スカー!!!っと太陽の光がふりそそぐ!夏です!暑いゼ!そして夏休み!それなのに吹奏楽部スチューデントの皆さんは休みと言いながらもコンクールに向けた練習に学校へ通学したことでしょう。お弁当持参で!!そしてほとんどの部員が思ったことでしょう、「夏休みって何だっけ?」と。
吹奏楽コンクール支部大会を控えている皆さんは体調管理に気をつけて、来るべき本番に備えましょう。そして夏休みもあと少し!残りの休みは外に出て思いっきり夏を満喫しましょう!
ん?暑くて外に出たくない?ならば!思い切って地球を飛び出して、他の惑星に涼みに行きましょう!太陽は暑すぎるからやめとくとして、太陽系には地球の他にも7つも星がありますよ。よりどりみどり!
というわけで今回は吹奏楽でも人気のあるイギリスの作曲者グスタフ・ホルスト(Gustav Holst/1874-1934)の代表作、組曲「惑星(The Planets)」。オーケストラのトランペット席から!宇宙からご紹介しましょう!水金地火木土天海・・・
■ 目次
- 1 吹奏楽といえばグスタフ・ホルスト!
- 2 作曲者もビックリの超大ヒット曲!
- 3 アルトリコーダーで宇宙が広がる!
- 4 組曲「惑星」とは?オーケストラ奏者が楽譜付きで解説!
- 4.1 火星「戦争をもたらすもの」(Mars, the Bringer of War)(0:49~)
- 4.2 金星「平和をもたらすもの」(Venus, the Bringer of Peace)(8:40~)
- 4.3 水星「翼のある使者」(Mercury, the Winged Messenger)(16:28~)
- 4.4 木星「快楽をもたらすもの」(Jupiter, the Bringer of Jollity)(20:34~)
- 4.5 土星「老いをもたらすもの」(Saturn, the Bringer of Old Age)(28:59~)
- 4.6 天王星「魔術師」(Uranus, the Magician)(38:22~)
- 4.7 海王星「神秘主義者」(Neptune, the Mystic)(44:24~)
- 4.8 ちょっと中断して・・・ニホンの曲を書きマス!
- 4.9 コリン・マシューズ作曲「冥王星」
- 5 名盤紹介!
- 6 アインシュタインはマジで凄い人だった!ブラックホールと宇宙はここまで解明された!
- 7 やっぱり地球が一番!
吹奏楽といえばグスタフ・ホルスト!
吹奏楽部で演奏した経験がある人はホルストの名を知っている人は多いと思います。「吹奏楽のための組曲」が有名ですね。第1、第2組曲の二曲がありますが、特に「第1組曲」の方が演奏される事が多いです。ご存知の方も多いと思いますが、第3楽章のマーチはまさにコルネット殺しの曲(–;)ちなみに私はこの曲を練習しすぎて唇が潰れて一週間ほど楽器が吹けなくなってしまいました・・
しかし、この曲には「惑星」を演奏する上で必要な演奏ポイントなどがあります。ブリティッシュスタイルの金管奏法とは・・・?この曲についてはまたいつかご紹介しましょう。他にもホルストは「ハマースミス」や「ムーアサイド組曲」など吹奏楽のための曲を残しています。
作曲者もビックリの超大ヒット曲!
「ホルスト」って誰?牛の仲間?とか「惑星」の曲って言ったらジェダイとかヨーダとか、モビルスーツが出でくる映画の音楽でしょう?まだこの曲を聴いたことがない、ホルスタインは知ってるけどホルストは知らない、という方もこの「ジュピター」のメロディはきっとどこかで聴いたことがあると思います。
本当に!この曲が生み出されて約100年、テレビCMを始め様々な場面でこの旋律が使用されています。
ロックバンドやスポーツワールドカップのテーマソング、イギリス皇太子妃の追悼演奏、ゲーム音楽、そして日本では本田美奈子さん、平原綾香さんがカバーして歌ったものが有名ですね。
なんといっても作曲者ホルスト自身がこの旋律を合唱曲に編曲しています。これはイギリスで毎年11月11日に行われる戦没者追悼行事に使用されるなど、イギリスの人々にとっても代表的な名曲となっています。
この旋律の魅力はイギリスだけに留まらず、世界に広がり続けているのかもしれません。きっと作曲者自身も100年経っても色あせることのない大ヒット曲となるとは思わなかったのではないでしょうか。
アルトリコーダーで宇宙が広がる!
