昨年度の映画界で、名だたる賞を総ナメにしたミュージカル作品「ラ・ラ・ランド」。
アカデミー賞作品賞こそ逃しましたが、監督賞、主演女優賞など6部門、ゴールデングローブ賞も7部門受賞しました。
シリアスな作品が好まれる賞レースで、ミュージカル映画がここまで高い評価をされるのは、珍しいんですよね。
そんな、今をときめくミュージカル。
初心者でも楽しめる作品に共通するのは、
・ストーリーが分かりやすい
・名曲揃い
・見た目がドラマティックでカッコいい
この3点を踏まえたオススメの作品を、映画と舞台、両方併せてご紹介します。
その1 「レ・ミゼラブル」
ビクトル・ユーゴーの大作を、見事にミュージカルに仕立て上げている、舞台も映画も最高に良く出来た作品です。
フランス革命という激動の時代に、主人公ジャン・バルジャンと彼を取り巻く人々が、それぞれの立場でもがき、苦しみ、非情な運命に翻弄されます。
作品の一番の見所は、代表曲「夢やぶれて」を始めとした名曲の数々。
作曲したクロード=ミシェル・シェーンベルクは、壮大なオーケストレーションと、心に迫るメロディーで、作品の世界観を見事に表現していますね。
ファンティーヌが歌う「夢やぶれて」と同じくらい好きな、エポニーヌのソロ「オン・マイ・オウン」。
報われない恋心を切々と歌うエポニーヌの姿に、聴くたびにホロリと涙がこぼれます。
その2 「オペラ座の怪人」
私が初めてニューヨークのブロードウェーで鑑賞したミュージカルで、思い出深い作品です。
当時中学生で、英語もまだ覚束なかったんですが、舞台美術の壮麗さと、あっと驚く演出で、言葉とか関係なく引き込まれましたね。
怪奇な現象が次々と起こるオペラ座。地下に棲む「怪人」の仕業と恐れ、主役を演じる女優まで降板してしまいます。
抜擢される新人のクリスティーヌ、それは彼女を愛する「怪人」の仕業で、、、。
劇中劇のような仕立てで、ストーリーもミステリアスで面白いんですが、音楽が素晴らしいんです。
私は、舞台を観た後すぐにスコアを手に入れて、一時期熱にうなされたみたいにピアノで弾きまくってました。
1986年初演でクリスティーヌ役を演じたのは、今では超有名歌手として知られるサラ・ブライトマン。
脚本と作曲を務めたアンドリュー・ロイド=ウェバーの妻だったこともあって、高音域でキレイに歌い上げる彼女の持ち味が充分に生かされていますね。
私が観た時は、休憩中にクリスティーヌ役が代役に代わるハプニングがあり、ちょっと残念でした。
それでもしっかり感激出来たので、ブライトマンが演じているのを実際に観れたら鳥肌ものでしょうね。
クリスティーヌがソロでしっとりと歌う “Think of Me” 、「怪人」とのデュオが光るテーマ曲 “The Phantom of the Opera”、「怪人」の恋敵でもあるラウルも交え、三者三様の思いが紡がれる”All I Ask of You”など。
最初から最後まで聴き応えたっぷりの、名曲揃いですよ。
ブロードウェイでは、唯一1万回越えのロングラン公演を果たしていて、王道ではありますが、一度は観ておきたい作品ですね。
その3 「美女と野獣」
ディズニー作品は、基本ミュージカルの形式が多いんですが、数ある作品の中でも私がオススメするのは「美女と野獣」です。
舞台では「ライオン・キング」が一歩抜きん出ている印象ですが、前評判の高い実写映画が間もなく公開されることもあって、私の今のイチオシですね。
セリーヌ・ディオンとピーボ・ブライソンが歌うテーマ曲は誰もが知る名曲ですよね。
今回の映画では、91年度版の音楽を残しつつオリジナル曲もいくつか追加されるんですが、その1曲 “How Does A Moment Last Forever” を、セリーヌ・ディオンが歌うんです。
ファンとしては、どこの場面で聴けるのか今から楽しみです。
キャスティングも素晴らしいんですよ。
主人公ベルは、「ハリー・ポッター」ハーマイオニー役でお馴染みのエマ・ワトソン。
美しさだけでなく、キリッとした知的な印象がベルにぴったりです。
脇役も、イアン・マッケラン、エマ・トンプソン、ユアン・マクレガーなど、豪華キャストがズラリ勢揃いで楽しみですね。
舞台だと、ティーポットのポット夫人や、ロウソクのルミエールが、着ぐるみのキャラクターみたいで、私はどうしても違和感があるんです。
