どの楽器にも言える事かもしれませんが、綺麗な音で演奏するということは楽器を演奏する人にとって最も目指すところではないでしょうか。楽器の持つ音を最大限に引き出せば、演奏する本人も聴く人も音楽の楽しさを100%味わうことができます。


トランペットの練習方法に関しては現在、インターネットや教則本、噂話から先輩からの受け継がれてきた方法等、多くの情報が溢れています。

綺麗な音を出すにはイメージが大切とか、マウスピースだけでの練習やバジング(楽器を使わず唇だけで音を出す)は意味がないなど・・・はたしてこのようなことは実際どうなのでしょうか。

音を出すこと自体が困難で、あらゆる楽器の中で最も難しい楽器のひとつとされるトランペット。一体どうすればきれいに吹くことができるのか、試行錯誤を繰り返してきた私が様々な視点からご紹介したいと思います。

綺麗な音は楽器の自然な響き

吹奏楽でもオーケストラでもジャズバンドでも、そのジャンルにあった綺麗な音で楽器を吹くにはどうしたらいいか?きっとほとんどの人は先生や先輩から「もっと綺麗な音のイメージを持って吹きましょう」と言われたと思います。

さて、こう言われると皆さんはどう受け止めたでしょうか。

「音色のイメージはたくさんCDを聴いてわかっている。そのイメージ通りに音が出ないから苦労してる」

と思う人と

「そのイメージがよくわからない。自分の出している音が良い音なのかもわからない」

という2通りの人がいると思います。

この「音のイメージ」というのはとても曖昧で人それぞれに感じ方が違います。前者の人は始めから明確に「この音が出したい」というイメージができていますが、理想と現実の音のギャップに絶望(?)し苦しんでいます。後者はどの音が吹きやすくいい音なのかを手探りで模索している状態です。

どちらも良い音を目指して進んでいる状態であることは間違いありません。そして共通して求めていることは一つです。それは無理やり自分で音を作り出そうとせず「楽器を無駄なく最大限に響かせる」ということです。

たとえば仏壇などにある「チーン」と鳴る鐘を思い出してください。この鐘は鈴(りん)といいますが初めて棒で叩いた時うまく響かなかった経験があるのではないでしょうか。鳴ったとしても少しでも手で触るとすぐ響きが止まってしまう。鈴本体は響きが止まらないように小さな座布団の上に置かれていますね。そしていろいろ工夫してみてどう叩いたら

「響きが止まらず」
「大きく長い音で」
「綺麗に響くか」

を試したことがあると思います。これがトランペット、それに限らずどの楽器にも言えることですが、音を自然に鳴らす重要なポイントであると思います。ちょうどトランペットはこの仏壇の鈴と同じ材質でできているのでよりわかりやすいと思います。

左手で楽器本体を持ち

右手でピストンを押し

マウスピースに口を付ける。

人間の体はこの3点で楽器と接触しますが、トランペット自体は響きが止まることなく音が鳴るような構造になっています。

つまり「良い綺麗な音」を出すための第一歩は、無理に自分の思うように作ろうとせず、暴れ馬の手綱を無理に引っ張って手懐けるのでもなく、楽器の持つ響きを止めないように最大限に鳴らしてあげることだと言えるでしょう。

まずは楽器を響かせること。トランペットのベル部はそのためにあります。それが出来て初めて自分のイメージする様々な表現の音色が作り出せるのです。

力を抜いて吹くってどういうこと?脱力すればいいってものではない

さて両手で楽器を持つことによってトランペットという仏壇の鈴の響きは止まらないことはわかりました。そこで今度は残る体の部位、唇を使っていかにして「チーン」と綺麗な音を響かせるか。この場合は叩く棒ではなく自分の唇の振動でそれをしなければなりません。