皆さんは中学校(または小学高学年)になったとき、音楽の授業でアルトリコーダーを吹いたのではないでしょうか?その時におそらくこの「ジュピター」の旋律を吹いた人もいると思います。私はこの時に初めてホルストのこの曲に触れたのですが、「なんて気持ち悪い旋律なんだろう・・・」と思ったものです。全くこの曲を知らずただ何となく家で吹いていると悲しげな印象しかありません。演歌かな?
しかし!次の日の学校。授業で先生がピアノ伴奏付きで、クラスのみんなでこの旋律を吹いた時!!
「音が!宇宙が広がるゥ!」
「スターウォーズもガンダムも真っ青な壮大な音楽ゥ!」
「ていうか、楽譜をよく見たら♯一つ付け忘れて吹いてたから、そりゃへんな旋律になるわ〜」
と感動したものです。伴奏の和音が加わっただけでこれほどまでに音が!音楽が広がっていくのです。音楽とは音の組み合わせ、旋律次第で宇宙をも再現できるのか!と感動したものです。いつの日かこの曲を原曲のオーケストラで演奏してみたい!そしてその後「吹奏楽の為の組曲」を乗り越え、ついにこの大曲に挑む日が来たのでした。
組曲「惑星」とは?オーケストラ奏者が楽譜付きで解説!
シンフォニアガリシアによる演奏。オルガンがない(?)けれど完璧な演奏!!このあとの名盤紹介いらないかも・・・さて、この組曲「惑星」、今からおよそ100年前の1914〜16年にかけて作曲されました。地球と太陽と冥王星を除く太陽系の7つの惑星を曲としたものですが、内容的には惑星そのものを音楽にしたものではなく、各惑星に名付けられた占星術やギリシャ、ローマ神話の神様にちなんだものとなっています。
例えば火星はマース、戦争の神様。木星はジュピター、ギリシャ神話の最高神ゼウスの事です。このようにそれぞれの惑星に名付けられた神様を題材にしています。しかしながら曲そのものは明らかに宇宙を感じさせるスケールの大きい音楽なのです。
この曲を全曲演奏するとなると、フルオーケストラに加えてオルガンや合唱隊なども必要となり、かなり大掛かりなプログラムとなります。オーケストレーションも最大限に活用した、非常に優れたものとなっており、数多くの打楽器を始め、弦楽器の多彩な奏法、きらびやかな木管楽器、そして金管はブリティッシュバンドを思わせる巧みなものとなっています。
7曲それぞれが内容の濃い名曲ぞろい。現在では全曲から抜粋して演奏されたり、テノールチューバの代わりにユーフォニアムで演奏したりと多少変更して演奏されますが、ホルスト自身は抜粋して演奏することを禁止するなど全曲を通して演奏することに強くこだわっていたようです。
さて!夏といえば天体観測です(強引に)。夏休みの宿題、自由研究にも持ってこいですね!暑い日が続く地球を離れて、それぞれの惑星へと降り立って涼しいひと時も過ごしてみましょう!それでは!地球を飛び出してまずは身近な星、火星へと涼みに行きましょう!
(各惑星の温度などに多少の誤差があるかもしれませんがご了承ください)
火星「戦争をもたらすもの」(Mars, the Bringer of War)(0:49~)
一曲目から宇宙戦争を思わせる、SF映画音楽も顔負けの迫力ある名曲です。闘いの神、マースがテーマです。右の記号は占星術やタロット占いなどで使われる惑星の記号です。火星は男を表しています。
5/4拍子という少し特殊なリズムと深い低音から始まります(0:49~)。弦楽器のコルレーニョという、弓の木の部分で弦を叩く奏法。これはベルリオーズの「幻想交響曲」でも使用される奏法で、この曲では大軍隊が行進する様子が浮かんできます。
この曲の珍しい点として、テノールチューバのソロがあります(3:13~)。実際は吹奏楽で使われるユーフォニアムで演奏されることが多いです。ユーフォ吹きにとって重要なソロレパートリーです。
(3:48~)
うねるような低音の旋律に、トランペットの三連符ファンファーレが重なり次第にクレシェンドしていきます(4:37~)。ついにフルオーケストラの凄まじいユニゾンのリズム!(5:22~)
そして!トロンボーンの熱い旋律!!(5:29~)ホルスト自身は元々はトロンボーン奏者でしたので、まさにトロンボーン奏者にとってオイシイ所です。まるで地平線から巨大な火星がゆっくりと昇ってくるような、そんな光景が目に浮かびます。スペクタクルすぎるぜ!
