陸上競技金メダリストのウサイン・ボルトがニュース番組で日本の選手に言った言葉が印象的でした。

スピードを保てばいいのに、さらにスピードを上げようとしている。
大事なことは、トップスピードに乗ったらフォームを保ち、スピードを維持することだ。
多くの選手は、トップスピードから、さらに速くなろうとする。
それでは、速度にテクニックが追いつかず、逆に遅くなってしまう。
トップスピードに乗ったら、それ以上は速くならない。
だからといって「その記録を超えよう」と焦ってはいけない。
速く走ることばかり考えて、逆に遅くなる選手はたくさんいる。
速く走ろうなんて考えるな。「自分の走りをすることだけ」を考えたほうがいい。


序章1. さまよえるトランペット吹き
「先生!どうやったら高い音が出せるようになりますか!?」

間違いなく!!トランペットを吹き始めて日が浅い人も何十年吹いてる人も、必ずこの疑問の答えが知りたいはずです。知りたいだけじゃない、高い音が出せるようになれるなら、何でもします!!という人が99.999・・%だと思います。

そのために様々な教本を読んだり、先生にレッスンを受けたり、小さくて浅いマウスピースを何本も買ってはお蔵入りにしたり、悩んで悩んで、迷える子羊のようにインターネットで検索して、そしてこの記事にたどり着いた。そしたらなんかボルトの事が書いてある、なんだこりゃ?と思った。ズバリそうですね??

そしてここまでに様々な人が様々に方法を述べています。アパチュアを狭くとか、息のスピードを速くとか、リップスラーを練習しようとか、高い音が出せないからって自虐的になるなとか、「気合だ気合だ気合だー!!」等々。しかしどうでしょう?実際にそれで高い音が出せる様になったでしょうか?多くの人はそれでもなかなか出せないでいると思います。

それでは、それが全てウソばっかりかというとそうでは決してありません。どれも正しくて高い音を正しい音で出すために必要なことです。

トランペットが(吹いている人の側が)高い音を出しているときに起きている現象は単に唇が速く振動しているだけでも、マウスピースの押し当てる強さが適切なだけでもなく、息のスピードが速いだけでもありません。楽器側と人間側のそれぞれの要因が重なって初めて音になる、と私は考えます。

人はどうしても、一つの絶対正しい答えを聞いて安心したがるもの。しかし、単に一つか二つの項目の練習だけでは高い音は正しい音では出ないのです。残念ながら特効薬はないのです。

高い音はどうやれば出せるようになるのか?ただ一つの答えだけ探し求めてもダメです。色々な角度から研究して、やってみて、自分に足りない何かを見つけて、意識して克服するしかないのです。しかもそれを見つけられるのは・・・ズバリあなた自身しかいないのです。

「秘訣はズバリあなた自身です!」

序章2. 謎の高音域を求めて・・・
これまで数多くのトランペット奏者達によって、いかに高音を克服するかで色々な試みがされてきました。私自身も「全音域を自由に出せるなら悪魔に魂を売ってもいいぜ!」と、ありとあらゆる試みをしては失敗してきました。そこで今回は実際にどうすれば高音域を出せるようになるのか、私自身の「恥ずかしい経験談」も含めて検証し紹介していきたいと思います。

答えは一つではありませんが、必ず答えはあり、正しく練習すれば誰でも高い音は出せます!

(当記事はあくまで私個人の奏法の考え方ですので、間違えている点等がありましたら温かいご教授と、そして温かいシェアをいただければ幸いです)

ハイトーンの出し方【理論編】まずはこれを知れ!原理を知れば迷いは消える!!

(*今回の記事は結構長いので“早くハイトーンが出したい!早く人間になりたい!”という人と妖怪人間はハイトーンの出し方【実践編】いってみよう!やってみよう!へどうぞ。ただし、暗黒面に堕ちないようお気をつけください・・・)

しっかり息を入れんかい!!

