こんにちは!藤原歌劇団所属、ソプラノ歌手の泉萌子です♪

さて、突然ですが質問です!
あなたは“オペラ”という言葉で、どんなイメージが浮かびますか…?

ざっくりいうとオペラとは、音楽と演劇とが織りなすステージです。
現代では、ミュージカルがそれに近いものになるのではないでしょうか。
(ただしオペラはミュージカルと異なり、基本的にはマイクを使わずに生歌で歌います!)

歌手たちの豊かな歌声、迫力のあるオーケストラのほか、凝った舞台装置や、きらびやかな衣装なども魅力的です!!
でも、いきなり劇場に足を運ぶというのも、ハードルが高いもの。
かくいう私も、演目によっては、チケットを気軽に買えません、。笑

しかし!!
オペラでは音楽ひとつを取っても充分に楽しめる、というのも事実です!!
現在でもTVや映画など、様々な場面で用いられているオペラの名曲の数々。
それらが100年以上の時を超え、愛され続けている理由…
そのひとつはズバリ、その音楽の素晴らしさにある!と私は思うのです。

今回は、私がセレクトした名曲4曲を、ご紹介いたします。
ちょっとした解説付きなので、話のタネにできるかも!?

■ 目次

プッチーニ作曲:誰も寝てはならぬ(オペラ『トゥーランドット』より)


トリノ五輪以降、一躍、知名度を上げた曲です。
フィギュアスケートで金メダルを獲得した、荒川静香選手が音源を使用して話題になりましたね。

世界三大テノールの一人、ルチアーノ・パヴァロッティが最も得意とした曲としてもしられています。
でももう亡くなってしまったんですよね、パヴァロッティ…
生でこの曲を聴いてみたかったです。

この歌はテノール歌手にとって、いわば憧れの1曲です。
私は女性ですが、生まれ変わるなら男性になって…テノールとして勉強して…この曲を歌いたい!とまで思います。
聴きどころはやはり、歌のクライマックス、思い切り高音で伸ばす部分でしょう。
バッチリ決まった演奏を聴くと、気持ちがスカッとしますよ!!!!


○この曲の背景について…
舞台は、古代中国の北京。
イタリア人が作曲したのに北京が舞台とは、不思議な感じがしますよね~!
これは、当時ヨーロッパで流行した、「東洋趣味」の影響なのです。
作品のところどころに、アジア的な雰囲気の旋律が散りばめられています。
なんと、日本を舞台にしたオペラもあるのですが…それはまた、別の機会に♪

王女であるトゥーランドット姫は誰もが認める絶世の美女。
結婚を申し込む者が後を絶ちません!
しかしそんな彼らに対し、姫は難解な謎ときを提示し、答えられなければ次々と斬首刑に処していましたので、それはそれは、人々から恐れられていたのでした。

かわいそうですよね~!いくら気に入らないからといって、なにも殺さなくたって…!!

しかし、これには深いワケがありました。
過去に、トゥーランドットの先祖である姫が異国の者によって恥辱を受けた、という悲しい歴史があったのです。
すべては一族の復讐のため、というわけだったのですね。
なんだかブレの無い、心根の強さのようなものを感じますね!
小心者の私は怖くて近づけそうにないですが。笑

しかしダッタンの王子・カラフは、果敢にも謎解きに挑戦することを決意。
死の恐怖を克服させるほどの姫の美しさ…一国の王子にそこまでさせてしまうとは!

聡明なカラフは見事に3つの謎を解き明かしますが、それは前代未聞の出来事。
動揺したトゥーランドットは彼との結婚を拒みます。
おいおい、約束は約束でしょ…とツッコミを入れたくもなりますが、さすがによく知りもしない人と結婚させられるのはツラい、ということでしょうか?
やっぱりお姫さまって、ワガママなものなのでしょうか…わかりませんね!