この間、トランペットはひたすらリズムを大音量で吹きます。ソソソソーソーソーソソソー!・・・かなりキツイです!
そしてオルガンのスーパー重低音!(7:32~)実演では低音楽器とも相まって足元からズズゥゥーン!!と響きます。
最後は不協和音で5拍子のリズムが叩きつけるように分割され、強烈な終結を迎えます(7:55~)。もうこの一曲目から圧倒的なオーケストラの饗宴です!
太陽から数えて4番目の赤い惑星。大きさは地球の半分くらい。生命も存在するのでは?と昔から囁かれている惑星です。
火星の平均気温は−43℃、1日も約24時間で地球とほぼ同じ。四季もあり、夏の時期は20℃まで上がるので、まあ、地球に比べればだいぶ涼しいですね・・・(・_・;でもとても涼めません!もう少し太陽側の、暖かい惑星に行ってみましょう。
いつの日かこの火星に移住できる日が来るかもしれませんね。じじじょう・・・じょうじ。
金星「平和をもたらすもの」(Venus, the Bringer of Peace)(8:40~)
一曲目とは打って変わって、ホルンの美しいソロから始まります(8:40~)。本当に、夕方の空に一際明るく輝く星を見上げる雰囲気。平和の神、美の女神ヴィーナスがテーマです。惑星記号は女性。
(10:30)からのヴァイオリンソロが魅力的です。(14:20)からチェロのソロ、フルートアンサンブルに続いて、ハープとチェレスタが織りなしてゆくアンサンブルは絶品!!本当に夜空の星星を見上げているような感じになります。
金星は皆さんはきっと日頃から何度も見ていると思います。晴れた日の夕方、月のそばに非常に明るく輝く星が見えますね。一番星というやつです。あれが金星です。とてもきれいですね。
そんな美しい金星、実は地球に非常に近い惑星なのです。大きさはほぼ同じ。太陽の周りを周るコース、つまり軌道も地球と近いのです。地球の双子の星とも言われます。最近の研究ではかつて金星にも水があったのではないかと言われています。ただし1日の長さが地球時間でいうと、なんと!243日間になります。半年以上かけて1日となるのです。マジか!
また自転の回転方向が地球と逆に回っています。もし金星に住んだならば、太陽は西から東に沈みます。バカボンかよ!しかも温度が桁違い!平均気温は500℃になります。星全体は酸性の厚い雲で覆われていて、大気は二酸化炭素がほとんど。ちょうど地球でいう温室効果ガスのようになっています。温暖化が進み、環境破壊され尽くした未来の地球の姿なのかもしれませんね。
そう!金星は実は太陽系で一番熱い星なのです!
「地球以外で涼もうって言ったじゃないすかー!やだー!」
これはイカン!というわけでお隣の水星へ行きましょう!水だけにきっと涼しいに違いありません!
水星「翼のある使者」(Mercury, the Winged Messenger)(16:28~)
快活なリズムの技巧的な曲。きらめくオーケストレーションが特徴的です(16:28~)。マーキュリーとはギリシャ神話のヘルメスの事。翼の生えた帽子をかぶったゼウスの使いの神様です。
4分程の小曲ですが、まさに近代オーケストラの技術を駆使した名曲です。全7曲中最も色彩的でテクニカルな曲でしょう。チェレスタの聴かせどころでもあります。この感じ・・・ニュータイプか!私は個人的にこの曲は、他の作曲家では決して聴くことができない個性と斬新さがある名曲だと思います。まさにニュータイプの音楽と言えるでしょう・・・
ニュータイプの音楽も聴きたいという、ワタクシを始めガンダム好きなオジサンたちにはこちらもオススメ!
水星・・・「水」の星というだけにきっと涼しい星に違いありません!大きさは太陽系の中で最も小さい星で、1日の長さは地球でいう59日間、つまり2ヶ月で1日。大気はないので太陽の光がモロに当たり、日焼けするにはもってこいです。しかし日光の当たる昼の最高気温は427℃。日焼け止め塗るってレベルじゃねーぞ!!夜は−163℃・・・ってダメじゃん!!っていうかここ、太陽に一番近い星だったー!!
やっぱりもっと太陽から離れましょう。
木星「快楽をもたらすもの」(Jupiter, the Bringer of Jollity)(20:34~)
全曲の中で最も有名な曲で、惑星の大きさも太陽系最大です。テーマも最高神ジュピター。
7分ほどの曲ですが、数ある大オーケストラ曲の中でも最高の名曲の一つだと断言できます。オーケストレーション、リズムの多様さ、アンサンブルの楽しさ、聴きやすさ、中間部旋律の多大な人気、堂々たる終結部…どれをとっても最高神「ジュピター」の名に恥じない大曲です!