高校の頃吹奏楽部に所属しトランペットを吹いていた私は、そこそこ吹けるようになり調子にのっていました。「ハイベーなんて簡単だね、低い音もブリブリやっちゃうよ?」と豪語して憚らない。今思えばハズカシい黒歴史です;;しかしどうしてもハイベー(2オクターブ上のB♭)から上の音を出すことが出来なかったのです。

ある日学校にトランペットの講師の方がいらっしゃって指導をしていただいた時に「先生!どうやったらもっと上の高い音が出せるようになりますか!?」と質問した所「もっと息を上手く使えば出ます」と教わりました。

当時世間知らずのクソ○キだった私は息の量とスピードをたくさん入れなさいと解釈し「そうやっても出ないから苦労してるのに、先生も大した事ないな」などと、とんでもない勘違いをしておりました。タイムマシンに乗っていって魔貫光殺砲をお見舞いしたいです。

実際、吹奏楽部などで多くの先生や先輩達に高い音の出し方を聞くと、たいていは、もっと息を入れなさいとか姿勢をよくして、とかイメージを持って、狙ってとか言われたと思います。でもどうでしたか?思いっきり息を吹き込んで高い音が出ましたか?仮に勢いで出たとして、それで音楽的な表現が出来るでしょうか?

また息をたくさん入れるということについて、こんな事を教えられた人もいると思います。ガラス窓等にティッシュを当てて、それが落ちないように息を吹きかける。こうやって楽器に息を吹き込みましょう。しかしこれは楽器によって違います。

アパチュアってなあに?

注意してほしいのは、それはクラリネットやサックスの息の使い方です。トランペットではそれは逆効果になってしまいます。木管楽器は竹のような葦で出来ている「リード」を震わせるためにある程度の息の量が必要です。トランペットは唇がリードです。竹(葦)と人間の唇はどちらが硬いか?また息の通り口はどちらが狭いか。

トランペットは唇から息の通る穴は非常に小さいのです。この穴の部分が振動して音が出る仕組みです。これはもうご存知と思いますが「アパチュア」といいます。この小さい通り道にティッシュが落ちないくらいの息を入れたら・・・そのアパチュアは広がってしまい音にならなくなります。


このアパチュアが崩れない程度の息の量を入れる。そして息のスピードと量に負けないくらいに唇を同じ形に保つ力(筋肉)がトランペットには必要です。この息と唇(とその周り)二つのせめぎ合いとコントロール。これが全部の音域を出す大切な要素の一つです。

注意・もし疲れてきて、唇とその周りの形がキープできなくなったらその時、あるいはその前に休憩にしましょう。それ以上無理に吹くのはただ唇を壊しているだけの作業になります!!

はどれくらい入れればいいの?

トランペットはイメージとして、どうしても音が高くなるほど息をたくさん入れようとしてしまいます。心理的にどうしてもそうなりがちですが、これは実は逆効果です。先の説明のようにアパチュアが崩れることに加え、さらに振動しなくてはいけない唇に力が入ってしまいます。

たとえば硬い草で草笛を吹こうとしても振動しないですね。また草笛でなくても口笛でも口に強く力を入れて硬くしたら音は鳴らない。唇そのものに力を入れて高い音をだすだけではないのです。そして唇のみの振動でも高い音は出せません。楽器と共鳴させないと良い高い音にはならないのです。唇の振動と楽器の共鳴をバランスよくマッチさせる必要があります。

また、「唇の真ん中、アパチュアの周りの振動する部分だけ 力を抜いて、柔らかくして振動させ、その周りは硬く保つ」といわれることがありますが、それは不可能と思います。唇の数ミリのポイントだけ力を抜いたり、動かしたり、肉質を変えたりはできません。なぜなら唇は口輪筋という一つの肉の輪だからです。後で説明しますが私自身が唇を手術した事があるからそう断言できます。


息の量は高い音になるほど基本的には細く、速く、そして少ない息の量(弱いではなく)になります。マウスピースをのぞいてみると、中のスロートという穴は3mmに満たない細い穴です。ここに息を入れることを考えれば、繊細な細い息が必要だとわかると思います。


高校のときに講師の先生が私に言った「息を上手く使う」とはこのことだったのです。なれないうちは無理やり大きな音で高い音を練習しないことです。大きな音=高い音がだしやすい、ではありません。無駄な力が入ってしまう癖をつけないように、これは必ず守りましょう。

では、細くて速い息の流れはどうやって作るのでしょう。

アーウーイーウーイー・・・・シラブルっていったい?



