こんにちは!藤原歌劇団所属、ソプラノ歌手の泉萌子です♪

今回はオペラ『フィガロの結婚』のあらすじや、みどころをご紹介したいと思います。



日本でも人気のオペラなので、名前くらいは聞いたことがある…という方も、多いのではないでしょうか。

たくさんのキャラクターがドタバタ劇を繰り広げる、楽しいオペラです。
それぞれの人物に見せ場があり、またイタリア語のレチタティーヴォ(台詞を歌うように語る朗唱)の良い教材にもなるので、学生オペラの演目として度々取り上げられています。

私も学生時代、先輩方の公演のお手伝いをしましたので、フィガロと聞くと、少し懐かしい気持ちになります…
私にとって、初心を思い出させてくれるような、そんな作品です。

全4幕の構成で、演奏時間が3時間弱と、少々長めのオペラです。
シーンをカットして上演することもあります。

舞台…18世紀中ごろ、スペインのセヴィリア。


【ざっくり登場人物紹介】
フィガロ:物語の中心人物。伯爵の家来。
スザンナ:伯爵家の女中さん。フィガロの婚約者だが…
アルマヴィーヴァ伯爵:フィガロの主人。女性が大好き!
伯爵夫人:その奥さん。旦那の女好きに悩まされている。
ケルビーノ:伯爵家の小姓。どんな女性にも心ときめく、思春期真っ盛り。(女性によって歌われる、「ズボン役」)
マルチェッリーナ:伯爵家の女中頭。イヤ~なお局様。
バルトロ:伯爵家のかかりつけの医者。
バジーリオ:音楽教師。伯爵の不貞をサポートする、腰巾着。
ほか数名

【第一幕】今日は嬉しい結婚式…のはずが、心の晴れない花嫁から衝撃の告白


[あらすじ]
ここはアルマヴィーヴァ伯爵のお屋敷。今日は伯爵の家来・フィガロと女中のスザンナの結婚式です。
スザンナは式の準備にノリノリで、フィガロは部屋の寸法を測るのに忙しいようです。
なんだかソワソワして、二人ともちょっと嚙み合っていない感じがリアルな感じが出てます!

しかし、フィガロのある一言で、空気が変わってしまいます。
「気前のいい伯爵様が、この部屋を僕たちに与えてくださるんだよ!」
とたんにスザンナの顔が曇ります。
フィガロにはその理由がわかりません。

実は伯爵、最近では奥さんに飽きてしまい、若いスザンナを誘惑していたというのです。
二人に与えられた部屋は、伯爵にとって都合のいい場所にありました。
その上、伯爵は自らの権利を思うがままに使おうというのだから、フィガロは大激怒!

セクハラも甚だしいという話ですが、なぜ今までフィガロは気がつかなかったのか…
主である伯爵に対する忠誠心や尊敬の気持ちが、疑いというものを持たせなかったのでしょうか。
それにしても彼はちょっと抜けているようですね。笑

物語は、怒りに燃えるフィガロが、伯爵に一泡吹かせようと知恵をはたらかせていく…という流れなのですが、その間にも様々な登場人物がそれぞれドッタンバッタンと騒動を巻き起こします。

この後1幕の間だけにでも、
女中頭マルチェッリーナとスザンナが口喧嘩をしたり…
お年頃のケルビーノが、庭師の娘にちょっかいを出したことで伯爵の怒りを買い、兵隊に行かされそうになったり…

展開が目まぐるしいのですが、観る側も共感できるキャラクターがたくさんいう点で、面白いドラマだなぁと思います!

私は、伯爵夫人の人物像が好きです。
大人の女性らしい落ち着きを持ちつつ、心の底で静かに燃える情熱…非常に魅力的だと感じます!

彼女の出番は2幕以降なので、登場を少し待たなければなりませんが…。笑


[みどころ]
フィガロの結婚といえば、まず序曲を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
この作品、序曲のみが単独に演奏されることもあります。

なんだかそわそわするような出だしから、一気に華やかになり、まるでいろんな楽器があちこちで楽しい噂話をしているかのようです。
これから始まる面白おかしい物語を想起させる、名序曲です。
聴いていると、ワクワクしてきます!

そしてこの幕の最後、フィガロのアリア「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」は、バリトン歌手ならおそらく誰もが歌ったことのある曲ではないかと思われます…!



モーツァルト自身もこの曲を気に入っていたようで、のちの作品にもこの旋律を再登場させています。
程よい音域なので、これから歌を始めたい男性にも、最初の練習曲にピッタリです!

