ピアノを弾かれている皆さん!ピアノの音がどのくらいの大きさで、同じくらいの音を日常生活音に置き換えるとしたら何になるか知っていますか?
ピアノの音は90dB~110dBだと言われています。これを日常の音で言うと地下鉄と同じレベルなんだそうです。
https://jp.yamaha.com/products/contents/soundproofing/about-avitecs/knowledge/
※「日常生活と音」の部分を見て下さい。
これは新幹線の車内やパチンコ店よりもうるさい値なのだそうです。個人的にはパチンコ店よりはマシなのではないかという気はしますが、測定値によるとそれよりも高い値になるようです。
アップライトかグランドかによっても数値は違ってくると思いますし、演奏する曲や弾く人によっても違いが出るでしょう。
子供が弾くのと大人が弾くのではかなり違うと思いますし、大人でも専門的に勉強した人が弾いた場合は大きな差が出てくると思うので必ずこの値になるとは限りませんが、それにしても大きな音であることに間違いありません。
今回の記事では「防音」について考えていきたいと思います。
ピアノは心地よい音?それとも騒音?
その昔ピアノは富裕層しか所有できない高価な楽器でした。昔からピアノは人気の習い事だったようですが、楽器が高価だったこと、戦時中には贅沢はできないなどの理由もあり、多くの人達が習いたくても習うことができませんでした。
しかし経済が飛躍的に発展した高度経済成長期(昭和30年代)になると一般家庭でもアップライトピアノを所有できるようになっていきました。
ピアノが「豊かさの象徴」とされるようになったことや、子供の頃に習いたかったけど習うことができなかった母親世代の「娘には習わせてやりたい」という思いなどによってアップライトピアノの売れ行きはどんどん伸びていきました。一時期は生産が追いつかなかったようです。
多くの家庭にアップライトピアノが置かれるようになったのはとても良いことだったのですが、そのころは防音に対する意識がとても低かったようです。
ピアノによる騒音問題は現在でもたくさんあるようですが、過去にはピアノの騒音問題で殺人事件(昭和49年神奈川県平塚市、団地にて発生)が起きています。
ピアノの音は騒音にもなってしまうことが場合によってはあり、トラブルの原因になるということをこの事件で多くの人達が学んだはずです。
ピアノだけでなく楽器を演奏するには「防音しなくてはいけない」という意識がこの頃から高まっていったのではないかと思います。
電子ピアノの売れ行きは好調
1992年には国内のピアノ販売数は11万3500台だったそうですが、全国楽器製造業界によると2010年の国内のアップライトの販売数は1万1672台、グランドピアノは4684台となっており、年々ピアノの販売台数は落ち込んで行っているようです。現在はもっと落ち込んでいるのでしょうね…。
しかし電子ピアノの売れ行きは好調のようで2010年の国内の販売数は17万313台となっています。電子ピアノの場合は2001年から販売台数はそれ程変わっていないようです。
http://www.musictrades.co.jp/english/2011/04/JMIMA_Stat_2001-2010.pdf
ピアノを習っている方は昔と変わらず現在もたくさんいらっしゃいますが、その方々が所有している楽器は電子ピアノが多いのではないかと思います。
私のピアノ教室でもアップライトを持っているご家庭は少ないです。持っている方達も新しく購入したというのではなく、実家にあったアップライトを移動させたなどが多いですね。途中でグランドを購入された方も中にはいますが稀です。
これまでピアノを習いたいと来られた方々は電子ピアノが元々あった、もしくはこれから習いたいから電子ピアノを購入したという方々がとても多いです。楽器はまだないけどそのうち電子ピアノを購入するので習いたいと言われたこともあります。
先生によっては趣味で習う程度でも「ピアノを習うならアップライトは最低でも持っていないと」という方もいらっしゃるのかもしれません。
しかし「いつまで続くかわからないけど、音が読めるようになりたい」くらいの気持ちであれば電子ピアノで十分ではないかなと個人的には思います。(専門的に勉強したいという気持ちが固まっている方にはアップライトではなく、グランドを購入することを強くオススメします!)