疾走するかのような弦楽器(20:34~)、これが非常にカッコイイ!!間髪入れず6本のホルンの雄大な旋律(20:40~)。ここのトランペットソロが結構緊張します(21:09~)!ここでゲネラルパウゼ(全楽器休み、21:34)。ここまでの楽器の移り変わり、オーケストレーションが逸品です。
ここからがさらなる音の大饗宴(21:36~)!ホルンから木管、弦楽器、トランペットと受け継がれていきます。
そしてさらに雄大なテンポで、巧みな3拍子のアンサンブルが連続します。ここのトランペットとトロンボーンのアンサンブルが絶品です!(22:55~)
おまたせしました!これを聴きに来た!(23:44~)多くを語る必要はないでしょう。とても感動的な歌!世界で愛される旋律といえます。弦楽器とホルンを中心に雄大に歌われます。金管楽器は伴奏が主ですが、途中にトランペットソロがあります(24:20~)。アルトリコーダーで吹いた時とは違う感動が!
曲は再びアレグロへ(25:47~)。さらに白熱していきます。
そして突如、広大な宇宙空間へワープしたかのような、浮遊感ある曲調(28:07~)!ハープ、木管、弦楽器の華麗なグリッサンドに低音楽器が中間部の旋律を重々しく奏します。さらに遥か遠くから響いてくるようなトランペット!!この部分のオーケストレーションは見事です!!
そして!宇宙の彼方へ光速の速さで疾走するかのように駆け出し(28:27~)、圧倒的なオーケストラヒットでこの宇宙的な大曲を締めくくります。カッコよすぎるゾ!この曲とモーツァルトの最後の交響曲こそ「ジュピター」の名にふさわしいでしょう!
1977年に打ち上げられた2機の惑星探査機ボイジャーにより、現在木星より先の惑星についての詳細がかなりのところまで解明されています。
♫今日〜人類が初めて〜木星についたよオ~♫
というまでもなく木星については今後多くの研究結果が次々発表されるでしょう!
地球から光の速さで40分(!)の位置にあるこの最大の惑星、実はほとんどがガスで覆われていて、具体的に地表がどうなっているか、そもそも地面があるかどうか、未だ解明されていないのです。おそらく液体金属でできているのではないかとも言われています。
木星の雲の上の温度は約-150℃。太陽からの距離から考えるとかなり暖かく、木星内部からも太陽の様に熱を発していると考えられています。木星のガスをくぐって行くと、なんと途中におよそ気温20℃の領域があるようです!これは涼めるゾ!
ただし強風も吹いています・・・秒速180~300メートルの風が!自転が地球の2倍速いので、風も吹きまくります。
しかも雷も大量発生しています。その威力は一発で核ミサイル数発分に相当します。リアルなユピテルの雷!さらにその中心に向かって降りて行くと温度は約3万5千℃とされています。こりゃダメだ・・・
木星の質量もとてつもなく大きく、地球で言う月に当たる衛星が79個もあります。その中の衛星の一つ、エウロパは表面が氷で覆われており、その下には大量の水があります。大気も酸素があり、もしかすると生命が存在する可能性があると言われています。今後この星の様々な調査が計画されており、将来地球外生命体が発見されるかもしれません!その時はこの星に涼みに来ましょう!