これは有名なトランペットの教本の一つで、音域を広げるためのトレーニングといわれています。やや上級者向けで、最初から最後まで全てリップスラーのみという気合の入った教本です。どの教則本でも必ず作者の説明をよく読んで用法、用量を守って正しくお使いください。

おおよその内容は

「リップスラーとは唇でスラーをするのではなく舌の動きが重要。舌の形に注意して、下の音はaの発音の形に。中音域はu、で高音はiの形にする」

と書かれています。つまり高い音ほど舌を上げて口の中の容積を狭くし、空気圧を上げ細くて速い息を出す。ホースで水を出すときに口をつぶして、水を遠くへ飛ばすときのように。これは多くの人が言うところで、クラウド・ゴードンの教則本でも強く強調されています。この舌のコントロールを「シラブル」といいます。


金管演奏の原理・クラウド ゴードン (著)


しかし、それとは反対に舌の動きは必要ないと唱える人もいます。もちろん世界的な金管楽器奏者です。たとえばシカゴ交響楽団のチューバ奏者アーノルド・ジェイコブスなど。実際どちらが正しいのでしょうか?地球上である限り物理現象は皆同じはずです。そこで私はとことん検証してみました。

イウイウ言ってもやっぱり出来ねぇ!

よし!iの発音の時の舌にすれば高い音が出せるな、早速明日からこのやり方でハイトーンがバリバリ出せるようになる!息を無理に押し込まず、舌で空気圧をコントロールすれば・・・もう怖いものなしだ!と意気揚々と楽器を吹いてみれば・・・

やっぱり出来ません(;;)そう簡単にできたらどんなに幸せでしょう。やっぱりこれもウソなのか?

実はここで注意しなければならないことは「aui」の発音の舌の動かす量です。実際に舌が動くのは、ほんのわずか1~2mmくらいです。ア、ウ、イの舌のポジションだよ、といわれると人間はどうしてもオーバーアクションにやりがちです。アでは思いっきり口の中を広げ、イでは必要以上に狭めてしまいます。これでは均等な音でのリップスラーはできません。

この舌を動かすのはほんのわずかであり、厳密に言うと舌の表面だけを少し動かしている。だから舌を使うのでは無い、という点が先ほどの舌の動きは必要ないと主張する人たちの根拠だと私は思います。人間は、体の一部を意識して動かそうとすると、ほぼ必ずオーバーアクションになってしまう生き物です。慣れない事では尚更。時にはそれを使った練習も必要ですが。

このコリンという教則本の狙いは、どんな音域であっても、均等な音とポジションと舌の動きが正しいかをチェック(練習)しながら音域を広げていくという事ですそしてもちろん、このシラブルだけでは高音域は出せません。


3大要素!息とアパチュアとシラブルそして楽器とのマッチング

ここまで3つの要素について説明しました。このいずれも高音域には必要不可欠なものです。しかしまだあせってはいけません。この3つが「人間側で用意すること」です。これだけではまだ正しい高音域はモノには出来ないのです。

つぎはこれら3つのことを使って「楽器を共鳴させる」ことが必要なのです。楽器とマッチさせるのです。これは自分の楽器との対話です。こればかりは毎日の練習で楽器と対話(練習)して身につけるしかありません。楽器は相棒なのです。ただし強い音ではなくPPくらいの音量で練習しましょう。常に怒鳴り声で対話してはいけません。

息とシラブル(舌)がバランスよくできていれば、アパチュアという空気の通り道は自然にできます。アパチュアは無理に自分で小さな穴を作ろうとすると余計な力が入ります。自然に任せましょう。

そして現実的な事。マウスピースをどれくらい押し付けていいのか?これもある高い音を出すのに必要なだけ圧力をかける必要があります。もし必要以上に強く押し付けないと高い音が出ないなら、ここまで説明した何かが足りないか、疲れている時です。

そして唇の振動とは、楽器との共鳴でもあります。なので、唇のみでブーッと音を出すバズィングとマウスピースのみで音を出すこと(これもバズィングといいます)は分けて考えて練習する必要があります。マウスピースとバズィングの練習の事は別の機会に紹介しましょう。ご期待下さい。

低い音を制するものは高い音も制する。ペダルトーン

次に高い音が出たとしても、無理やり出した汚い音では使い物にはなりません。余裕をもった安定した音にすることが大切です。聴くほうも安心して聴けるし、吹くほうも安心して吹けるはずです。これは結局は高い音でも低い音でも、同じように、同じ音色で、同じポジションで吹くことが必要になることに行き着くことになります。

