どんな曲?難易度は?
「アルバムの一葉(アルバムの綴り、モデラート)」は1843年に作曲され、ショパンの弟子の1人、アンナ・ドゥ・シェレメティエフ伯爵夫人に捧げられた曲です。ショパンの死後、シェレメティエフ夫人のアルバムから見つかったことからこの曲名がつけられたとのことです。
難易度はツェルニー30番ぐらいだと思います。ただ弾くだけだったら難しくありません。繰り返しを省略すると1分20秒ぐらいという短い曲です。技術というよりは表現力を磨きたい方にオススメです。
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楽譜はこちらから買えます。ただし出版社によってリピート記号がついているもの、ついていないもの、一部音が変わっているものもあるので、コンクールの課題曲で出版社が指定されている場合、指定の出版社の楽譜を買って練習しましょう。
ちなみに2018年度第28回グレンツェンピアノコンクール大学・一般の部の本選の課題曲にもなりました。
■ 目次
練習のポイント
この曲はA-B-A’の3部形式になっています。AとA’の部分は同じメロディーが何回も繰り返されるので、同じ演奏にならないように表現を研究する必要があります。
Aの部分(1~8小節目、最初の動画0:00~0:35)
最初のシの音は遠くにポーンと飛ばすようなタッチで弾くイメージで鳴らしましょう。赤い〇で囲んだ和音は左手で弾いてもよいでしょう。手の小さい方は検討してみてください。
3小節目と7小節目の2拍目の和音が違います。左手の低い音がド#かドの違いだけなのですが、和音で一度に弾いてみると和音の雰囲気が違います。
私は3小節目は明るい感じ、前に進もうとしている感じに対し、7小節目は「あれ?なんか不安な感じがするぞ?」とちょっと立ち止まる感じがします。
イメージは人それぞれで良いと思いますが、和音の変化を感じ取って演奏できるといいですね。
また曲全体で気を付けるポイントになるのですが、メロディーと伴奏の和音の音に差をつけることを意識しましょう。右手でメロディーも伴奏も弾いているので同じ音量で弾いてしまうことがあります。
ものすごく単純に言うと、メロディーは目立たせて、伴奏は小さい音で弾けるように指の力をコントロールしましょう。
Bの部分(9~12小節目、最初の動画0:36~0:50)
ホ長調から嬰ト短調に転調します。オレンジの〇で囲んだ12小節目はホ長調に転調するための準備がされています。ホ長調の属7の和音が12小節目を構成しています。
ホ長調の属7の和音はシ、レ#、ファ#、ラです。12小節目にはファ#がありませんが、シ、レ#、ラだけでも属7の和音と言えます。
私は、緊張感のある雰囲気が続いた9~11小節目から12小節目で一気に力が抜けてホッとするような感じがしました。
演奏者にもよりますが、9~10小節目は少し早めに、前に進む感じに弾いて、11~12小節目では少し遅く弾くというように速度に変化をつけて演奏する方もいます。
A’の部分(13~20小節目、最初の動画0:51~1:25)
最初のAメロディーが再び登場します。このメロディーも最初と同じ弾き方ではなく変化をつけるといいでしょう。私は最初のAの部分は落ち着いてリラックスしている感じで、A’の部分はBの部分の不安な気持ちから解放されてホッとしている感じに捉えました。
17小節目の4拍目から始まるフレーズは、この曲のクライマックスだと私は感じています。同じメロディーはこれまで何回も出てきていますが、rit.(ritardandoの略、だんだん遅くという意味)がついているのはこの部分だけです。
これで曲が終わるのよ!とでも言わんばかりに溜めて弾くと聴いている方もメリハリがついて聴きやすい演奏になります。
まとめ
・メロディーと伴奏の和音の音色に差をつけよう。・同じメロディーが出ても同じ演奏をせず、変化をつけよう。
実は第28回グレンツェンピアノコンクールの本選で私もこの曲を弾いてきたのですが、自分のイメージを音色に表すことが一番難しかったです。
本選を通過したものの、審査員の先生方の講評には音色のことが多く書かれていました。
表現力や音色の勉強に力を入れてみたい方にオススメの曲です。短い曲を細部まで研究する経験もみなさんの今後の演奏に生かされるので、挑戦してみてください♪
「アルバムの一葉KK.IVb/12,CT.107,B.151」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1955年にポーランド音楽出版から出版されたパブリックドメインの楽譜です。