土星「老いをもたらすもの」(Saturn, the Bringer of Old Age)(28:59~)
太陽系の中でも木星に次いで大きな惑星です。曲も木星同様、素晴らしいものとなっています。大地の豊穣の神であり、イタリアの古くから祀られる神「サトゥルヌス」がテーマです。
この曲も木星と同じく規模の大きな曲となっています。しかし木星とは対照的に、深く沈鬱で神秘的な曲想です。
巷で言われているように作曲者自身はこの曲を最も好んでいました。確かにこの土星には他にはない、無限の宇宙の奥深さを思わせる箇所がところどころにあります。この組曲「惑星」自体が占星術をきっかけに作られたように、ホルスト自身神秘的な東洋思想などに惹かれていたようです。
曲は非常にシンプルな構成で、神秘的な和音やオーケストレーションが大きな魅力となっています。重く引きずるような導入部を経て、トロンボーンの主題(30:48~)。ここから楽器が次々に加わっていきクライマックスを築き上げます。
(33:15)からトランペットと低音楽器、ティンパニが交互にクライマックスへと昇りつめて行きます。そして!森羅万象を思わせるざわめき、遠くから聞こえてくるファンファーレ(34:10)。鐘の響き・・・
そして無限に広がる静寂の宇宙が広がります(35:00~)。全曲の中でも最も美しい所です。ハープがとても神秘的。(35:42)からさらに木管楽器が加わります。ざわめくようなハープ。感動的な弦楽器の歌(36:50~)。最後はどこまでも永遠に広がっていくフルートの非常に美しいオスティナート(37:27~)。作曲者が最もこの曲を好んだのも頷けます。
土星といえば星の周りにある大きな輪が特徴ですね。これはほぼすべて氷の粒です。小さなものでホコリほどのものから、数メートルほどのものまで、氷の粒が土星の周りを回ってフラフープのような輪に見えるのです。さてこの星は涼めるでしょうか?嫌な予感しかしませんが・・・
こちらの星もほとんどがガスで覆われていて、地表があるかどうか解明されていません。気温は約−180℃、北極では六角形の不思議な台風が吹き荒れています。この台風の大きさは地球の直径の2倍!風速秒速150メートル!
よし!次行ってみよう!
土星の有名な衛星タイタンも、地球ような海や川などの水が存在しており、地球が誕生した時の姿をしているとされています。ただしその水はメタンの水ですが・・・それでももしかすると生命が存在している可能性も・・・
天王星「魔術師」(Uranus, the Magician)(38:22~)
太陽系で3番目に大きい星、天王星。太陽から数えて土星までは古代より存在が知られていましたが、天王星が確認されたのは1781年、比較的最近発見されたなのです。テーマは天空の神ウラノス。
この曲から近現代音楽のような複雑な和音やリズムの音楽となります。突然の金管コラール(38:22)、ティンパニの強打!どこか水星を思わせるリズミカルな曲ですが、分厚いオーケストレーションです。不思議な行進曲(39:46~)。ここでもホルンが熱い!今度はチューバが活躍です(41:01~)。絶妙なタンバリンのテクニック(41:30)!そして!全合奏で盛大に行進です(42:02~)、マーラーの交響曲みたいだ!
静まり返ったかと思うとまたクライマックスが(43:24)!!こんどは現代音楽風な不協和音。まさに天王星のように大きく、そして奇妙な音楽です。
天王星は太陽系の中でも変わった惑星です。まず星自体が真横に倒れた状態で太陽の周りを回っているのです。氷と水がありますが、大気圧が桁違いに高く、ダイヤモンドの雨が降り注いでいると言われています。採取できたらもうウハウハですね!
気温は−224℃、大気成分は不明。公転周期、天王星の1年は地球でいうと84年間に相当します。極地では昼は42年、夜は42年。人間が天王星に住むと平均寿命は1歳になります・・・
・・・ダメだコリャー次行ってみよー
海王星「神秘主義者」(Neptune, the Mystic)(44:24~)
ここまでくるともう本当に遠くまで来てしまった感じがします。もう戻れない・・・人知を超えた神秘の星、現在太陽系の惑星では最も外側を公転している惑星です。テーマは海の主神で有名なネプチューン。
この曲では歌詞のない合唱隊も加わります。ドビュッシーの「夜想曲」やラヴェルの「ダフニスとクロエ」を思わせますが、この曲では舞台上で歌うのではなくバンダ、つまり舞台裏で遠くから響いてくるように歌われます。チェレスタ、ハープの神秘的な音は本当に「2001年宇宙の旅」のようなSF映画を思わせます。
少しわかりにくいですが(48:40)辺り、舞台裏から突如合唱が聞こえてきます。舞台上で聞くと、この合唱が聞こえてきた瞬間ゾクゾクッときます。舞台の下手側(客席から見て左手)のドアは開いていて、そこから聞こえてくるのです。ちょっとコワイ・・・
この最後の曲、クラシック音楽では珍しいフェイドアウトで曲を締めくくります。最後は合唱のみ同じ小節を繰り返して、次第に次第に宇宙の彼方へ消えゆくように静かに消えていきます。どこまでも広がる宇宙の彼方へと消えていくように・・・
海王星!海だ、夏だ!星も青いからきっと地球と同じ水の星だ!・・・いや、残念ながらこの青く見えるのはメタンによるもの。気温は−218℃!ここも皆凍りついています。やはりここも時速2000キロの風が吹き荒れています。1日は地球でいう16時間、公転は165年!一年が親子三代か!
