クラシック音楽というと主にヨーロッパの古くからある、やや崇高なイメージの音楽ジャンルというイメージを持たれる人が多いのではないでしょうか。しかし、一口にヨーロッパ音楽と言ってもその国によってそれぞれ個性的な特徴を備えています。

その中でも特にフランスの音楽は独特で、多様なリズムと和声が深みのある立体的な音楽を形づくっています。印象派の絵画の概念を音楽に取り入れたドビュッシーの音楽はその最たるものと言えるでしょう。

ドビュッシーの音楽は目に見える情景の変化の動きそのものを音で表現した革新的なものです。その革新的な音楽は難解な所もありますが、今回ご紹介する「小組曲」はドビュッシーの中でも非常に親しみやすい曲の一つです。

元々はピアノ連弾のために作られた曲ですが、今回は小編成オーケストラに編曲された版「小組曲」をオーケストラトランペット席からご紹介しましょう。

ピアノ連弾からの編曲で有名に

「小組曲」は4つの小曲からなる15分ほどの曲です。始めは4手ピアノ連弾の曲として作曲されました。後にアンリ・ビュッセルによって小編成オーケストラに編曲され有名になりました。

ちなみにビュッセルは「小組曲」の他にも「春」も編曲しています。作曲家、指揮者としても活躍しましたが優れた音楽教師としても有名です。著名な門下生としては、管楽器を演奏する人にとっては馴染みのあるウジェーヌ・ボザがいます。


アンリ・ビュッセル(1872~1973)101歳まで生きたご長寿音楽家。

小組曲


Symphony Orchestra of The Arthur Rubinstein Music Schoolによる演奏。

全楽章がまるでサロンミュージックBGMを思わせるような親しみやすいものとなっています。それでいてメヌエットやバレエの舞曲の中にも随所にドビュッシーらしい独特な手法が見られます。

オーケストレーションとしては主に木管楽器が活躍します。少編成ならではのオーケストレーションですが、打楽器にシンバルやトライアングル、タンバリンも必要だったりします。さらにはハープも必要で、少編成オーケストラとはいえ意外と人手が必要な作品でもあります。

トランペットは主に伴奏や2曲目と4曲目の盛り上がりで活躍しますが、金管楽器の音色の特徴をよく活かした手法で書かれていて演奏しがいのあるものとなっています。

小舟にて(0:32~)


この「小組曲」の顔とも言える爽やかな風が吹き抜けるような魅力的なフルートの旋律から始まります。きらめくようなハープの伴奏や湖面に反射する陽の光のようなリフレイン(1:01~)等、ドビュッシーらしい躍動感のある表現がみられます。

行列(4:36~)

前曲とは対照的に躍動感のある旋律で始まります。トライアングルとフルートによる爽やかな旋律が心地よさを感じさせてくれます。フランス音楽の醍醐味といえます。祝典的なお祭りの様な行列が目の前に広がる様です。

そしてフランス音楽らしい特徴的な中間部(5:46~)。装飾音を伴った旋律が魅力的です。

騒がしい行列というよりは、爽やかな風を感じる様な音楽です。最後は打楽器も加わりオーケストラ全合奏で華やかに、感動的に締められます。

メヌエット(8:18~)


オーボエを中心として木管楽器による非常に神秘的な前奏から、弦楽器によって古風なメヌエットが奏されます。まるで不思議な世界へと誘ってくれる様です。この楽章ではオーボエの持ち替えでイングリッシュホルンが使用されますが、それだけでも曲の雰囲気がグッと奥深くなります。

バレエ(11:20~)

最後は賑やかで華麗なバレエ音楽となります。タンバリンとトライアングルをはじめ打楽器も活躍します。とてもシンプルな音楽ですが、独特な音階が随所に使われています。シンプルな室内オーケストラ曲の中にもドビュッシーらしい独特さが見える楽しい曲です。

吹奏楽版


こちらは吹奏楽版です。管楽器、特に木管楽器が活躍する曲なので吹奏楽版でも非常に聴き応えがあります。

名盤

短い曲ながらも小編成オーケストラの魅力がたっぷりつまった名盤をご紹介。

ジャン・マルティノン/フランス国立放送局管弦楽団

ドビュッシー:管弦楽曲作品集II

録音が非常に明瞭で音の一つ一つが良く聴き取れる演奏です。音色がとても柔らかくフランス音楽の良さがよく出ています。

フランソワ・パイヤール/パイヤール室内管弦楽団

ドビュッシー:3つのソナタ、小組曲、6つの古代碑銘他(再プレス)

バロック音楽を得意とするパイヤール室内管弦楽団ですが、この演奏ではより現代的な芯のある音です。管楽器や打楽器も硬めの音色ながらも、明瞭で飽きのこない名盤です。

爽やかな音楽

19世紀後半のクラシックフランス音楽はラヴェルやドビュッシー等を中心として、多彩な和音やリズムを駆使した複雑な音楽が主流となっていました。

特に印象派として新たな音楽の表現を生み出したドビュッシーの音楽は明るい色彩の音と陰の暗い音が混在したものでもあり、初めて聴くとなかなか理解しにくい曲もあります。

そんなドビュッシーの音楽の中でもこの「小組曲」は気楽に聴けて、心も爽やかになれる一曲です。それでいて独特な奥深い表現が所々に散りばめられています。そんな気軽に聴ける曲だからこそ名曲と言えるのではないでしょうか。

心が爽やかに、そして時には不思議な世界へ誘ってくれる「小組曲」。忙しい日々を過ごし
ちょっと疲れたかな?と思った時に聴くととても癒やされます。そんな宝玉の様な小曲を聴いて癒やされた後は、明日も頑張って忙しい日々を乗り切りましょう。


The right picture of Henri Busser By André Cros [CC BY-SA 4.0 ], via Wikimedia Commons.
The picture of menuet By fr:Utilisateur:Huster (fr:Image:Rameau menuet.jpg) [GFDL or CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons.

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