とても雄大で美しいアルプス。そしてその山々に映し出される、思わず息をのむほどうっとりする夕日。
エステンの作曲した『アルプスの夕映え』は、そんな感動的な風景が見事に描写された1曲だと思います。
この曲は、ピアノの発表会でとてもよく取り上げられる、人気のあるピアノ曲です。
あまり聴きなじみのない人でも、一度耳にするとうっとりするような曲ではないでしょうか。
ピアノ講師をしていたときにも、発表会でこの曲を弾いた生徒さんがいます。
2~3年に1人くらいは弾いていたでしょうか。
選曲のときに少しだけ弾いてみせると、「きれい!この曲がいい!」と即決する子もいました。
私自身はピアノを習っていて、最初に弾いてみたい有名な曲第3位でした!
ちなみに第1位は『乙女の祈り』、第2位は『子犬のワルツ』です!(・・・そんな情報、どうでもいいって?)
そんな、若かりし頃の私の憧れの曲でもあったこの『アルプスの夕映え』の難易度と弾き方について、解説していきたいと思います!
動画はコチラ。
ぜひ、雄大なアルプスの風景を思い浮かべながら聴いてみてください。
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エステンについて知っておこう
この『アルプスの夕映え』を作曲したテオドール・エステンは、1813年に生まれたドイツのピアノ教師であり、作曲家でもあります。
英語読みでは「オースティン」と表記されており、実は私が「オースティン」と「エステン」が同一人物であると知ったのは、結構最近だったりします。・・・恥ずかしながら(笑)
同じような人いますか?(必死)
そんな彼の代表曲は、この曲の他に、某メーカーの給湯器でおなじみの『人形の夢と目覚め』、『アルプスの鐘』などがあります。
どの曲も、とても軽快で美しいメロディーが特徴です。
『アルプスの夕映え』の難易度は?
全音ピアノピースの難易度表に掲載されているこの曲の難易度は、B(初級上)となっています。
ソナチネ程度のレベルの曲ではありますが、楽譜を見るとわかるように、オクターブがかなり出てきます。
そのため、私のようにオクターブがギリギリという人にとっては、激しい曲ではないものの、弾くとかなり手が疲れてしまう曲です。
特に私は「1」と「5」でオクターブを弾きながら、「2」で間の音を弾くというのがとっっても苦手です。まだ間の音を「3」で弾くのはいいのですが…。
この曲は主題となるメロディーの始まりを、いきなり「125」の指で弾かなければならない、私にとっては難易度の高い曲です。
手の小さな人、気合いです!気合いで練習しましょう!
弾き方を確認しよう
それでは、弾き方の解説をしていきます。
最初の8小節の抜粋です。(動画冒頭~0:11)
1小節目は「pp」を意識し、少しゆっくり弾き始めてみましょう。
2小節目の1拍目に向けてだんだん大きく、だんだん速くします。
遠くから何かが迫ってくるような雰囲気を出して。
スタッカートの付いている音は、軽く弾きたいけれど軽くなりすぎないようにも弾きたいので、私はここでのペダルは、1音ずつ手の動きに合わせて踏み換えています。
9小節目からは、左手が遠くからじわりじわりと鳴り響いてきて、そこに右手も加わります。
そして溜めた力を13小節目で解放します。(動画0:12~0:23)
「Lento」は「ゆるやかに」、「pesante」は「重々しく」という意味なので、ここの2小節はゆったりと弾くことを意識してください。
いよいよ主題メロディーの登場です。(動画0:24~0:42)
「pomposo」は「華やかに」という意味なので、美しいメロディーを十分に歌ってくださいね。
そして、上の1小節目に早速出てきましたよ!私が苦手とする「125」の指で弾く和音が!
手の小さな人にはいきなりの難所ですが、左手は鍵盤をほとんど見なくても弾けるようにまでしておき、余計な音が入らないようにとにかく右手に集中しましょう!
□の箇所も、手の小さな人には難しい動きです。
「タータター」が、「タータズコーッ」とならないように、ここも右手に集中です!
この部分では強弱に気を付けながら、三連符を伸びやかに弾くようにしてくださいね。
特に上の5小節目には「dolciss.(ドルチッシモと読み、「たいへん優しく」の意味)」とあるように、前の4小節とは音量をぐっと変えるように気を付けましょう。
ここからのパートは、ト短調に変わります。(動画0:43~)
急に寂しい雰囲気になりましたね。
「risoluto」は「決然として」という意味です。強い決意を表現するような気持ちで弾きましょう。
左手が「ド」から「レ♭」に半音上がり、ますます寂しい雰囲気になりました。(動画0:54~0:58)
「pp」を意識し、前半のフレーズが遠くからこだまして来るように弾きます。
このパートでは、主題に戻る準備をします。(動画0:59~1:06)
強弱記号とリタルダンドを意識しましょう。
最後の小節では、私は1音ずつペダルを踏み換えています。
ここからは変ホ長調に変化して、とてもかわいらしい雰囲気になりましたね。(動画1:26~1:37)
よく目にすることのある「dolce(ドルチェ)」とは、「甘く」や「かわいらしく」といった意味です。
右手の〇の音は、特にかわいらしく高音を響かせるように弾いてくださいね。
この楽譜の1小節目は、先ほどのパートよりも少しだけ力強く入ります。(動画1:37~)
ここでもやはり、右手の高音を意識してください。
強弱もコロコロと変わりますが、指示通り弾けるように気を付けましょう!
前半と同じ、主題のメロディーなどを繰り返した後に、最後のパートに入っていきます。(動画3:01~)
左手のリズムが崩れないように、規則正しく弾いてください。
三連符を刻むのが右手に変わりました。ここから終曲に向けて一気に盛り上げていきます。(動画3:08~)
この楽譜の5小節目にある「martellato」は、「力強いスタッカートをつけるように」といった意味です。
左手のオクターブの動きに気を付けながら、1音1音強調するように弾きましょう。
最後の「ジャジャーン!ジャジャーン!」は力強く弾き、赤く染まるアルプスの山々の風景を締めくくります。
弾き方のおさらいをしよう
『アルプスの夕映え』は、美しくもあり、雄大でもあり、またかわいらしい要素もある曲でした。この曲の弾き方をまとまると、
- コロコロ変わる強弱記号に気を付ける
- 全体的にスタッカートが多いが、軽く切りすぎない
- オクターブが多い曲だが、なるべくオクターブを弾く手の動きに意識を集中させる(手の小さな人は特に!あとは気合いです!笑)
この曲は全体を通して雄大なアルプスの風景がテーマなので、堂々としたイメージを持って弾くように心がけてくださいね。
手の小さな人でも、私のようになんとかオクターブが届くのであれば、きっとマスター出来る曲だと思います。
頑張ってくださいね!
「アルプスの夕映えOp.193」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。パブリックドメインの楽譜です。