そこでカラフは逆に、トゥーランドット姫に謎を出すことに。
「夜明けまでに私の名を得ることができたなら、貴方に命を捧げましょう。」
彼は身分を伏せたまま謎に挑んでいたのす。
さて一大事!ピンチはチャンスとばかりに姫は策を練ります。
「あんな男との結婚は嫌!あの男の名を明かすまで、誰も寝てはならない!」
姫のなりふり構わない姿勢に、国民も大パニック。心中、お察しします。。。

しかしカラフは自らの愛の勝利を確信しこの名アリア(詠唱)を歌うのでした。
その自信はいったいどこからくるの…??
という疑問を吹き飛ばしてしまうくらい、愛と情熱が溢れる1曲です。

そしてその愛の結末がどうなるか気になる方はぜひ、本編をご覧くださいませ!!

ビゼー作曲:恋は野の鳥~ハバネラ~(オペラ『カルメン』より)


化粧品から飲料、ドレッシングまで、様々なTVコマーシャルに使用されてきた楽曲で
す。
個人的にはファッションブランド「ナノユニバース」のCMで流れていたアレンジが好きでした!

綺麗なバラにはトゲがある…
平凡な男の人生を悲劇的に変えてしまうほどの、魔性の女の美しさ!
うらやましいような、そうでないような。。。

どうしてこうオペラって、美女とか可憐な乙女とか、そういう役ばかりなのでしょうかねぇ…
演じる方は内心ビビっていたりするのですよ!
「あの容姿で美女だって…」
と笑われていやしないかと。
ま、いちいち気にしていられないんですけどね!笑

カルメンはメッゾ・ソプラノの歌手が歌う役です。
私はソプラノですから、役として歌うことはないと思われますが、リサイタルなどの機会があればぜひ、挑戦してみたい曲の一曲です。

高い音から低い音へ、少しずつヒラヒラと羽根のように下りてくるような旋律は、相手をじらしながら口説いているような、なんともいえない色気があります。
う~む、セクシー!!

この他にも、オペラ『カルメン』には、「セギディーリャ」や「闘牛士の歌」など、親しみやすくノリの良い音楽がたくさん出てきます。
日本では最も上演回数の多いオペラと言われているんですよ。
話の筋もわかりやすいので、オペラを初めて観るという方にもおすすめです。


○この曲の背景について…
19世紀、スペインはセビリア。
といっても、台詞はフランス語で書かれています。ややこしい!笑

美しいジプシーの女工・カルメンに、男たちはみな、夢中になっています。
しかしそんな彼女に興味を示さない者がただ一人…衛兵のホセです。

そんな美人に見向きもしないとは、まさか女性に興味がない…?
いいえ!彼にとって大切なのは、素朴で愛らしい許嫁と、離れて暮らす母親です。
品行方正で、火遊びとは無縁。結婚するなら、こんな人がいいなぁ、と思ってしまいませんか…?笑

しかしそれではカルメンのプライドが許しません。
「恋は野の鳥のように、誰にも捕まえられない…私に好かれたら、ご用心!」
と歌い、全身全霊を込めて(!?)ホセを誘惑します。
いやぁ、こんな風にされたら、誰も抗えませんがな!笑

ものの見事に陥落し恋に溺れたホセは、許嫁も仕事も捨て、カルメン率いる密輸団の一員となるまで、落ちぶれてしまいました。
そしてもともと「野の鳥のように」移り気な彼女の恋心。
ホセは遂に、自分を裏切ったカルメンの命を奪うという凶行にまで走ってしまうのでした…

絵に描いたような転落人生!
しかしこれ、完全にバッドエンドなのですが、最後にはなぜか謎の充足感に満たされるんですよね。
それも、「カルメン」という女性の魅力に、私たち聴衆もとりつかれてしまうから…なのかもしれません。

モーツァルト作曲:復讐の炎は地獄のように我が心に燃え(オペラ『魔笛』より)


やっぱりお母さんってコワい…笑

私がこの曲を初めて聴いたのは、ドラマ「のだめカンタービレ」を観たとき。
千秋センパイの元恋人がオペラ科の学生で、その子が学内のオーディションで歌う、という内容だったと思います。

