ピアノ学習者の憧れの曲として必ず上位に入る幻想即興曲。言わずと知れたショパンの名曲です。
バーン!と衝撃的な音と共に始まるほとばしる様な冒頭のテーマはあまりにも有名ですね。
ピアノ講師の立場からこの曲の気になる難易度と弾き方のコツをあげてみます。
難易度は?
全音のピアノピースではA~F難度の中で上級のEにランクされています。・・・と言っても、全音のピアノピースの難易度表があてにならないのは常識。あんなに難しいのにこんな低い難易度なの?!っていう場合やその逆もよくあります。
実際に幻想即興曲がランクされてる難易度Eを見てみると、リストのラ・カンパネラ、愛の夢第3番など難曲と言われる上級曲も名を連ねています。
一概にランクEだよ!とは言えませんが、幻想即興曲は上級曲としては簡単な部類、中級レベルの上といったところでしょうか。教本レベルで言えばツェルニー30番が終わった頃、もしくはツェルニー40番の前半がしっかりと弾きこなせるようになった頃に挑戦するのが良いでしょう。
子供の頃からピアノを習っていてショパンのワルツ集ならどれも弾ける、ノクターンも何曲か弾きました、というくらいのレベルなら数カ月で弾きこなせるようになるでしょう。
弾き方のコツ1 クロスリズム
なんと言っても激しくも美しく流れるテーマがこの曲の最大の難関!!
このテーマは2分の2拍子なので、1拍の中に右手の16分音符が8個、左手は6連符という、いわゆるクロスリズムで出来ています。右手と左手が違うリズムを奏でる事で、脈打つような流れる音楽になっているわけですね。
まずは片手ずつがメトロノームなどに合わせてきっちり拍感を持って弾けることが重要です。これを省いてしまう人がとても多い!
本当にしっかり片手を弾きこんだかどうかによって、クロスリズムの仕上がりが変わってきます。
でもしないんですよね・・・
わかります・・・
よくわかります・・・・
だって私もしなかったから。
憧れの曲に挑戦する時って得てして皆さんそうなっちゃうんですよね。
早く両手にしたい!!
この曲弾ける私すごい!!
って。
いや、全然すごくないから。
なんなら片手練習してないクロスリズムなんて聴いてる側からしたらただの騒音ですから。
両手にしたい気持ちをぐっと抑えて、片手練習をしなさい!!
まずはそこからです。
真面目に片手練習に取り組むことが出来たら、次は両手で同時に弾く音をしっかり合わせます。
縦のラインが崩れないようによく合わせましょう。
右手と左手の感覚を良くするために、わざと違うリズムにして練習する、いわゆるリズム練習も効果的です。
左手はバスの部分(1拍目の最初と2拍目の最初にくる低い音)を気持ち大きく弾くと音楽が引き締まります。
ショパンらしい高音域に駆け抜けるような右手のパッセージの部分は出来るだけ鍵盤へのタッチを浅く軽くすると弾きやすくなります。
以上をちゃんと守って練習していけばクロスリズムも自然と流れるようになってきてくれます。
弾き方のコツ2 中盤の表現力
クロスリズムを攻略したら、中盤に現れる緩急の緩の部分でしっかりと歌心を持って表現します。前半のクロスリズムがテクニカルの見せ場とするなら、この中盤の流れるような穏やかな部分は表現力の見せ場です。
ショパン独特の歌い方、柔らかい音色の作り方にはコツがあり、指を少し伸ばすようにして鍵盤を柔らかく打鍵します。
右手のメロディーは実際に声に出して歌ってみることも大切です。これはこの曲に限らず言えることですが、どこで息を吸い、どこで音楽が膨らんでいくのか、声に出して歌ってみるとわかることは多々あります。誰もいない時を見計らってオペラ歌手になったつもりで思いっきり歌ってみましょう!
また、左手はただの伴奏と気を抜かず、しっとりと右手の支えになるよう、優しくも芯のある音で弾きましょう。右手同様、少し指を伸ばし気味に、指の面積をたくさん鍵盤につけるイメージで弾くと柔らかなショパンらしい音が出やすくなります。
弾き方のコツ3 音楽を構成する力
この曲は激しい部分と愛が溢れるような穏やかな部分、そしてまた激しいテーマが現れるというサンドウィッチのような構成になっています。最初から最後まで同じような弾き方や音色になってしまわないよう、十分に構成を考えて演奏する事が大切です。
その為には、音楽の山をどこに持ってくるのか、一番小さな部分、一番激しい部分、一番優しい部分・・・など、自分なりに全体像を把握することが重要になります。
テクニカル面が大変な曲ではありますが、指の動きばかり気を取られず、聴いてくれる人の気持ちになってみたり、どう聴いてほしいか、何を伝えたいのかという所が最終的にはとても大切ですね。
まとめ
幻想即興曲は誰もが知っている名曲なので、挑戦し甲斐がありますし、演奏できた時の達成感はとても大きいです。しかし、誰もが知っている名曲ということは、裏を返せばたどたどしいお粗末な演奏では恥ずかしい思いをしてしまうという怖さもあります。
発表会や人前での演奏でかっこよくこの曲を演奏したいなら
1. クロスリズムの攻略
2. 中盤の表現力(柔らかな音色で演奏する)
3. 構成力を持って演奏する
この3つを肝に銘じて練習していきましょう!
