クラシックの音楽番組はNHKでは多く放送されていますが、他の民放も全くないわけではありません。

クラシックの音楽番組としては世界一長い期間放送されているとしてギネス記録を持っている「題名のない音楽会」は司会者が変わるごとに番組のカラーもガラッと変わっていくのが面白いところです。

他にも民放でクラシックの番組はあることはあるのですが、あまり長くは続いていません。最近ではBSで放送されていた「恋するクラシック」がこの前終了してしまいました。放送期間は約1年間でした。とても残念です。

この番組の最大の特徴は音大生が出演しているということでした。前に記事に書いたMIKISARAの佐野幹仁さんも出演していました。活躍されている演奏家たちの演奏を間近で聴いて、その方々のお話を直接聞くことは音大生にとってはとても良い経験になり、宝物になったのではないかなと思います。

多くの方々はこのような音楽番組で演奏家を知る機会も多いと思います。なるべく長く続いて欲しいですね。

今回は音楽番組などで演奏を聴いた中で、私が素敵な演奏だなと感じたピアニストについて書いていきたいと思います。

クラシック音楽を題材にしたものが増えた

クラシックの音楽番組自体はNHK以外の民放では減っているような印象を受けますが、クラシック音楽を題材にした小説、ドラマ、映画、漫画やアニメは増えているような気がします。

小説では「蜜蜂と遠雷」、「さよならドビュッシー」etc…




漫画では「のだめカンタービレ」、「ピアノの森」、「四月は君の嘘」etc…





これらの作品は映画化されたり、ドラマ化されたりしていますよね。

ドラマでは最近の作品だと「カルテット」がとても面白かったですね。一流になれなかった演奏家たちが集まってカルテットを組むという設定が良かったです。



一流の演奏家になれるのはほんの一握りですので現実的だなと思いましたし、それぞれが闇を抱えているというところもリアリティーがあっていいなと思いました。

この他にも全てのテーマが音楽ではなくてもドラマの1話分だけ音楽家の話というものまで含めればかなり増えていると思います。

音楽大学の校舎やホールが使われていることも割と多いです。自分が知っている場所がテレビやスクリーンに映ると不思議な気持ちになりますが、とても嬉しいです。

なぜクラシックやピアノというものに注目されるようになってきたのかはよくわかりませんが、ピアノを弾くことの楽しさや怖さなど、演奏をするにあたっての心の葛藤やそれを乗り越えようとする主人公の姿がストーリーの構成上おもしろくなるのではないかと思います。

これらの題材はピアニストになろうと頑張る姿やコンクールに挑戦するなどの内容が割と多いと思いますが、ピアノの調律師に焦点を当てた「羊と鋼の森」も昨年映画化され話題になりました。



これからもクラシックを題材にした作品が多く出てくると嬉しいですね!

最近では吹き替えを大々的に発表している

ピアノが題材になった場合、松下奈緒さんのような音大出身者以外の俳優さん達はピアノがほぼ弾けないと思いますので吹き替えをしなくてはいけません。

指が映るところは吹き替えなので全く問題ないのですが、指は映らないけど顔から肩や腕までが映るシーンというのは少し前までは割とおろそかにされていた気がします。

俳優さんたちの体の動きが不自然だったり、手の位置が音と違うところにあったりと違和感があったのですが、現在はほぼなくなりました。

弾いている場所と合っていない音の響きがするというのも中にはありました。これもかなり変でしたね…。ホールで弾くと残響があるはずなのにそれがないと違和感があります。その逆も同じで狭い部屋で弾いている設定なのに残響がかなりあると変な感じがします。このようなこともなくなってきている気がします。

吹き替えをしているピアニスト達や音楽監修されている方々が指摘されているんですかね?よくわかりませんが、かなり本格的になっていると私は思います。

これまでは吹き替えをしていたピアニスト達はそこまで大々的に発表されることはありませんでしたが、最近ではピアニストも俳優さんと同じように発表されるようになってきています。

例えば「蜜蜂と遠雷」ではピアニストも俳優さんと同じようにキャスト発表され、ポスター撮りもしています。

原作のファンだから見る人もいれば、俳優を見たいから見る人、ピアニストの演奏を聴きたいから見るという人もきっといたでしょう。それくらい最近では名前を出してもわかるような話題のピアニストを起用しているのです。

