ラストで絶対泣ける恋愛ドラマ!オペラ『ラ・ボエーム』のあらすじ
こんにちは。藤原歌劇団所属、ソプラノ歌手の泉萌子です♪
さて早速ですが、今回は『ラ・ボエーム』のあらすじや、みどころをご紹介!
レオンカヴァッロも同名のオペラを作曲していますが、ここではよりメジャーなプッチーニ作品を扱いたいと思います。
このオペラはプッチーニの代表作とも言われるほど、現在でも多数上演される、根強い人気のある作品です。
実際、私自身の好きなオペラベスト10にもランクインしています!笑
社会の厳しい現実と闘いながら、愛と夢に希望を抱く者たちの青春物語…
現代を生きる私たちの心にも響くストーリーが、耳に残る美しい旋律によって紡ぎだされます。
2時間弱の上演時間ではありますが、TVドラマを1クール観終わった後のようなボリューム感のあるお話です。
笑いあり涙ありで、時が経つのを忘れさせてくれるほど、堅苦しさのない作品なので、オペラ初心者の方へもオススメです!
舞台…1830年代のパリ
<ざっくり登場人物紹介>
ロドルフォ:売れない詩人。
ミミ:お針子。身体が弱い。ロドルフォと恋に落ちる。
マルチェッロ:売れない画家。
ムゼッタ:マルチェッロの元恋人。美人で、歌がうまい。
ショナール:売れない音楽家。
コッリーネ:哲学者。古い外套を大切に着ている。
ほか数名
■ 目次
【第一幕】貧乏だけど楽しい、夢ある男たちのルームシェア!今年のクリスマスイブは一味違った…!?
[あらすじ]
パリのとある街角。屋根裏部屋の一室に、詩人のロドルフォ、画家のマルチェッロ、音楽家のショナール、哲学者のコッリーネが共同で暮らしています。
男4人、、一つ屋根の下でわいわい、男子校みたいな生活ですね!
彼らのように、貧しくも自由を享受し、自らの芸術活動に生きた者たちはボヘミアン(ボエーム)と呼ばれていました。
私も、言ってみれば現代のボヘミアンの一人。余計にシンパシーを感じてしまいます…!
クリスマスイブの夜。
薪がなければ自分の書いた原稿を燃やす、滞納家賃の取り立てに来た大家は連携プレーで撃退!
裕福ではないけれど陽気に暮らす男たちに、この日は少しばかりの臨時収入が。
せっかくのクリスマスだ、街へ出て楽しくやろう!ということに。
こういう短絡的なところ、嫌いじゃないです。笑
しかしロドルフォは書きかけの原稿があるから…と、1人部屋に残ることに。
こういう真面目なところで、好感度上がりますね!
そこへ隣に住むお針子のミミが、ロウソクの火をもらいにやってきます。
ここで初めて隣人に出会ったロドルフォは、そのはかなげで可愛らしい印象に心動かされます。
それまでご近所付き合いなかったの!?というツッコミは伏せておきましょう…笑
ロウソクの火を分けてもらい、帰ろうとした矢先、ミミは自分の部屋の鍵を落としたことに気づきます。
ちょっと天然なのかな…?
慌てて探すうちに、再びロウソクの火は消えてしまいます。
そしてロドルフォの持つロウソクの火も消え(わざと消した??)、あたりは真っ暗に。
暗闇の中、手探りで鍵を探すうち、ミミとロドルフォの手が触れ合います…
この辺はもう、恋の駆け引きが始まっている感で、ドキドキしてしまうシーンです。
演出によっては、ミミがかなりやり手で、ロドルフォに近づくためにわざと鍵を落とすようにあくどく演じさせることもあります。
こういうところで、実は最初、ミミがなんとなく好きになれなかった私です。笑
ロドルフォはミミの手をとり、「なんて冷たい手だ、ぼくが温めてあげよう」と歌い出します。
ロドルフォが自分のことについて話すと、続いてミミも自己紹介をします(アリア「私の名はミミ」)。
そしてお互いの愛を告白しあう、愛の二重唱へとつながります。
展開、早いですね。笑
こうしてあっという間に相思相愛になった二人も、ロドルフォを迎えに来た仲間たちとともに「カフェ・モミュス」を目指し、パリの夜の街へと出ていくのでした…
[みどころ]
やはり、「冷たい手を」~「私の名はミミ」~「愛の二重唱」の流れでしょう!
私も学生時代にこの流れを抜粋して同期のテノールと一緒に歌いました。
ソプラノとテノールが揃う演奏会のプログラムにこの場面が入っていると、テンション上がります!
安定した声を出す高い技術が求められるので、上手に演奏するのは、なかなか大変なのですが…とにかく音楽がいいんです。
歌い手にとっての憧れなので、勉強する人は多いんですよ。
しかし出会って、お互いを知って、恋に落ちる、というのは、TVドラマでは4話分くらい使いそうな内容ですよね。
しかしそれをこの20分ばかりに収めてしまうというのだから、オペラってやっぱり強引なのかしら…
とも思いますが、実際に観ているとそんな違和感などない、なんとも自然な流れなのです!