次の冥王sおっと・・・この先に惑星はもうありません・・・(ヤツのことは忘れろ・・)
この先にあるのは無限に広がる宇宙。太陽系に最も近い隣の星はプロキシマケンタウリと呼ばれる星系です。ここに地球にそっくりな環境の星があるのでは?と見られています。そこまでいくには光の速さで進めば4.2年で着きます・・・距離感がよくわからない?
秒速17キロで進む惑星探査機ボイジャーは40年かけて太陽系の外まで来ることができました。このままボイジャーがお隣のプロキシマケンタウリまでいくとすると・・・約7万年かかるそうです・・・ああ・・・
さあ!もう地球に帰りましょう!ここから地球まで、光の速さで4時間です。良い旅を・・・
ちょっと中断して・・・ニホンの曲を書きマス!
さて、ホルストがこの組曲「惑星」を作曲している時、ある日本の舞踏家から作曲の依頼を受けました。あまり有名な曲ではありませんが、この「惑星」の作曲を一旦中断してこの日本組曲が作曲されたのです。10分ほどの吹奏楽のための小曲ですが、日本の民謡などをふんだんに取り入れた、なかなかの良曲となっています。ホルストは「惑星」以外にもインド哲学に基づいた曲「ヴェニモラ」など、東洋に関連した曲も残しているのです。もっと知られてもいい名曲がたくさんあります。
コリン・マシューズ作曲「冥王星」
冥王星「再生するもの」(Pluto, the Renewer)
さて、ホルストが「惑星」を作曲している間はまだ「冥王星」は発見されていませんでした。冥王星が発見されたのは1930年。ホルストは早速この第8番惑星の作曲に取り掛かったのでした。しかし完成させることなくホルストは亡くなってしまいます。
その後、指揮者ケント・ナガノの依頼により、1946年生まれのイギリスの作曲家コリン・マシューズによって冥王星「再生するもの」が作曲されたのです。「海王星」よりさらに現代音楽風の曲となっています。
ただしこれはあくまでもマシューズの曲でありホルストの曲ではないので、まあ別の音楽として聴くのが正しいかもしれません。マシューズはデリック・クックと共にマーラーの交響曲第10番の補完に携わった作曲家としても有名です。
ただ、冥王星は2006年に惑星ではない、とされることになりました。だって・・・月より小さいし〜同じくらいの大きさの星が1000個以上見つかっちゃったし〜しかももっと大きいエリスっていう星見つけちゃったし〜
準惑星に降格となった一番の大きな理由は、その大きさでしょう。なにせ地球の衛星である月より小さいのですから・・・でも、もしホルストが冥王星を完成させていたら、どうなっていたのでしょう?もしかすると準惑星にならずにレギュラーを維持していたかも?
「冥王星」付きの名盤を2点ご紹介しましょう!
サイモン・ラトル/ベルリンフィル
このCDの解説書はマシューズが書いています。なかなか面白いことが書かれています。
マーク・エルダー/ハレ管弦楽団
こちらは「木星」が非常に素晴らしい演奏です。
名盤紹介!
現在、CDなどで聴くことのできる演奏はどれも素晴らしいものばかり。その中でも特に素晴らしい演奏をご紹介!シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団
特に火星の金管が素晴らしい演奏です。動画(5:29~)のトロンボーンの音の立ち上がりの明確さ!やっぱりトロンボーンはこうでなくちゃ!と思わせる素晴らしいアンサンブルです。また、オルガンの音が明確に聞こえてくるのも特徴的です。
その他の曲も荒くれない、しかし力強い安心して聴ける盤です。
サー・ゲオルグ・ショルティ/ロンドンフィル
ショルティらしいバリバリの演奏。火星のトランペット(5:22~)がかなり頑張っていて聴いていて楽しくなってきます。全体的に重々しくない軽快なテンポで、作曲者が意図したものに近いのかもしれません。
この演奏で特に注目すべき箇所は土星の最後、フルートのオスティナートの綺麗さです(37:27~)。これほどに綺麗な音は他の盤では聴けないでしょう。これもショルティらしい表現です。
ジョン・エリオット・ガーディナー/フィルハーモニア管弦楽団
あるレコード店でこの盤が流れていました。木星の締めの最後のオーケストラヒットの音、そのただ一音があまりにも素晴らしくすぐに店員さんに「今流れているCD下さい!」と即購入した盤です。
古楽器のスペシャリスト、ガーディナーらしく全体的に和音などの音のバランスが絶妙です。ちなみにこの「惑星」の初演の際、大編成オーケストラだけに多額の費用がかかりますが、その資金を提供したのがガーディナーの大伯父さんだったのです。
ガーディナーはこの曲にゆかりのある人物でもあったのですね。
ウラディーミル・ユロフスキ/ロンドンフィル
新しい録音で、非常に素晴らしい演奏です。こちらも軽快なテンポながら音のバランスなど、何度聴いても飽きの来ない名盤です。
そして「木星」冒頭の弦楽器の軽快さ!これほどスピーディーな演奏は他では聴けません。こんなバランスの良い音で軽快に演奏されるともうたまりません!またショルティ同様、「土星」のラストが素晴らしい!
