運動会で流れていたクラシック曲を覚えていますか?その曲はどんな時に流れていましたか?

きっと多くの方が徒競走の時に「天国と地獄」が流れていたと答えて下さるでしょう。

●天国と地獄「序曲第3部」


運動会の徒競走では「天国と地獄」以外にも、他にもクラシックが流れていたのではないかなと思います。
 
●クシコスポスト

●ギャロップ

●トランペット吹きの休日

●剣の舞

全部何となく聴いたことがある曲だったのではないでしょうか?運動会に使うためのアルバムというのが発売されており、これらの曲がよく収録されているようです。



どちらのアルバムにもクラシック曲だけではなく、いろんなジャンルの曲が入っています。また徒競走だけでなく入退場時の曲なども収録されています。

最近では流行曲を流すこともあるかと思いますが、このようなアルバムに徒競走のBGMとして「天国と地獄」や「クシコスポスト」が収録されていることから現在でも運動会の定番曲として使われているのではないかなと思います。

今回は「天国と地獄」と同じくらいよく使われている「クシコスポスト」について書いていきたいと思います。

作曲者ネッケについて

「クシコスポスト」を作曲したのはヘルマン・ネッケです。ネッケは1850年に生まれ1912年に亡くなったドイツ出身の作曲家です。元々は音楽教師だったようですが、その後デュ―レンという市の音楽監督まで務めたそうです。

ピアノ小品やソナチネなどの作品を残しているようです。300曲くらい作曲していたのではないかと言われていますが、現在知られているのは「クシコスポスト」だけです。

ネッケについては音楽辞典などを見てもこのくらいの情報しか載っておらず、音楽史上で有名な作曲家とは言えません。

彼が活躍していたのはロマン派後期からその後の近現代に入る過渡期の頃です。

ロマン派後期ではそれまでに培ってきたことをさらに拡大させて調性音楽はこれ以上ない程充実したものになりました。その後は調性にとらわれない作品など、全く新しいものにしようとそれぞれの作曲家が自国で挑戦していきました。

このロマン派後期頃に活躍していた作曲家は晩年のリスト(1811-1886)やブラームス(1833-1897)、ワーグナー(1813-1883)、マーラー(1860-1911)などです。

この時代にはピアノは貴族だけが弾くというものではなくなっており、ピアノ人口はかなり多くなっていました。楽器の性能が良くなったことや作曲家と演奏家が分業したことなどによって難易度の高い作品が多く書かれるようになりました。

そうするとリストやブラームスなどの一流作曲家の曲は難しくて弾けないという人達もたくさん出てきてしまいます。ネッケなどの作曲家はその人達でも弾ける難易度の曲を作曲したり、一流作曲家の曲を編曲したりしました。

現在でも有名な曲を初心者、中級者用に編曲して下さっている方がたくさんいらっしゃいますよね。

ネッケはその1人だったということです。

300曲近い曲を残しているということはその当時、彼はとても売れっ子の作曲家だったのかもしれません。これからネッケについて研究が進み、彼自身について、作品について見なおされるということがあるといいですね。

クシコスポストって何?

クシコスポスト(Csikos Post)とはどういう意味なのでしょう?

クシコスはハンガリー語で「馬に乗る人」という意味なんだそうです。ポストはドイツ語で「郵便」を表すそうなので「郵便馬車」と訳されています。

Csikosはクシコスと読むのではなく正しい読み方はチコーシュなんだそうです。チコーシュを調べてみるとただ馬に乗る人というだけではないようです。

ハンガリー人の祖先は騎馬遊牧民マジャル人だったのではないかと言われており、現在でも騎馬民族の伝統を守っている人達がいるそうです。

チコーシュとは馬の世話や調教をする人達のことで、彼らは普通に馬に乗るだけでなく、2頭の馬の上に立って乗りながら同時に3頭の馬を走らせることもできるようです。(もっと多くの馬を操る場合もあるようです。)馬を操るプロということですね。

https://youtu.be/Jc5-rHrOk7A?t=110
(1:50から再生されます)

