まだ続くのか?これで何回目だろう??

その時私はサッカーグラウンド応援席で応援ブラスバンド要員としてラッパを吹いていました。ひたすら「アイーダ」の凱旋行進曲を吹き続けてようやく後半戦。もう唇が麻痺しています・・・サッカーの場合、野球応援とは違い選手交代などの合間は無くずっと吹きっぱなしです。

人生の中でこれだけ繰り返しアイーダの行進曲を吹く事はまずありえないでしょう…しかしグランドの選手達はまだ走り回っています。なんて体力だ!!

サッカー選手は凄いと思います。いや、何より体力が凄いと思います。あの広いフィールドを約45分間、しかも前半後半2回の計90分走り回り続けます。それも全て足でボールを動しつづけながらです。

ヴェルディの代表的オペラ、アイーダの凱旋行進曲は、サッカーでまっさきに思い浮かべる音楽のひとつです。


イタリアのサッカーチーム、パルマFCの応援曲として度々演奏されていたのを、セリエA時代の中田英寿が非常に気に入ったことで日本でも有名になりました。ヴェルディ自身このパルマの近くのブッセートという小さな街が出身地なのです。


何かの縁があるのか私自身このアイーダを演奏する機会に何度か巡りあうことができました。先ほどの地獄のようなサッカー応援の他に吹奏楽、オーケストラのみ、オケと合唱付、そしてオペラ全曲のオケ、バンダ、はては舞台上のアイーダトランペット部隊として。

今回はオペラの中でも人気があるばかりで無く傑作中の傑作「アイーダ」を2幕の有名な凱旋行進曲を中心に舞台上からもご紹介したいと思います。

エジプトもこれからはヨーロッパの一員に!

今から約100年以上前。エジプトの王イスマイル・パシャは困っていました。世紀の大事業、スエズ運河が開通し、記念事業の一環としてカイロに立派なオペラ劇場を造ったにもかかわらず劇場にふさわしい演目がまだ無い。

「これからのエジプトはアフリカの一部ではなくヨーロッパの一部となるのだッ!」と信念を燃やすイスマイル王はとにかくヨーロッパの有名な作曲家のオペラを上演したいと熱望していました。

すでにヴェルディの「リゴレット」はこけら落としに上演されたものの、やっぱり歴史ある我がエジプトを舞台にした、ド派手なオペラが欲しい!そこでリゴレットと同じヴェルディに作曲を依頼し誕生したのが、数あるオペラの中でも人気のある「アイーダ」です。

ちなみに王は、もしヴェルディが作曲の依頼を断ったら、ライバルであるワーグナーに依頼するつもりだった様です。エジプト風のワーグナー、どんな曲になっていたのでしょう…

3分でわかる!かもしれない!アイーダあらすじ


ヴェルディのオペラは登場人物の絡みが複雑でわかりにくかったりします。全曲で2時間強のオペラですが、ここで簡単にあらすじを説明しましょう。

アイーダ全曲はサッカーのように前半後半戦2つに分けてみるとわかりやすいかもしれません。音楽的にも物語的にも1,2幕で1つ、3,4幕で1つ、でまとまっていると私は感じます。



前半戦の1,2幕はラダメスの素晴らしいアリア(8:00~)やエジプト風の踊りなど(35:17~)、凱旋行進曲を頂点とした派手なオーケストレーションが主で、親しみやすく華やかな音楽がちりばめられています。

後半戦3,4幕は(1:27:50~、動画では2幕となっていますが3幕です)アイーダの美しいアリアもありますが(1:34:07~オーボエの綺麗な旋律)、人間の深い心理描写と、激しく動く登場人物の心の動き、タイトルロールのアイーダ以上に存在感のあるアムネリスの劇(2:13:50付近~)そしてラストの革新的な地上と地下の二重舞台(2:26:10~)などヴェルディの求めた音楽がいかんなく展開されます。

1幕と2幕

アイーダはエジプトの王女アムネリスに仕える奴隷の女の子。元々はエジプトと敵対しているエチオピアの王女ですが、その素性は誰も知りません。アイーダは若きエジプトの司令官ラダメスと、ラダメスが一介の戦士だったころから相思相愛でしたが、王女アムネリスもまたラダメスに想いを寄せています。

アムネリスは嫉妬心からアイーダに、エチオピアとの戦争に出向いたラダメスが戦死したとウソをついたり、ラダメスは私のもの、アンタは奴隷だから、とチクチクとアイーダをイジメます。王女の権力使いまくりです…