つまりトランペットという鐘を最大限に響かせるために人間の側があれこれ工夫する必要があるということです。ここからが多くの人があれこれ悩むところでしょう。

最大限に楽器を響かせるために、いかにして唇を「ブ~」と鳴らすか?ただそれだけのことなのですが、この口の形やマウスピースを当てる位置やらをどうするか?これが永遠の課題である「アンブッシュア」というやつです。

トランペットという楽器は音を出すだけでも口をしっかり締めて唇を震わせる必要があるため非常に力を使う楽器と言えます。しかしここで口に力を入れすぎてしまうと響きが止まってしまい汚い音・・・いや怪音波となってしまうのです。これは残念ながら「マジご臨終」です。南無。


鈴を叩いた瞬間、すぐに棒を離さないと「カッッ・・!」と音が止まってしまいます。唇に力を入れすぎて吹くと詰まったような音になるのはこの状態に近いです。


良い音、綺麗な音をだすということとは、その楽器が響くことができる最大限の音を引き出してやることに他なりません。無理に出そうとして振動する唇が硬くなりすぎていると響きが止まってしまい汚い音となってしまうのです。

しかし、余分な力を抜いて吹きましょう、というと人によっては力を抜きすぎてしまいます。唇に力を全く入れず、楽器に何回か息を吹き込んでいると自然に唇が振動することがあります。力の入っていないリラックスした低い音が出ますが、これでは高い音は出せません。

力を抜けば唇は固まらず高い音も吹きやすくなるのではないか?と思うかもしれませんが高い音だけでなくその出ている低い音も締まりのない音になっています。

唇に余分な力を入れない、といっても張りのある音にするにはある程度の硬さというのも必要になってきます。もし仏壇の鈴をたたく棒がフニャフニャに柔らかかったらチーンという澄んだ音はしないでしょう。トランペットらしい音で、高い音も綺麗な音で演奏するためには最低限の唇の力がどうしても必要なのです。

バズィングは必要か?目的は唇を震わせることではない!

ではその楽器を最大限に響かせるにはどうしたらよいか?これは結局のところ1番肝心の唇をどのように効率良く力を入れて振動させるか?という問題に行き着くことになります。

その唇を振動させるための練習…とよく言われるのがバジングと呼ばれる練習です。マウスピースに口をつけずに唇をブーッと振動させる方法です。この方法、人によってはやらない方がいい。むしろ変な癖がつくから絶対やってはいけない、という人もいます。

またバジングそのものができない、マウスピースをつけないで唇を振動させることができないという人も少なからずいます。バジングを沢山練習したけれど特に効果はなかったという人もいるでしょう。はたしてバジングを練習するのは正しいのか?


どんな事にも言える事ですが、ある練習をする上で大切な事は「何を目的にその練習をするか」ということです。

このバジングというものは唇を震わせることが目的ではありません。沢山震わせてプルップルでツヤツヤな唇を作り出そうというものでは無いのです。

大切なポイントは唇の真ん中を振動させようとする時の口周りの力の入り具合です。どんなことをいっても最低限この時の口周りの張り具合、筋肉の使い方がトランペットを綺麗に張りのある音で吹く上で必ず必要なのです。

バジングができない、唇が振動させられないという人は気にする必要は全くありません。まずは唇を上下まっすぐに合わせ振動させようとしてみて下さい。音が出なくても大丈夫。この時の口周りの力の使い方の感覚を覚えて楽器を吹いてみましょう。唇が鳴らなくても「鳴らそうとした時の口周りの状態」が注目する点です。

唇の力の入れ具合がよくわからなくなってしまった時はマウスピースに口をつける直前に軽くブーとバジングしてから楽器を吹いてみるとわかりやすいと思います。

あくまでもバジングは確認作業と考えるべきです。バジングだけを独立させて一生懸命練習すると今度はどんどん力を入れようと頑張ってしまいます。人間とは良くしよう、成長しようとするとついつい必要以上に力を入れてしまう生き物なのです。バジングは練習するべきでないという考えはこの事があるからです。

