中島敦『光と風と夢』あらすじ・名言・感想~知らない自分と出会える!
皆さんは、日々の生活のなかで悩んでいることはありませんか?
毎日の生活の中で、たくさんある選択肢にがんじがらめになっている人、あの時こうしていればと後悔している人。
私も少し前までは、その一人でした。

でも、それは当然のこと。
だって、私たちは「今」、生きているんですから。

生きているから悩む、生きているから後悔もする。
泣く、笑う、怒る、そしていずれは死を受け入れなければならない日がやってくる。
そんなの当たり前のことです。
でもこれから少しの間、その背中に背負った荷物をちょっと降ろして、自分の人生を見つめ直してみませんか。
それは、全然難しいことじゃありません。
実際私は、たった1冊の本との出会いによって日常の考え方が変わったんです!

その1冊とは、中島敦の『光と風と夢』。
今回は、この作品についてご紹介します。



■ 目次

『光と風と夢』あらすじ

『光と風と夢』あらすじ
本作は、1942年に作家・中島敦が発表した中編小説です。
簡単にいうと、作家・スティーブンソンの晩年の生活を描いた物語です。
スティーブンソンは、『ジキル博士とハイド氏』や『宝島』の著者として有名な作家さんです。
こちらの作品などは、有名なので名前くらいは聞いたことがある人も多いことでしょう。
私も、もちろん知っています。

『光と風と夢』は、晩年、南洋・サモアに移り住んだスティーブンソンの記した日記という形でストーリーが進んでいきます。

35歳で激しい喀血に襲われたスティーブンソンは、健康地を求め各地を転々としながら、サモアに辿りつきます。
海と島々と土人達と、島の生活と気候とが、私を本当に幸福にしてくれるだろう、とサモアでの暮らしを決めたスティーブンソン。

美しい南洋の自然に囲まれた生活を送りながらも、崩れゆく風俗や悲劇。
そんななか、スティーブンソンは、常にその土地に住む人の立場で物事を考え続けました。

さらに、スティーブンソンの作家としての成果や、己の誇り。
忍びよる死の気配とそれによって気づかされる世界の本当の美しさ。

消えゆく命のなかで、増していく世界の美しさはまるで心の奥の深い所に染み入ってきます。

この作品、中島敦がスティーブンソンの自筆の日記に手を加えたものだと思っていたのですが、そうではないんですね。
物語は中島敦の完全な創作だそうです。

1942年といえば太平洋戦争の戦時下。
当時パラオに赴任していた中島敦にとってはサモアに近い日常があったのかもしれません。
しかし、まるでスティーブンソンが中島敦に憑依して書かせたようなこの作品がフィクションだなんて、びっくりです!
また、非常に読みやすい作品だと思います。

『光と風と夢』の名言

『光と風と夢』の名言
この『光と風と夢』。
あくまでスティーブンソンの日記という形なので、スティーブンソンの語った言葉として描かれている言葉で、私が好きな言葉を2つ紹介します。

昔、私は、自分のした事にいて後悔したことはなかった。しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた

頭は間違うことがあっても、血は間違わないものであること。(中略)それが真の自己にとって最も忠実且つ賢明なコースをとらせているのであること。(中略)我々の中にある我々の知らないものは、我々以上に賢いのだということ


後悔先に立たずとか、やらずに後悔するならやってから後悔しろとは、よく聞く言葉ですが、何だかそれらの言葉の先駆け的な存在のような気がしますよね。
ひとつひとつの経験や体験が、私たちの生活をより豊かにすると考えていいんじゃないでしょうか。

さらに衝撃的すぎる「血は間違わない」という言葉、私は、最初はよく理解できなかったんですが、それに繋がる「我々の中にある我々の知らないものは、我々以上に賢いのだということ」という部分を読んで、何だか妙に納得しちゃったんですね。
その人の中に眠っている、生きていくための本能とでもいいましょうか。

自分の中にも、まだまだ自分ですら気がつていない素敵な力が眠っているのだと思うと、何だかワクワクしてきますよね!

まとめ

実は、私がこの作品に興味を持ったのはある漫画がきっかけでした。
そのなかで主人公の孤児の少年が、昔読んだことがあると言っていたのが、この中島敦の『光と風と夢』でした。
少年は、作中のスティーブンソンの言葉によって無事危機を脱し、人間的にも成長していきます。

『光と風と夢』の主人公となっているスティーブンソンは、44歳でこの世を去りました。
また、この物語の著者・中島敦も、33歳という若さでこの世を去っています。
時代といえ、早すぎる死を惜しいと感じてしまいますよね。

現代を生きる私たちは、この物語や言葉を知ることで、これからの人生を少しだけ豊かなものにできるような気がしませんか。
そのなかで、「自分の知らない自分」に出会えたらいいですね。

そして、いつかこの言葉があなたの背中を押してくれますように。