そうなる前の吹き替えピアニスト達はテクニックがなかったとかそういうことでは決してありませんが、裏方という捉え方だったのでしょうね。

そのような捉え方を変える作品の1つに「のだめカンタービレ」があるのではないかと感じています。

現在テレビによく出ている清塚信也さんは国内外のコンクールで1位や入賞されているピアニストですが、「のだめカンタービレ」(千秋真一)や「神童」の吹き替えがきっかけで世間に広く知られるようになりました。「さよならドビュッシー」では俳優デビューもしています。


この清塚さんの活躍というのはその後の作品にも影響を与えているような気がします。

私が注目している若手ピアニスト

これまで書いてきたように最近では吹き替えピアニストに注目の人を起用することが多いので、アニメでも映画でも吹き替えをしているピアニストをみると、現在どのピアニストが注目されているのかというのがわかるようになっていると思います。

それでは私が注目しているピアニストについて書いていきたいと思います。

反田恭平さん


この方は今1番チケットが取れないと言われているピアニストです。

彼を初めて見た時に見た目も演奏も貫禄があったので30代後半くらいか40代前半なのかなと思っていましたが、肌がつるつるできれいだったので少し違和感がありました。

調べてみるとまだ若くて現在25歳。大変失礼いたしました…。

日本音楽コンクール第1位、聴衆賞を受賞し、その後モスクワ音楽院に首席で入学されています。現在はショパン音楽大学で学ばれているようです。

反田さんは現在放送中のアニメ「ピアノの森」で阿字野壮介の吹き替えピアニストをされています。キャラクターの設定上、事故の後遺症があるのでその部分を表現するために普段の演奏とは違う形にしたとおしゃっていました。

これからますます活躍されるでしょうね。楽しみです。




阪田知樹さん


2016年にフランツ・リスト国際ピアノコンクールで優勝されました。この結果は満場一致で決まったそうです。すごいですね!

2009年に辻井伸行さんが1位となり話題となったヴァン・クライバーン国際コンクール(第13回)ですが、第14回目の同コンクールで阪田さんは19歳で最年少入賞されています。

この他にも多くの賞を受賞されている注目のピアニストです。

阪田さんも「四月は君の嘘」の吹き替えピアニストをしています。アニメ版(2014年)、映画版(2016年)両方とも彼の演奏です。

吹き替えピアニストと記事には書いていますが、吹き替えという言葉自体を最近は使わなくなっているようで参加ピアニストやモデルアーティストなどと呼ばれているようです。それだけ音楽が重要な意味を持つということなのでしょうね。

阪田さんのリストの演奏を聴いたときは衝撃でした!とても素直できれいな音色で審査員の方々が「天使が弾いているようだ」と評した意味がよく分かりました。とても正確でそして自然な演奏がとても素敵です。

今のところ私の中では実際に会場で聴いてみたいピアニストNo.1です!



鐵百合奈さん


鐵(てつ)さんはこれまで書いた2人とは違い、吹き替えピアニストをしているという情報はありません。彼女は現在藝大の大学院博士課程に進まれています。

2017年に日本音楽コンクール第2位となり、聴衆賞と三宅賞を受賞されました。2018年には高松国際ピアノコンクールで審査員特別賞を受賞されました。

現在ベートーヴェンのソナタを全曲弾くという演奏会が行われています。全8回で3年(2019年~2022年)かけて行われる予定です。(1回目は2月に終了。)

鐵さんは演奏もとても素敵なのですが、研究者、評論家としても優れており、2017年と2018年に連続で「柴田南雄音楽評論賞」を受賞されています。

演奏家としてだけ、研究者や評論家としてだけのどちらか1つで活躍されている方は大勢いらっしゃいますが、両方をやって成功するというのはかなりレアケースだと思います。

彼女の演奏は派手ではないように思いますが、阪田さんと同じく素直な演奏です。研究された結果の演奏、実際に聴いてみたいです!鐵さんがこれからどのように進まれていくのかとても気になります!