そういう点は、やはり天才オペラ作曲家・プッチーニのなせる業だなぁ、と思います。
情熱的かつ甘美、そしてときに初々しさを感じさせるようなメロディに裏付けられた若い二人の恋する気持ちに、聴いているこちらも胸がキュンとなってしまいます。
【第二幕】賑わう街で、元カノにまさかの再会!素直になれればみんながハッピー!?
[あらすじ]
場面は変わってカフェ・モミュスへ。クリスマスイブを祝う人々で、街はごった返しています。
ここのシーン、通行人やら物売りやらの役でたくさんの人が舞台に上がるので、それぞれが何をしているのか注意して見てみるのも面白いです。
実はみんな、細か~いお芝居をしていますよ!
そこへ、マルチェッロの元恋人・ムゼッタが、大金持ちのパトロンを引き連れて登場します。
美しい容姿と歌声をもち、快活な彼女は街の人気者です。
やっぱり美人さんは得ですね~。ギャラリーも喜びます!
そんなムゼッタもマルチェッロの存在に気づき、「私が街を歩けば、誰もが振り返るの…」と自信満々に歌い、彼の気を引こうとします。
めちゃめちゃポジティブな女の人だな…と思いますが、そんなことをしても許されてしまう、というのがムゼッタという女性なのです。カワイイは正義。笑
意地でも無視してやる!と息巻いていたマルチェッロも、次第に心が傾き、遂には自分の気持ちに素直になります。
未練があるからこそ、頑なだったわけですね。
こういうところ、ちょっとカワイイな、と思ってしまいます。笑
二人は熱烈に抱き合い、晴れてよりを戻すことになりました。
見守っていたボヘミアン仲間たちもミミも大喜び!
こうしたどんちゃん騒ぎの結果、お勘定はとんでもない金額になってしまいました。
ついついハメを外しちゃったんですよね、クリスマスだし。
そこでムゼッタは機転をきかせ、靴の修理に走らせていたパトロンに支払いを押し付けて消えちゃおう、と提案します。
いや~大胆な娘だわ、ほんと。笑
軍隊のパレードに乗じてその場を後にするボヘミアンたちと、恋人たち。
そしてカフェに帰り着いて早々、勘定の額を見て愕然とする“元”パトロン。
ちょっと可哀そう、ちょっとだけ。
[みどころ]
第二のヒロイン、ムゼッタの登場と、アリア「私が街を歩くと」は強烈なインパクトがあります!
セクシーでファビュラスな艶のある音楽が、彼女の生き方そのものを表しているようです。
そんな彼女が、お堅いマルチェッロを好きだというのも、なかなか良くないでしょうか?
融通は利かないけれど、マルチェッロはいい人です。
一見すると恋愛関係は派手にやっていると思われがちなムゼッタですが、見る目はちゃんとあるんだよなぁ、と思うわけです。
それにしても、静かで慎ましやかなヒロインのミミとは、また違うキャラクターが際立っていますね。
私もずっと前までは、ミミよりムゼッタのほうが好きでした。
役の勉強を経た今となっては、ミミも好きだな、と思います。
【第三幕】衝撃の事実!別れたくない二人と、とっとと別れたい二人
[あらすじ]
幸せなクリスマスから2ヶ月が経ちました。
マルチェッロが絵を描いて働く酒場に、ミミはふらりと一人で現れます。
「マルチェッロ、助けて…最近、ロドルフォが冷たいの…しょっちゅう浮気を疑うし、束縛されている気がするし、『君は僕とは合わない』って、怒ったように言うし、昨日は私を部屋に置き去りにしたの…」
恋の相談です。しかもかなり深刻みたいです。
ここだけ聞くと、なんてひどい奴だ、許せん!と思ってしまいますよね。
しかし、ロドルフォの言い分も聞いてやらないことには、実際のところはわからないものです。
実際の恋愛でも、それぞれ主張が異なる場合がありますからね。
ミミが思いつめた様子ですがるようにマルチェッロに訴えていると、ロドルフォがマルチェッロを探しに宿屋から外へ出てきます。
慌てて身を隠すミミ。
マルチェッロはロドルフォにミミについて問いただすと、初めはぶっきらぼうに「ミミとはもう別れる!」と言い放ちます。
これを聞いたミミが受けたショックを考えると、同情しちゃいますよね。
しかしよくよく話を聞いてみると、そうなってしまったことには理由があったことがわかります。
実は、ミミは結核を患っており、その症状は極めてひどく、貧乏な自分では養いきれない…このままでは助からない…愛しているからこそ、苦しいけれども彼女のために別れなければならない、ということだったのです。
ロドルフォも相当、苦しんだのでしょう。それでミミにつらく当たってしまったわけです。
可哀そうなミミ!そんなことになっていたなんて!
