりにも繰り返しが多すぎると作曲者に苦言を申し出ました。

オルフはストラヴィンスキーもリズムの繰り返しが多い、と指摘しましたがショルティはストラヴィンスキーは音楽的な繰り返しだが、あなたの曲は単純な繰り返しが多すぎる!と切り捨てた、というエピソードがあります。

それほどまでにオルフの音楽はこの「カルミナ・ブラーナ」に限らず、リズムの繰り返しを重視した曲が多いのです。それにしてもショルティの指揮する「カルミナ・ブラーナ」。どんな演奏になっていたのか聴いてみたいものです…


ちなみにヘルベルト・フォン・カラヤンもオルフとは馴染みが深く何度も「カルミナ・ブラーナ」を演奏したらしいのですが、是非聴いてみたいですね。

オルフはよい子のなかま

今回ご紹介した「カルミナ・ブラーナ」のように、オルフはこれまでのクラシック音楽とは全く形式の異なった音楽を目指しました。オルフ独自の編成や形式の音楽が特徴です。これは吹奏楽の「リンカンシャーの花束」で有名なパーシー・グレインジャーにも言えることですね。

さて、オルフのリズムのこだわりにはちょっとした理由があります。オルフは作曲家としてばかりでなく音楽教育、とくに子供のための音楽教育に力を入れた人物でもあります。

オルフの音楽教育についての考え方とは、子供が自分のできる範囲で実際に楽器に触れ演奏し、体験することを通して人間的にも成長してゆくというものです。子供でもすぐに音が出せる楽器、打楽器を中心にオルフが考案した子供のための打楽器は現在でも音楽教育の現場で取り入れられています。

身近な所で言えば楽器メーカーである「スズキ」から発売されている小学生低学年向けの木琴鉄琴や太鼓などがあります。皆さんはおそらく小学校のころに音楽室や音楽準備室などで見かけたことがあるかもしれません。






オルフの教育理念は現在でも有効で、日本でも盛んに研究、実践されています。
https://www.orff-schulwerk-japan.com/



クラシック音楽の枠組みを越えたリズムとわかりやすいオルフの音楽理念は、大人から子供まで幅広く音楽に触れる大きなきっかけとなるでしょう。それがこの名曲「カルミナ・ブラーナ」にも大いに活かされているといえるでしょう。

カール・オルフ(1895~1982)


The picture of Fortuna By Hans Sebald Beham [CC BY 4.0], via Wikimedia Commons.
The picture of Carl Orff By Jens Rusch [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons.

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