ピアノを習われていた方や現在習われている方はハノンを使ったことがある人が割と多いのではないでしょうか?

ヤマハなどの楽譜売り場を見たことがある人なら必ず「ハノン」の楽譜を見たことがあると思います。

ハノンを1冊も置いていない販売店はまずないと思います。それだけピアノ楽譜の中でもメジャーな楽譜でよく売れるのだと思います。

楽譜は1社だけが出しているというわけではなく、たくさんの出版社が出しています。出版社ごとに解釈が少しずつ違っていたり、曲や作曲家の解説が加えてあったりとそれぞれの特色を出しています。

これまでバイエルブルグミュラーなどの曲集について書いてきましたが、今回取り上げるハノンがもしかすると1番種類が多いかもしれません。

今回はピアノを弾いている人以外でも名前くらいは聞いたことがあるであろうハノンについて書いていきます。

ハノンはどんな人?


ハノンは1819年にフランスで生まれ1900年に同じくフランスで亡くなった作曲家、オルガニスト、ピアニストです。

同世代の作曲家はブラームス(1833-1897)がいます。ハノンは音楽の時代区分から見ると後期ロマン派の時代の人ということになります。

彼のフルネームはCharles Louis Hanon(シャルル ルイス アノン)と言います。フランス語では本来アノンとなるそうですが、日本など多くの国でハノンと呼ばれています。

ハノンというと「Le Pianiste Virtuose en 60 Exercices」(60の練習曲によるヴィルトゥオーゾ・ピアニスト)のことを指しますが、この他にも「初歩のピアノ教本」や「大作曲家の名曲より要約」、「50歌曲集」などを書いています。

「60の練習曲によるヴィルトゥオーゾ・ピアニスト」を書いたのはローマの音楽院で作曲の名誉教授をしていた頃だったようです。

彼は奏者として活躍しただけでなく、後進の指導にも力を入れており教育者としても活躍しました。

教育者となって多くの生徒たちに接することでどんな練習をすればよりピアノが弾きやすくなるのかということをハノン自身が学んでいき、それをより多くの人に知ってもらうためにこの教本を書き残してくれたのではないかと思います。

音楽院の名誉教授という立場にあったハノンが書いた教本ということもあり、この教本は各国の音楽院の教授たちから支持され、多くの人達が使う教本となりました。

ハノンって何の練習?

全訳ハノンピアノ教本 全音ピアノライブラリー

皆さんご存知の通り、ハノンは指練習なのですが、実はただしっかり指を上げて弾いたり、速く弾いたりするだけのものではないんです。

ハノン自身がこの教本の目標をはじめに書いています。

●指を動きやすくすること
●指を独立させること
●指の力をつけること
●粒をそろえること
●手首を柔らかくすること
●よい演奏に必要な特別な練習を全部入れること
●左手が右手と同じように自由になること

そして最後に「ピアノの難しさをとくカギとして皆さんに捧げます」と書いてあります。

このハノンの言葉を見ると力強く弾けるようになったり、速く弾けるようになったりすることだけを目標にしているわけではないことがわかります。

粒をそろえることや手首を柔らかくするということも考えてあるのです。

どんなに指が速く動いていたとしても音楽的に弾けていないと素敵な演奏とは言えません。ハノンは音楽的に弾けるようにするためにもこの教本を作ったのです。

教える側がどのように教えるかによって機械的な演奏になるのか、音楽的な演奏になるのかが変わってきてしまうと思うのですが、決して機械的に指を動かす練習ということではないというのは理解しておきましょう。

ハノンと同じような指練習の曲集は他にもある


指練習の教本というのはハノンだけではありません。

●ピアノのテクニック
新訂 ピアノのテクニック
新訂 ピアノのテクニック

子供の場合、ハノンは長過ぎて最後まで集中して弾くことができず、ただ弾くだけなってしまうことが多々あります。

この教本はハノンよりも短く、リズム練習のパターンが楽譜の下にいくつも書いてあるのでパターンを変えて集中させて弾かせることができます。

●ピッシュナ
Little Pischna: 48 Practice Pieces
Little Pischna: 48 Practice Pieces

ハノンはハ長調で書いてありますが(音階やアルペジオ以外)、ピッシュナは1小節ごとに調が変わります。指の練習をしながら調性感をつけることができます。

指練習の教本はいろいろありますが、それぞれの教本によって良さがあります。どれもこれもやる必要はありませんが、特徴をよく理解して自分に合ったものを選ぶということも必要かもしれません。

ハノンは楽譜通り弾くだけじゃない!