エチオピアとの戦争に勝利したエジプトは多くの捕虜を連れて凱旋します。その捕虜の中に敵国エチオピア王アモナズロ、つまりアイーダの父もいました。

アイーダの父が捕虜に混じっていることがエジプト王の耳に入り、アイーダの嘆願もあり、アイーダの父のみを捕虜とする事を条件に捕虜達は釈放されます(アイーダの父がエチオピア王だということはエジプト王たちは知りません)。完全なエジプトの勝利でした。全曲中最も盛り上がる場面です。


3幕と4幕

捕虜となったアモナズロ王は娘のアイーダにラダメスから次のエジプト軍の作戦を聞き出すように働きかけます。

愛するアイーダの為ならとラダメスは作戦をバラしてしまい、そこへアイーダの父がエチオピア王として登場します。さらにそこへエジプト王やアムネリスらが現れ、アイーダ親子は逃れますが、重要機密を敵対するエチオピア王にバラしてしまったことを知ったラダメスは自ら逮捕されます。

アムネリスはアイーダのことを忘れるなら罪を許してもらえるよう働きかけるとラダメスに提案しますが、ラダメスはこれを断り地下牢へ投獄されます。

その地下牢にはアイーダが最後まで添い遂げようと待っていました。二人はこの世に最後の別れを告げ、同時に地上ではアムネリスがラダメスの冥福を祈り、幕は降ります。


凱旋行進曲「来たれ!戦士よ」



この動画は音楽を聴きながら日本語訳も同時に見られる大変素晴らしいサイト「オペラ対訳プロジェクト」のものです。重奏の部分もリアルタイムに訳が見られ、テロップも場面に合わせた演出だったり画期的です!超オススメです!!

数あるオペラの中でも特に有名な、第2幕の2場、凱旋行進曲。力強い音楽、合唱、舞台。さらに演出によっては隊列に本物のゾウ等が登場するド派手さです。この凱旋行進曲の部分のみが独立して演奏されることも多いですね。

トランペットのファンファーレから前奏が始まり、一旦曲が落ち着いた所でトランペットファンファーレと合唱による「栄光あれ!エジプトに(グローリア)」が始まります(動画16:56~)。ここからがヴェルディのオーケストレーションが存分に発揮されるところです。

ここのトランペットは舞台裏のブラスバンド部隊です。簡単な音形のアンサンブルですが、まるでトランペットと合唱がお互いに共鳴しているような壮大な感覚になります(17:25)

続いて合唱の「栄光あれ、賛歌をわれらは歌う」をバックにオーケストラピットのトランペットが旋律を吹きますが、これは合唱団を伴奏にソロを吹いているようで、とてもワクワクしてきます(17:40~)。贅沢な一瞬です。

司祭たちの神を讃えるやや重々しい合唱(18:50~)。そして「まるで太陽の周りを星たちが天空で踊るように」で盛り上がり曲が一区切りつきます(19:34~)。そして、ここからがアイーダトランペットの出番です!(19:44~)

アイーダトランペットとは



このアイーダの凱旋行進曲のために、当時の古代エジプトの文献から再現した完全なヴェルディのオーダーメイドの楽器です。(ですが、最近の研究で、古代エジプトのトランペットはもっとずっと短かったことがわかってきたようです…)

調性が半音違う2つのパートをそれぞれ3本ずつ、計6本のアイーダトランペットがあの有名な旋律を吹きます。特徴は言うまでもなく、上の写真の通り「なんか長くてカッコイイ!!」です。しかしツッコミをいれずにはいられない点があります。

ピストンが一本しかねェ!

ナチュラルトランペットのピストンがねェ!よりはまだマシですがどうやってあのサッカーの応援歌をふくのか?

安心して下さい。キチンと演奏できます!