ジェイムス・レヴァイン/シカゴ交響楽団
もう、シカゴ交響楽団といえば聴く前からわかりきったこと。金管がバリバリです。これでもか!ってくらいに金管が目一杯吹いています。このパンチ力はどうだ!
そして録音がビックリするほど良く、音が鮮明に聴こえてきます。特にそれは二曲目の「金星」で活かされています。またユロフスキのように「木星」冒頭の弦楽器が軽快で、聴いていてワクワクしてくる演奏です。
帝王vs初演者
この「惑星」は数あるオーケストラ曲の中でもオーケストラの機能をフルに活用した名曲です。初演後間も無くはあまり人気のなかった曲ですが、2人の指揮者によって現在のような人気を獲得しました。この二つの名盤、現在でも色褪せることはない素晴らしい演奏です。
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーンフィル
この曲のブームの火付け役となった名盤です。現在では新しい録音と、オーケストラの技術の進歩により、もっと優れた盤があるからこの盤の価値は・・・
などということは決してありません!!
多くのクラシック音楽を世に広めたと言っても過言ではない指揮者カラヤン。ベルリンフィルとのより新しい録音もありますが、私はこのブームのきっかけとなったウィーンフィルの演奏をオススメします。なぜならこの盤でしか聴けない、最新の演奏でもやっていない大胆な表現が聴けるからです。
まず音色。この当時のウィーンフィルは本当に大胆です。演奏失敗になる寸前まで目一杯楽器を鳴らしています。この力強さは中々聴くことはできません。また、テノールチューバの音色が最もよく聴けるのもこの盤ならでは。「水星」の巧みさは他の盤では聴くことができないものがあります。
他にも「木星」の思い切った表現や、「水星」の彫りの深い音、「土星」の埋もれてしまいがちなハープの音色(35:42)などなど。この盤でしか聴けない魅力がたくさんあります。ヒットするキッカケにはそれなりの理由がある!ということですね。
サー・エイドリアン・ボールト/ロンドンフィル
まさにこの曲の初演者です。ボールトはイギリスの指揮者で、ブラームスなどのドイツ音楽を堅実に作り上げる指揮者だと思います。それがこの曲によく活かされています。この曲の白眉「木星」の堂々たる演奏は現在の盤でも聴けない魅力があります。
この曲、「惑星」は近代オーケストラの技術力を遺憾なく発揮した大曲ですが、音楽や楽譜自体はブリティッシュ金管バンドのようにシンプルなものとなっています。スペクタクルな曲調も魅力ですがそれよりも、堅実な構成をシンプルに音にすること、これがこの曲の最大の魅力でもあります。ボールトの音楽作りはまさにこの曲に合ったものだと思います。
有名な話で、この盤が5回目の録音だということですが、それよりも7つの曲どれを聴いても、ピアニッシモの所でも各楽器が鮮明に聴こえてくる絶妙なバランス(これは録音の良さのせいだけではない)、骨太な安定感はカラヤン同様、現在まで聴くことのできる星数多の演奏でも聴くことはできません。
アインシュタインはマジで凄い人だった!ブラックホールと宇宙はここまで解明された!
2019年4月ついこの間のことですが、人類が初めてブラックホールの姿を撮影することに成功したと発表されました。これまで光ですら飲み込んでしまうブラックホールを映像化することは非常に難しく、想像のイラストで表現するしかありませんでした。
しかしこのイラスト、様々な高度な計算から導き出された想像図だったのです。これらを計算で導き出した人物とは、相対性理論で有名なアインシュタインなのです。
今回地球上の8箇所に設置された電波望遠鏡により地球サイズのレンズを再現、地球から5500万光年というとんでもなく遠くにあるブラックホールを映像化することができたのでした。この映像から、アインシュタインの予言したブラックホールの形は正しかったと証明されたのです。
ただ、上のイラストにあるような黒い玉から放出されているジェットのようなものが今回は観測されなかったようです。この謎も今後の研究で明らかになり、さらに宇宙の誕生や仕組みが明らかになってゆくと思われます。
現在太陽系のそれぞれの惑星について、かなりのことが解明されています。それだけでなく、はるか遠くの星々についてもかなりの事が解明されています。特にブラックホールの映像化は人類にとって大きな一歩で、アインシュタインってすごい人だった!という事が誰にでもわかるように証明されたとも言えるのではないでしょうか。
太陽系外の星について、もっと知りたい人はこちらの動画がオススメ!宇宙のことはここまで解明されていることにビックリです。また星を衝突させてみたり色々スゴイ事になっています!