1番~38番は指の広げかたや指の動かす順番がそれぞれで違いますが、それほど難しくはないと思います。

39番からは音階や半音階、アルペジオ、連打、トリル、3度、オクターブなどの練習になっていて弾きにくいものも多く出てきます。

ハノンを最後まで弾いた人はあまりいないと思いますが、音階やアルペジオは曲の中によく出てくるので、39番の音階と41番のアルペジオはやっておきましょう。全調載っているので、調性感もつくと思います。

意外と見落とされているのではないかと思うのですが、1番に入る前のページには1番の変奏の例というページがあります。

そこには22パターンのリズム練習の仕方が書いてあります。

1番の楽譜に書いてあることだけを弾くのではなく、リズム練習をするということもよい方法ですよと書いてあるのです。これは1番以降も同様です。(22パターンのリズム練習を全てするというのは大変なのでピックアップして練習するといいと思います。)

それぞれの楽譜の上や下に何番~何番まで続けて弾きなさいとかその番号の注意点について書いてあります。それをよく読んでどんな練習をさせたいのか理解して練習しましょう。

ただ指を動かすだけでなく音楽的に弾けるように心がけなくてはいけません。

リズム練習をするのはとても良いことなのですが、間違った練習方法では意味がありません。しっかり弾こうと思って手首をふって弾いたり、力をガチガチに入れて弾いたりしないように気をつけましょう。

指が独立して動かせるようになったら1つずつ弾くのではなく、組にして弾けるようになると動きが出るようになります。

拍を意識して弾くというのがポイントでこのような指練習であっても常に意識していると音楽的に弾けるようになります。

ハノンはほとんどがハ長調で書かれていますが、移調して弾くというのもよい練習になると思いますので是非挑戦してみて下さい。

ハ長調だと簡単に弾けても、調を変えると♯や♭がつくことで弾きにくくなる部分が出てくると思います。

曲はハ長調ばかりで書かれているわけではなく、いろんな調で書かれています。このような練習をしておくとハ長調以外の調を大変だと思わずにすむようになりますし、曲の途中で調が変わったりしても難しさをあまり感じることなく進んでいけるのではないかなと思います。

この他にもユニゾンで弾かないで片方を和音で弾くという方法があります。メロディーに合う和音を自分でつけて弾くのですが、この練習をすると和声感もつくようになります。

最初は左手を和音で弾き、途中で交代させるというのもおもしろいと思います。余裕が出てきたら和音でのばしっぱなしではなく、リズムをつけて刻んでみたりするとよりおもしろいですね。

このような感じで自分流にアレンジをして楽しむというのもアリではないでしょうか。

おもしろくないと思いながらただ指を動かして弾くより、楽しんで弾く指練習の方がためになると思いますし、指練習が苦痛な時間とならなくていいのではないかなと思います。

指練習を機械的にやっている人はかなり多いと思いますが、少し意識を変えて練習するだけで見違えるように動きが出て素敵に弾けるようになります。

指のための練習ではありますが、気持ちが全く入っていない弾き方にならないように、心も動かして弾くようにして下さいね!

普段から基礎的な練習をしておくと曲を弾くときなどに、それほどリズム練習をしなくても粒がそろうようになります。そうするとリズム練習に割く時間が浮きますのでその分曲想に時間を使うことができます。

基礎はやっぱり大事です!基礎をおろそかにしないようにしましょう!!

まとめ

◆ハノンはフランス出身の作曲家、オルガニスト、ピアニスト
◆22パターンのリズム練習の仕方が書いてある
◆ただ指を動かすだけにしない
◆調を変えて弾いてみる
◆和音をつけて弾いてみる



「ハノン(60の練習曲によるヴィルトゥオーゾ・ピアニスト)」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1900年にシャーマー社から出版された楽譜です。

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