この旋律は実際普通のB♭トランペットで吹いても1番ピストンだけの操作で演奏できます。

・アイーダトランペット隊1

・アイーダトランペット隊2

下の♯が多い楽譜でも、管長が少し違うので同じ指使いでOKです。ちなみにマーチングバンドなどで使われるトランペット(ビューグルともいいます)にもピストンが2本のものがあります。高音を主に担当します、というより高音域の指使いしかできません(^^;;不思議なことにピストンが少ないトランペットはとても明るい音がします。

指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンはウィーンフィルでアイーダを演奏する際、ここは長いトランペットじゃなきゃイヤーダ!と日本のヤマハ(株)に特注でアイーダトランペットを注文し、正式にウィーンフィルの所有楽器となりました。3本ロータリーのYTR-945Fというモデルです。

ヤマハの当時の技術者の方たちは、エジプトの文献から研究しこのトランペットを開発しました。

https://blogs.yahoo.co.jp/mahalo04/56696848.html



また、初演当時の一本ピストンのアイーダトランペットは第二次世界大戦の時に破損して残っておらず、カラヤンの最盛期の時はヤマハのような3本ピストンのものが主流でしたが、ニコラウス・アーノンクールが当時の一本ピストンのものを復元し録音を残しています。

ウィーンフィル仕様以外で現在主流で使われるアイーダトランペットはこちら。形状が似ている他社製品をご紹介。三本ピストンですが、ながーいトランペットがほしい方はこちら!!
http://k-gakki.ocnk.net/product/5949 
ファンファーレ・トランペット【ジンバオジャパン】JBHT-1300L
ファンファーレ・トランペット【ジンバオジャパン】JBHT-1300L


こちらは本当の一本ピストンのものです。ガチのアイーダトランペットが欲しい方はこちら!
https://www.kirstein.de/en/Wind-Instruments/Brass/Trumpets/Classic-Cantabile-AT-1871-Aida-Trumpet.html


このアイーダトランペット隊が演奏している間は、捕虜たちやエジプト軍の戦利品が続々と運ばれてきます。

アイーダトランペット隊が終わると息をつく間も無くバレエが始まります(21:33~ドラえもん注意)。どこかエジプト風な独特な和音と旋律、そして後ほどお話ししますが非常に綺麗で神秘的な踊りが繰り広げられます。

そしてバレエが終わると再び凱旋行進曲です。次第にスピードを増していく様子はとても100年前に作曲されたものとは思えないほど。まさに「スペクタクル」です(26:04~)

そして最後は雄大盛大に賛歌「来たれ、戦士よ」が歌われ(27:03~)、最高に盛り上がった所でさらにスピーディーに展開してゆき(27:53~)、神官たちの合唱と民衆の合唱が見事に絡み合い、アイーダトランペット隊の華々しい三連符ファンファーレとともに曲を締めます。(28:16~)

まさに大団円とはこのことです!!

おっと!待って下さい!まだ終わりではありませんヨ!!オススメの聴き方

ここまでがよく単独で演奏される凱旋行進曲です。しかし!!私は是非是非この後の2幕の終わりまで聴くことを強くオススメします!!この後に展開されるドラマと盛り上りこそ、まさにアイーダ全曲のエッセンスがグッと凝縮された名曲名場面なのです。

勝利とは対照的な捕虜達の憂鬱感、捕虜達のなかにアイーダの父アモナズロを見つけ出し、自らの正体を打ち明けた時の衝撃(30:45~)、最後まで戦ったが死ぬことができなかった、と説明し低音楽器と打楽器が衝撃的な一音を発します。ここは歌を超えた語りのような表現となっています。

その後アモナズロが戦いに敗れ、多くの部下を失ったくだりの緊張感ある旋律(31:42~)から、「祖国を愛することが罪であらば~」からの言葉は感動的です(32:30~)。そして自らの身柄と引き換えに全ての捕虜を釈放してほしいと嘆願する美しいアリア。(32:46~)

アモナズロとともに慈悲を請う捕虜たちの合唱。しかしそれに反対するエジプト側の司祭たちの重々しい合唱。(33:18~)

アイーダも慈悲を請います。その姿をみて心動かされるラダメス。そしてアイーダに心を動かされているラダメスをみて、激しい嫉妬に燃えるアムネリス王女。それぞれの旋律が同時に重奏となって歌われます(34:17~)

そしてついに一番の手柄をたてたラダメスが王に捕虜の釈放を求め(37:03~)、エジプト王もそれに同意し(38:48~)、娘のアムネリスをラダメスの妻とすることを認めます(39:08~)

反対していた司祭たちも王を讃え、民衆とともに大合唱となります(40:09~)

しかし、華々しい大合唱の影でそれぞれの人物の心の葛藤や諦め、嫉妬、謀略などが同時に歌われます。(動画最後まで)

