コンクールとはどういう意味か知っていますか?コンクールはフランス語で、これを日本語に訳すと「競い合う」という意味になります。

ピアノ・コンクールはピアニストや音大の教授や准教授などの先生方が審査員となり、受験者を審査し順位をつけます。

日本でも世界でもコンクールが行われていて、それぞれのコンクールで特色があります。今回は日本と世界の主要なコンクールについて書いていきたいと思います。

■ 目次

コンクールはいつから始まったのか?


先ほど書きましたがコンクールとは「競い合う」ということなので、言葉通りの意味で考えると、いつからというのはなかなか難しいですね。

同じ楽器を演奏できる人がいれば、自然と競い合うことになるので、昔から競い合うということはしていたでしょう。

それでは現在のような審査をし、順位をつけるという形の音楽コンクールはいつ始まったのでしょうか?

それは1890年にロシアのサンクト・ペテルブルク行われた「アントン・ルービンシュタイン・コンクール」だと言われています。このコンクールにはピアノと作曲の2つの部門がありました。

音楽の都と呼ばれているウィーンがあるオーストリアや有名な作曲家が多いドイツや、フランス、イタリアから始まったのではなく、ロシアから始まったとは意外ですよね。

日本のコンクール


日本で行われているコンクールは地方規模のもの、全国規模のもの、国際規模のものなど様々で、とても多くあります。

注目度の高いものなどを5つあげてみますね。

日本音楽コンクール

日本で最も歴史の長い音楽コンクールです。楽壇のレベルの向上を目的に作られたコンクールで、多くの音楽家たちがこのコンクールを経て有名になっています。

第1回目は1932年に行われ、今年で87回目です。ピアノ部門だけではなく声楽、ヴァイオリン、作曲部門などがあります。

ピアノ、声楽、ヴァイオリン、作曲の4部門は毎年行われます。

他にはチェロ、フルート、クラリネット、オーボエ、トランペット、ホルンの部門がありますが、毎年行われるわけではなく、変更しながら開催されます。今年度はクラリネットとトランペットが対象です。

年齢制限があり、ピアノの場合満17歳以上~満29歳以下となっています。他の部門も年齢制限があります。

全日本学生音楽コンクール

こちらのコンクールも歴史は長く第1回目は1947年に行われました。始めは小学生から高校生までの演奏技術の向上を目的としたコンクールでした。

のちに大学生の部まで年齢の範囲が広げられました。

ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、フルート、声楽の5部門で開催されます。

こちらのコンクールは日本音楽コンクールとは違い、小学校の部、中学校の部、高校の部、大学の部と分かれています。また地区予選、地区本選を通過しないと全国大会にはいけません。

浜松国際ピアノ・コンクール

浜松と言えば、「楽器のまち」として知られていますよね。その浜松で行われているのが日本で最も注目されている国際的なコンクールである浜松国際ピアノ・コンクールです。

このコンクールは浜松市の市制80周年を記念し、1991年から行われています。

毎年行われるのではなく3年に1度開催されています。応募資格の年齢の下限はありませんが、上限は30歳までです。

このコンクールの優勝者や入賞者は他の国際的なコンクールで優勝、または入賞を果たすなど、活躍しています。

ショパン国際ピアノコンクールin ASIA

このコンクールの目的は国際的に活躍できる演奏家を見いだし、育成することが目的で今年で20回目になります。

このコンクールはプロを目指す人のための部門もありながら、幼児部門~大学生部門、ソロアーティスト部門(年齢制限なし)、ショパン愛好家のためのショパニスト部門というものもあり、幅広い層の方達が受けられます。

