「舞台に立ちたい!」

思い立ったが吉日。やる事は決まっています。自ら舞台を企画するもよし。劇団に所属するもよし。オーディションのあるところを求めて彷徨うもよし。

私の場合はと言いますと、友人からのお誘いで急遽舞台に出演する事になって以来、様々なご縁に恵まれ、オーディションとはあまり縁のないままに、演劇漬けの日々がスタートしてしまいました。

そこで今回は、超難関!某演劇研究所のオーディションに、10代で一発合格した女優さんをお招きし、オーディション内容をこっそり教えて貰いました!

彼女は、学生時代からの友人であり、演出のお手伝いをお願いしたり、また、私からは演技発表会用の短い脚本を提供したりと、長きに渡るご縁もありまして、ご協力をお願いしました。

なかなか味わうことのできないオーディション会場の模様を、インタビュー形式でお届けしたいと思います。

まさかの倍率!


――超難関と言われていますが、どういった経緯で?

多くの有名な方を輩出している劇団で、私自身もその劇団の公演を観に行ったのですが、それがとても面白くて一気に好きなってしまい、それでオーディションを受ける事にしました。
その時はまさか倍率がそんなに高いとは知らなかったので。

――知らずに受けてしまったんですか?(笑)

はい(笑)。母に受けることを言ったら「えっ!?すごい倍率なんだよ!?」って驚いてました。

――試験当日の印象を教えてください。

ざわざわと落ち着かない空気でした。基本的に皆一人で受けに来ているので、「とにかく他は関係ない!私は私!」って感じのオーラが溢れてて、周りは全員ライバルなので当たり前なんですが…。あちこちで発声練習やストレッチをする人、じっと精神統一してる人、台本を読んでる人もいましたね。ある意味殺気に満ちていて、なんかこう、「ここは、『HUNTER×HUNTER』のハンター試験会場かよ」って思いました。

――読んだことはないのですが、殺気…。

集中のオーラというか、みんな緊張してたんですね、多分。

――どのくらいの人数とか覚えてます?

正確な人数は覚えてませんが、大学の校舎を貸し切って試験会場にしていたので、2000人前後はいたと思います。制服姿の女子高生もいれば、推定50代ぐらいの方も普通にいました。

――どんな服装で受けたんですか?

服装はとにかく動ける格好で。確か試験会場で自前のTシャツとジャージに着替えました。オーディションは動きを見せるものなので、靴も動きやすい物の方が良いと思いました。私は裸足で受けましたが。

――裸足で!?

オーディション用に運動靴を買って、ちゃんと持って行ったんですが、履き慣れていなかったので「なんか邪魔だな」って、脱いじゃいました。超、動きやすかったです(笑)。

――結構、余裕ですね。

めちゃくちゃ緊張しました!!それまで高校演劇や市民劇団などで舞台経験はそれなりにあったのですが、やっぱり普通の公演と違い、「品定めされる」って意識が強くて…。周りの受験者がみんなすごい人に見えてしまったりして、怖くて仕方がなかったですね。

筆記試験はボロボロ

――募集要項に、筆記試験とありますが?

試験内容は、一次試験は筆記試験と朗読、パントマイムだったかな?筆記試験は、「文章を読んで答えなさい」とか国語のテストみたいな感じのものと、簡単なのは「となりのトトロの監督を答えなさい」とか、確かそんな感じの常識問題でした。あとは、漢字の読み書きとか。私は筆記試験が学生の頃から苦手で、多分点数はボロボロだったと思います(笑)。

――漢字が読めないと大変ですよね。

朗読では、「詩」を配られたんですが、読み間違えないように必死に携帯で確認しましたね。詩もパントマイムのテーマも、筆記試験の時に配られて、筆記の後、順番待ちの間に練習しました。試験官の待つ部屋に一人ずつ入って朗読して、そのまま試験官の前で縦横と歩かされて、最後がパントマイム。

――パントマイムって、大道芸みたいな?

