音楽療法のセッションでは、歌謡曲や童謡など、クライエントにとってなじみのある曲を利用することが多いのですが、ピアノ曲を利用することもあります。
では、どういった方に対して、どのような方法でピアノ曲を利用するのかについて、おすすめのピアノ曲とともにご紹介します。

どのように使うの?


ピアノ曲を音楽療法に使う場合は、受動的音楽療法を用いることになります。

受動的音楽療法とは、クライエントに音楽を聴いてもらうことによって、効果をもたらすことを目的に行われるセラピーで、思い出の曲やクラシック曲が使用されます。

セッションの中の一曲をピアノ曲にしてみたり、場合によってはすべてのセッションにピアノ曲が使われることもあります。

対象者は誰?

ピアノ曲を使う際の対象者は、特に決まっていません。

認知症の高齢者に対して使うこともあれば、障がいのある児童に対して使用することもあります。

また、普段は社会で普通に働いているのだけれども、少し心が疲れてしまっているピアノ好きなサラリーマンに対して行われるセラピーというパターンでも対象になります。

重要なのは、受動的音楽療法を受けるのが誰なのかという点を把握して、どの曲を演奏するのか、そもそもピアノ曲を用いることが必要なのかどうかをよく考えてから実践することです。

小さな子どもや認知症のお年寄りのセラピーに、いかにも難しくて聴き応えがあるけれども演奏時間が長い、という曲を使っても、集中して聴いてくれるクライエントは少ないでしょう。

ピアノ曲が好きなサラリーマンでも、ある特定の演奏者の曲しか聴きたくない、というこだわりを持っている方にとっては、セラピストが弾くピアノ演奏は、ただただストレスになってしまうかもしれません。

そういったことを避けるためにも曲選びは慎重に行いたいですよね。

モーツァルトがいいの?おすすめの曲とは?

音楽療法に興味のある方だと「モーツァルトが良い」という情報を耳にしたことがある方も少なくはないと思います。

実際はモーツァルトにこだわる必要はなく、クライエントとセラピーの流れに合った曲を選ぶことが大切です。

それを踏まえたうえで、私がおすすめしたいピアノ曲をいくつかご紹介したいと思います。

小犬のワルツ


小犬のワルツはショパンが作曲した曲です。
恋人の飼い犬の仕草を表現している曲だと言われています。

この曲は、演奏時間が2分に満たない曲ですし、テレビなどでも流れることが多く、小犬のかわいらしい仕草を想像しやすい曲です。

動物の話題に触れた後などに、曲名は伝えずに演奏して、何の動物について作曲されたのかをあててもらうゲームに使用するのもいいかもしれませんね。

24のプレリュード前奏曲集第7番イ長調Op.28-7


こちらもショパンの曲ですね。
どこかで聴いたことがあると言われる方も多いのではないでしょうか。

短い1分ほどの曲ですので、特にピアノに興味がないクライエントでも聴いていただけるかと思います。

ゆったりとした演奏をして、クールダウンの曲の一曲として用いるのもいいかもしれませんね。

キラキラ星変奏曲


モーツァルト作曲です。
キラキラ星も聞いたことのある方が多い曲です。

ただしこの曲はすべて演奏してしまうと長いですよね。
音楽の変化に触れてもらうために、少し短くアレンジして使うといいでしょう。

ピアノソナタ第11番第3楽章(モーツァルト)


トルコ行進曲として有名な曲です。
4分程度の曲ですが、やはりピアノに興味のない方が聴くには集中力が持たない曲ですので、ピアノ曲を聞き慣れているようなクライエントである場合におすすめです。

また、この曲はモーツァルト『ピアノソナタ第11番』の第3楽章ですが、第1楽章は、唱歌の『夏の思い出』にメロディーが似ているといわれることがあります。
演奏後に似ている曲を答えてもらうというようなクイズを出しておくと、集中して聴いていただけるかもしれませんね。

ちなみに、こちらがモーツァルト『ピアノソナタ第11番第1楽章』です。

そして、こちらが『夏の思い出』です。

いかがでしょうか?

まとめ

1.音楽療法では、ピアノ曲を受動的音楽療法で使用することがほとんどです。プログラムのうちの一曲、または、すべての曲がピアノ曲である場合もあります。
2.対象者は特に限定されません。子どもから高齢者まで、すべてのクライエントに対して使用することができます。
3.特定の曲や作曲家にこだわる必要はなく、クライエントとセラピーの流れに合った曲を選ぶことが大切です。

セッションを行ううえで、ピアノ曲を選択することはそう多くはないかもしれません。
ですが、クライエントに合った曲、セラピーの流れに沿った曲であれば、素敵なセッションになるでしょう。

たまにはピアノ曲を織り交ぜることで、セッションに新鮮さも出せて良いかもしれませんね。


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