ピティナ・ピアノコンペティション

このコンクールは一般社団法人全日本ピアノ指導者協会が主催しています。そのため指導者が研鑽を積むということも目的の1つとなっています。

弾いた本人だけが賞を取るのではなく、指導した先生も表彰されます。

たくさんの場所で地区予選が行われるため、参加人数はどのコンクールよりも多く、同一級・カテゴリーの参加は地区を変えれば2回まで認められています。

日本のコンクールについて5つあげてみましたが、この他にもまだまだたくさんのコンクールがあります。

世界のコンクール


世界のコンクールも見ていきましょう。世界でもコンクールは多く行われています。

世界3大音楽コンクールと呼ばれているとても権威のあるコンクールは「フレデリック・ショパン国際ピアノ・コンクール」「チャイコフスキー国際音楽コンクール」「エリザベート王妃国際音楽コンクール」の3つです。

フレデリック・ショパン国際ピアノ・コンクール

5年に1度ワルシャワで開催されます。第1回目は1927年に行われました。

ショパンの曲のみで競うコンクールで16歳~30歳までという年齢制限があります。多くのピアニストたちがこのコンクールをきっかけに世界で活躍しています。

日本人も中村紘子さんや内田光子さん、小山美稚恵さんなど多くの方が入賞しています。

チャイコフスキー国際音楽コンクール

4年に1度モスクワで開催されます。第1回目は1958年に行われました。

このコンクールは最初ピアノとヴァイオリン部門だけでしたが、その後チェロと声楽部門が増えました。それだけなく、弦楽器の製作部門というものもあります。

製作部門以外の部門には年齢制限が設けられています。

ショパンコンクールと同じく、このコンクールをきっかけに多くの演奏家たちが世界で活躍しています。

日本人もピアノ部門で上原彩子さん、ヴァイオリン部門で諏訪内晶子さん、神尾真由子さん、声楽部門で佐藤美枝子がそれぞれ1位となり、演奏家として活躍しています。

エリザベート王妃国際音楽コンクール

ブリュッセルでほぼ毎年開催されています。

ピアノ、ヴァイオリン、声楽、作曲(現在は廃止)、チェロ部門があり、18歳以上30歳未満という年齢制限があります。

年によって違う部門で開催されており、2017年はチェロ部門で行われました。

日本人ではピアノ部門で内田光子さん、仲道郁代さん、ヴァイオリン部門では諏訪内晶子さんなどが入賞されています。


この他にも「ロン=ティボー国際ピアノ&ヴァイオリン・コンクール」「ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール」「リーズ国際ピアノ・コンクール」「ジュネーブ国際音楽コンクール」「ミュンヘン国際音楽コンクール」など多くのコンクールがあります。

コンクールにもいろいろある


コンクールには色んなタイプのものがあります。

受けられること自体がすごいピアニストレベルのコンクールもあれば、音大生や音楽を専門的に学ぶ学生などが受けるレベルの高いコンクール、そして子供たちが実力を競うために受けるコンクールなどがあります。

これらの他にも大人のためのコンクールというものもあり、これは競い合うというよりは発表会のような感覚で受けられます。

コンクールに共通していることは予選があって、予選を突破してから本選があるということです。

規模の大きなコンクールでは予選の前に審査があり、指定された曲を弾いているところを録画して送る必要があります。その審査に通らなければ予選さえ受けることができません。

ショパンコンクールのような権威のあるコンクールでは国際的に有名なピアニストや教授など音楽家からの推薦状が必要なものもあり、限られた人しか受けることができません。

規模の大きな国際的なコンクールの場合、本選ではコンチェルトが課題曲となるので、ソロとは違った難しさがあります。

全てのコンクールではありませんが、そのコンクールのために書き上げられた曲を弾く必要があるものもあります。

練習してきたものを本番で弾くだけでなく、コンクールで用意された楽譜をしっかりと読み込み、それを自分なりに表現できるかどうかというのを審査の対象にするコンクールもあります。

世界中でコンクールは開催されていますが全てが同じではなく、対象者や課題が違っており、それぞれのコンクールに特色があります。

コンクールが全てではない


演奏を審査するというのはなかなか難しいものだと思います。

審査の対象は楽譜に書かれている音やリズムを正しく弾いているか、ミスがないか、どの時代の音楽家で誰の作品なのかというのをきちんと理解して弾いているかなど、様々あると思います。