ますますアイーダへの愛が深まるラダメス、かなわなくなった恋に絶望するアイーダ、ラダメスの心を奪っているアイーダへの激しい嫉妬心を燃やすアムネリス、そして復讐のチャンスを画策するアモナズロ。

それぞれの思惑が複雑に絡み合いながらも、捕虜達を解放する事に同意した王の偉大さを讃える大賛歌とアイーダトランペット隊による、凱旋行進曲以上の盛り上がりで第2幕を下ろします。

凱旋行進曲が約12分、その後のドラマは約15分。是非最後までお付き合い下さい。アイーダ全曲の一区切りであり、ヴェルディの特長が満載の非常に感動的な場面です。

アイーダ体験記

半裸のラッパ吹き、地面に放り出されるアモナズロにビビる!

ヴェルディのオペラは本当に劇的です。

その日は舞台の衣装合わせ兼最終リハーサルでした。本番と同じ衣装で本番と同じ様に演奏、歌手は振り付けも行います。そのアイーダの公演で私はアイーダトランペット隊の一人として出演させて頂く機会をもらえました。

アイーダトランペットはヤマハ(株)よりレンタルされたファンファーレトランペット6本、非常に古い楽器で今にも壊れそうでした。これが後ほど悲劇を呼びます…

そして衣装。衣装を着て舞台に出るなんて小学生の学芸会以来です。しかもエジプトのラッパ吹きという事で、けっこう露出度の高い衣装でした。パンツも見えそうです。そしてプヨプヨのお腹も露出度満点。ライ○ップで鍛えておけばよかった…当時はまだありませんが。

少々恥ずかしいですが、これはもう覚悟を決めるしかありません。語弊があるかもしれませんが、忘年会等で腹踊りをするのと同じ覚悟で挑むしかありません…

凱旋行進曲が終わってしばらくアイーダトランペット隊は王の横で立っているのですが途中驚く出来事が!アモナズロが捕虜達の中から引きずり出され私の目の前の地面にバターンッッ!と叩きつけられます。もちろん劇の振り付けとわかっていても、突然目の前でこのような激しいドラマが展開されるとビビります(^^;;他のオペラや演奏会ではこんな激しい動きは、あまりありませんので思わず「ヒェッ!」となります。

トランペットをこわしちゃった!!どうしよう→透明強力テープを持てぇーい!

いよいよ本番当日、リハーサルも終わり私達アイーダトランペット隊6名はこれから始まる本番の舞台上でくつろいでいました。2幕の舞台は簡素ながらも凱旋行進曲に相応しい豪華なものです。

全長で1m以上あるアイーダトランペットはレンタル楽器のせいか非常に古く、表面も汚れで曇っていました。そこでより豪華に見せようと楽器用の磨き布でベルを拭いていると…

バキッ!

といういやらしい音がしました。なんと、ベルが縦方向に割れてしまったのです。元々亀裂が入っていたのでしょう、トランペットは人間の力程度では割れたりはしません。私は一瞬真っ青になりましたが、慌てず騒がず。

そのまま吹いてみると音が全く響きません。でもベルが割れても繋いでしまえば応急処置ですが音は問題なく出せます。

そこで、すぐに透明なテープでしっかり繋いで無事本番を乗り切ることができました。元々古く、メンテナンスも必要な楽器だったということでヤマハ(株)さんにも了承していただきました。トランペット吹きの皆さんも本番前はあまりお手入れや掃除はしない方がいいと思います。

バレエの魅力

ステージリハーサルの時、ある事に衝撃を受けました。バレエの素晴らしさに初めて気付いたのです。

その時、たまたまバレエの部分を何度か繰り返しリハーサルしていました。先ほどのベルが割れた危機感から解放された私は舞台上手からその様子を見ていたのですが、バレエの踊り手さん達を観ていたら、突然雷に打たれた様にその美しさに目を覚まされたのです。。

手と脚が、指先が!体全体がこれほどまでに綺麗にしなやかに!美しく動く!というよりまさに「舞う!」姿に深く感動しました。これはもう、お腹プヨプヨの私の様なアイーダトランペット隊とは対照的です!今までの音楽体験で忘れられない一瞬でした。

バレエというとどこか特別な、西洋の舞台芸術として、とっつきにくい感じがしますが、是非チャンスがあれば、出来るだけ間近で観ることをオススメします。

この感動をきっかけにアダン、ジゼル、チャイコフスキー等、バレエの素晴らしさに気付くことができたのです。是非バレエはなるべく近い位置で観ることを強くオススメします!テレビやDVDよりも、できるだけ至近距離で観たとき、バレエの本当の魅力に気づくことができると思います。


