高齢者の音楽療法を行う際には、歌うこと以外にも取り入れたい要素があります。主に上肢の運動にもなる楽器演奏や、全身運動につながる体操のほかに、脳トレにつながるクイズなどもその要素のうちの一つです。

そこで今回は、7月の歌を例に、音楽に関するクイズの出し方をご紹介したいと思います。

音楽療法のセッション中にクイズを出題するメリット

音楽療法にクイズは必要なのか?と思われる方もいるでしょう。

端的に言えば、必ずしも必要というわけではありません。クイズを用意するプログラムもあれば、用意しないプログラムもあります。

ただ、クイズを出すメリットはいくつかあります。そのうちの一つは脳の血流が増えることです。

クイズを出されたクライエントは、クイズの答えを導きだそうとして、あれやこれやと考えます。考えることで脳の血流がアップするのです。クイズの答えを導き出すという、日常とは違う脳の使い方をすることで、脳がより活性化すします。

また、セッションを盛り上げてくれるツールとしても利用することができます。

セッションは、盛り上がるような曲を歌うことや楽器の演奏をすることでも盛り上がります。でも、プログラムによっては、全体的に盛り上がりに欠けると感じることもあります。そんな時にはクイズを出し、クライエントに考えていただくことで、場の空気を盛り上げます。

そして、クライエント同士のコミュニケーションのきっかけになる点もメリットです。

クイズを出し、それについてクライエント同士で話し合いながら答えを導き出してもらうように促すと、普段話をしないような相手とも会話をするきっかけを作ることができます。

7月の歌で出題できるクイズ:漢字クイズ編


漢字クイズに使用する曲は、読みが難しい歌詞が含まれる曲です。

普段歌詞幕を用意する際、難しい漢字はひらがなに直して書くことがあります。それをあえて漢字で表記して、その読みを答えてもらうのです。

例えば、7月の記念日といえば海の日。海から連想して『港』(唱歌)という曲を用意します。


『港』は明治29年に発表されたとても古い歌です。

この歌詞の中に、「端艇」と「船旗章」という歌詞がでてきます。この曲の中で「端艇」は「はしけ」と読み、「船旗章」は「ふなじるし」と読むのですが、どちらも当て字です。

出題する際は、はじめは歌詞全体を示すのではなく、漢字のみを見せてみましょう。ホワイトボードなどに書いてもいいですし、厚紙などに大きく書いておいてもいいでしょう。

その時点で、さまざまな読み方を答えてくれると思います。 

ここでは正解か否かには触れず、次は歌詞全体を見せてください。前後の歌詞を見ることで、読み方を思い出す方もいるでしょう。

答え合わせは後回しにしたまま、音楽に合わせて歌ってもらいましょう。

歌い終えたところで、はじめて答え合わせをするようにすると、多くの方が正解にたどり着けているので、達成感をより感じてもらいやすくなりますよ。

7月の歌で出題できるクイズ:イントロクイズ編


イントロが特徴的な曲を短く演奏することで、クイズにすることができます。

例えば、海にちなんで『憧れのハワイ航路』。
富士山の山開きを題材に『高原列車は行く』。

また、7月に行われる京都祇園祭にちなんで『祇園小唄』などです。


イントロクイズといっても、テレビのクイズ番組のようにやたらと短く演奏する必要はありません。

また、音楽療法で曲を演奏する際その曲の最後の部分を前奏として演奏することもありますが、イントロクイズで使用する曲や、前奏が独特な曲については、できるだけ原曲に近い形で演奏することをお勧めします。

原曲のまま、もしくは原曲に近い形で演奏することで、クライエントがその曲を想起することを助け、曲の世界に入ることができるからです。

独特な前奏を曲の一部として楽しめるようにしたうえで、イントロクイズを出題してみてくださいね。

まとめ

  1. 音楽療法のセッション中にクイズを出すことは、セッションを盛り上げ、クライエント同士のコミュニケーションを促すことに役立ちます。
  2. 難しい読みの漢字が歌詞に含まれる歌は、漢字クイズの題材になります。
  3. 独特な前奏で始まる曲は、イントロクイズの題材になります。

クイズは、クライエントの多くに楽しんでもらうために出題するものです。でも、時にはクライエントにとって難しすぎる問題もあり、場が盛り下がってしまうこともありえます。

そんな時は、その場にいるケアスタッフさんに答えてもらうなどして、その場を乗り切りましょう。そのためには、事前にケアスタッフに正解を伝えておくといいでしょう。
セッションを成功させるためには、時には根回しも必要ですよ。


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