【第二幕】かつての愛はどこに…思い悩む伯爵夫人の登場。そしてフィガロの結婚に暗雲がたちこめる!


[あらすじ]
ところ変わって、伯爵夫人の部屋。
ついに待ちに待った彼女の登場です!!笑
夫の気持ちが離れてしまったことを嘆いています。
ただただ単純に、かわいそうです。。。

そこへ、ケルビーノとスザンナがやってきます。
ケルビーノは、スザンナや伯爵夫人にまで恋い焦がれている様子。
相変わらずの節操のなさです。

ここで三人はひとつ、伯爵の日頃の行いを正すべく、計画を立てます。
スザンナが伯爵をおびき出し、待ち合わせには女装させたケルビーノを待機させ、のこのこやって来た伯爵をキャッチ!
浮気の現行犯逮捕をしてやろう、という魂胆です。

早速試しにケルビーノ少年に女の子の服を着せ、キャッキャウフフ!
嬉々とする伯爵夫人とスザンナ。
男性役の女性に、女装をさせる…という、少し不思議な場面ですが、なんだか微笑ましく思えます。
気落ちしていた夫人が少し元気を取り戻したように見えて、良かった!笑

「お化粧道具を取りに行きまーす!」と、更にテンションの上がったスザンナが部屋を後にしたところで、予期せぬ出来事が。

伯爵、突然のおでまし!
部屋にはケルビーノと伯爵夫人が二人きり。
偶然のこととはいえ、女性の部屋に男性がいるといなると…いろいろとマズいですよね。
いやはや、タイミングってのは恐ろしいものです。

何かがおかしい、と悟った伯爵は、妻の不貞を疑い、奥に誰がいるのか確かめようとします。
伯爵夫人が必死で隠そうとするのだから、ますます怪しい…。ついに伯爵は怒り出します。
しかしまぁ、自分は堂々と浮気しているというのに、ひどい話です!

その後、部屋に戻ったスザンナが素早く事情を察知し、こっそりとケルビーノを窓から逃がしたことより、事なきを得ます。
こういう機転のきくところが、スザンナが伯爵夫妻にかわいがられるポイントなのでしょうね。

伯爵は、疑ってすまなかった、と夫人に平謝り。
疑われて機嫌を損ねた夫人は、プンプンしています!!(ここ、ちょっと可愛らしい。笑)
それにしても、「すまん」で済んだら、警察は要らないっていう話ですよね!

一難去ってまた一難。またしても一悶着起きてしまいます。
実は、フィガロはマルチェッリーナに借金をしており、返済できない場合は彼女と結婚する…という約束をしていました。

マルチェッリーナはその証文を手に、スザンナではなく、自分こそがフィガロと結婚するべき相手だと主張し、バルトロを弁護人として裁判を起こすと言い出します。
これにはさすがのスザンナもどうしようもできません。
フィガロしっかりしてくれ〜!!

フィガロとスザンナの結婚の行方や、いかに!?


[みどころ]
まずは、冒頭で伯爵夫人が歌う「愛の神よ、照覧あれ」です!



愛する人の気持ちが戻ってほしい…と、神様に祈るのですが、決して利己的なばかりではなく、透き通るように純粋な伯爵夫人の想いが切々と歌われる、とても落ち着いた、美しいアリアです。

楽譜上は決して難しいようには見えないのですが、レガートでなめらかに歌うの、結構大変なんですよね…
そこまで極端な高音が出るわけではないのですが、音の運び方が少々厄介で、きちんと声を支えないと綺麗に歌えません。。。

でも上手な歌い手さんが歌うのを聴くと、思わず感嘆のため息が出てしまう、素敵な曲なんですよね~。
女性の方は是非、チャレンジしてみるのも良いかもしれません!

ケルビーノのアリア「恋とはどんなものかしら」も、とても有名です。



親しみやすく可愛らしいメロディが、人気の理由のひとつと思われます。

伯爵が出てきて、ケルビーノたちとのかくれんぼ攻防戦を繰り広げる場面も、キャラクターが活き活きと動き回る、とてもコミカルで楽しいシーンです!

【第三幕】衝撃!!実はフィガロはマルチェッリーナの○○だった!