何のためにこのバジングが必要なのかを理解した上でやらないと逆効果になってしまうのです。

「唇を震わせ(震わせようとして)、綺麗な音やハイトーンに必要な最低限の口周りの力の入れ具合を確認する。」


成長するには石の硬さを保ちつつもリラックスし、力を入れすぎないこと。

マウスピースだけで練習するのはNG?良い響きをしている時の唇の状態とは?音の原理を体感しよう。

次はマウスピースのみで練習する事についての目的を考えてみましょう。ちなみにマウスピースだけで吹くこともバジングという場合があります。

これについてもマウスピースのみでの練習は意味がないと主張する人もいます。バジングと同じくこれも「何のためにマウスピースだけで音出しをするのか」を考えて練習しないと意味がなく逆に悪い方向に行ってしまう恐れがあります。

小中学校の吹奏楽部や金管バンドクラブなどで初めてトランペットを練習するとき、ほとんどの人はマウスピースだけの練習をさせられたと思います。目的はシンプルです。唇を振動させるための練習です。

あくまでも唇が振動して音が出るプロセスの口とマウスピースの部分だけを取り出しての練習です。最終目的は世界的マウスピース奏者になることではなく世界的トランペット奏者になることです!

これも正しく無駄なく唇が振動しているかを確認する作業といえます。なのでこればかりたくさん練習してもあまり意味はありません。しかしどんなことを言ってもトランペットは「唇が効率良く振動」しないといけない楽器です。

マウスピースのみでの練習をする場合、2つのことに注意して練習してみるといいと思います。

1・まずマウスピースでグリッサンドしてみることです。音域は狭くてもいいので滑らかに音を途切らせずウィィィィ、イゥゥゥゥと上がり下がりしてみましょう。もし途中で途切れたり、唇をセットし直すようならばダブルアンブッシュアの悪い癖がある場合が多いです。

高い音と低い音を別のアンブシュアで吹くという癖があると、スムーズに曲を演奏することができないだけでなく音域も広げる事はできないでしょう。これで唇が効率良く振動しているかどうかを発見することができます。

2・もう一つは自分の出したい高い音を吹いてみることです。完璧に同じ音でなくとも近い音を出してみましょう。出なくてもとりあえず頑張って出してみます。無理やり出した音であっても、その音が出るという事は唇がその音に必要な振動を起こしているということです。あとはそのまま低い音でも対応できる口周りのポジション、力の入れ具合を自分で見つけていきましょう。

マウスピースだけで出る音は楽器をつけた時とは違う音がするのも確かです。しかしマウスピースでその音域の音を出せないという事は楽器をつけても安定して出す事は出来ないというのが現実です。

この2つのことがマウスピースだけで練習するときのポイントです。

マウスピースのみで練習する時もやりすぎないことが大切です。マウスピースと楽器では管の長さが当然違います。管が短いマウスピースばかりで練習していると、いざ楽器をつけて吹いた時、音が前に出てこず貧弱な音になってしまいます。

先程のバジングで、唇のみでは音を出せない人もマウスピースで唇を固定させることによって振動させることができるようになります。ギターの弦を両端で押さえてピンと張れば音が出るのと同じことです。


ここで別の視点から唇の振動を効率よく観察できる方法をご紹介しましょう。ラップの芯や長めの筒状の棒を用意してください。このただの筒をトランペットと同じように吹いてみましょう!!トランペットのマウスピースよりかなり大きいサイズですね。形状はマウスピースと違って真っ直ぐな筒です。それだけに余計な抵抗等はなく息の通り方と唇の振動の関係がわかりやすいと思います。 

マウスピースと違って太く息を吹き込めるので、豊かな余裕のある音色を吹いている時のイメージが掴めるのではないでしょうか。唇を振動させて管が共鳴し音が鳴る根本的な原理を体感できるでしょう。