パントマイムと言うか、「無声劇」って言うんですかね?みんな同じテーマで、「駅で大荷物を持っていて、とても疲れている。 コインロッカーに荷物を預けたいけど、どこにあるんだろう…あっ、あった!えーと空いてるところは…最後の一個!やった!とロッカーに荷物を預け、お金を入れて鍵をかける。よし、とりあえず喉が渇いたからジュースでも買おう!自販機を探して見つけだし、財布を出そうとしたら、ない!えっ!?財布なんでないの!?どこで落とした?!よく思い出して!…あっまさか!?急いでコインロッカーへ戻り、鍵を開けて中の鞄をまさぐると、財布が出てくる。よかった安心した…!はあやれやれ、じゃあもう一度ロッカーを閉めよう…と思うも今度は小銭が足りず。仕方がなく再び荷物を持って歩き出す…」という内容でした。

――細かいですね(笑)。

本当は心情までは書かれてませんが、実際やってみると結構長い!もっと短くて簡単なのにすればいいのに!なんでそう思ったのかというと、一人あたり何人受け持っているかは知りませんが、審査員の方がすっごい疲れてるわけです。もうね、私のことは半分寝てるみたいな感じで、お茶とお菓子をつまみながら見てくださいました。

――審査する側も大変なんですね。

かなりお年を召した方でしたし。本当に見てるか!?とも思いましたが、見てもらうにはこの審査員の方を起こさなきゃいけない!と思って、とにかく私はドタバタやりました。駅でこんなに転がる奴いないだろってぐらい転がりました。だって油断すると審査員が寝ちゃうから。でもむしろこの審査員の方が疲れてる感じのお陰で緊張しませんでしたね。それでも結局一次を通ったので、ありがたかったと思います。

時間がすごく短い!


――二次審査は、別の日ですか?

二次審査は数日後でした。歌と身体表現と、作文の宿題がありました。歌は各自が自由に選曲して、印刷した楽譜を持って来るようにと言われました。この楽曲選びがとても苦戦しましね。友達に協力して貰ってカラオケに籠り、どの曲が良いか歌ってみたりして。結局、昔好きでよく聞いていた曲にしたんですが。

――それを、みんなの前で?

番号順で男女2組ずつ審査を受けました。審査員がずらっと並んでいて…。しかもカーテンで区切ってあるだけなので、待合室までばっちり全部聞こえていました。他の人達の歌を聴いて分かった事は、「大体サビ前か途中で止められる」です。一次試験で2000人前後いた人達が振るい落とされたとはいえ、それでも二次試験には確か…100人以上はいたかな?とにかく多いので、一人が歌える時間はすごく短いんです。サビが一番盛り上がるし、一番自信を持って歌えるところだと私は思うんですが、大抵の人はサビに行く前に演奏が終わっちゃってて可哀想でした。

――しっかり聴かせるつもりで練習しますもんね。

そうなんですよ!フルコーラス歌えるつもりでいました。私の場合、単純に好きな曲にしちゃったんですが、たまたま1小節目からサビになっている曲だったので、なんとか聴いて欲しかった部分は聴いてもらえたかなって感じでした。それから身体表現ですが、そう!ピアノがあるんです。目の前に。

――あ、じゃあ今の歌も?

はい、演奏してくださる方に持ってきた楽譜を渡して、それに合わせて歌いました。その演奏をしてくださった方がそのまま即興で色んな曲を弾くので、「曲に合わせて自由に体を動かしてください」との事でした。

――いよいよ即興的になってきましたね。

これ、確か注意されたのが、「ダンスではありません」でした。喜びや悲しみを表現してほしいのだそうで。ダンスには正直少し自信があったのですが、ダンスではありません…ダンスじゃないんだ(絶望の表情)…みたいな。しかもこの審査は男女で二人一組なんです。つまり、初対面でたまたま運命共同体になってしまった男の子と、曲に合わせて何かをしなくてはいけない。

――全体を見ながらでないと出来ないですね。

そうなんです。正直、マジかよ…って思いました(笑)。凄いプレッシャーです。ちなみに、「二人で協力して」とは言われていませんが、「同時にやって」と言われてしまったので、この狭いステージの中で協力しないわけにはいきません。何をどうしたのか全部は覚えていませんが、明るく楽しい曲の時はとにかくスキップしてみたり、身ぶりだけで「やっほー!みんな~元気~~~!?!?」と歌のおねえさんみたいな事をやってみたりしたのですが、「あ、これ一人でやってても限界だ」と思って、焦った私は咄嗟にもう一人の男の子にも手を振ったりして、絡み始めました。

――追い込まれてますね(笑)。

そうすると、その男の子も限界だったのでしょう。一緒に手を繋いでくるくる回ったり飛び跳ねたり、私たちは昔からの親友だよね!!!!と言わんばかりの笑顔で遊び回ったりして。かと思えば突然悲しい曲に切り替わるので、すぐにその場にしゃがみ込んで転がって、絶望の淵に落ちてみたり(笑)。寂しい曲では、悲しい曲との差が欲しくてもう一人の彼と腕を組んで歩いてみたりしました。今よく考えてみれば、あの彼がちゃんと受け止めてくれたからよかったものの、もし何か彼なりのやりたい事やプランがあったのだとしたら、私はとてつもない邪魔をしてしまったのでは…?と思ったのですが、よくよく思い出してみれば彼もその後、合格していた気がします。

――感情表現で終わらず、演劇になっていたんですかね?

