高齢者の音楽療法はグループで行われることが多く、人数も多くなることがあります。
能動的音楽療法では、クライエントに楽器を演奏してもらうのですが、その選び方にも少しだけコツがあります。
能動的音楽療法での楽器選びのコツと、実際、どのような楽器が使われるのかをご紹介します。

■ 目次

能動的音楽療法で楽器演奏を行う理由とは

能動的音楽療法とは、クライエントが音楽を聴くだけではなく、自ら歌を歌ったり、楽器を演奏したりする形の音楽療法です。

心身の障がいの改善やコミュニケーションの力を引き出す効果を期待して行います。

高齢者が楽器を演奏するときは、身体、特に手を使うことが、リハビリテーションを楽しみながら行うことにつながります。

また、1つの曲の演奏をやり遂げることで達成感を味わうことができます。

集団で演奏を行うことで一体感も生まれ、そこから活発なコミュニケーションにつながっていくこともメリットです。

楽器演奏を行うのであれば、なるべく全員分の楽器を用意しましょう

楽器には、高価なものも多く、たくさん用意するのが難しい場合があります。

その場合、限られた数の楽器を、交代で使うこともあるでしょう。

それも一つの方法です。

ですが、できれば、メンバー全員が楽器を持ち、演奏できる状態でセッションを行うことが理想です。

楽器の数が少なければ少ないほど、交代の回数が増えることになります。

そうなると、何度も同じ曲を演奏することになったり、曲を変えても演奏用のプログラムが増えてしまったり、流れが止まってしまったりしてしまいます。

もちろんそういったことも、何回か行うセッションの中ではあり得ることだと思いますが、楽器の数が足りないという理由で毎回になってしまうと、セッションの時間がもったいないとさえ感じてしまいます。

はじめは100円均一の楽器や手作り楽器が多くなってしまっても問題ありません。

予算の許す範囲で、徐々に楽器の数や種類を増やしていけばいいのです。

高齢者の音楽療法で使用される楽器とは


高齢者の音楽療法では、扱いが簡単で、だれでもすぐに音を鳴らすことができる楽器がおすすめです。

鈴やタンバリン、マラカスなどはその代表格ですね。

これらの楽器は、ほとんどの場合、クライエントに手渡すだけで、音を鳴らしてもらうことができます。

そして、他にもいくつかこのような楽器があります。

クラベス


拍子木とも呼ばれる楽器です。

2本の木の棒を打ち合わせることで音が鳴ります。

「火の用心、マッチ一本火事の元」などと言いながら、手に取ってくれるクライエントもいますよ。

ウッドブロック

YAMAHA ヤマハ ハンドウッドブロック YWB-HL2


丸い筒状の木に切り込みが入っており、それが2つつながっている形のものが多いですよね。

それをスティックで打ち鳴らします。

2つの筒が、それぞれ長さが違うものだと別々の音が鳴り、時計の「カチコチ」という効果音にも使われます。

ハンドドラム



片方の手でドラムを持ち、もう片方の手でバチを持って演奏するタイプのドラムです。

また、手で叩いて鳴らすことができるものもあります。

形や大きさも様々なものがあるので、違った種類のものをいくつか用意してみてもいいでしょう。

鳴子


よさこいなどを踊る際に使われる和楽器です。

これも、片手で持つことができ、振るだけで簡単にならすことができます。

楽器を渡す際にクライエントに合った楽器を渡す配慮を

楽器を渡す際には、クライエントに合った楽器を、さりげなく選ぶようにしましょう。

片手の不自由な方に、クラベスを渡しても、演奏することは難しいです。

また、両手ともに、軽いものしか持つことができないクライエントもいます。

そういった方が、重い楽器、扱いにくい楽器の担当にならないように工夫しましょう。

ただし、片麻痺だからといって、毎回同じような片手で使用できる楽器ばかりだと不公平感が生じますよね。

そうならない為に、他のスタッフの助けなどを借りて、スタッフが支える楽器をクライエントに叩いてもらうなどの工夫をしてください。


まとめ

1. 能動的音楽療法で楽器演奏を行うことは、身体を使うことでリハビリを進められたり、達成感を味わうことができたり、といったメリットがあります。
2. 楽器演奏を行う際は、音楽療法の流れを止めないためにも、なるべく全員分の楽器を用意しましょう。
3. 高齢者の音楽療法で使用する楽器は、扱いやすい、音を鳴らすことが簡単な打楽器を中心にすることがおすすめです。
4. 楽器を渡すときには、それぞれのクライエントに合ったものを、さりげなく選んで渡すことができるといいでしょう。

能動的音楽療法で重要な要素を持つ楽器演奏ですが、楽器を買う予算が限られてしまうことも事実です。
手作り楽器を用意するなどの工夫をしながら、状況に応じて、いろいろな楽器を用意できると、音楽療法の内容にも変化が現れますよ。


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