リストの「ハンガリー狂詩曲」は、ピアニストのレパートリーに欠かせない重要なコンサート・ピースです。第2番嬰ハ短調、第6番変ニ長調、第12番嬰ハ短調は、特に人気が高く演奏機会の多い作品です。

今回ご紹介する第6番は、最も短く明るい曲想なのでとりわけステージに出しやすい作品だと思います。


リストはハンガリー出身の芸術家として知られていますが、彼が人生の大半を過ごしたのはフランスとドイツでした。フランス語を巧みに操っていたと言われ、反対にハンガリー語は全く喋れなかったといわれています。

言語と音楽が不可分な関係にあるという点から考えると、「ハンガリー狂詩曲」というタイトルが付いていても、果たしてリストが“ハンガリーらしさ”を的確に認識していたかは怪しいところです。

しかし、ある程度直感的に捉え、厳密には本物と異なっている可能性を残していることが、かえって曲のわかりやすさにつながり、多くの人に愛されている理由なのかもしれません。事実、民謡の研究を本格的に行ったB.バルトークの作品も素晴らしく、よりハンガリー的ですが、リストほどの人気があるとは言えません。

難易度について



この「ハンガリー狂詩曲第6番」は内容的に複雑な作品ではありませんが、ピアニストの技巧的限界を露呈させてしまう恐ろしい曲です。

オクターヴの数が半端ではなく、より速く、軽く、強く、正確に弾くことで演奏効果の高まる代物です。G.シフラ、M.アルゲリッチ、ラン・ランなどの超絶技巧を持ったピアニストと、普通のピアニストとの力量差がはっきりと見えてしまいます。

Hungarian Rhapsodies: Cziffra
Hungarian Rhapsodies: Cziffra

Liszt: Pno Sonata in B Minor Hungarian Rhapsody No
Liszt: Pno Sonata in B Minor Hungarian Rhapsody No

リスト・マイ・ピアノヒーロー
リスト・マイ・ピアノヒーロー

全音の難易度表では、ハンガリー狂詩曲の第2番がF(上級上)となっていますので、この第6番もFと考えて良いと思います。ですが、弾き方によってFよりもさらに高難度になり得る作品です。

弾き方のコツ

このように比較的単純な音楽的構造を持った作品の場合、アーティキュレーションと音量、テンポの対比を明確に表現することで演奏効果が高まります。


アルペジオは、すべての音がマルカートに聴こえるように強いタッチで弾きましょう。

(動画00:22-)

この箇所のクレッシェンドからピアノになる対比も重要ですね。ピアノになった箇所のアルペジオは、シャボン玉が弾けたような軽いイメージを持ちましょう。クレッシェンド部分の三度はそれほど困難ではありませんが、ポジションの移動を細かくしなければ少しずつ力が入ってしまいやすい部分です。

(動画01:17-)

このような細かいパッセージはつい走ってしまいがちで難しい部分です。(個人的にはとても苦手です)

ほとんどすべての音が黒鍵になりますね。例えば4つで1つや、8つで1つなどとグループ化して弾けば楽にはなるのですが、より音を鮮明に弾くためにすべての音を輝かせて弾きましょう。テンポはもちろん速いですが、指一本一本の速度も高めて、鋭い音で弾き進めていきましょう。

練習は、遅いテンポでポジションのチェックと、鍵盤と指のコンタクトをよく感じ取ることに集中しましょう。

(動画01:36-)

とても活力に満ちた部分です。senza Ped.と書かれているのは、どの音もぼやけて欲しくないからです。和声を聴くというよりは、連続した和音が生み出す質感を感じ取るようにすると良いと思います。とても打楽器的な音色だと思うのです。

フォルテの部分はペダルの指示がありますが、ペダルをあげる箇所も指定されています。ここであげていなければ、次のスービト・ピアノが不可能になってしまうので注意しましょう。

(動画01:46-)

10度が完璧に弾けない場合は必ずOssiaを選択しましょう。この部分は響きが大切なので、10度を弾くことそのものが目的になってはいけません。

(動画02:19-)

このような典型的なヴィルトゥオーゾ・ピースの場合、技術的に難しくない箇所がいい加減な扱いになるケースが多いように思います。Andante(quasi improvisato)と書かれているのが曲者です。さらにフェルマータも散見されます。いくらか自由が許されているとはいえ、練習の初期段階ではメトロノームに正確に合わせて練習しましょう。

(動画04:34-)

リストが頻繁に用いる形の一つです。高い音は右手、低い音は左手で弾いてしまえばとても簡単です。簡単ですが、耳が追いつく限界の速度を超えないように耳を澄まして練習しましょう。

(動画:先の動画の続き)

単純な伴奏と、軽快なメロディーによる曲を締めくくる部分です。左手は軽快さを演出すること。右手は相当な余裕を持って弾けるよう練習することと、アーティキュレーションを確実に再現することが大切です。でなければ同じことの繰り返しばかりでとても聴いていられません。

(動画06:40-)

最後のPresto部分で最高の速度と音量を出せるように、ここに至るまでは余力を残しておきましょう。ラン・ランやM.アルゲリッチは冒頭部分から、普通の人の全力に近いテンポで弾き、Prestoでは超人的な速度で演奏しています。彼らの真似をすることは不可能なので、曲全体の構成力で“速く聴こえるように”工夫しましょう。

一例として、このPresto部分の同音連打だけやや前のめりに弾くとスピード感が出ます。それが効果的に聴こえるためには、ここまでの部分を同じテンポで表情豊かに弾く必要がありますね。

まとめ

テクニックがあればあるほど多くの可能性が広がる作品ではありますが、テクニックに自信がない人にとってもアプローチ次第では魅力的に弾ける作品です!譜読みも比較的優しいので、一度挑戦してみてはいかがでしょうか。