本番ではきっと、客席からはブヨブヨお腹のアイーダトランペット奏者と、美しいバレリーナの対比がよく活かされて見えたことでしょう。

そして曲は進み、2幕最後ではエジプト王の隣に位置していた私は、王のバリトンの声量の大きさに圧倒されながら最後の三連符ファンファーレを吹き切り、無事アイーダトランペット隊の役を演じ終えることができました。

その後は衣装を着替え、客席で残りの3,4幕を観賞しました。つい先ほどまで立っていた舞台を客席から見るのは何とも不思議な気分です。

名盤紹介

ヴェルディの作品ということばかりでなく、オペラとしても非常に有名な作品ですが不思議と販売されているCDは少ないのです。

全曲

カラヤン/ウィーンフィル
ヴェルディ:歌劇「アイーダ」
ヴェルディ:歌劇「アイーダ」

名盤として名高い1959年録音の盤です。上記の動画の演奏です。レナータ・テバルディとカルロ・ベルゴンツィ、ジュリエッタ・シミオナートなど、当時の名歌手の歌を聴くことができます。劇的な表現を求めるならこちらの盤をオススメします。

凱旋行進曲では、この時代のウィーンフィルの魅力ある音が堪能できますが何と言っても、カラヤンが日本のヤマハに特注したアイーダトランペットが聴けます。

ヴェルディ:「アイーダ」全曲
ヴェルディ:「アイーダ」全曲

カラヤン、ウィーンフィルの2度目の録音ですが、こちらの方がよりオーケストラの音が力強いです。歌手がミレッラ・フレーニ、ホセ・カレーラス、アグネス・バルツァ他。どちらかというとプッチーニのような流麗なメロディーのイメージがあるキャストですが、これもまたアイーダの魅力が充分に感じられます。個人的にこの盤がもっとも好きです。

ムーティ/ニューフィルハーモニア
ヴェルディ / 歌劇「アイーダ」全曲
ヴェルディ / 歌劇「アイーダ」全曲

ヴェルディ以前のイタリアオペラは歌手が自由に装飾音をつけたり、音を上げたりしていましたが、ヴェルディは曲の持つ芸術性を優先するため楽譜通りに演奏することを求めました。

ムーティはそのヴェルディの思惑を忠実に守っている指揮であるといえます。カラヤンのような分厚さや派手さはありませんが、純粋な音楽と、本来のヴェルディが求めたオペラを聴くならこの盤が最も優れていると思います。凱旋行進曲のアンサンブルが速めのテンポながらすばらしい演奏となっています。

ニコラウス・アーノンクール/ウイーンフィル
ヴェルディ:アイーダ
ヴェルディ:アイーダ

私はまだ聴いていないのに紹介してしまう事をお許し下さいm(__)m

先ほど書きましたが、この盤では初演当時のアイーダトランペットを復元して演奏しています。聴きたい!

また凱旋行進曲でのひたすら神に祈る司祭達の合唱を、純粋な聖歌として演奏しておりこれもまたヴェルディが意図した表現…なのかもしれません。聴きたい!

バレエパートも素晴らしい…らしいです。聴きたい!

現在は廃盤だそうです…ネットで中古を注文、今届くのを待っているところなのですm(__)m

いつか必ず聴いた感想をご紹介しますので乞うご期待下さい!

凱旋行進曲のみ

ショルティ/シカゴ交響楽団
凱旋の合唱/ヴェルディ:オペラ合唱曲集
凱旋の合唱/ヴェルディ:オペラ合唱曲集

世界的に有名な指揮者はオペラ指揮を数多くこなし、場数を踏んで成長するようです。カラヤンもショルティも始めはオペラ指揮者として多くの修行をしました。

ショルティはレパートリーの多い指揮者ですが、特にヴェルディを得意としており、数多くの名録音を残しています。

こちらは合唱曲選集ですが、やはりシカゴ交響楽団!完璧な演奏です。アイーダ以外の曲もすばらしいです。

映像

レヴァイン/メトロポリタン歌劇場管弦楽団
ヴェルディ:歌劇《アイーダ》 [DVD]
ヴェルディ:歌劇《アイーダ》 [DVD]