全音域ですぐに対応できる柔軟性を持った振動体、つまり唇が必要ということで、これを作る練習を紹介します。最低音のファ♯よりさらに下の低い音を口でコントロールしながら出す練習です。ただしこれは注意してやらないと逆効果になります。

四の五の言うよりはまず動画を見て、マネしてみましょう。


唇の形は決して崩さないで、ここでは息をたっぷり入れます。低い音ほど多くの息が必要です。ピストンは1オクターブ上と同じで、トロンボーンのような音が出ればいい感じです。

必ず唇の形を崩さないように。低い音を当てるために突き出したりしては却って悪い結果になります。もし出来なかったら今は無利にやらず、他にも方法はあるのでまたいつか挑戦する気持ちで,気長にいきましょう!

面倒くさい努力はヤダ!!禁断の人体改造計画!唇と歯を変えると上手くなれるのか!?実際にやってみた。

えらばれし者。

多くの人が心では薄々気付いているけど、突っ込んでいいのか迷うことが、息を入れただけでは音が出ない楽器なんだから、生まれつきの「唇の振動のしやすさ」が結局一番必要なんじゃないの?という点ではないでしょうか?また、歯並びも大きく関係するでしょう?結局トランペットって「えらばれし者」しか吹けない楽器でしょう?と思う人もいると思います。

木管楽器の人はよくわかると思いますが、どんなに息を入れたって、結局リードが悪かったら駄目です。例えばバンドレンの10枚入りのリードを3000円で買っても、本当に使えるのはその中の一枚か二枚くらいです。オーボエやファゴットはもっと大変で一本で数千円です。試奏してえらばないと、とても買う勇気はありません。天然のものだから当たりはずれがあるのです。

ならば、人間の唇という天然のリードも、残酷だけど、生まれつきの当たりはずれがあるのではないか?歯並びなんかは特にそうではないか?それに気付いたあなたは物事を冷静に客観的に見られる人です!!これまで説明してきた方法は全て唇を良いリードの状態にする方法でもあるのです。これらをすぐに直感的に出来る人を「天才」といいます。

だったら、唇や歯の形が(リードの質がよければ)トランペット向きであればハイトーンだけでなく、演奏上の全ての悩みが解決できるのでは?お待たせしました!!まさにこの点を私が体を張って、悪魔に魂を売り、暗黒面に堕ち、ダース・シディアスに師事し、人体改造を行ない、コーホーコーホー息を切らしながら検証してみました。

人体改造計画!①歯の形

(*注意。ここからは私が個人の責任で実験したことです。場合によっては身体に深刻なダメージを受ける場合がありますので、よい子もわるい子も絶対真似をしないでください。効果は全くありません。また責任は負えません)

大学生の頃に「上の真ん中の前歯に隙間があれば息の通りが良くなり高い音が出しやすくなる。プロの奏者で自分でヤスリなどで自分の前歯を削っている」という噂がありました。確かに理にはかなっていますが歯の神経まで削ったら大変な事になります。

しかし!当時世間知らずのクソガ○だった私はやってしまいました!歯の形の人体改造を!!


ホームセンターで買った極薄やすりで上の前歯の間を、少しずつ削って広げていきました。幸い神経までは到達しませんでしたが、およそ0.7mmほど隙間ができました。で、どうなったかというと・・・・

人体改造計画!②歯がダメなら楽器改造だ!!

たしかに、上前歯の隙間から息がスースー通るようになりましたが、結局楽器を吹くときは上唇でぴったり塞がれるので、全く意味がありませんでした。全く変わりはありません。でも分かっていたんです!こうなることは(TT)ついつい馬鹿なことに手を染めてしまったのです。

次は楽器に責任転嫁をし始めました。V.Bachの180MLを使っていたのですが、ある日思いついたように「そうだ、支柱、外そう」と気まぐれに京都に行くノリでチューニング管の二つあるうちの一本の支柱を楽器屋さんに頼んでバーナーで炙って外しました。楽器屋さんからは「楽器の響きのバランスが崩れる。どうなるか分からないけどいいの?」と聞かれました。


どうせ今でもロクに吹けないのだから、思い切って挑戦しようとためらいなく摘出してもらいました。当時世間知らずのク○ガkだった私はヤケになっていたのでしょう、摘出されて、なんか楽器だけでなく自分の性別も変わった気がしましたわよ。で、どうなったかというと・・・・

人体改造計画!③整形手術をするか??そして天罰へ!

