リアリティオリエンテーションとは、見当識障害の症状のある方に対して行われるリハビリの一種です。
見当識訓練とも呼ばれています。
このリアリティオリエンテーションとは、いったいどのような訓練なのでしょうか?
音楽療法のセッションでの活かし方と合わせてご紹介します。
■ 目次
リアリティオリエンテーションは見当識障害がある方に効果的
見当識障害とは、認知症の症状の一つです。
徐々に年月や曜日、場所などを認識することが難しくなるという症状です。
時間や場所がわからなくなり、さらに症状が進行すると、自分の子どもでさえも、だれなのかわからなくなってしまうこともあります。
そしてこの見当識障害に有効なリハビリテーションの一つとされているのが、リアリティオリエンテーションです。
リアリティオリエンテーションとは、見当識障害の症状がある方に時間や場所などを繰り返し伝えることで、記憶の中の見当識を強めようとする訓練です。
たとえば、日常の会話の中で「今日は5月5日ですね。こどもの日ですよね」というふうに
話しかけるとします。
そして、1日のうちに何度もそれを繰り返します。
そうすることで、見当識障害のある方の中に「今日は5月5日」だということを定着させるのです。
場所に関しても同様です。
何気ない会話の中に、場所の情報を取り入れるのです。
このようなリアリティオリエンテーションの方法を「24時間リアリティオリエンテーション」と呼びます。
リアリティオリエンテーションを行う方法は、それだけではありません。
もう一つの方法として「クラスルームリアリティオリエンテーション」と呼ばれるものがあります。
24時間リアリティオリエンテーションでは、日常の中で場所や時間を選ばずに行われますが、クラスルームリアリティオリエンテーションは、決められた場所で、決められた時間に行うものです。
一度に訓練に参加するのは少人数のグループです。
集まった方々の一人一人に対して、スタッフがその方に関する情報を提供します。
提供する情報は、その方の名前や季節、今いる場所がどこなのかといったものです。
クラスルームリアリティオリエンテーションも、見当識を意識してもらえるような情報を提供する訓練です。
このリアリティーオリエンテーションを行うことは、認知症の進行を遅らせたり、コミュニケーション能力を高めることができる効果があるとされています。
音楽療法にリアリティオリエンテーションを取り入れる方法
音楽療法のセッション中に取り入れることができるリアリティオリエンテーションは、24時間リアリティオリエンテーションです。
音楽療法のセッション中にも、今日は何月何日なのか、季節はいつなのか?といった質問は、よく行われます。
何月何日なのかをわかっている方に答えていただき、わからない方はその会話を通じて日付を認識することになります。
セッションの中で、季節に合った歌を歌い、自然な流れの中で今の季節に関する話題に触れることができ、今の季節に関する情報を提供することができるのです。
音楽療法にリアリティオリエンテーションを取り入れる際に注意したいこと
音楽療法のセッションを行う際には、リアリティオリエンテーションの理論はぜひ活かしていただきたいものです。ですが、注意しもらいたいこともあります。
それは、リアリティオリエンテーションの訓練方法を取り入れようと、意識しずぎないようにして欲しいという点です。
セッション中に、見当識に関する情報ばかりを会話に取り入れようとすると、どうしても話が不自然になってしまいます。
音楽療法の時間は、確かに認知症の進行を遅らせたり、その症状の改善のための時間ではあります。
しかし、その時間を楽しみ、日頃のストレスや悩みなどから解放される時間でもあるのです。
そのため、訓練に関する会話は多くなりすぎないように気をつけましょう。
まとめ
- リアリティオリエンテーションは見当識障害がある方に効果的なリハビリテーションの一つです。
- 音楽療法のセッション中に、季節の話をしたり日付を確認することで、リアリティオリエンテーションを取り入れることができます。
- 音楽療法のセッションでは、リアリティオリエンテーションに関する会話が多くなってしまうことで、セッションの流れが不自然になってしまったり、クライエントのストレスになってしまったりしないように気をつけましょう。
リアリティオリエンテーションは、音楽療法に取り入れやすいリハビリ方法です。
自然な会話ができる程度に取り入れ、その効果を少しでも得られるといいですよね。