夏になるとチューブやサザンといったアーティストの夏の定番曲を思い浮かべる世代の方もいるのではないでしょうか?
昭和50年代から平成に入ってからの曲を楽しめるのは、現在30歳代から50歳代の方がおおいでしょう。
その世代に対する音楽療法とはいったいどういったものなのか、8月のプログラム例とともにご紹介したいと思います。
チューブやサザンなどをプログラムに用いる場合の対象者
音楽療法と聞くと、認知症の高齢者のためのものだとか、障がい児のためのものだという風に捉えている方も少なくありません。でも、そればかりではありません。
音楽療法は、成人期の20歳から50歳代の方を対象に行われることもあります。
成人期の方で音楽療法の対象となるのは、精神疾患などがあるためにセラピーを必要とする方々などです。
一部の精神科病棟では入院患者のために音楽療法を取り入れている場合があります。
また、精神疾患のある方を対象としたデイケア施設で音楽療法がおこなわれている例もあります。
対象となる精神疾患は、統合失調症やうつ病、自律神経失調症の方などです。
精神科領域では、対象となる年齢の方が30代から50代ということもあります。
その年代の方を対象とした場合には、昭和50年代から平成の初期のころに流行した曲を取り入れることもあります。
夏といえばと聞かれて多くの方が思い浮かべる、TUBE(チューブ)やサザンオールスターズ(サザン)もその中に含まれるのです。
精神科領域での音楽療法の特徴
精神科領域では対象者の年齢の幅が広くなることがあります。
それは、長期の入院を経て高齢になっている統合失調症の方がいたり、摂食障害など若者特有の疾患で入院加療している方がいるなどの理由からです。
また、状態についても様々です。
ADLが自立している方もいれば、ほとんどの行為に介助を要する方がいる場合もあるでしょう。
このような場合、すべての方に合ったプログラムを用意することは難しいかもしれません。
若いクライエントが好む曲は高齢の方にはなじみのない曲だということもあるでしょう。
また、ADLが低下しているクライエントに合わせたプログラムでは物足りなさを感じるクライエントもいるかもしれません。
可能であれば、様々な点を考慮していくつかのグループごとにセッションを行うことも有効です。
それが難しいのであれば、できるだけ多くのクライエントをカバーできるプログラムを考える必要があります。
その幅広いパターンのクライエントを対象にしたプログラムが、精神科領域の音楽療法の特徴であり難しい点でもあります。
精神科領域の音楽療法:8月の歌を使った例
精神科領域で8月に行う音楽療法のプログラムの例として以下のようなものを考えました。
1.うみ(童謡『海は広いな大きいな』)
2.シーズン・イン・ザ・サン(TUBE)
3.いとしのエリー(サザンオールスターズ)
4.少年時代(井上陽水)
5.見上げてごらん夜の星を(坂本九)
6.ふるさと(唱歌)
『うみ』については他領域同様、導入のための曲であり、だれもが知っているであろう曲を選曲しました。
『シーズン・イン・ザ・サン』(TUBE)や『いとしのエリー』(サザンオールスターズ)は夏になると、高齢の方も見るような番組で紹介されることも多くあります。
ただし、聞いたことはあっても歌うには難しいというクライエントもいるでしょう。
そのような曲は、体操や楽器演奏の曲として利用することで歌えない方も楽しむことができるようになります。
もちろん、歌える方には歌ってもらいながら体操などを行ってもらうようにしてください。
『少年時代』(井上陽水)や『見上げてごらん夜の星を』(坂本九)は歌唱を目的として選んだ曲です。
教科書や歌集に載っていたり、テレビで紹介されたりすることから、幅広い世代に知られている曲です。
特に『見上げてごらん夜の星を』のように、より多くの方が知っている曲を使用することで、それまでのプログラムがあまり自分にとってなじみのない曲ばかりだったなと感じてしまっていた方にとっても、その場を共有することができる内容になり、満足感を得てもらえるかもしれません。
そして最後は、全員が知っているような気分を落ち着かせてもらえるような曲を選ぶといいでしょう。
まとめ
- チューブやサザンなど定番の夏の歌をプログラムに用いる場合の対象者は、成人期の20歳から50代のクライエントです。
- 精神科領域での音楽療法の特徴は、幅広いパターンのクライエントの集団を対象にしたプログラムにしなければならない点です。
- 精神科領域の音楽療法の8月の歌を使った例として、『シーズン・イン・ザ・サン』(TUBE)や『いとしのエリー』(サザンオールスターズ)といった、聞きなじみはあるけれども歌うのは難しい曲を体操や楽器演奏に使用し、『少年時代』(井上陽水)や『見上げてごらん夜の星を』(坂本九)など、幅広い世代が知っている曲を歌唱に使う。
昭和50年代以降に流行した曲を使用することもあるのが精神科領域での音楽療法です。
幅広く様々な病気や状態のクライエントに合わせたプログラム作りは難しさを伴うものですが、クライエントの好みや日常の様子などを把握することで、より理想に近いセッションにすることができるといいですね。