ドビュッシーの「アラベスク」という曲はとても有名ですね。
実は有名なのは第1番で、第2番もあることをご存知ですか?
「2つのアラベスク」として1888年に作曲され、1891年に出版されました。
第1番はスラーで流れるような曲調ですが、第2番は対照的でスタッカートが特徴のとても軽やかな曲です。
ドビュッシーは印象派といわれる時代の作曲家で、見たものの感覚的な印象をそのまま音に表すような曲をたくさん残しています。
この曲はいったいどんなイメージで作曲されたのでしょうか?
「アラベスク」の意味も含めて、気になる難易度や弾き方のポイントをご紹介します!
アラベスク(Arabesque)とは?
アラベスクとは「アラビア風の」という意味で、元々はイスラム美術の装飾文様のことを意味します。
植物のツルや葉、花などがモチーフとなった幾何学模様で、日本では「唐草模様」として広まり親しまれています。
唐草模様というと、泥棒の風呂敷や柴犬をイメージしてしまいますよね(笑)
あとは、バレエにもアラベスクというポーズがあります。
ドビュッシーは元々の意味であるアラビア風の模様をイメージして作曲したといわれているので、幾何学模様を思い浮かべてみるのが良いと思います。
同じリズムが繰り返されている曲なので、やはり同じモチーフが繰り返し描かれる「模様」を音で表しているんだなと感じられます。
ピアノ学習者によく使われる「ブルグミュラー25の練習曲」の中にもアラベスクというタイトルの曲がありますね。
最近では独学用の楽譜も出ています。
ちなみに「アラベスク」というタイトルの曲を最初に作曲したのは、ロマン派の作曲家のシューマンだそうですよ。
シューマンのアラベスクもまた、同じリズムの繰り返しや流れるようなメロディーが特徴です。
難易度は?
この曲の難易度は有名なアラベスク第1番と同じくらいなので、中級レベルにあたるでしょう。
ツェルニーの練習曲なら30番の後半程度になります。
ただ、ドビュッシーの曲は強弱記号や表現記号が細かく書かれています。
これらの指示を忠実に守って、ドビュッシーらしい音色(優しくキラキラした音色)で演奏するにはそれなりのピアノ演奏経験が必要になるでしょう。
ショパンの比較的弾きやすい曲、例えばノクターン第2番や子犬のワルツなどと同じくらいの難易度なので、これらが弾けるとテクニックや表現力が磨かれて良いと思います。
またはドビュッシーの他の曲、「子供の領分」や「ベルガマスク組曲」などの曲集は比較的弾きやすいので先に挑戦してみても良いでしょう。
ちなみに私はこちらの楽譜を使っていました。
とても見やすく、「子供の領分」も一緒に載っているのでおすすめです!
弾き方のポイントは?
(動画冒頭~)まずこの曲の特徴でもある3連符の16分音符を、軽やかに弾けるようにならないといけません。
指先に一瞬だけ力を入れて1拍目の音をしっかり鳴らして、残りの音はトリル(装飾音)のようなつもりで力を抜いて弾いてみてください。
リズムがぶれないように、初めはゆっくりのテンポで全てスタッカートにして練習するのも良いですね。
左手は全音符で伸ばしていますが、ペダルに頼りすぎずしっかり音を持続させましょう。
p(ピアノ)で始まりますがdim.でだんだん弱くしていくので、あまり弱すぎる音で始めないように注意してください。
(動画0:12~)
5、6小節目などに出てくるような手が届かない和音はアルペジオにして弾きます。
ペダルを使ってバスの音(ソ)がしっかり残るようにしますが、あまり深く踏み込むと右手の音と混じって濁ってしまいます。
音が濁らないように注意して、軽めに踏んでみてください。
(動画0:23~)
11小節目の左手に「ド♯」が出てくるところから14小節目まで、ニ長調に転調しています。
音も増えていくので、初めより明るい雰囲気で演奏しましょう。
(動画0:30~)
15~18小節目はまたト長調に戻りますが、音域が広くなり盛り上がっていくので明るい雰囲気のまま演奏しましょう。
右手の一番高い「ラ」の音に向かっていくようにクレッシェンドをかけます。
(動画0:38~)
19~22小節目までは左手にテーマのリズムが移ります。
右手の4分音符と2分音符のメロディーは、アラベスク第1番と通ずるものがありますね。
左手は難しいですが、3連符が転ばないようにゆっくりから練習しましょう。
23小節目のf(フォルテ)に向かって、左手もしっかり音を出してください。
