認知症の方を悩ませる症状の一つに見当識障害があります。
見当識障害は、時間や季節などがわからなくなってしまう症状です。
この見当識障害のリハビリテーションとして行われるのが、現実見当識訓練です。
音楽療法のセッション中にも行うことができるこのリハビリ法についてご紹介します。

■ 目次

見当識障害とは?


認知症の方にたびたび見られる症状の一つが見当識障害です。

見当識障害が起こると、自分が置かれている状況が把握できなくなっていきます。

年月日、時間、季節、場所、人物などの状況を正しく認識する能力が欠けていってしまうのです。

この障害が起こると、今日は何月何日なのか、今自分はどこにいるのか、自分に話しかけているのは誰なのかといったことなどが正確に認識出来なくなります。

まず最初に障害が現れるのが、時間に関する認識です。

今が何時なのか、季節がいつなのかがわからなくなります。

そして次に、場所に関する認識も、阻害されていきます。

いつも通い慣れているはずの道順がわからなくなり、散歩の途中で迷子になってしまうこともあります。

最後に認識できなくなるのが、人です。

一緒に暮らす家族でさえも、その人が誰であるのか、また、自分とはどういう関係なのかがわからなくなってしまうことがあります。

見当識障害のリハビリとして行われる現実見当識訓練


現実見当識訓練とは、見当識障害のみられる方に対して行われるリハビリテーションの一つです。

言語障害が現れていない、初期段階の認知症の方に対して行われます。

現実見当識訓練はリアリティ・オリエンテーションとも呼ばれています。

リアリティ・オリエンテーションには、2種類の方法があります。

一つは24時間リアリティ・オリエンテーション、もう一つは、クラスルームリアリティオリエンテーションです。

24時間リアリティ・オリエンテーションは、日常会話の中で行えるリハビリです。

今日は何月何日なのか、ここはどこなのかといった、見当識に関することがらを、会話の中に意識的に織り込むことで、それらを思い出し、記憶に定着させる手助けを行います。

24時間いつでも行うことができるので、気軽に取り組むことができ、1日のうちに、何度も繰り返して訓練を行うことができます。

一方の、クラスルーム・リアリティ・オリエンテーションでは、小さな集団を作り、その中で、進行役を務めるスタッフが、基本的情報(クライエントそれぞれの名前や人柄、日時、場所など)を提供する方法です。

クラスルーム・リアリティ・オリエンテーションでは、集団を形成することから始めなければなりません。

しかし、同じ悩みを共有し、リハビリを行なっているという一体感から、お互い障害があることに共感し、そこからコミュニケーションに繋げられるメリットがあります。

音楽療法の中で行われる現実見当識訓練とは?

音楽療法のセッションの中でも、リアリティ・オリエンテーションを行うことができます。

音楽療法のセッションの中で行われるのは、24時間リアリティ・オリエンテーションです。

音楽療法のセッションでは、セッションが行われている日が何月何日なのかを、クライエントに尋ねることが、しばしばあります。

また、季節がいつなのかを問いかけ、季節に応じた曲を歌ったり、演奏したりすることで、季節を認識することの手助けをし、記憶への定着を促します。

そして、ある曲を歌った歌手について話すことで、その人に関する認識を高め、脳へ刺激をあたえることができます。

まとめ

  1. 見当識障害とは、認知症の症状のひとつで、時間や場所、人に関する認識力に障害が出る状態のことをいいます。
  2. 見当識障害のリハビリとして、現実見当識訓練は行われています。
  3. 音楽療法の中で行われる現実見当識訓練によって、セッションが行われている日付けを確認したり、季節を認識することで、見当識障害の進行を予防することができます。

見当識障害は、本人にとっても、周りにいる人にとっても辛い症状です。

その症状の進行を食い止めてくれる効果が期待できる、現実見当識訓練。

24時間リアリティ・オリエンテーションは、誰にでもできるような簡単な質問を、日常の中で、意識して何度も繰り返していけばいいという、手軽にできるリハビリです。

音楽療法のセッション中など、決められた場面以外でも、積極的に取り入れることによって、認知症の進行を少しでも予防できるといいですよね。


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