人間業とは思えない、超音波のような高音の連続!!
凄まじい速さの音の跳躍もなんのその!!
こんな曲を作ったモーツァルトは鬼だ!人は生き物だ、楽器じゃあないぞ!!
…とまで思ったものです。

当時まだまだ青かった私に衝撃を与えた、超絶技巧の華々しい名曲がこちらです。
こういった、声楽的に難易度の高い技巧を“コロラトゥーラ”といいます。
また、このような曲を特に専門的なレパートリーとするソプラノ歌手を、“コロラトゥーラ・ソプラノ”と呼びます。
「いろいろな音をコロコロ転がすように歌える」という語呂合わせで、覚えられますよ♪笑

ちなみに私はコロラトゥーラ・ソプラノではございません…悪しからず!
この曲に関しては、楽しんで聴く側です。笑

恐ろしい高笑いのようなメロディーが、怒りのボルテージの限度を超えてしまった感じを表していて、とにかく圧倒されちゃいます!!


○この曲の背景について…
時は古代、場所はエジプト。
道に迷い、大きな蛇に襲われた王子・タミーノを救った「夜の女王」。
初めての方は、もうこの時点で、なんのこっちゃ!?と思うはずですよね。

この『魔笛』は、メルヘン・ファンタジー・スペクタクル・オペラとでも言いましょうか…
わけのわからない登場人物が出てきたり、ところどころ辻褄が合わない部分があったりします。
それは、モーツァルトが当時、秘密結社「フリーメイソン」の思想に心酔していたからだ、などという説がありますが…
細かいことはいいんです!!
子供に戻ったような純粋な心で、ありのままの「魔笛ワールド」を受け入れちゃいましょう。
素敵な音楽を楽しみましょう!ね!!

さて話を戻します…
夜の世界を統治する女王は、宿敵・ザラストロのもとに捕らわれている、一人娘のパミーナを救い出してほしいと、タミーノに魔法の笛を授けます。
うん、RPGみたいなスタートだ…

パミーナの絵姿を一目見るなり恋心を抱いたタミーノは、たまたま知り合った鳥刺しのパパゲーノとともに、パミーナ救出のため、ザラストロの神殿を目指すのです。
ええ、完全にRPGですな!
これ、絵姿が本人と全然違ったらどうするの?とか、いつも考えちゃいます。
今はフォトショップとか、いわゆる自撮りアプリなどというものもあるし、写真ですら信じられない時代ですからね…
旧知の仲でもないのに、絵姿を見ただけで命を懸ける戦いに赴くなんて!
もっと命大事にしなきゃダメでしょ…など、ついバカなことを思ってしまいます。

また話がずれてしまいました…

ところが実は、ザラストロは世界の秩序を守る偉大な神官!だったのです。
世界征服を企む夜の女王から、その娘ながら純粋な心をもつパミーナを、保護していたのでした。
その場で初めて顔を合わせるやいなや、一瞬で心惹かれあうタミーノとパミーナ。
このあたり、ね。ちょっと普通では考えられないようなシチュエーションですよね。
こういった“一目惚れ”というのも、オペラでは定番の要素でもあります。

そしてパミーナと結ばれるのにふさわしいかどうか、タミーノはザラストロが用意した試練を受けることになります。
敵かと思ってたら実は彼女の厳しいお父さんのような存在だったわけですね。

大好きなパミーナと一時的に離れ離れにされ、一人、寂しさに暮れるパミーナ。
そこに真の悪役、夜の女王がしびれを切らして娘の前に姿を現します。
そしてこの狂気に満ちた歌を歌うわけです。

あの憎いザラストロに死の苦しみを与えなさい!!!!
できなければ、もう勘当よ!!!!
…怖すぎ。笑
魔法の力のために自分で直接手を下せないからって、娘に始末させようとするなんて…
相当焦ってますね!

結局パミーナはそれを実行に移すことはしませんでした。
やっぱり良識のある子だったんですね。良かった!