宇宙ヤバイch
https://www.youtube.com/channel/UC_ocMvvwv3JP9JQtoWbbTxA
宇宙のあまりの広さに夜も眠れなくなりそう!
やっぱり地球が一番!
地球以外の惑星を回ってみていかがだったでしょうか?間違いなく、避暑目的で行ってはいけない場所だということはハッキリしましたね^^当たり前だー!!スカーッと降り注ぐ太陽が暑い!と感じられるのも地球の太陽との奇跡的な距離と好条件が重なってできたものなのです。この地球で暮らしながら、宇宙を見上げ、遠い未来の宇宙での生活に夢を馳せるのもいいものです。やっぱり地球が一番ですね!まだ暑い日が続きますが、この地球と太陽の恵みに感謝して残りの夏を過ごしましょう!!
First picture of the planets By Lsmpascal [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons.
The picture of Mars By ESA – European Space Agency & Max-Planck Institute for Solar System Research for OSIRIS Team ESA/MPS/UPD/LAM/IAA/RSSD/INTA/UPM/DASP/IDA [CC BY-SA 3.0-igo], via Wikimedia Commons.
The picture of the black hole By Event Horizon Telescope [CC BY 4.0], via Wikimedia Commons.
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1921年にグッドウィン・アンド・タブ社から出版され、その後再版されたパブリックドメインの楽譜です。
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はじめまして。ホルストが「冥王星」の作曲を始めていたと言うのは初耳です。この組曲は、天体の惑星をモチーフにしていたのではなく、あくまでも占星術と関連づけられる神々を元に作曲していただけあり、その頃はまだ占星術と関連づけされていなかったと思うのですが、彼はどこからインスピレーションを得ていたのでしょうか?とても気になりますね。 出典などありましたらご教授下さい。よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます^ ^拙い文章ですが読んでいただき嬉しく思います。
厳密に言うとこの曲が最初に作曲された際、占星術や惑星としてではなく7つの管弦楽組曲として作られたそうです。最初に作曲されたものは海王星はオルガン曲、その他の6曲はピアノ曲としてまずは完成したそうです。
どの時点で曲の標題を占星術の神々としたのかは様々な書籍やCDの解説を読んでも、明確には書かれたものはまだ見つけられません。ホルスト自身は作曲に取り掛かった時点で占星術を始め、東洋哲学などに傾倒しており、インド神話を題材にした作品も残しています。
ただ、マーラーやベートーヴェンの作品とは逆のパターンで、作曲してみて「なんかこの曲、宇宙っぽい!」となって最終的に占星術も神話も天体の惑星もひっくるめてホルストが「惑星」としたのは確かですね。地球以外の太陽系の惑星を名付けているし、副題にも占星術の神々が名付けられており、なによりも音楽自体が現代のSF映画顔負けのスケール感です。
ちなみに実はこの曲のオーケストレーションは全てがホルスト自身によるものではなかったそうです。ホルストがまるまるオーケストレーションしたものは水星のみだそうです。
今回書きました記事の出典ですが、主に名盤紹介で挙げたCDに付いている解説書、(実際はここに挙げたよりもっと数多くのCDがありますが^_^;)音楽の友社より出ている音楽辞典を始め何点かの書籍、演奏した際の指揮者先生のお話やホルストオタクオーケストラ団員のお話、そしてWikipedia先生です。
今回の記事では演奏者としての目線と、宇宙ヤバイよ!ということと暑いから涼みに行こう!という目線からこの曲を紹介させていただきまして、作曲された1番最初の時点で、占星術との関連や曲想に関しては研究者の方にお任せして、一般に言われている内容までとしました。
冥王星についてもWikipedia先生に載っていまして、私も今回初めて知りました。ホルストの冥王星、是非是非聴いてみたいですね!つい最近冥王星が太陽系惑星から外されたこともあり今回記事にしてみました。