だとすると協力してもらえて正解だったのかも知れません。一通り終わって、後は別室で面接と作文朗読…となるはずが、審査員の方が「じゃあ最後に一発芸!なんでもいいよ!」と言い出した時は死ぬかと思いました。そんなものは持ち合わせておりません!!!!と思いましたが、本当に何にもなかったので、「じゃあ…昭和のラジオやります…」と鼻声で『りんごの歌』を歌ってみるという謎の一発芸を披露してしまいました。私も審査員の方もかなり疲れているテンションだったし、なにより年配の方がとても多かったので、奇跡的にちゃんとウケました。ただ歌っただけだけどよかったー!

――全員へとへとですね(笑)。

長丁場ですからね!そのあと、別室にて「家族」をテーマにした作文を朗読しました。仕事が忙しくて滅多に会えない父の事を書いたのですが、「あまりに会えないので、幼い頃は父の事を、『たまに会える親戚のおじさん』だと本気で思っていました」と読んだところ、審査員の方から「…やばい…俺も娘に会わなきゃ忘れられるかも知れない…」と好評(?)でした。こんな発言が出てしまうぐらい良い雰囲気だったと言いますか、みんな疲れてるな…という感じでした。こっちは緊張してるんですが、向こうも沢山相手にして大変ですね…という気持ちからリラックス出来たと思います。

――同じ人間どうし?

みんな同じ人間なんです。この人達にも家庭があるんだなーって(笑)。よく考えなくても当たり前なんですが、そんなことを痛感しました。

プロの現場


――合格発表はその場で?

後日、その劇団の建物に張り出されていました。きっと張り出された朝にみんな見に行ったんだと思うんですが、私は見に行くのが怖かったせいで見事に寝坊しまして、お昼頃に友人を連れてこそこそと見に行きました。もう誰もいなくて、完全に出遅れたな…と思いつつ恐る恐る見てみると、私の番号がちゃんと書かれてありました。

――実際に入ってみて、いかがでしたか?

所属してしまうと、個人的な活動は規則で制限されてしまいますが、それでも徹底的に「舞台演劇」の勉強ができて楽しかったです。いろんな台本に触れて、実際に公演を三回行いました。とても高そうなカツラや豪華な着物をプロの方々に着付けて頂いて舞台に出たのが、すごく貴重な体験でした。

――私も拝見しましたが、セットも豪華でしたよね!

そうなんですよね!あれもみんなで組み立てたんですが、元はプロの大道具さんによる設計だったと思います。照明や音響もプロの方にしていただき、プロの現場にいるんだ…と身の引き締まる思いでした。

――忙しくなりましたか?

レッスンは、朗読や体操、歌もあったし、ダンスもありました。それから殺陣もやりましたね。即興の稽古や、ショートストーリーの稽古、古典の台本を読み込んだり、その台本が書かれた時代の勉強をしたり。30人程の年齢もバラバラな人達が、それぞれの生活や仕事を抱えながら通って来ていて。衝突もしましたし(笑)。忙しかったですが本当に楽しくて!充実した時間を過ごせたことに感謝しています。

インタビューを終えて

流石は女優さんといった感じで、情景や空気感、心情まで、書き切れないほどに細かく覚えていらっしゃって、とても驚きました。

「審査員を起こさなきゃいけない!」という心意気に、なんだか私までオーディションに参加しているような気分になり、思わずハラハラしてしまいました。

周りを巻き込もうとするその姿勢…お見事です!インタビューにご協力いただきましたこと、この場をお借りして感謝申し上げます。

最後に、劇団公式のホームページからも資料請求のリンクとして貼られている、オーディション検索サイトを見付けましたので掲載致します。目的や、地域別に検索ができてとても便利ですので、是非参考にしてみてください!

俳優★声優なるサイトエデュパ http://www.edu-pa.net/