平成の時代の国民的代表曲といえば、「世界に一つだけの花」。この曲をピアノで弾きたいという人、弾いたことがあるけどもっと上級者向けの楽譜に挑戦してみたいという人などに向けて、今回はこの曲の魅力から、弾き方までじっくりとお話ししたいと思います。

ちなみに筆者はピアノ歴23年、音楽が大好きで、SMAPもこよなく愛しています!そんな筆者だからこそお伝えできるこの曲の弾き方、ちょっと長いですがぜひ最後まで読んでみてください!

世界に一つだけの花(SMAP)


動画はかなり上級者向けのアレンジになっています。ピティナ×月刊ピアノの編曲コンテストで入賞した作品のようです。ぷりんと楽譜からも購入できます。

さて、世界に一つだけの花は2003年にビクターエンタテイメントから発売されたシングル曲で、みなさんご存知の通り、国民的アーティストであるSMAPの曲の中でも圧倒的な知名度がある曲ですね。作詞作曲は槇原敬之さん。はじめはアルバムの中の一曲として発表されましたが、のちにシングル化されました。

販売枚数は驚異的な記録を残しています。オリコン調べでは2018年10月現在で312.5万枚、オリコン歴代シングルチャート3位。その他にも多くの記録を残しています。2019年現在でもずっと売上がのびているのもすごいですね。

この曲はシンプルでわかりやすいメロディに、普遍的で誰にとっても響く「一人一人違う」「個性を大事にしよう」といったメッセージがこめられていると思います。

世界に一つだけの花のピアノ演奏や、各種楽器での演奏、合唱や歌などは大変多く出回っていますが、この動画ではかなり凝ったアレンジになっています。

ちなみにピアノ歴23年の筆者はピアノでも何度も弾いたことがありますし(もちろん、小学生の時などは簡単なアレンジの楽譜でしたが)、学校などでもたびたび歌う機会がありました。PTA推奨の「日本の歌百選」にも選ばれているということですよ!

この曲は小学校の道徳の検定教科書や、中学の英語の検定教科書、高校の音楽の検定教科書などにも採用されていたりと、さまざまな教育現場で使われています。中国語バージョンなどもあって、海外でも歌われているのも特徴ですね!手話歌としても使われていたりします。

筆者が思う、この曲の伝えたいこと

さて、演奏の具体的なお話に入る前に、筆者の大好きなこの曲について、考察をしたいと思います。

まずはじめに考えるのが、一人一人が違って良いということです。人間は「もともと特別なオンリーワン」であって、人と比べたり、人と競ったり、そんなことはしなくて良いってことですね!そんなメッセージを、「花」にたとえて歌っているのがこの曲です。

「頑張って咲いた花はどれも 綺麗だから仕方ないね」という歌詞は、一人一人の頑張り方があって、どの頑張り方でもそれぞれにすてきだということではないかと思っています。例えば、世の中には「勝ち組」「負け組」なんて言葉があったり、職業にもいわゆる「エリート」と呼ばれるものと、そうでないものがあったりしますね。

でも本当はそれぞれの場所で、一生懸命頑張っているのならば、それで十分素敵なんですよね。もちろん、「分かってはいるけど、でもやっぱり人と比べちゃう。」「これでいいのかな」なんて頭をよぎってしまうこともよくありますが、それを「いいんだよ」と認めてくれる歌かもしれませんね。

また、子どもたちは学校でもいろんな友だちに出会う中で「あいつはみんなと違う」なんて思うことはよくあると思います。それを「いいえ、あの子もみんなと同じです」と言って「みんな同じであること」を当たり前でかつそうあるべき、そう見るべきものだと信じさせたりしてしまうこともありますが、この曲ではそうではありません。

「あいつはみんなと違う」…「当たり前だよ。人はみんな違う。違っていんだよ」そう伝えてくれているような気がします。

日本社会に足りない、「多様性を認め合う」ということが自然と歌われています。

歌い手の個性

もしこの曲を歌っているのが、全員同じ服を着て、同じようなことが得意で、同じような歌声と容姿で、似たような性格で、全く同じ目標を目指している人たちの集まりだったらどうでしょうか…。まったく説得力がありませんよね。

ピアノの演奏でも、歌でもそうですが、やはり曲自体だけでなく、それを伝える「伝え手」がどんな人で、どんな様子であるかもとても重要になってきます。

そういう意味で、SMAPはみんなとっても個性的ですね!似たような人は全くいません。かっこよさの方向性やテイストも違いますし、得意なこと・苦手なこともバラバラです。

