ドビュッシーといえば、まるで美しい絵画を思わせるような綺麗な曲が多いですよね。
その中で少し意外というか、コミカルな曲を集めたおもちゃ箱のようなピアノ組曲があります。
それが1908年に作曲された「子供の領分(Children’s Corner)」です。
全6曲からなる組曲でどの曲も親しみやすく、ピアニストにもよく弾かれています。
今回は4番目の「雪は踊っている(The Snow is Dancing)」をご紹介します。
雪が降っている様子が見事に音で表現されていて、「さすがドビュッシー!」と思わせてくれる曲です。
「子供の領分(Children’s Corner)」とは?
「子供の領分」はドビュッシーが3歳になる愛娘のために作曲したピアノ組曲です。
♪グラドゥス・アド・パルナッスム博士(Doctor Gradus ad Parnassum)
♪象の子守歌(Jimbo’s Lullaby)
♪人形へのセレナード(Serenade for the Doll)
♪雪は踊っている(The Snow is Dancing)
♪小さな羊飼(The Little Shepherd)
♪ゴリウォーグのケークウォーク(Golliwog’s Cakewalk)
の6曲で、どれも娘の様子から「子供の世界」を表した曲集になっています。
楽譜の表紙のイラストまで、ドビュッシーが描いたそうですよ。
本当に娘さんが大好きだったんですね。
3歳ではまだ弾けないでしょうけど…
いつか娘に弾いてほしい、と思いながら作曲したかもしれませんね。
難易度は?
「子供の領分」はドビュッシーのピアノ曲の中では比較的易しく、コンクールではよく小学4~6年生くらいの子供が弾いています。
練習曲でいうとチェルニー30番程度の、中級レベルです。
しかしドビュッシーは子供向けに作曲したわけではなく、あくまでも子供の世界を表現しようとしているので、表現力がけっこう重要なのです。
「雪は踊っている」は全体的にp(ピアノ)で、雪がしんしんと降っている様子を表しています。
曲は短いですが、弱く弾くことに集中力を要します。
ピアノで優しい音を出すのって難しいですよね…
そういう意味で、表現力は上級レベルに近いかもしれません。
ちなみに私のおすすめの楽譜はこちら。
「子供の領分」と「アラベスク第1番・第2番」が入っていてお手頃価格!
しかも指番号や解説もしっかりと書いてあるので、演奏の際とても参考になりますよ。
私もこの曲集を使って練習していました♪
弾き方のポイントは?
まず楽譜を見てみると、スタッカートが多いことに気付くと思います。でも、スラーも一緒に付いているんですよね。
スタッカートは短く切るという意味で、スラーはつなげて弾くという意味…
どっちやねん!と言いたくなりますね(笑)
これはきっと雪が降っている様子を表しているので、こうなってしまったのだと思います。
音を短く切りすぎてしまうとポツポツした雨のようになってしまうし、
つなげすぎてしまうと川の流れのようになってしまいます。
なので、短く切るようなスタッカートではなく、
鍵盤から指をふんわり離すような優しいタッチで演奏しましょう。
1~13小節目までは、色々な音源を聴いてみるとペダルを使っている人も使っていない人もいます。
ペダルを使う場合は音が濁らないように、浅めに踏むハーフペダルで演奏しましょう。
(動画冒頭~)
そして3~6小節目に出てくる全音符の「シ♭ドシ♭ド♯」の音ですが、
楽譜上では左手になっていますが、実は右手で弾くこともできます。
弾いてみたところ私は右手の方が弾きやすかったのですが、どちらでも弾きやすい方の手で良いと思います。
(動画0:17~)
7小節目から「piu pp」なので、さらに小さい音で弾かないといけません。
つまり、初めに小さく弾きすぎてしまうと、ここから音が消えてしまいます(笑)
逆算して音量を調整しないといけませんね。
弱い音の中で強弱をつけるのはとても難しいですが…
色々なp(ピアノ)の音を出す練習をしてみましょう!
(動画0:33~)
14小節目から左手に和音が出てきます。
さらに左手は右手より高い音も弾かないといけないので、とても忙しくなりますね。
ここは必然的にペダルを使わないと、和音が伸ばせません。
和音ごとにペダルを踏みかえて、濁らないように注意しましょう。
両手が重なるのでどうしても「弾きにくい、無理!」という場合は、16分音符を全て右手で弾くという方法もあります。
どちらも慣れだと思いますが、ぜひ両方試してみてください♪
そして両手ともト音記号で、高い位置で弾くのも弾きにくいですよね。
高い方(右)に上半身を寄せて演奏しましょう。
(動画0:54~)
22小節目から、右手に新しいメロディーが加わります。
左手もヘ音記号の低い音が出てくるので、景色が広がった感じがしますね。
doux et tristeは「優しく、悲しげに」という意味なので、今までとは違う雰囲気を意識して演奏しましょう。
「早く雪が止まないかなぁ」と嘆いているシーンなのかもしれませんね。
(動画1:26~)
33小節目から、何かを語りかけるようなメロディーが出てきます。
Cedez un peuは「少しゆっくり」、
un peu en dehorsは「少し浮きだたせて」という意味なので、ここのメロディーは一音一音確かめるように丁寧に演奏しましょう。
そして33小節目の右手「レミ♭ファソ」が、34小節目で左手に受け渡されていますね。
雰囲気は変わりますが、この音階は滑らかにつながるように弾きましょう。
次にまた、受け渡されるところがあります。
(動画1:41~)
39小節目、左手の「シ♭ドシ♭ド~」というトリルが40小節目で右手に受け渡されます。
ここも滑らかにつながるよう注意し、
leger mais marque(軽やかに、はっきりと)と書いてある左手のメロディーを際立たせましょう。
ここから再現部の手前、56小節目まで左手も細かく動くし臨時記号も多いしで難しいところです。
左手をよく練習して、リズムがブレないように気を付けましょう。
(動画2:08~)
49~52小節目の部分では、この曲の中で唯一のf(フォルテ)で少し激しい雰囲気になるので、今までとは違う鋭いスタッカートを表現しましょう。
53~56小節目はつなぎの部分で、57小節目(下の楽譜)から再現部になります。
(動画2:23~)
7小節目~と同じになりますが、64小節目からメロディーが変わってくるので注意して譜読みしましょう。
(動画2:54~)
70小節目からpppなので、かなり小さい音で演奏しないといけません。
遠くでかすかに聞こえているようなイメージですが、かすれない程度に繊細なタッチで弾けると良いですね。
(動画2:57~)
最後の3小節はSans retenir(遅くしない)なので、テンポをキープしながらふわっと終わるように弾きましょう。
ふっと雪が止む感じなのか、まだ降っている余韻を感じるかは、人それぞれの解釈で演奏して良いと思います♪
まとめ
・ふんわり優しいスタッカートで、雪が降っている様子を表現しよう♪
・左手で弾きにくい音は、右手でとって弾いてみよう♪
・弱い音の違い(p、pp、pppなど)を弾き分けられるようにしよう♪
↑これが一番大事です!
以上がポイントになります。
めまぐるしく転調するので、何調なのかよく分からない不思議な曲ですが…
弾いていると本当に雪景色が見えてくる素敵な曲なので、ぜひ挑戦してみてくださいね♪
「子供の領分L.113」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1908年にデュラン社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。L.113全6曲が収録されており、第4曲「雪は踊っている」L.113-4は18ページからになります。
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