その後、試練を乗り越えた若い二人は晴れて結ばれ、夜の女王一味はあっけなく片付けられ、世界に平和が戻りましたとさ!
なんだかあっけない感じがしますが、フィナーレで大勢が歌われる合唱を聴くと、なんだかスッキリしちゃう…というのは私だけ?
終わりよければすべてよし、というよりも、モーツァルトの音楽が持つ説得力が強いからではないかと、解釈しています。
やっぱりモーツァルトは天才ですね!!

ヴェルディ作曲:乾杯の歌(オペラ『椿姫』より)


以前よく、「いきなり!黄金伝説」の番組内で耳にした楽曲でした。

オペラで乾杯といえば、まずはこの曲!
乾杯の歌といえば、オペレッタ『こうもり』の方も有名ではありますが、重厚で華やかなこの曲はやはり人気があります。

よく、演奏会のアンコールなどでも歌われます。
私が先日出たコンサートでも、最後に出演者が勢揃いして、この曲のソロパートをそれぞれが分けて歌いました。
最後にはお客様も合唱に加わり、大盛り上がりでした。

普段でもついつい気分がいいときに、口ずさんでしまいます♪

このオペラも、国内において非常にポピュラーです。
全国各地で何度も上演されています。

実はこの『椿姫』というタイトルは、原作であるデュマ・フィスの小説『椿の花をつけた淑女』からとられたもの。
オペラの方の原題を直訳すると『道を踏み外した女』となります。
なるほど、これではイメージが湧きづらい気がしますね。
最初にこの邦題を使った人は偉いなぁ、と思いますよ!


○この曲の背景について…
18世紀初頭のパリにおける、高級娼婦のヴィオレッタと青年貴族アルフレードの悲恋の物語の冒頭で、歌われます。

病身であるにも関わらず、快気祝いと称して派手な夜会を開くヴィオレッタ。
刹那的で退廃的な生活を送っているのです。哀しいですね。
これも自分の死期を悟ったうえでの行動でしょう。

そこへ、以前から彼女へ想いを寄せるアルフレードが友人に誘われやってきます。
初めは軽くあしらわれてしまうアルフレードでしたが、乾杯のことばを述べるように促され、ギャラリーが注目する中、歌いだします。
そしてそこへヴィオレッタも言葉を重ね、二人は急接近するのでした。

愛の存在を信じない女が、一人の青年の真心によって、真実の愛に目覚める…
しかしそこに立ちふさがるのは、厳格なアルフレードの父親。
家族を心配するあまり、ついつい意固地になるんでしょうけど、世間の目は厳しいですからね。

そしてその壁を乗り越えたかと思いきや、すでにヴィオレッタの身体は不治の病に蝕まれ…
涙なしには見られない結末となっています。
現代人の心にも響く、重厚な人間ドラマです。

作品全体を通して、名曲ばかり!!
合唱の出番も多くありますし、バレエが登場する一幕もあります。
華麗なパリの裏社交界のパーティーシーンは非常に見応えアリです!
まさに“オペラ=総合芸術”という感想を得られる作品となっていますので、是非とも全編を通してご覧いただければと思います。

まとめ

☆オススメのオペラ名曲

プッチーニ作曲:誰も寝てはならぬ(オペラ『トゥーランドット』より)
ビゼー作曲:恋は野の鳥~ハバネラ~(オペラ『カルメン』より)
モーツァルト作曲:復讐の炎は地獄のように我が心に燃え(オペラ『魔笛』より)
ヴェルディ作曲:乾杯の歌(オペラ『椿姫』より)

なんとな~くオペラって気になる…と思ってこのページを開いてくださった、あなた!
きっと上記のうちで、ご存知の曲もあったのではないでしょうか?

今では海外の劇場公演の様子も、動画サイトの公式ページから観られるようになっています。便利な世の中になったものです。

細かい話は抜きにして、音楽ってやっぱり、楽しむものだと思います。
あ、これ好きかも!という演奏を探してみるのも、楽しいですよ!

では♪



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