きっと素敵な幻想即興曲に仕上がります。
「幻想即興曲」の無料楽譜
- IMSLP(楽譜リンク)
1855年にシュレンジャー社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。 - Mutopia Project(楽譜リンク)
最近整形されたきれいなパブリックドメインの楽譜です。 - IMSLP(楽譜リンク)
上記2つはよく耳にするフォンタナ版ですが、こちらはショパンの自筆譜を起こしたルービンシュタイン版です。フォンタナ版での冒頭の左手のスフォルツァンドが、こちらではフォルテになっているのが特徴です。左手の音数が多く、全体的に繊細な作りになっています。無料楽譜ですがパブリックドメインではないのでご注意ください。Creative Commons Attribution 4.0ですので、楽譜の最後についているクレジットを消さないように使えば問題ありません。
ショパン「即興曲」の記事一覧
- 練習前に知っておきたい!ショパン幻想即興曲♪難易度と弾き方コツ3つ! 2017年2月10日 ←閲覧中の記事
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- ショパンの「即興曲」全4曲の難易度順をピアノ講師が解説! 2020年5月23日
はじめまして! ピアノは弾きません ギター弾きます。クラシックが好きでピアノやチェンバロ等が特に好きです。ピアノ用の譜面をシマメラで買ってはギターで偶に弾いてますが、ショパンの幻想即興曲のCD色んなピアニスト聞きましたが皆どの方もAパートを速く弾いてますがショパンも同じくらい速く弾いてたのですか????????超スローでしか弾けませんが、それにしても美しいメロディーです、そんな美しいメロディーをあんなに速く弾いたら聞き手も分かりません 作曲趣味なので勿体無いと思います。解答、宜しくお願いします。
コメントありがとうございます!
運営者のshirokuroです。
C#m様はギターでピアノ曲を弾かれるんですね。
幻想即興曲は私も幼いころから大好きでよく聴いているのですが、
ギターで弾くというのは初耳でした。
YouTubeにもいろいろ上がってるようですね。
https://youtu.be/cD_FDy4l4QM
幻想即興曲のピアノ演奏は、心の奥底をつかまれるというか、
どこか別の精神世界に迷い込んだ感覚になるのですが、
ギターはぜんぜん違いますね。
純粋にかっこいいと思いました!
ライブハウスで聴いたら大興奮すると思います^^
ご質問の件についてですが、
この記事の執筆者のクラばかさんがお休み中なので、
別の執筆者のChienさんに聞いてみました。
以下のお返事をいただきましたので、
ご参考になりましたら幸いです。
—–
はじめまして。Chienと申します。
ギターを演奏されるんですね!私はピアノやキーボードなどの鍵盤楽器しか弾かないので、ギターのことはわかりませんが、ご質問にお答えします。
ショパンはピアノの曲ばかり作曲しており「幻想即興曲」も、もちろんピアノ曲です。
楽器の特徴はそれぞれにあると思います。ピアノは10本の指を駆使して弾くので1回に弾ける音数は他の楽器に比べてとても多いです。そしてあまり多くのアクションをすることなく鍵盤を押さえるだけで弾けるので他の楽器よりも速く演奏することが可能な楽器なのかなと思います。
ショパンの「幻想即興曲」はAllegro agitatoというテンポ設定で書かれています。(途中テンポが変わるところがあります。)Allegroは「速い」という意味なのはご存知だと思います。agitatoは「激しく」や「興奮して」という意味があります。
Allegro agitatoはただ速いというだけではなく、何か切羽詰まった感じを出して欲しいという意味なのだと私は理解しています。
このように書いてあった場合はやはり速く弾かなくてはいけないと思います。しかし、弾き飛ばしてもいけないと思うので、ただ速いだけではいけないと思います。
ショパンも現在と同じように速く弾いていたのかというのは、正直なところわかりません。
ショパンは体が丈夫ではなかったので、あまり激しくは弾かなかったかもしれません。ピアノという楽器から考えていくとショパンの時代のピアノは現在のピアノよりも構造や音が繊細で鍵盤も軽かったので、速くは弾けたとしても現在のような迫力ある演奏はできなかったのではないかと思います。
Allegro agitatoという指示がしてあるということはゆっくりのテンポでは弾いて欲しくはなかったということだと思います。そのため、この曲をゆったりと弾くピアニストはいません。(人によってテンポが多少違うとは思いますが…)
私を含めクラシックピアノを勉強して来た人達はこの曲はテンポの速いものだという先入観があるので、テンポを緩めるというのは思いもしませんでした。
速く弾いてもちゃんと聴かせられる演奏にするというのが理想なのですが、指の動きに任せて弾き飛ばしている演奏も多々あります。それではもったいないというお気持ちはよくわかります!ただ追われて弾いている、またはそのように聴こえない演奏を目指したいですね。
ギターでこの曲を演奏するはとても難しいのではないのかなと思います。しかしメロディーラインなど骨組みだけ残して全く違う感じに編曲し直せば違和感なく聴けるかもしれません。
原曲のままというのではなく、ギターの特徴にあった編曲のものがあればその方がおもしろく聴けるかもしれませんね。
そうなんですね、納得です。クラシックは奥深いゆえに確立されたジャンルだなと感心します。スローな曲(月のひかり)にしても難しいですね、ギターで最初の4小節でギブです(笑)ピアノの間が同じようにならないし、ホント難しいです。MTRで1トラックと2トラックにしてインベンションNo.4をギターで録音したりしてます、趣味ですよ(笑)下手な横好きですが、良かったらyoutube聞いてみてください。タイトル:スターサイクルstar cycle (ギターのシルバーアクセサリーの画面です、ラストにインベンションNo.弾いてます) 次はシンフォニアをトラック、3つで録音予定です!いつになる事やら(笑)では、お元気で!