ここまでは日本人の若手ピアニストについて書いてきましたが、この先は海外のピアニストについて書いていきます。

アリス=紗良・オットさん


アリスさんについては有名だと思うので説明不要かもしれませんが、父親がドイツ人で母親が日本人のハーフのピアニストです。妹のモナ=飛鳥・オットさんもピアニストです。

最近、SNSで多発性硬化症と診断されたと公表されましたが、演奏活動はそのまま続けていらっしゃるようなので、体調をみながら活動されるのだと思われます。

昨年、彼女の演奏会を聴きに行きました。裸足で演奏するのは知っていましたが、実際に舞台上を裸足で歩いているのを見るとやはり驚きましたね。

演奏の前に日本語で解説も加えながら進めていく形のコンサートでした。その時のテーマが「ナイトフォール」だったため照明はかなり暗めでライティングにかなりこだわっていらっしゃいました。

アリスさんは多くのコンクールに優勝した経験をお持ちですが、彼女は代役のピアニストとして出演したコンサートを成功させた後に、より活躍したピアニストです。

代役のピアニストにはリスクがあります。成功すればその後はもっと活躍できますが、もし失敗すれば演奏活動ができなくなるかもしれません。

そんな中、彼女はプレッシャーに負けることなく代役を見事に務め、チャンスを逃すことなく次のステップをしっかりと掴み取ることに成功したのです。

アリスさんの演奏はとても丁寧で、弱い音の表現が特に素晴らしいなと感じました。今年も日本に来られるようなのでまた演奏を聴きたいと思っています。



ユジャ・ワンさん


この方は超絶技巧が特徴で大胆な演奏で有名ですが、彼女をさらに有名にしているのが衣装の大胆さとお辞儀の速さです。

初めて見たときは驚きました!あれほど露出の多い衣装で弾くピアニストを今まで見たことがありません。

衣装から見るに大胆な演奏だろうということは予想していましたが、聴いてみると予想をはるかに上回る演奏!ラン・ラン(彼は映画「のだめカンタービレ 最終楽章」の野田恵の吹き替えをしていました。)と同じような感じがすると思っていたら、同じ先生に師事していた時期があるようです。

そのことが関係あるかどうかはわかりませんが、超絶技巧を得意とし、力強い演奏と大胆さなどはどこか似ている気がします。自分にはどう頑張っても真似すらできない音や演奏ですが、カッコイイなと憧れてしまいます。

彼女の衣装については賛否両論あると思いますし、演奏についても好みではないという方もいるとは思いますが、自己主張の強い(強すぎる?)ピアニストがいてもいいと私は思います。



同じ曲なのにピアニストによって違いが出てくる

ピアニストによって考え方は違いますし、得意不得意もあります。それぞれ持っている音というのは全く違いますので、同じ曲であっても同じ演奏になることはありません。

考え方はその時に応じて変わっていくものですから、解釈が変化し弾き方が前とは少し違ってきます。そのため同じピアニストでも違う時期に録音された同じ作品を聴いてみると多少の違いがあります。

この聴き比べるというのはどこがどのように違うのかということを注意深く聴いていないとわからないことで、感じ取ろうとする気持ちと音に対して敏感な耳がないとできません。

聴き比べるということはとてもよい勉強になると思いますので、1人のピアニストの演奏だけでなく多くのピアニストの音を聴いてみて下さい。

聴き比べにはCDも良いのですが、もっと手軽にするにはAmazon Music Unlimitedをおすすめします。曲名を入れるだけで話題の若手ピアニストから超一流ピアニストまで多くの演奏が出てきます。(他にも作曲者名、ピアニスト名からでも検索ができます。)

最近ではクラシックのプレイリストも増えてきたように思います。ピアノの演奏だけでなく、オーケストラや弦楽四重奏、オペラなど他の楽器の音に触れるというのもよい勉強になります。

他にも気分に合わせたクラシックのプレイリストというものがあります。「目覚めにぴったりのクラシック」etc…

上手になるためには練習するということが必要ですが、耳をちゃんと使って練習しないと上手くはなりません。耳を鍛えるには多くの演奏を聴くこと、ピアノだけでなく他の楽器の演奏も聴くこと、幅広い時代の音楽を聴くことが必要だと私は思います。

聴いて終わりにせず、自分がどのように感じたかを考えておくと、より良い演奏へのヒントになると思います!是非いろんな人達の演奏を聴いてより良い演奏になるように頑張りましょう!


まとめ

◆クラシックを題材にした映画やアニメでは注目されているピアニストが起用されている
◆同じ曲でもピアニストによって弾き方はかなり違う
◆聴き比べをすることは自分の演奏の勉強にもなる



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