不治の病、というのも、ドラマにはよくある要素ですが、そうとわかっていても、やっぱり悲しいものです…
ミミが激しく咳込むと、彼女がそこにいることにロドルフォは気づき、慌てて慰めようとします。
しかし自分の命が風前の灯火であるということ、彼女はその事実を受け入れ、彼の負担にならないようにと、別れることを決意します。
ミミは本当に気遣いのできる、優しい女性ですね。
私だったら、不安で仕方ないので、なるべく相手にはそばにいてもらいたいと思ってしまいますが、大違いです!笑
二人とも、最大限の愛で相手を思いやりながら、相手のために…と別れる場面は、本当に胸が痛みます。哀しい、ただただ哀しい!
そんな愛に溢れた別離の一方で、マルチェッロとムゼッタは口論の末、喧嘩別れしてしまいます。
うまく行っていたように見えるこちらのカップルでしたが、浮気性のムゼッタに対し、遂にマルチェッロの堪忍袋の緒が切れてしまいました。
前幕までの楽しい感じはどこへ行ってしまったのか…とても残念な気持ちになってしまいます。
でも、現実だって山あり谷あり。人生はこんなものですよね。
[みどころ]
ゆったりとしたメロディで愛を確かめ合う二人と、かしましく罵り合う二人の対比が面白い、「別れの四重唱」。
深刻で、暗くなりがちな場面ですが、マルチェッロとムゼッタのコミカルな痴話喧嘩のやりとりに、少し救われるような気がします。
シリアスなだけだと、観ていて疲れてしまいますよね。
ちょっとクスッとしてしまうような、コメディ要素があるだけで息抜きできます。
それを同時進行でやってのけるプッチーニ、やはりスゴイです。
【第四幕】さようなら…みんなに会えて、良かった~ミミの最期~
[あらすじ]
それから数ヶ月後、例の屋根裏部屋。
ボヘミアン男4人組は相も変わらぬ陽気な貧乏生活を送っています。
しかしロドルフォもマルチェッロも、別れた恋人を思い出してはため息をつく毎日。
そう簡単に忘れられるほど、いい加減な気持ちではなかったんですよね。
二人ともやっぱり真面目で、心根が優しいんだな、とつくづく思います。
そこへ突然、ムゼッタが血相を変えてやってきます。
戸口には、息も絶え絶えで気を失っているミミの姿がありました。
それまで、あるお金持ちのもとに保護されていたミミでしたが、病状が日に日に悪化していきました。
死ぬ前に一目、愛するロドルフォに会いたい…
そんな願いをかなえるべく、ムゼッタが連れ出してきたのでした。
ムゼッタ、やっぱりめっちゃええ子!!
実際この後、ミミの薬代の足しにと、自分の持ち物をお金に換えるため、マルチェッロとともに外へ出ます。
ほかの仲間も、ミミのために何かしてあげたい、と、思い思いにそれぞれ部屋をあとにします。
みんなの友情に、ここですでに涙が出かかってしまう私です。
ここでコッリーネが、大切にしていた外套を売る決意を静かに歌う「古い外套よ」は、この作品の中での隠れた名曲と言えます。
盛り上がりのある曲ではないのですが、ミミを見守る私たちの気持ちをも代弁してくれているかのような悲痛なメロディは、この物語の最終幕にふさわしい、落ち着きをもたらしているように思います。
仲間たちが去り、部屋にはロドルフォと、ベッドに寝かされたミミの二人きりになります。
ミミが目覚め、二人は出会ったときのこと、幸せだった日々の思い出を語り合います。
このときのミミがなんとも幸せそうな様子で、胸を締め付けられる思いです、全く。
仲間たちが戻ってきて、ミミは彼らに囲まれながら、眠るように息を引き取ります。
ここの場面のロドルフォの悲しみ方というのが…
ああ、書けません。いたたまれません。。。
ラストはご自分の目でぜひ、お確かめくださいませ!!
涙を拭くものは必須ですよ!!!!
[みどころ]
二人が幸せな日々を回想するシーンで私は、必ず泣いてしまいます。
出会った時の音楽が流れ、ミミとロドルフォだけではなく、私たちまで、物語冒頭の「幸せだったあの頃」に戻ったような錯覚を覚えます。
あんなことがあって、こんなことがあって…ときにはうまく行かないこともあった。
でも、今またこうして幸せでいられる。
時間は決して巻き戻ることはありませんよね。
今を大切に生きよう、という気持ちにさせられます。
それが、ボヘミアンの生き方です!
まとめ
☆プッチーニ:オペラ『ラ・ボエーム』あらすじ【第一幕】ボヘミアンの陽気な生活、ミミとロドルフォの運命的な出会い
【第二幕】クリスマスイブの夜に起きたド派手な復縁劇
【第三幕】ミミの深刻な病状の発覚、二つのカップルの別れ
【第四幕】愛する恋人と仲間たちに看取られるミミの最期
いつの時代も、自由に恋をしながら生きていくのは、なかなか難しいものですよね。
上記のあらすじは、あくまでもあらすじであり、もっと細かい解説や考察(ミミとロドルフォの「詩」との関連性、原作との相違点など)は、ほかの方も書いていらっしゃるので、気になった方はぜひチェックしてみてください。
それでは最後にもう一度。
このオペラを見る際には必ず涙を拭うものをご用意くださ~い!
では♪