[あらすじ]
徐々に伯爵は、スザンナを得るためになりふり構わなくなってきているようです!
権力のある悪者がだんだんと壊れていく様子は、風刺的で、滑稽です。
モーツァルトのユニークなブラックユーモアのエッセンスが光ります。

裁判では、原告であるマルチェッリーナの方が勝ちました。
なにより、証文という明確な証拠がありました。
そして伯爵が、フィガロと彼女の結婚を阻止するべく、裁判官に圧力をかけたのです。
非常に汚い!汚いですねぇ~!!

しかし、衝撃的な事実が判明します…

なんと、捨て子だと思われていたフィガロは、実はマルチェッリーナとバルトロの間に生まれた子供だったのです!!

事の経緯はこういうことでした…
その昔、バルトロ家で女中をしていたマルチェッリーナが男の子を産みましたが、その赤ん坊は盗賊に盗まれ、以降行方知れずに。
右腕に刻まれた紋章から、その赤ちゃんこそがフィガロだったということがわかったのです。

唐突すぎて驚きますよね!
マルチェッリーナの、フィガロに対しての並々ならぬ想いは、母子の縁からくるものだったのでしょうか…??

突然の親子の再会に喜ぶ、フィガロとマルチェッリーナとバルトロを前に、初めはなにがなんだかわからないスザンナでしたが、すっかり意気投合し、その喜びの輪に加わります。

さっきまでいがみ合っていた人たちが一瞬のうちに仲良しこよしになる…という少々強引な展開ですが、モーツァルトの音楽が実に自然な流れを作っています。
こういうところで、モーツァルトってやっぱり天才なんだな~と改めて感じさせるのですよ…すごい!の一言に尽きます。

感動の再会劇と化した現場。
もはや裁判の結果など、関係ありません。
自分の書いたシナリオから、完全にそれてしまったということで、伯爵は落胆します。
悪いことはするものではありませんね~。

晴れてフィガロとスザンナの結婚式が、予定どおり執り行われることに。
マルチェッリーナとバルトロも、この際だからと結婚することを決めます。
ついでにケルビーノも庭師の娘との仲を認めてもらえました。

めでたしめでたし…
と、ここで終わりではありません!!

伯爵夫人とスザンナの二人で練った、伯爵への秘密の逆襲計画が、結婚式のさなか、静かに始まっていたのでした…


[みどころ]
伯爵が嫉妬と怒りに狂い、「もう訴訟に勝っただと?」と吐き捨てるように放つ台詞から始まるアリアは、非常に聴きごたえがあります。



またこの幕では、実に多くのキャラクターが登場します。
フィガロの生い立ちが判明し、一同が思い思いに歌い、ハーモニーを重ね六重唱となる場面は、この幕で最も盛り上がりを見せてくれます。



そして伯爵夫人2つ目のアリア、「愛しき思い出はどこに」は前半部の非常に美しい息の長い旋律が特徴です。
長いフレーズに苦戦した思い出があります…笑

夫の裏切りを知りつつ彼を愛し待ち続ける、なんとも苦しく切ない気持ちを歌っています。
しかし悲嘆に暮れるだけでなく、最終的には「自分の愛で彼を振り向かせる」と、希望に満ちた強い想いを歌っています。



こういう、芯がブレないところも、伯爵夫人の長所だと思うんですよね!

【第四幕】遂に復讐劇の決着!そしてみんなが笑顔の大団円へ!


[あらすじ]
すっかり日も落ちて、夜になりました。
伯爵邸の庭で、スザンナと伯爵夫人の計画が遂行されています。

スザンナが渡したラブレターを読んだ伯爵が現れるのを、スザンナの恰好をした伯爵夫人が、今か今かと待ち構えています。
今でいうドッキリ企画ですね。笑
仕掛ける側は楽しくて仕方がないでしょう…!ドキドキ!!

しかし、事情を知らないフィガロは、本当にスザンナが心変わりして伯爵に乗り換えたと思いこみ、激しい怒りに駆られます。
結婚したばかりのわが妻の浮気の現場を押さえるため、仲間たちと辺りに張り込みます。
やっとの思いで結婚までこぎつけたのに、早々に浮気されたとなっては、たまりませんね!

邪魔なケルビーノがうろついていたかと思いましたが、遂に主役(?)の伯爵が登場します。
目の前にいるスザンナの恰好をした女性を、自分の妻と知らぬまま、口説き始めます。
伯爵が非常にマヌケなのですが、夫人の心境は、複雑でしょうね…

二人が去ったところで伯爵夫人の服を着たスザンナが現れ、それを夫人だと思ったフィガロは、妻の不貞を訴えます。
しかしそれに答えた声から、彼女が紛れもなくスザンナだということに気づいたフィガロが、自分を嫉妬で苦しめたことに対する、ちょっとした仕返しをしたのち、二人は許し合い、笑います。
ちょっとドキッとしたけど、こちらは丸く収まって一安心!