これらは割と審査しやすいと思いますが、演奏者はそれだけで弾いているわけではなく、それを基本としてその上に自分なりの解釈を上乗せしています。

その解釈をどのように審査するのかというのは、審査員それぞれが悩むポイントだろうと思います。審査員の考えが一致すれば順位も決めやすいでしょうが、なかなかそうはいかないでしょう。

どこに重きを置いて評価しているかは審査員それぞれ違うと思いますし、最終的には審査員の好みということもあります。

コンクールで1位になったピアニストや入賞者はやはりテクニック的にも音楽的にも素晴らしいです。
しかし、コンクールに入賞できなかったからダメだということではありません。

予選落ちしてしまった演奏者を高く評価している審査員がいる場合もありますし、聴衆は評価していても審査員には評価されないということもあるのです。

コンクール出身ではなくても素晴らしい演奏をするピアニストはたくさんいますし、いくら権威のあるコンクールで1位や入賞したからといっても、その後に努力をしなかったとしたら演奏技術はどんどんダメになっていきますよね。

演奏にはこれでいいということはなく、より良い演奏を常に探していかなくてはいけません。年齢を重ねると考え方も変わってきますので、演奏の仕方も変わってきます。

何のために受けるのか?


国際的な権威のあるコンクールで1位または入賞することができれば、世界中から注目され、様々な場所で演奏する機会が与えられます。そのため権威のあるコンクールはピアニストへの登竜門と言えます。

しかし先ほど書いたようにコンクールには様々な特色があるので、ピアニストを目指している人たちだけが受けるものではなく、自分の実力を試すために受けるということもできます。

競い合うというだけでなく、自分なりの目標を持ち、演奏を楽しむという目的のコンクールもありますので、挑戦してみるのもいいかもしれませんね!

日本のコンクールや世界のコンクールについて、様々な特色があって幅広い層の人達が受けることができるということを書いてきました。

コンクールについて少し興味が湧いたけど、どんなものを着てコンクールに臨めばいいのかわからない方もいると思いますので、最後に衣装について書きたいと思います。

基本的には演奏に支障がないフォーマルな格好で大丈夫です。

ピアノを弾く時は腕を閉じたり、開いたりして腕やひじをたくさん動かしますよね。その時に衣装のせいで腕やひじを動かしにくかったら、演奏に支障が出てしまいます。

そのような理由から、演奏に支障がないというのが第1条件です。

女の子はドレスを着ると思いますが、丈が長めのものを選びましょう。足が見えすぎるのは舞台上ではあまり美しいとは言えません。

身長が伸びて骨格がしっかりしてくる中学生くらいになったらロングのドレスを選ぶようにして、ふわふわとした子供っぽいドレスを選ばないようにしましょうね。

自分に似合うドレスかどうかということも重要ですが、ドレスの色が曲に合っているのかということも考えてみましょう。

ドレスのデザインや色が審査に直接影響するということはありませんが、受ける印象はやはり変わります。衣装もパフォーマンスの1部だと思うようにして下さいね。

普段着慣れない衣装を着るとぎこちない歩き方になってしまいます。特にロングドレスの場合は歩くのにコツがいりますので、歩く練習をしておくようにしましょう。

舞台上で歩くのはほんの数歩なのですが、歩く姿は意外と印象に残ります。舞台上を猫背でちょこちょこ歩くとライトを浴びているせいなのでしょうか、とても不格好に見えてしまいます。

歩くのもパフォーマンスです。演奏だけでなく、舞台に上がって下りるまで気を抜かないようにしましょう!

まとめ

◆コンクールはフランス語、日本語に訳すと「競い合う」という意味
◆日本で行われているコンクールは地方規模のもの、全国規模のもの、国際規模のものなど様々
◆世界3大音楽コンクールは
 「フレデリック・ショパン国際ピアノ・コンクール」
 「チャイコフスキー国際音楽コンクール」
 「エリザベート王妃国際音楽コンクール」



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