ショパンのバラード第1番は、彼の数あるピアノ曲の中でも突出して人気のある曲の一つですよね。演奏時間が10分程度にも及ぶ長大なピアノ独奏曲でありながら、聴く人を全く飽きさせない構想力!まさにショパンの真髄が発揮された曲と言えるのではないでしょうか。

ショパンと同時代に活躍したロベルト・シューマンはこの曲に関して「ショパンの曲で最も好きだ」「この曲は大変優れている。しかし、彼の作品の中では最も天才的・独創的なものというわけでもない」と評しているということです。

ショパンは同時期に「スケルツォ第1番」、「華麗なる大円舞曲」、「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」などの傑作を量産している時期でもあり(私からみたらどれも天才的で独創的ですが!)、シューマンの評価も致し方ないところでしょう。

著名な映画やフィギュアスケートのBGMにも使用されている曲なので、知らない人は少ない超有名なバラード第一番、是非マスターしたいですね!



バラードってどういうジャンル!?


ショパンは非常に多くの作品を作りましたが、特にピアノ独奏曲に関しては様々なジャンルの曲を作曲しています。思いつくだけでも、「ノクターン」「ロンド」「ワルツ」「マズルカ」「ポロネーズ」「スケルツォ」「プレリュード」などが思い浮かびます。

「バラード」というのもそれらのうちの一つですが、ワルツやマズルカなどのように伝統的に存在するジャンルに対してショパンなりの作曲をしたというのではなく、ピアノ独奏曲としてショパン自らが切り開いたジャンルです。

その源泉となったのは、ポーランドの詩人であるアダム・ミツキエヴィチの「バラッド」(古い歴史物語を詠んだ詩)であると言われています。

(ただ、具体的にどのバラードがどの詩に基づいて作曲されているかということまでは特定されていません。おそらく物語をそのまま曲にしたというのではなく、物語からインスピレーションを得たというようなものなのでしょう。)

ショパンが手がけた他のジャンルの曲と比較しても、気分や感情をそのまま楽曲に表現した「ノクターン」や「マズルカ」などのような叙情的な曲ではなく、物語的でドラマチックな起承転結が感じられる曲が集まったジャンルになっています。

ですので、バラードを演奏する際には、物語としての意味付けや起承転結にイメージを膨らませながら弾けるようになると、より納得感のある演奏になると思います!

ショパン「バラード第1番」の難易度


ショパンのバラード第1番は全音ピアノピースの難易度評価で「F(上級上)」です。華麗な演奏効果を発揮するために色々なテクニックを駆使する必要がありますので、最高難度になるのも納得ですよね!

全音の難易度評価で「F(上級上)」であるこの曲の中でも、最も難しい部分は曲の最後にあるcoda(Presto con fuoco)の部分(動画7:00~)です。

右手は敏捷に鍵盤の上を移動しつつ、裏打ちのアクセントをつけながらメロディーラインを浮き彫りにしなければなりません。そして、左手は楽譜だけ見ると簡単に見えますが、跳躍を正しくこなしながら、右手と同様にメロディーラインを出していく必要があります。

正直、テクニック不足の人がこの部分を演奏すると、ガチャガチャしているだけでどこにメロディーがあるのかもわからないレベルの演奏になります。ですので、この曲にチャレンジしたいと思う方は、まずcodaが弾けるかを試してから演奏した方がよいです。

(曲の最後が一番難しいので、頭から練習していると、この部分で挫折して時間を無駄にする可能性があります!)

また、coda以外の部分も難易度が高い部分が多く、また自由な形式であるがゆえに同じ部分の繰り返しというのがほとんどありません。ですので、音大生などのように専門的にピアノに取り組んでいる人でなければ習得には根気と時間が必要になるでしょう。

私はこの曲を大学3年生~4年生の間で約2年かけて習得しました。私の28年間のピアノ人生の中でも技術的な面で最もハードで習得に時間がかかった曲の一つですが、しっかりと弾き切ったときの快感は今でも忘れられません。

これからチャレンジする方も、是非根気よく練習を重ねてマスターしてくださいね!

上手に弾くためには、リズム感に気をつけよう!


全音の難易度評価で最高難度とされているバラード第1番。当たり前ですがこの曲を上手に弾けるようになるには、まずは技術レベルを上げることが必要ですし、この曲にチャレンジしようとしている方は既に相当な技術レベルにある方だと思います。

そういう意味で、この曲の上達のコツは「一に練習、二に練習」にあるのですが、「いくら練習してもイメージ通りの曲にならない!」という人はリズム感に注意してみましょう。

バラード第1番は冒頭のLargo、終盤のcoda(Presto con fuoco)の部分を除いて4分の6拍子の曲なのですが、勘違いしやすいのは3拍子系のリズムの取り方をしてしまうことです。つまり「ズン・タッ・タッ」「ズン・タッ・タッ」ですね。

楽譜を見てみるとわかりますが、確かに1小節に4分音符のかたまりが2つあるリズムになっているので、ちょっと気を抜くとワルツのような拍子の取り方をしてしまいそうです。

ただ、4分の6拍子はワルツやマズルカのような3拍子系の舞曲の拍子ではなく、2拍子系の拍子です。「強―弱」の2拍子で構成される、前に進んでいく力がとても強い拍子なので、それを意識してください。

具体的に見ていくと、曲冒頭部や中間部に気をつけたい部分が出てきます。

まず冒頭部(動画0:40~)ですが、赤枠で囲われた旋律部(付点2分音符3つ)が一つのフレーズをなしています。

たとえば一つ目の赤枠だと、G→D→Cの3つの音が一つのまとまりになっています。3拍子のリズムで弾くと、メロディーがブツブツ切れたような演奏になってしまうので、注意が必要です。


次に中間部(動画4:59~)の以下の赤枠で囲われた部分ですが、まるでワルツのような音の動きをしていますよね。この部分も1小節が一つのかたまりになるよう両手のフレージングやペダリングに気をつけて、小節内でぶつ切りにならないようにしましょう。


「バラード第1番」の弾き方のコツと難易度まとめ


1.ピアノ独奏曲のジャンルとしての「バラード」を開拓したのはバラード第1番を作曲したショパン本人。歴史物語にインスピレーションを得たと言われており、ドラマチックな起承転結があるのが特徴です。

2.「バラード第1番」の難易度は「F(上級上)」。特に最後のcoda部が非常に難しく、練習に取り組む前にこの部分が弾けそうかを試してみるとよいでしょう。

3.上手に弾くためのコツは4分の6拍子のリズムを正しく演奏すること。特に3拍子のリズムの取り方をするとメロディーがブツブツ切れてしまうので、2拍子系のリズムであることを意識しましょう。

以上、ショパンのバラード第1番の弾き方のコツと難易度をご紹介しました。とても難しい曲ですが、弾けるととてもカッコいい曲ですので是非マスターしてくださいね!


「バラード第1番」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1878年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版された楽譜です。

ショパン「バラード」の記事一覧