スザンナに扮した夫人を見失った伯爵が戻ってきました。
そこでフィガロが一芝居打ち、自分が伯爵夫人(の服を着たスザンナ)をあからさまに口説くさまを見せつけます
それに気づいた伯爵は、遂に妻の浮気の現場を押さえた!と思い込み、皆を呼び集めます。

このときの伯爵の鬼の首を取ったかのように勝ち誇った態度!
腹が立ちますが、それと同時に笑えてくるのはなぜでしょう…。笑

次々現れる面々は驚きながらも、どうにか二人を許してくれるよう、伯爵に頼み込みます。
絶対に許さん!と息巻く伯爵。
一体全体どの口が言っているのやら…笑

そこへ、スザンナの恰好をした伯爵夫人が現れ、正体を明かします。
一同は驚きますが、一番肝を冷やしたのは、言うまでもなく伯爵です。

衆人環視のもと、浮気がばれてしまった伯爵は心から夫人に謝罪します。
その深~い反省を認めた夫を、夫人は優しく許してあげるのでした。

そして皆で伯爵夫妻や新郎新婦たちを称える歌を歌い、劇終。
終わり良ければ総て良し!というわけです。
めでたしめでたし♪


[みどころ]
暗闇の中で、さまざまな思惑が行き交う最終幕。
ややこしくも、おかしな入れ替わり劇は、「ドン・ジョヴァンニ」や「コジ・ファン・トゥッテ」など、他のモーツァルト作品にも登場します。
普通気づくでしょ!というツッコミは、とりあえず無しで。笑

騙したり騙されたり、責めたり責められたりというのは、常日頃からあることですね。
自分の身に起きては困るようなことでも、オペラの中で登場人物がコメディタッチで繰り広げてくれれば、安心して笑うことができますね。

実はこの4幕には、バジーリオの貴重なアリアがあります!
このオペラでは数少ないテノールの見せ場なのですが、この直前のマルチェッリーナのアリアともに、残念ながらカットされることが多いのが現状です。
カットされていないオペラ上演に出くわしたら、それはラッキーと言えます!

やきもちを妬くフィガロをからかうため、スザンナが「早く来て、愛しい人よ」と歌うアリアは、官能的な美しさが漂う名曲と言えるでしょう。



色香が漂うような、なんとも艶のある曲なのですが、学生の頃には歌ってみても、ちっとも曲の雰囲気をつかめず苦労しました。
今では年を重ねた分、少しは理解できた気がします。多少は。笑
しかしこんなの聴かされたら、フィガロでなくてももしかしたらスザンナは本当に伯爵が好きなんじゃ…と勘違いしかねません。

まとめ

☆モーツァルト作曲:オペラ『フィガロの結婚』あらすじ

【第一幕】結婚式当日、妻を狙う伯爵に気づき、怒りに燃えるフィガロが、仕返しの計画を立て始める。
【第二幕】夫の不貞を嘆く伯爵夫人の部屋での騒動。お局のせいでフィガロとスザンナの結婚が危うくなる。
【第三幕】お局とフィガロは生き別れになった親子だった!無事行われた結婚式のさなか、スザンナに執着する伯爵は女性たちによって罠にかけられる。
【第四幕】スザンナだと思い込み、それが変装した妻とは知らず口説いたため、遂に伯爵は浮気を認め、心から謝罪。それを夫人が受け入れ、ハッピーエンド。


笑える勧善懲悪もの、と申しますか、安心して観ることのできるオペラだと思います。

オペラではよく人が不治の病にかかったり、人を殺してしまったりして、バッドエンドで終わってしまい、悲しくなる物語もあるのですが、『フィガロ』は確実に、元気になれる作品です。

また、思わず口ずさんでしまうような、耳に残る愉快なメロディが随所に散りばめられているので、肩肘張らずに聴くことができます。

視聴可能なページはこちら
Le Nozze Di Figaro (Complete)

ちょっと長いかも…という方でも、きっとお気に入りのシーンを見つけられる作品だと思います。

是非とも、一度は観ていただきたい!
観て損はございませんよ~!

では♪


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