ダンスが得意な人もいれば、苦手な人もいる。歌が苦手な人もいれば、得意な人もいる。得意なことを隠したい人もいる。仕事に対してのスタンスや、目指している目標、暮らしている環境なども結構違うと思います。

昔、SMAP×SMAPで、ゲストに「SMAPはもともと方向性がバラバラだから(いまさら合う合わないではない)」と言っていましたし、最初から「もともと特別なオンリーワン」であることをお互い認め合ってるのかなーと思います。だからこそ、競い合うとか、ぶつかり合うとか、そういうことではないんだと思うんですよね。

そういう人たちがこの曲を歌うということが、まさにぴったり歌詞の意味にもハマったんではないでしょうか。

ピアノなどの演奏も同じだと思います。演奏する人の人となりが、どれだけ作っても自然と聴く人には伝わるものです。

特に、この曲を本当に好き!という気持ちなんかは伝わりやすいですよね。なので、この「世界に一つだけの花」が好きな人は、「私には難しいかな?」「下手すぎて人前で弾けない…」などと思ったとしても、案外「好きな気持ち」で魅力的に伝わったりしますので、安心してください。



また、「個性を大事にしよう」なんて、よく学校で聞いたと思いますが、このメッセージは最初から「教育を目的に作られた」曲であったり、知名度が低い人たちが歌ったり、そもそもその人たちが「かっこいい」人でなければ、特に若者には受け入れられなかったと思います。

「一人一人違って、かっこいい」ということを見せてくれるSMAPだからこそ、この曲はヒットしたと思います。

さて、そんな世界に一つだけの花ですが、歌詞にこれだけの意味がこめられているぶん、演奏はどう弾くかが難しいところにはなってきます。

この曲のピアノ演奏の難易度は?

この動画のアレンジは、かなりの難易度になっています。筆者が今まで見てきた数えきれないほどの「世界に一つだけの花」のアレンジの中で、一番難しく、そして綺麗だと言っても過言ではありません。

この動画でもまだ完璧に弾けているとは言えないと思いますが、このレベルまで弾くにはだいたいショパンなどをたくさん弾きこなせるレベルであることが必要になってくると思います。

弾き方のコツ

前奏(イントロ)
そっと、すんなり曲に入れるように、メゾピアノくらいで自然に入ります。ここではまだ歌詞ははじまっていない、前奏という扱いなので、「ん?何がはじまるのかな?」と思わせるくらいで十分です。

Aメロ(動画0:15~)
はじめは伴奏が少なく、歌のメロディに集中させる箇所になっています。全体的にメゾピアノくらいで、歌のメロディを少しはっきり目に弾くと良いでしょう。歌詞を思い出してみましょう。まだ花屋の店先で花を見ている段階です。純粋に、いろんな花がきれいだなという気持ちで弾いてみましょう。

Bメロ(動画1:06~)
ここから、意外なアレンジになってきます。急すぎるほど急に、強くメリハリをつけて弾いて良いと思います。

原曲の世界に一つだけの花でも、最初に「いろんな花がきれい」「どれも違うけど比べずに堂々としている」ということを歌ってから、ここBメロでは「それなのに」と逆説で「僕ら人間」が人と比べてしまうことを示し、「なんで?」「そんなことしなくていいよね」と疑問を投げかける部分になっています。

そのため、もともと少し疑問を呈するような雰囲気がありますが、このアレンジではよりその色合いが濃くなり、結構暗くとがった感じで表現しています。人間社会のよくないところを、バリっと言っちゃう感じで弾いてください(笑)

理不尽だと思うこととかがもし自分の中にあったりしたら、少しそれを思い出して、それに対する怒りなんかを持って弾くのもありだと思います。

サビ(動画1:33~)
Bメロの疑問に対し、「そうさ」と同意し、「僕らは世界に一つだけの花」と歌うところです。右手はのびのびと、SMAPの歌声を想像しながら弾いてください。左手の伴奏は、単純な和音などではなく、16分音符の深みのあるパッセージが続きます。

ここではまずこの左手の動きが技術的に結構難しいので注意してください。結構弾けるあなたも、指番号をふったり、どこからどこまでを一息で弾くと良いか(どこで指をくぐらせたら良いか)、自分なりに考えて書き込む時間がまず絶対に必要です。

左手の16分音符は、バラバラとばらけて聴こえないように、一拍ずつでまとまりを持って弾くようにすると良いでしょう。音が多くてもテンポ感をキープできるように気をつけて、縦のノリというよりも横のつながりを意識して、曲の流れを止めないようにしていきましょう。