やはりアイーダは舞台演出も見栄えのする曲なので、是非映像もオススメです。

とにかくこれ以上ないくらいのド派手な舞台、衣装です。間違いなく相当お金をかけています^^アムネリスの役が素晴らしいです。

アムネリスには全曲通してアリアが一曲もありません。しかし最も心の動きが多く、歌よりは演技で見せる難しい役割であるといえます。芯の強い女性でありながら一途にラダメスを愛し、激しく嫉妬心を燃やすところなど、最も人間らしいキャラクターです。アムネリスはエジプトの王女で、アイーダはエチオピアの王女なので、どちらかというとアムネリスが本当のヒロインといえるのかもしれません。

ちなみにこのDVDでは2幕の最初のほうで、アムネリスがアイーダに見事なビンタを本当にお見舞いしています。

番外

マリア・カラス/1951年メキシコでのライブ録音
ヴェルディ:歌劇「アイーダ」全曲 1951年メキシコ・シティ・ライヴ
ヴェルディ:歌劇「アイーダ」全曲 1951年メキシコ・シティ・ライヴ

凱旋行進曲ではないのですが、2幕の最後で、カラスがとてつもないハイトーンを出しています。しかも大合唱もオーケストラも飛びぬけてしっかり歌っています。熱狂的な歓声や拍手も収められています。それだけなのですが、その熱狂とカラスのハイトーンが凄まじく、面白いのでここでご紹介しました。録音が古く少々音が悪いのが難点ですが、カラスのハイトーンのために聴く価値ありです。

ヴェルディのオペラの特徴

これまでのオペラは旋律の楽しさや美しさ、歌手の声や衣装演出などを愉しむ娯楽的なものでした。当時のイタリアは一般の人々でも読み書きができない人が多く、オペラは目と耳で楽しめる誰でもわかりやすい、現代で言う映画のような位置づけでした。今の私達はオペラというと高級志向の音楽と感じてしまいがちですが、本来は大衆向けの娯楽なのです。

ヴェルディのオペラは他の「作曲家」とは大きく違う点があります。

それは歌手の歌声や旋律よりも、人物の劇的な心理の変化と内面描写に重点を置いた事です。この点はワーグナーの楽劇にもみられますがヴェルディの歌劇はより心の動きが流動的で、簡潔で無駄のない音楽となっています。また、美しい旋律やイタリアらしい明るい旋律もありますが、心の描写を重視しているので、まるで語りかけるような音楽となっています。

凱旋行進曲のアイーダトランペットの旋律も、単純に聞こえますが楽譜はクレシエンド、デクレシエンドが事細かに書かれています。

これまでイタリアオペラ作曲家は歌手に合わせて曲を作らなければなりませんでした。作曲家が作った曲は二の次で、アイドルである歌手が歌うことが優先されたので楽譜もしょっちゅう書き換えられていました。著作権を保護することも確立されていなかったため、作曲家はいわば「製造職人」のような感じでした。

小中学生の頃の音楽室に飾られている作曲家の肖像画を思い出してみてほしいのですが、ほとんどがバッハ、ベートーヴェン、シューマンなどのドイツの作曲家が多くを占めていたと思います。イタリアの作曲家が少ないのもそういった理由からだと私は考えています。

そこでヴェルディは曲の内容を重視し、演奏する側が曲の持つ芸術を再現することを歌手に求めたのです。つまり作曲家の地位を安定させ、作品そのものも保護しようとした人物でもあったのです。著作権の確立のようなものでしょうか。完成された曲を作り、それを上演すればそのたびに版権使用料がもらえるといった構図です。

後のプッチーニも10曲しかオペラを残していませんが、上演されれば著作権使用料が得られるので生活は安定していたのです。こういったこともヴェルディの残した大きな業績といえます。

またヴェルディは人々のために病院や老人ホームも建てた実業家でもありましたが、これはまたの機会にご紹介しましょう。

数あるオペラの中で、このアイーダほど力強いオーケストレーションと合唱を伴った曲は中々ありません。たたきつけるような激しいオーケストラヒットや楽しい旋律、思い通りにならない心の葛藤等々、聴けば聴くほど奥が深い、それがヴェルディの音楽の特徴です。

ヴェルディの力強い意思の音楽を聴いていると勇気付けられます。サッカーの応援歌としてもふさわしい音楽です。この凱旋行進曲を聴いて一日一日を頑張って乗り切っていきましょう!!半裸で。



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