嬉しいことに、予告編を見る限り、今回の実写版でその心配は無さそうです。
その4 「サウンド・オブ・ミュージック」
「ドレミの歌」や「エーデルワイス」でお馴染みですね。
トラップ一家にやって来た家庭教師マリアが、歌を通じて子供達と絆を深めていく、実話を元にしたストーリーです。
母親を亡くして、多忙な父親に構ってもらえないで拗ねていた子供達が、歌う素晴らしさに目覚めて活き活きと輝いていくんです。
ナチス支配下の母国からの亡命という、暗い要素もありつつ、一家揃って朗らかに歌う姿がとっても微笑ましい作品ですね。
私は映画版しか知らないんですが、マリア役を演じる名ミュージカル女優ジュリー・アンドリュースの、ちょっと低めで伸びやかな歌声に魅了されますね。
数ある楽曲の中でもオススメは、マリアとトラップ大佐が愛を確かめあう “Something Good” と、修道院長がマリアに贈る “Climb Ev’ry Mountain” 。この2曲に加えて、最近は「ドレミの歌」も気になるようになりました。
と言うのも、先日子供が学校で習ってきたらしく、英語版を歌っていたんですが、私が知っている一般的な日本語版と随分歌詞が違うので驚いたんです。
「ファはファイトのファ」が、”Far, a long, long way to run” ですし、「ソは青い空」は、”Sew, a needle pulling thread” 。
笑ってしまったのは、「シは幸せよ」が、”Tea, a drink with jam and bread” なんです。
既に「シ」でもなく「ティー」ですからね。
まさかここまで違うとは思いませんでした。
その5 「ヘアスプレー」
おデブな女の子が、パワフルかつとってもキュートにパフォーマンスを披露する、歌って踊って笑って泣いて、「これぞミュージカル!」と思える作品です。
人気テレビ番組に出演して、憧れのダンサーと踊るのを夢見る女の子が、外見や人種差別を物ともせず、周りも巻き込んでスターダムにのし上がる、ユーモアたっぷりのシンデレラ・ストーリー。
こんな子がいたら、応援せずにはいられないでしょうね。
音楽は、全体的にノリのいい曲ばかりで、自然と身体が動いてしまいます。
私が大好きなのは “You Can’t Stop the Beat” です。
クライマックスに使われる曲というのもあるんですけど、2007年の映画版では、特殊メイクでビッグな女性に扮したジョン・トラボルタが踊る姿が、可笑しくてカッコイイんですよ。
彼は、元々ブロードウェイのミュージカル俳優で、学園ミュージカル映画「グリース」や、「パルプ・フィクション」でもキレのある踊りを披露してますからね。
味のあるキャスティングだと思います。
まとめ
舞台も映画も楽しめるミュージカル作品。初心者が見るには、分かりやすいストーリーと、素敵な音楽、見た目がカッコイイ作品がいいですよ。
私のオススメは、
1 ドラマティックな「レ・ミゼラブル」
2 ミュージカルの王道 「オペラ座の怪人」
3 実写映画が間も無く公開の「美女と野獣」
4 スタンダードな名作「サウンド・オブ・ミュージック」
5 パワフルでキュートな「ヘアスプレー」
ミュージカルの魅力にはまると、きっと色んな作品を見たくなると思いますよ。
「キャッツ」や「シカゴ」など、今回は紹介しなかった名作がいっぱいあるので、是非色んな作品を見て楽しんで下さいね。
First picture By UpstateNYer (Own work) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons.
Second picture By VillageTheatre (Own work) [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons.
Third picture By Jiazi [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons.
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Sixth picture By FaceMePLS (Own work) [CC BY-NC-SA 2.0], via Flickr.