その上で、「世界に一つだけの花」からはじまる最初のフレーズは明るめに、「その花を咲かせることだけに」からは両手をめいっぱい使って、力強く切実に懇願する感じでドラマティックに弾くと良いでしょう。この流れがこの曲一番の見せ場ではないかと思います。

全体的な曲想

曲想についてですが、大きく分けて3つの考えるポイントがあると思います。

・「ナンバーワンにならなくていい」などの歌詞のメッセージを考えて弾く
歌がない「ピアノソロ」なので、これはとても難しいことですが、この曲は幸い歌詞を覚えている人が多いと思います。なので、このピアノソロを弾く時にも、歌詞を歌っていると思って、メロディラインを意識しながら弾いていくと良いと思います。特にこのアレンジでは伴奏が凝っていて、どこがメロディラインでどこが伴奏なのかが分かりにくい演奏になりがちです。

・このアレンジの音楽的な面を考えて弾く
これだけ音楽的に完成されたアレンジなので、ひとつのピアノ曲として弾くという方法です。前述の、パートごとの弾き方のコツを参考にしてください。その意味では、ピアノの先生にレッスンをしてもらうのも十分に意味があると思います。

・SMAPなど、誰かへの思いを込めて弾く
特にSMAPファンであればこの曲への思いは込めやすいと思います。こんな素晴らしい曲を歌ってくれるSMAPに対して、作ってくれた槙原さんに対して、もしくは、だれか大切な人を想いながら弾くのも良いですね。

ある程度の技術があって、譜読みをしっかりやったならば、あとは音符を追うのではなくて、「誰かのことを考えながら、音楽に酔いしれながら弾く」ということもできたりしますよね。

もちろん、ほかにも一人一人違うアイディアがあるかと思います。自分なりの心の込め方を見つけてみてください。

弾けると?

これだけのアレンジが弾けると、ポップスに関しては市販の楽譜ではものたりなくなってくると思います。「上級」と書いてあっても、だいたいはこの楽譜よりは簡単なことがほとんどです。

なので、これくらいのアレンジが弾けていれば、もうポップスの楽譜を買って弾くだけではなく、自分で曲を耳コピしたりアレンジしたりして弾く段階にいっても良いと思います。ちなみにこれに関しては、自分ではそんなの無理!と思っていたとしても、勇気を出して挑戦してみると、案外簡単なアレンジならできちゃったりするので、ぜひやってみてくださいね!その段階に入ると本当に今までよりもぐっとピアノが楽しくなりますよ!

また、ポップスだけでなく、クラシックの難曲にも積極的に取り組んでみると良いと思います。リストなどが良いかもしれませんね!(譜読みは大変ですが)
ポップスのような軽い感じが好みだったら、ジャズなどに挑戦してみるのも良いかもしれません。

そしてこの「世界に一つだけの花」がレパートリーに入れられると、弾く場があればすぐにその場を盛り上げることができると思います。誰もが知っている曲ということで、老若男女、国籍なども問わず楽しめると思います。また、ピアノを弾いたことがない人でも、「なんとなくすごいアレンジなのが分かる!」のがこのアレンジだと思います(笑)

ぜひ、いろんなところで披露してみてください!!

余談ですが、私のようなSMAPファンの方は、これを弾きながら泣いて、鍵盤を濡らさないように注意です(笑)

まとめ

SMAPの世界に一つだけの花は2003年に発売された言わずと知れた国民的な名曲です。メッセージ性が強く、教育現場でも使われたりと誰もが一度は歌ったり演奏したことがあると思います。ピアノでも多くのアレンジがなされていますが、今回はその中でも最高難度と思われるアレンジの演奏について紹介しました。

そもそも、この曲は「ナンバーワンにならなくてもいい」「もともと特別なオンリーワン」など、一人一人が世界に一つだけの花で、決して比べる必要もないという大切なことを歌っている曲です。日本の社会にも必要になってくる大きなテーマですね。

歌詞がないピアノソロですが、この背景を知っておくことも重要になります。また、この曲が好きだという気持ちや、このメッセージを伝えたい!という自分の個人的な思いやエピソードを持っていることも、気持ちを込めやすいポイントになってくるかと思います。

技術的にはかなり難しいアレンジにはなっていますが、これが弾けるとクラシックの名曲もよく弾けるようになってくると思います。指の練習としても、曲想のつけかたの練習としても、役に立つ一曲ではないでしょうか。

この最高難易度の「世界に一つだけの花」を自分のレパートリーに加えられると、披露する場所を選ばず、盛り上げることができる一曲になると思います。感動的に、ドラマチックな演奏ができると良いですね!ぜひ挑戦して、一皮むけてください!

長くなりましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました!



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