チコーシュをこのような意味でつけたのか、それともただ郵便物を輸送している馬車をイメージしていたのかというのはよくわかりません。

この曲はリストの「ハンガリー狂詩曲第2番」の終わりの部分をまねて作曲されています。

●リスト:ハンガリー狂詩曲第2番
(6:40から再生されます)
●ネッケ:クシコスポスト
(0:49から再生されます)

リストはハンガリー出身の作曲家で自国の音楽などを取り入れて作曲したハンガリー狂詩曲を19曲作曲しています。リストよりもさらによく知られているハンガリーの曲と言えばブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」ですよね。


ハンガリーの音楽は多くの作曲家に受け入れられており、リストやブラームスだけでなくそれ以前のハイドンやシューベルトなどもハンガリー風の曲を書いています。

ドイツ人のネッケがどうしてハンガリー語のCsikosをタイトルに使ったのかはよくわかりませんが、
彼が活躍していた頃にはハンガリーの音楽はかなり受け入れられていたと思われます。音楽だけでなく言葉や文化も多少は広まっていたことでしょう。

日常的に使うような単語となっていたのか、それともリストのハンガリー狂詩曲をまねた部分があるので、ハンガリー語を使ったのか…

真相はわかりません。

難易度と弾き方



この曲の難易度は全音ピアノピースではAの初級となっています。たしかに難曲ではありませんし、中級にする程の曲でもないのですが、小さなお子さんやピアノを習ってすぐの大人の方達が弾ける曲ではありません。

音を減らすなどの編曲であれば別ですが、オクターブがたくさん出てくるので本当に始めたばかりの初心者が弾くというのはなかなか難しいと思います。

この曲を弾くためにはオクターブがちゃんと届くということが絶対条件です。オクターブが無理なく弾けるのであればこの曲は難しくありません。

この曲のポイントはまずオクターブの弾き方をマスターし、外さないように弾くことです。

オクターブを弾き慣れていないと力が入ってしまい、すぐに疲れてしまいます。曲を弾く前にオクターブに慣れることが大事です。

弾き方としては力で押さえつけるのではなく、指先をよく使って掴みとるようなイメージで弾くようにすると良いと思います。

★オクターブに慣れるための練習★

①ゆっくり片手ずつドレミファソラシドと音階で上がったり下がったりする練習をする。
②ゆっくり片手ずつ半音で上がったり下がったりする練習をする。
③次に①②を両手で弾いてみる。できたらテンポアップする。
④「かえるのうた」など簡単な歌のメロディーを全部オクターブで弾いてみる。

このような練習をしてオクターブを弾くことにまずは慣れましょう。

実際に曲を弾いてみるとわかると思いますが、同じオクターブでも弾きやすいものとミスしてしまうものが出てくると思います。

ミスをしやすい部分①~跳躍しているオクターブ~

オクターブを外しやすいのはの部分ですので、ゆっくり練習して確実に弾けるように感覚をつかみましょう。

ネッケ「「クシコス・ポスト」ホ短調」ピアノ楽譜1 (動画0:13~)

ネッケ「「クシコス・ポスト」ホ短調」ピアノ楽譜2 (動画0:30~)

ミスをしやすい部分②

オクターブではありませんがこちらも外しやすいので要注意です。

ネッケ「「クシコス・ポスト」ホ短調」ピアノ楽譜3 (動画0:52~)

この部分は重音(ラとファ)と次の音(ラ)を一緒に弾いて和音で練習をしたり、重音の部分だけを取り出して弾く練習をしたりすると外さなくなります。

地味に弾きにくい部分

ネッケ「「クシコス・ポスト」ホ短調」ピアノ楽譜4 (動画0:08~)

上向きになっている4分音符をちゃんとのばして弾くのが地味に弾きにくいです。手首を固定して指だけで弾こうと思うと弾きづらい部分だと思います。

この部分は4分音符でのばして弾いている指を軸にして手首の動きで助けてもらうと弾きやすくなります。

この曲はオクターブの弾き方がマスター出来れば難しい曲ではないので、オクターブの練習だと思って挑戦してみるのもいいかもしれませんね。

まとめ

◆クシコスはハンガリー語で「馬に乗る人」という意味
◆クスコスポストとは郵便馬車のこと
◆オクターブの練習をする必要がある



「クシコスポスト」の無料楽譜
  • free-scores.com(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。最近整形されたパブリックドメインの楽譜です。

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