これももちろん、何の変わりもありませんでした…ただちょっとだけチューニング管が動きやすくなっただけ。さらなヤケになり、楽器を凍らせてみたり、煮沸してみたり、考えつくことを手当たり次第やってみました。そして最後に行き着いたのは、自分の唇そのものを整形手術で柔らかい肉質に変えられないか、という考えまで起きるようになりました。

流石にそれはすぐに行動する勇気はなく、夜な夜なカミソリを唇に当ててみては色々考え込んでいました。こういう管楽器を専門に診る整形外科医っているのか?手術費用は?今思えば少々病んでいたかもしれません。

長い間そんな事を考えていたある日、ついに天罰が下ったのです!

人体改造計画!④すべてリセット。

ある日の夕方自転車で自宅に帰ろうとノンビリ走っていたら、猛スピードで右折してきた軽トラックに跳ねられ地面に顔面から叩きつけられました。その時、視界はスローモーションになり、顔をぶつけないように地面に手をつきましたが、地球上である限り物理現象は皆同じなので、手の健闘も虚しく、そのまま顔から地面に激突。ヤスリがけをした上の前歯2本は折れ、上下の唇はザックリ裂けてしまいました。

狙ったかのようにトランペットに必要な部位が損傷してしまったのです。

その時は不思議と残念な気持ちがなく、むしろ今までのダメな奏法を全部リセットして一から検討できるチャンスと脳天気な事を考えていました。しかも思わぬ形で歯のオーダーメイドができるし、結果的に唇の整形手術もする事になったのです。

人体改造計画!最終章!唇を整形手術した結果

さて、歯はインプラントで問題はありませんでした。問題の唇の整形手術をするとどうなるのか?スバリ「振動しやすい唇」にはなりません!残念ながら(?)外科医さんの腕が良いのか、唇は事故前と全く変わりなく綺麗に治りました。

元々唇は口輪筋という筋肉と一緒に、一つの肉の輪のようになっているので、ある部分だけ肉質を変えたりはできず、繋げてしまえば振動などには何ら影響は無いとの事でした。

結局は裂けた唇の縫合手術のみで、全く傷跡一つなく治ったのです。そして今は一から奏法を見直し、日々練習している所なのです。

なので、いないとは思いますが私の様に、歯を削ったり唇に外科手術をすれば唇が振動しやすくなり、トランペットが上手くなると思っている人は絶対やめて下さい。何も変わらないし、唇の手術は結構痛いです( ;´Д`)何度も整形手術をしたマイケル・ジャクソンは凄いです!ご両親から貰った自分の体で勝負しましょう!

以上私の悪魔の人体実験でした^^絶対真似しないで下さい。何も変わりませんから。

・ただし、歯並びに関しては、吹くのに支障があるならば(唇に当たって血が出るなど)歯科医と相談して、矯正できるならば、する事をオススメします。

ハイトーンの出し方【実践編】いってみよう!やってみよう!

ここまで読んで頂いて、やはり結局は自分自身で問題点を見つけ克服しなければならないことはお分かり頂けたと思います。

ではどうすればいいのか?!

お待たせしました。能書きはここまでにして、ここから具体的なハイトーンの出し方、練習の仕方をご紹介します。たくさんの理論を知るよりも、実際に自分が音を出せるようになる事が第一優先です。そう!私達の目的は演奏理論家になることではなくトランペット奏者になる事です。

基本的な練習方法①とりあえず出す!!

① まず、どんな方法でもいいです。唇の形、アンブッシュアが崩れても、マウスピースを押し付けてもどんな風になってもいいので、出したいハイトーンを絞り出してみましょう。どんな手を使ってもいいです、とにかく出してみる。出しちゃえ!絞り出せ!か細い音でもいいです。とりあえずハイB♭で説明します。

② 頑張ってハイB♭がでたら、ここで観察です。今、楽器はハイB♭が響いています。その状態の感触をしっかり覚えましょう。そして身体側の息の流れと量は?唇の振動は?楽器とのマッチングの具合は?マウスピースの圧力は?そして自分の肺の使い方は?身体の状態は?それぞれの、この感覚をまず覚えて下さい。

③ そして、次にそのハイB♭の手応えはそのままで、今度は正しい唇等のセッティングで出す事を目指します。音色はどうであれ、とりあえずハイB♭の感覚はさっきつかんだと思いますので、音はそのままでセッティングを正しい状態に少しづつ近づけていきます。