(動画0:53~)
27小節目のアルペジオはppでスタッカートも付いていないので、優しくふわっと弾いてください。
28小節目で突然スフォルツァンドになり、この強弱差が面白いですね。
28~37小節目までは前半部分のコーダになります。
アクセントやスタッカートの指示をしっかりと弾き分けてみてください。
(動画1:14~)
38小節目からハ長調に転調し、少し落ち着いた雰囲気になります。
4声部に分かれており、バロック時代を思わせますね。
ソプラノとバスのラインが反行していて、クレッシェンドやディミヌエンドがうまく表現されています。
アルトとテノールの声部(ソとファ)は同じリズムなので、右手の親指で同時に演奏することができます。
そうすれば左手はバスのラインだけになるので、弾きやすいかもしれません。
(動画1:27~)
45小節目はクレッシェンドの頂点で、46小節目は何も書いてありませんがp(ピアノ)ですぐに小さくすると良いでしょう。
(動画1:36~)
50小節目から突然ホ長調に転調しています。
(動画1:48~)
かと思ったら、56小節目から突然♭系の変ホ長調に転調したりと、なんだか落ち着きません。
ちょっと雲行きが怪しくなるようなイメージで演奏しましょう。
(動画1:59~)
62小節目から再現部になります。
最初とは少しリズムが変わっているので、注意しましょう。
(動画2:16~)
72小節目からはハ長調になります。
スラーの部分は柔らかい音色になるように、ゆったりした気持ちで弾いてみてください。
(動画2:31~)
82小節目からはMeno mosso(テンポを落として)です。
そのため80、81小節目はdim.で小さくするのと共にだんだん遅くしても良いと思います。
armoniosoは「調和した響きで」という意味なので、美しい和声を感じながら落ち着いて演奏しましょう。
なんだか夢の中にいるような、ふわふわした雰囲気ですね。
82~88小節目まで、左手に全音符で伸ばすバスの音が出てきます。
これは「持続低音」といってピアノで表現するのは難しいですが、コントラバスがさりげなく鳴り響いているようなイメージで弾いてみてください。
ペダルで伸ばしますが、右手もはっきり聴こえるように音量のバランスを取りましょう。
(動画2:59~)
90小節目から元のテンポに戻ります。
低い左手の音から始まるこのメロディーが、まるでバッハのフーガのように繰り返しながら右手へと移っていきますね。
さらに94小節目から長い長いクレッシェンドを経て、100小節目でピークを迎えます。
あまり早くから強くすると後が大変なので、逆算して98、99小節目で最もクレッシェンドするようにしましょう。
(動画3:15~)
100小節目からは28小節目からの部分の再現です。
微妙に強弱の位置や音符の長さが違うところがあるので、そこはきちんと差をつけて演奏できると良いでしょう。
最後はpppでとても弱く終わりますが、低音の響きをよく聴いて余韻も感じてみましょう。
まとめ
- アラベスクは日本でいう唐草模様のこと。幾何学模様の映像をイメージしよう!
- 中級レベルで演奏できるが、表現力を磨くためにショパンや他のドビュッシーの曲も挑戦してみよう!
- 全体的に軽やかに、3連符のリズムやスタッカート、スラーの表現を弾き分けよう!
- 急に転調するので、その都度雰囲気を変えて演奏してみよう!
以上がこの曲のポイントになります。
アラベスク1番ももちろんいい曲ですが、2番もとても綺麗で素敵な曲です。
ドビュッシーのピアノ曲の中では比較的弾きやすいので、近現代に挑戦したい方もぜひ弾いてみてくださいね。
「アラベスク第2番」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1891年にデュラン社から出版されその後再販されたパブリックドメインの楽譜です。「2つのアラベスクL.66」全2曲が収録されており、第2番L.66-2は6ページからになります。
ドビュッシー「2つのアラベスクL.66」の記事一覧
- CMでの使用多数!ドビュッシー「アラベスク第1番」難易度と弾き方! 2017年4月15日
- 幾何学模様を弾く!ドビュッシー「2つのアラベスク第1番ホ長調」難易度と弾き方 2017年6月27日
- ドビュッシー「アラベスク第2番」の難易度と弾き方のポイントを解説! 2019年6月30日 ←閲覧中の記事