もちろんグランドで弾くのが1番なのですが、楽器自体が高額ですし、住まわれている環境によって置けない場合もあると思います。アップライトはグランドよりも価格は安いですが、音の問題はグランドと同じようにあります。
電子ピアノはアップライトよりも安く手に入れることができます。そして音量を絞ることができたり、ヘッドホンをつけることで音を出さないようにできたりと騒音の問題も解決してくれます。このようなことから多くの人に受け入れられ、販売台数もそれ程変わらずキープできているのだと思います。
電子ピアノと言っても色々なものがあるようなので、ピアノにより近いものを弾きたいと思われるのであればグランドピアノのタッチを再現してあるものを購入されると良いかなと思います。
楽器屋さんや家電量販店にいろんなメーカーの電子ピアノが並べてあると思いますので、弾き比べてみると違いがよくわかると思います。
私はやはりグランドを作っている楽器メーカーのヤマハかカワイのものが良いように思います。私のオススメはヤマハのクラビノーバです。
私もかなり昔の機種ですが持っています。現在販売されているものはさらにピアノに近いタッチと音になっていると試し弾きをして感じました。
楽器可のマンションでも防音は必要?
楽器可とされているマンションの場合でも声楽は断られることがあるとよく聞きます。マイクなしで(クラシックの場合)ホールの最後列までちゃんと聴こえるように響かせて歌うのですから、声楽の人達の声量はとてもすごいです。
発声練習は人それぞれ違うと思いますが、中には奇声をわざと出すような発声方法もあるようです。音高、音大時代に練習室から奇声が聞こえてきて驚いたことが何度かあります。
練習室から聞こえてくるから練習しているとわかりますが、これがマンションの一室から聞こえてきたらかなり怖いですよね。このようなこともあって声楽は断られることが多いのではないかと思います。
楽器可のマンションは何時でも楽器を演奏していいわけではなく、たいていの場合何時から何時までは演奏してもいいというような条件がついているのではないかと思います。
しかし時間を守っていたとしても苦情がくる場合もあります。楽器可のマンションであっても気兼ねなく演奏したいのであれば防音はしておくべきだと思います。
電子ピアノであれば音はヘッドホンなどをすればそれ程気にすることはないのですが、ペダルを踏んだ時の振動や鍵盤を弾いた時の振動、鍵盤を押さえることでなるカタカタという音にも気をつけなくてはいけません。ペダルを踏んだ時の振動は防音マットを敷くなどの対策をした方が良いと思います。
電子ピアノではなく、アップライトやグランドを置く場合は時間のルールを守るだけでは不十分だと思います。防音室を設置するなどの防音対策をすることでトラブルを防げると思います。
これは私が小学校の低学年頃のことなのでかなり昔の話です。
その当時はマンションに住んでいて防音室などの設備をしないで普通に部屋にアップライトピアノを置いていました。何時から何時まで弾いていいというルールがあったのでそれをしっかり守り、その時間以外は電子ピアノを弾いていました。
ある日、発表会が近かったこともあり、ルールの時間ギリギリまでアップライトで練習していると「時間過ぎているのにいつまで弾いているんだ」と隣の住人から電話がかかって来ました。
電話に出た母は「すみません」と謝ったのですが、我が家の時計ではまだ過ぎていなかったのでまだ大丈夫と思っていたわけです。ギリギリまで弾く方も悪かったのかもしれませんが、隣人の物の言い方に納得がいかなかった母は電話を切った後にブチ切れていました…。
この1件があってから母はルールの時間よりもかなり前から電子ピアノに切り替えて弾きなさいと言うようになりましたし、時間外に練習しないといけない場合はグランドが置いてあった祖母の家に行って練習をしていました。
母は生徒たちにはピアノを弾かせてあげられるのに娘には電子ピアノばかりで満足にピアノを弾かせてあげられていないと思うようになったそうです。そしてピアノを自由に弾けるようにと戸建てに引っ越すことを決めました。
もう2度とピアノの音で苦情が出ないようにするというのが絶対条件でした。
完成したピアノの部屋は住宅メーカーが作った防音の部屋(窓は2重、吸音する素材の天井、防音の扉)の中にさらにヤマハのアビテックスという防音室を入れたものでした。
あの電話が相当腹立たしかったんでしょうね。これでもかという防音…。
アビテックスの中にグランドを入れて、外の防音の部屋にアップライトを置きました。アップライトの方は音が外にもれますが、家に入れば聞こえなくなる程度のもれになっています。一方グランドの方は、真横の部屋や真上の部屋以外は自宅の中にも聞こえないので外には全くもれません。
そのためグランドの方は24時間弾くことが可能です。アップライトの方は音がもれるので、弾くのは遅くても19時くらいまでにしています。
現在は時間を気にせず練習できる部屋を作ってもらいとてもありがたいなと思いますが、小学生、中学生の頃はかなり遅い時間まで練習させられましたし、怒られるときは大声を出しても迷惑のかからないアビテックスに連れて行かれたので、何て部屋を作ったんだと思っていました。