④ 最終的には先程の、息とアパチュアとシラブルそして楽器とのマッチング。これらのバランスがよければもう音は大分良くなっている筈です。一つ一つ正しくセットされているかチェックを常に怠らずに。常に自分の状態を観察です。

⑤ そして大切な事がもう一つ、この練習は1日一回位にします。あくまでも唇のセッティングを崩して無理やり音を出す作業をしていますので、何度もやるとそれが癖になってしまい、取り返しがつかなくなります。疲れてダメージを受けたら休息です。サイヤ人のように^ ^

{出したい高い音を頑張って出す→その音の感触を覚えて正しいセットに→休息}

野球に例えるならば、150kmを投げられるピッチャーがフォームを改善して、一時的にスピードが落ちても150kmを投げる感覚は覚えているので、自然に改善されたフォームでボールは150kmに戻って、よりよくなる。


基本的な練習方法②リップスラーから攻める!!

もう一つの練習方法として、よくいわれるリップスラーを使った練習について。

まず誤解して欲しくないのは、リップスラーは唇の力でトリルをして、ハイトーンに必要な筋力をつけるのではありません。少しは使いますが先程のシラブルを使って、無理なくリップスラーをする事が大切です。極端にいうと練習というよりは、正しいセットとポジションで無駄な力を使わず音が出せているか?の確認作業のようなものです。

自分が確実に、楽に出せる音域でリップスラーの練習をします。楽譜の一つの流れで無理なく


ここで無理に自分の限界を超えて高い音を出そうとしてはいけません。その高い音に意識がいってしまい、その前後の音がおろそかになり、さらに全体まで不安になります。何度も確実な音域で練習していれば楽に、自然と、一つ上の音にいきます。

まさに冒頭のウサイン・ボルトが言った言葉が実はトランペットの音域を広げる練習にとても共通しているのです!!

{唇だけに頼らない。舌で音を変える(シラブル、a、u、i)舌の動きはわずか。小さな音で。限界は超えない。吹き終わったとき、物足りないと思うくらいがちょうどいい。

基本的な練習方法③高音域はたくさんやるものではない。

高音域は出せる様になるまで、考えながらアプローチするしかありません。そもそも出しにくい、キツイ、出せない音を練習するので、ロングトーンのようにたくさん数をこなせば慣れる、というものでもないのです。この点はロングトーンの練習とは少し違い、練習量よりも「コツを掴む」事が大切なのかもしれません。

逆に限界を超えた高音域ばかり無理に練習するとどうなるか?無意識にだんだん唇のセットが崩れてきます。そして自分では気づかずにそれが普通になってしまいます。限界を超えているので冷静に考えられなくなっているからです。そしてかつての私のように、練習すればするほど吹けなくなり、悪魔に魂を売り、暗黒面に堕ち、ダース・シディアスに・・・

また、高い音を練習した後は中音域か低音域で音出しをして唇をほぐす感じで、リラックスさせましょう。なかなか出来なくても少しずつ、焦らずに取り組んでいくことが大切です。

諦めないこと。それが私のモットー。
                サー・ゲオルグ・ショルティ

{高音域へのアプローチは一日数回→そのあとは中音域か低音域でリラックス}

そして高音域は一度感覚をつかめれば、あとはずっと維持することができます。

一度覚えれば体は忘れない。

自転車に乗ることを考えて下さい。子供の頃、自転車に乗れる様になるため沢山練習したと思います。お父さんやお母さんが練習に付き合ってくれて、ある日コツをつかんで、それ以降はスイスイ運転できる様になったと思います。始めから乗れた人もいるでしょう。しかし何年間も自転車に乗っていなくても、ブランクがあるから乗れなくなった、なんてことはほとんど無いと思います。

これもトランペットの音域と同じ事がいえます。一度高い音域のコツがつかめれば、後は自然に体が覚えているものです。私自身、先程の様に事故で前歯も唇も大手術してまるで違う形になって、8年くらい全く楽器を吹いていなくても、音域は事故以前とあまり変わりません。まだ音はヘロヘロですが( ;´Д`)

というわけで皆さん。自転車に乗るときは車に気をつけましょう!!そして車を運転するときは、限界を超えてスピードを上げないように安全運転でいきましょう。



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