とっっっても有名なショパンの『幻想即興曲』。ピアノの経験の有無を問わず、誰でも一度は聞いたことのある曲ではないかと思います。
曲のタイトルを知らなくても、「あ!聞いたことある!」と思う人が圧倒的に多いでしょう。
「あ~、この曲が弾けたらめちゃめちゃカッコイイのにな~。私には無理かな~」と思っているあなた。
大丈夫です!弾ける日が来ます!必ず!
今回そんなあなたにお届けするのは、『幻想即興曲』の弾き方のコツ。
練習方法を徹底解説していきますので、お楽しみに!
これであなたも「ピアノの詩人」!
■ 目次
ショパンの『幻想即興曲』はどんな曲?
右手の速くて美しいパッセージが特徴のこの曲は、実はショパンにとって「ボツ曲」だったそう。
友人に、「自分が死んだらこの曲は燃やして捨ててね」と頼んでいたそうです。
えええぇぇぇぇっ!
こんなに美しくて、今や誰もが耳にしたこともあるこの曲を!
燃やしてくれだと?
捨てて欲しいだと?
どうも、他の作曲家の作品と雰囲気が似ているのが、ショパンが気に入らなかったとか。
うーん。
天才の考えることはわからん。
ショパンの遺言に背いて発表したとされる友人に感謝です。
この曲の構成は複合三部形式で、A-B-A’-コーダとなっています。
Aの部分はとにかく有名。とても速いパッセージが続きます。
Bの部分はそれまでの雰囲気が変わり、ゆったりとしていて美しい。
A’はAを繰り返し、最後のコーダでは、追い打ちをかけるかのような速いパッセージが「これでもか!」と続いています。
この曲の難易度は?
全音ピアノピースに記載されている難易度は、上級のEです。
上級とは言っても、音の多い和音があるわけではなく、複雑なリズムがあるわけでもなく、譜読みはしやすいと思います。
ツェルニー30番の後半に取り組んでいる人であれば、じっくり練習すればマスター出来るのではないでしょうか。
「そうは言っても、右手と左手のリズム、全然違うじゃん!どうやって弾くんだよ!」
と思われる人もいるかもしれません。
私も初めて楽譜を見たときにはそう思いました。
でも、練習のコツをつかめばそんなに難しいことはありません。
順を追って、『幻想即興曲』の弾き方のコツをご紹介します!
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憧れの『幻想即興曲』は、こう弾くべし!
Aは速いパッセージのマスターが重要
先ほども解説したように、この曲はA-B-A’-コーダで構成されています。「Allegro agitato.」とは、「興奮したように速く」という意味です。
A(動画0:00~1:05)は、思わずハッとしてしまうような、力強いスフォルツァンドの「ソ#」から始まります。
3小節目からは左手のアルペジオが始まります。きれいな音が切れたりリズムがこけたりしないよう、最初は〇で囲んだ音にアクセントを付けながら練習するといいですよ。
そして、「何が始まるの?」という雰囲気を十分に呼び起こしてピアノに落としたところから、右手が始まります。
出たよ。
右手と左手のバラバラの動き、出たよ。
ここからは、もうとにかく片手練習からスタートしてください。
大事なことなのでもう一度言います。
ここからは、何が何でもとにかく片手練習からです!
知っている曲や聴いたことのある有名曲って、練習し始めるとつい自分ももう弾けてしまっているという錯覚に陥りやすいです。「これだけ音が読めてたら、私だってもう弾けるはず!」みたいな。
それで片手練習やリズム練習といった基礎的な部分を省いて、いきなり両手で弾いてみたりテンポを上げて弾いてみたりするんですよね。
私も学生時代に先生からよく注意されていました。
私はルービンシュタインやカツァリスの演奏するショパンが大好きで、CDを聴いて曲のイメージを膨らませていたのですが、プロの演奏を聴き過ぎると自分の中での曲のイメージが出来上がってしまうんです。
そうすると、ろくに基礎も出来ていないうちからそのイメージ通りに弾いてみたくなっちゃうんですよ。
それでよく、「耳が巨匠の演奏に慣れ過ぎてたらダメよ!」と言われていました。
話を戻しますが、本当にもう絶対片手練習から正確に始めてください!
(動画0:07~)
ここでのポイントは、上に示したように、右手と左手が合う場所を常に意識することです。
(動画0:19~)
13小節目からは、「2」と「3」の指を固定して弾くようにすれば、弾きやすいと思います。
私は手が小さく、目一杯指を広げてやっとオクターブが届くくらいなのですが、私のように手の小さな人は、この「2」と「3」の指を軸に手首を回すように弾くといいですよ!
