私が小学六年生頃のこと。当時住んでいた田舎町の駅前に大きなショッピングセンターができたんです(上の写真はイメージです^^;)。
その開店記念イベントとしてラジオ番組の公開収録で「素人のど自慢」のようなイベントが行われたんです。まぁ某国営テレビ局のあの「のど自慢」みたいなものです。もちろん規模は比べものにはなりませんが(笑)。
参加条件は特に無く、申込みも必要なく「出たい人は当日○時までに会場に集ってください」というものでしたが、その「のど自慢」に当時小学三年生だった私の妹も出るというので家族揃って見に行きました^^;
妹は同級生の女の子と二人で、当時流行っていたピンクレディー(あ、年齢バレますね^^;)の曲を歌うつもりで張り切って前日まで練習していました。
会場に着くと30組ほどだったかなと記憶していますが定かではありません。でも「こんなに出る人いるんだ(゜o゜;)」と驚いたのを覚えています。
さて、いよいよ始まりの時間が来ました。アナウンサーらしき司会の男性が開会の挨拶をしたあと、今日のこの「のど自慢」の流れの説明を始めました。
「出場者の皆さんには第一次審査として伴奏なしで一番(ワンコーラス)だけ歌っていただきます。その中から5組が二次審査に進みます。この二次審査からは今日の審査員でもあります作曲家の○○先生(さすがに名前は忘れました^^;)のオルガン伴奏で歌って頂きます。その5組の中から優勝者を決定します」
これを聞いて子供心にちょっとびっくりしたことがあったんです。それは…。
「(このような公の場で)伴奏なしで歌わされる」ということに驚きました。
そういう発想は子供だった私にはなかったんです。
だって音楽の授業の時でもほとんどの場合、先生がピアノで伴奏してくれますからね^^;。
一番だけ歌ってください、というのは時間の都合上仕方ないのは理解できたのですが、え?伴奏がない?
「伴奏なしで歌う?それもウチの妹はピンクレディーを?^^;」
それでもそんな私のビックリを無視するかのように(笑)その「第一次審査」とやらは滞りなく進んでいきました。
私の妹とその友達はピンクレディーの振り付けまでしっかり練習して覚えてきたのですが、そこはまぁ「のど自慢」ですから^^;
肝心の歌唱力など素人以下の二人は無伴奏で振り付けつきピンクレディーを歌ってあえなく、いや当然の如く第一次審査で落選してしまいました。。。
第二次審査に残れるのは5組。ここで私にとってこうして今でも記憶に残っている「もうひとつのビックリ」が起こったんです。
■ 目次
超能力?直前に曲名を聞いてもすぐ弾ける人がいるのは何故?
冒頭に書きましたように出場者は申し込みなど必要なく、出たい人が当日に集まる、というシステム。
ということは審査員であるこの作曲家の先生も当日まで、いや出場者が歌い出すまで曲名などわからないはず…。
なのに二次審査からはこの先生がオルガンを弾いて伴奏すると言っている…。え?そんなことができるものなの???