そして今度はその筒をリップスラーでド・ソ・ドと出してみましょう。もしここで余分な力な力が入っていたり、口に押し当てる圧力が強すぎたり弱すぎたりすると音が出せません。リラックスした良い響きの音が出ている状態を観察できると同時に、口にマウスピースを当てた時の圧力や力の入れ具合なども観察できると思います。

また唇が振動している状態を直に観察する方法としてこのアイテムがオススメです。

バジングマウスピース
バック アンブシュア・ビジュアライザー(練習用リム) 【1824】 トランペット用
バック アンブシュア・ビジュアライザー(練習用リム) 【1824】 トランペット用


マウスピースの丸の中にきちんと上下の唇が均等に収まるように鏡でチェックできます。

アンブッシュアは変えるべきか?

多くの人が悩む問題として、アンブッシュアを変えることは正しいかどうかという事があります。これは人それぞれの状態により千差万別で「これが正しい」という答えがありません。

人によって、アンブッシュアを変えて劇的に上達したという人もいれば逆に今まで吹けていたのに吹けなくなってしまったという人もいます。

確かに言えることは、本番直前にアンブッシュアは絶対変えないこと。アンブッシュアのことは本番が終わるまで考えないことです。また本当に変える必要があるかどうかもよく考える必要もあります。変えて吹けなくなってしまったとしても悲観せず、出来ることから根気よく練習を積み重ねれば、最終的にはアンブッシュアというものはさほど重要なものではない、ということがわかると思います。音が鳴る原理は一つしかありませんから・・・・

ただし、楽器のチューニング管を目一杯抜いて、あるいは逆に目一杯入れてようやく周りの人とチューニングを合わせている状態の人は明らかに楽器に不適切な吹き方(アンブッシュア)をしています。これはなるべく早く直したほうが良いでしょう。

アンブッシュアについてはある意味でデリケートなことでもあるので、別の機会に詳しくご紹介しましょう。

ラッパ吹きは明快!

演奏することもさることながら、それ以前に音を出す事からして難しい楽器の代表といえば金管楽器でしょう。金管楽器は丸い吹き口に唇を当てて音を出しますが息を入れただけでは音が出ません。自分の唇を振動させて音を出す必要があります。

この口先のわずかな力の入れ具合によって出てくる音の全てが決まると言っても過言ではありません。どの楽器であっても音を出すための最低限の力というものは必要ですが、金管楽器、特にトランペットの場合はその加減を間違えるとすぐに音に現れてしまいます。とくに緊張している時、自信がない時などはそれがモロに音に表れる楽器です。

つまり…

そう!トランペット吹きの人はとてもわかりやすい性格の人が多いのです(言っちゃったー)!!


トランペットとは、とにかく目立つ「どストレート」な音の楽器なのです。オーケストラなどで受け持つ旋律もファンファーレ的なものやクライマックスでの主体となる旋律が多く派手で目立つものばかりです。なので間違えるときは盛大に誰にでもわかるように派手に間違えます。

非常に緊張を強いられる楽器ですが、その分音量も大きく、華やかで美しいその音色は他の楽器では決して真似のできない森羅万象の響きでもあります。まさに天から降り注ぐ天使の響きなのです。そう、神のごとき響きなのです!どうだ凄いだろう!!

トランペットをいかにして吹くか?様々な練習方法がありますがそれらを実践する前に非常に大切なことがあります。それは正しく日々練習しているということで、これがすべてにおいて大前提となります。今回ご紹介した方法も日々の練習の積み重ねがなければその場限りの小手先のマジックで終わってしまいます。

トランペットは音を出すだけでも大変な楽器ではありますが、綺麗な楽な音で吹けるようになれば自然に高音域もテクニックも身についてきます。地味な練習ほどメトロノームを使って根気よく練習。この積み重ねがあって初めて「音を綺麗に出すコツ」というものがつかめるのです。


The picture of singing bowl By KENPEI [GFDL, CC-BY-SA-3.0, GFDL or CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons.

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