そしてここからは、右手のアクセントの付いた音を頭の中で歌いながら弾くと、変に強調されず自然なアクセントになります。
Aの後半はクレシェンドで徐々に盛り上げていき、35小節目(下の楽譜の最初の小節)でバーンと出し切るような勢いを付けていきましょう。
(動画0:55~)
37小節からのフォルティッシモの部分は、ペダルはベタ踏みにして、壮大に力強く弾きます。
Bは美しく歌うように
B(動画1:11~3:05)は、とても美しい右手の旋律が印象的です。十分に右手を歌わせてください。「Moderato cantabile.」は「中くらいの速さで歌うように」という意味です。
ゆったりとした雰囲気で、時々切なさを感じさせながらたっぷりと右手を歌わせましょう。
(動画1:24~)
48小節目の左手は少し動きが変わるので、目立ち過ぎないように注意しましょう。(上の楽譜の□部分)
Bはメインが右手の旋律です。
左手はあくまでも脇役と考えて、右手の美しい歌に左手をそっと優しく添えるようなイメージで弾いてください。
A’はAと同じく速いパッセージ
83小節目からは、Aと同じ旋律が戻ってきます。(動画3:06~4:03)
「Presto.」は「急速なテンポで」という意味です。
Bの美しい部分が終わり再びAの速いパッセージが戻ってくるのですが、Bの余韻を残しつつも雰囲気をガラッと変えるために、Bの最後の小節は少しためてからA’につなげるように意識しましょう。
このとき、私はA’の最初の小節はピアニッシモくらい小さな音でそっと入るように心がけています。
あえてAとは少し区別して弾くことで、また違った印象になるからです。
同じ旋律だからといって同じように弾く必要なんてありません。
同じ顔でもコロコロ変わる人の表情のように、音楽にも色んな表情をつけてみてください。
コーダは最後の盛り上げどころ
119小節目から、Aにはなかったパッセージが出てきます。(動画4:04~)
ここからは激しく激しく!
しかし、ただやみくもに激しく弾くのではなく、右手のアクセントの付いた音に意識を集中させましょう。
そして127小節目からは激しさが和らぎ、落ち着きを取り戻します。(動画4:17~)
「何を興奮していたんだろう。冷静になろうぜ」とでも言うように。
(動画4:22~)
130小節目からは、Bの右手で歌ったメロディーが左手に現れます。
ここもしっかりと左手を歌わせましょう。
上の楽譜の3小節目に出てくる左手の「ソ#」の音は、直前に右手で弾く「ソ#」の音と重なります。
右手の動きに消されることなく、しっかりと鍵盤を押さえてこの音を響かせるように意識しましょう。
そしてこの楽譜の最後の小節。
手の小さな私は、この右手の「ソ#」から「ミ#」への移動が出来ません。
いくらペダルを踏んでいるとはいえ、ミスタッチをしたり「ミ#」の音だけが強調されたりしてしまうのです。
どうしていたかというと・・・
左手で「ミ#」を弾いていた。
そうです。左手の「ソ#」の音を押さえたまま、右手の「ミ#」は左手で弾いていました。
仕方がないんです。届かないんですもの。弾けないんですもの。
だから手が小さくて、「こんな音届かんわ!」という人も、あきらめないでください。
ただしこの部分を左手で弾くときには、右手からの流れをきちんと引き継いで弾けているか、細心の注意を払って弾いてくださいね。
最後の和音は、1つ前の和音よりも小さく、そーっと優しく弾くように注意してフィニッシュです。(動画4:35~)
弾き方のポイントを確認しよう
ショパンの『幻想即興曲』の弾き方について解説しましたが、「いつか自分も弾けるようになる!」という希望は持つことが出来たでしょうか。- Aはとにかく片手練習!ひたすら片手練習!
- 右手と左手が合う音を常に意識する
- テンポアップはそれらの基礎が出来てから!
- Bは美しく、右手をたっぷり歌わせるように弾く
- A’はAと少し雰囲気を変えて弾いてみると面白い
- コーダは終盤に向けて力強く盛り上げる
- 最後の和音は、優しくそっと弾く
この7つのポイントを押さえながら練習してみてください。
きっと、「私はピアノの詩人」と自信が持てるまでに上達出来ると思います。
頑張ってくださいね!
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