もちろんその作曲家の先生は、一時審査を通過した5組の出場者の伴奏を滞りなく終えられました。
譜面もなく、今聞いた曲をすぐに弾ける(伴奏できる)その作曲家の先生が、冗談でなく本当に宇宙人(!)に見えました^^;
当時私はピアノを習っていたのですが、そんなことは考えたこともありませんでした。いやおそらく習っていたからこそのこのオドロキだったと思われます。
子供だった私はピアノは譜面を見て弾くもの、あるいは譜面を覚えて暗譜して弾くもの、という固定観念しかなかったんです。
結局その「のど自慢」は(さすがにもう曲名は忘れましたが)小学一年生ぐらいの女の子が子供ばなれした歌唱力で優勝しました(ちなみにラジオ番組では二次審査から流れました。だから私の妹は勿論ラジオには出ていません^^;)。
超能力ではなかったことがわかった瞬間!^^;
あれからもう40年以上経ちました。趣味ではありますが、私もずっと音楽に関わってきてその不思議のカラクリもそれなりにわかるようになりました。
先に結論を書きますと、その審査員の先生の職業は作曲家ですから、すでに何千曲、いやもしかしたら一万曲以上のメロディーとコード進行が、頭の中に入っていたと想像できます。
たかだか素人さんの歌の伴奏を弾くぐらい、全くどうってことなかったんだなということが今になればわかるんですが、当時は本当に「今聞いた曲がすぐ弾ける」ことが不思議で不思議でしょうがなかったんです(^_^;)。
小学六年生の時のその不思議体験から月日は流れて私が16歳の頃にギターを始めてから、それまで習っていたピアノで植え付けられた先入観「楽器を弾くには譜面が必要」から「コードをいくつか覚えるだけでだいたいの曲は歌いながら弾くことができる」ことがわかってきました。
もちろん楽器を弾くには譜面が必要なのことには変わりありませんし、とても大切なことですが^^;。
ギターを弾きだしていくつかのコードを覚えてきた頃、ふと流れてきた知らない曲のコード進行がわかることに気付いたんです。
上記の「不思議体験」のカラクリがわかった瞬間でした。
でもこれはいわゆる「才能」というものではありません。「習慣」です。
たとえば毎日通っている会社や学校までの道のりを迷うことってまずありませんよね。そしてちょっとぐらい近道や遠回りしても通い慣れていれば、感覚でどっちに行けばいいかわかりますよね。これと同じです。
簡単な歌ものの楽曲なら使われているコード(和音)の種類は知れています。それを毎日いろんな曲で弾いてると、まず似たようなコード進行の曲なら一回聞いただけですぐわかります。
でも、たとえば迷路のような道を覚えるにはちょっと時間がかかりますよね。これがジャズ・フュージョン系の※テンションコード満載の楽曲に相当するかも知れません。でもこれも、この「迷路」の道順を毎日通ればいずれ「習慣」にはなってきます。
※テンションコードとは、例えばドミソの和音(Cのコード)にもうひとつ以上、別の音を加えて緊張感を持たせた和音のことです。
そしてこの「コード進行」のカラクリが理屈ではなく感覚でわかってきたら耳でコピーする際の大きなアドバンテージになります。
音程の数は最大でもたったの12音!
耳から聴き取って譜面にする場合、まず調や拍子を確認するのは当然として最も時間を掛けるのが音そのものの聞き取りになります。
一見難しいように見えますが、音の進む方向に沿っていけばそんな難しいことではありません。
なぜならピアノの音程は最大12音。この中から探せばいいだけなんですよね。
だから外を歩いてるときのように「道に迷って全くわからなくなった」ということにはなりません。
「いい日旅立ち」(作詞 作曲:谷村新司)を耳コピーしてみました!
※耳コピー(採譜)と演奏は私です。
「いい日旅立ち」は日本人なら誰もが知るスタンダード曲。有名なのは山口百恵ですが、ここでは谷村新司がピアノ一台で歌っているバージョンの伴奏を私が耳でコピーした動画を貼り付けします。
この曲の調(キー)はニ短調(Dm)で拍子は4分の4です。
Dmのスリーコード(主要三和音)はDm(レ ファ ラ) Gm(ソ シ♭ レ) A7(ラ ド# ミ) になります。
ピアノ一台の曲を聞き取るのはオーケストラやバンド編成の曲を聞き取るよりアレンジの必要がないのである意味、楽(ラク)ではあります。
しかしそっくりそのままコピーするにはそれなりの耳コピー経験は必要ではありますね。
でも和音の音の並びなどそこまで細かく完璧に聞き分けるのはプロでもなかなかできることではないので、最初は軽い気持ちで始めてみてください。
とにかく「使われる音程は最大12音」ということを忘れなければ途方にくれることはありませんから(*^^*)
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
まとめ
1.子供時代に見た「素人のど自慢」のお話。2.審査員は超能力者か?
3.才能ではなく習慣で耳コピーはできる!
4.音探しにどんなに迷っても使われる音程は最大12音!
5.谷村新司「いい日旅立ち」のピアノ一台(伴奏)バージョンを耳コピーしてみました。