防音については楽器を演奏する全ての人が考えるべき問題です。防音をしないとトラブルになってしまい裁判にまで発展してしまうこともあります。自分にとっては心地よい音でも他人はどのように感じるかはわかりません。
ミスのない上手な演奏ならまだ許してもらえるのかもしれませんが、そのようになるまでには同じところを何度も何度も練習しないといけません。それを理解してくれる人もいれば、その練習過程を聞かされるのは苦痛だと感じる方もいると思います。そのような人達にとっては騒音でしかないのだと思います。
隣の家がかなり離れているなどの住宅環境に住んでいるのであれば防音に対して考えなくてもいいのですが、多くの人はそういうわけにはいかないと思います。様々な考えの人達の中で生活していかなくてはいけないのですから、防げるトラブルは事前に防いでおきましょう。
防音対策が完璧ではなく、音がもれてしまうような状況であったとしても日頃のご近所に対しての態度などに気を遣っていれば、もしトラブルになったとしてもおおごとにならずにすむのではないかと思います。不快に思われてしまうような行動や言動をしないように常に気をつけたいですね。
防音をどのようにするか
アップライトやグランドピアノの防音対策にはどのようなものがあるのかを書いていきますね。●防音室を設置する
カワイからもヤマハからも防音室が販売されており、定型のものと自由設計のものとあります。
https://www.kawai-os.co.jp/product.aspx
https://jp.yamaha.com/products/soundproofing/ready-made_rooms/index.html
ヤマハでは防音室のレンタルもしています。
https://rental.jp.yamaha.com/shop/c/c30/
アップライトピアノを入れることができる2.0畳の防音室をレンタルすることが可能です。
●消音機能のついたピアノを購入する
ヤマハもカワイもどちらも消音機能のついたピアノを販売しています。
https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/pianos/silent_piano/index.html
https://www.kawai.jp/product/c/grandpianos/anytime-x2/
https://www.kawai.jp/product/c/uprightpianos/up-atx3/
弾いてもいい時間帯には普通のピアノとして弾き、それ以外の時間帯は電子ピアノのようにヘッドホンを使うなどして弾くことが可能なピアノです。
消音機能は後からつけることも可能なようです。つけられるものとつけられないものがあるようなので楽器メーカーに問い合わせが必要です。
消音機能をつけたとしても先ほど書いたようにペダルを踏む振動が伝わってしまうということはあると思いますので、消音機能つきのピアノで防音室も設置するというのが防音としては最も良い方法なのではないかなと思います。
ピアノを買うだけでもお金がすごくかかるのに防音室や消音機能にもかなりお金がかかります…。電子ピアノは買ったらそれで終わりですが、ピアノの場合は調律をしてもらわないといけないので、メンテナンス費もかかります。
ピアノを買ってもらった、もしくはこれから買ってもらう予定の方達は専門的に勉強しないにしてもなるべく長~くピアノを続けて下さいね。購入するにはかなりのお金がかかっているわけですからね。
防音されているマンション
防音がされているマンションに住むというのも1つの選択肢だと思います。私が注目している防音マンションをご紹介します。https://www.musision.jp
「ミュージション」という音楽を楽しむ人用の賃貸マンションです!このマンションはかなり人気なようでどんどん物件が増えています。
東京、埼玉、神奈川にしかないのがとても残念です。地方にもできたらいいのに…。
https://www.musision.jp/about/insulation
防音についてもしっかりしているようです。有名なホールの音響を担当する会社が関わっているのですから信用できますし、物件が増えていることや多くの楽器奏者が入居していることが良いという証拠なのだと思います。ミュージションでピアノ教室をされている方もいるようです。
ミニホールがついている物件もあるので入居者同士の交流もきっとあるでしょうね。音楽仲間ができるっていいなぁ!
周りに遠慮しながらの楽器演奏は楽しめません。しかし自分が楽しむためだったら周りの人のことはどうでもいいというのではいけません。
ピアノの場合は、グランド、アップライト、電子ピアノと選択肢がありますが、他の楽器はピアノのようには選択肢があまりないと思うので、自分の住宅環境で楽器を演奏するにはどのような防音が必要なのかよく考え下さいね。
まとめ
◆ピアノの音は新幹線の車内やパチンコ店よりもうるさい値◆過去にはピアノの騒音問題で殺人事件が起きている
◆防音については楽器を演奏する全ての人が考えるべき問題