ピアノを弾かれている皆さん!
将来ピアノを弾く仕事に就きたいけど、たぶん才能もないし、どうなるかわからないし・・・
やっぱり普通の会社に勤めて、ピアノは趣味でやっていくのが一番かな?
おそらく多くの方がそう考えていると思います。
そのほうが安定していますし、プレッシャーもすくないはずです。
何も後ろめたく感じることはありません。
でも、やっぱりピアノが中心の生活をしたい!
そう思われる方は、すでにそういう生活をされている方の話を、できるだけたくさん聞いてみるのがいいのではないかと思います。
好きという気持ちを突き詰めていった先にもいくつもの道が用意されています。
今回は、神戸を中心に活動されているピアニストの西口淑子さんにインタビューさせていただきました。
西口さんは、子供のころからピアノを習っていたものの歯科衛生士になられ、悩んだ末に音大に入り直し、卒業後はピアノ一筋でやられている方です。
西口淑子さんのプロフィール
大阪音楽大学卒業。ピアノを小森谷泉氏に師事。国内外のアーティストと数多く共演。現在は、ソロ、伴奏、レコ―ディング、バンド活動などで活躍中。音楽事務所「KOSMA音楽愛好会」に所属。
初めてのソロピアノショー
2019年9月30日、西口淑子さんのソロピアノショーが神戸のポートピアホテルで催されました。
ビュッフェ形式のランチが付いた3時間弱のショーです。
曲目はクラシックから歌謡曲まで幅広く、MCも軽快で会場を沸かせました。
すばらしい演奏に私も感動しました。
インタビューはショーが終わってから会場の外の廊下で15分ほど行いました。
ツーショット写真を撮らせていただきました(左のあやしい猫が私です^^;)
――今日の演奏会はいかがでしたか? 漠然とした質問になりますが。
すごい音楽に集中できました。やりたいことができたと思います。できなかったところももちろんありますが、こう弾きたいなというのができて。あとそれが伝わっていた。伝わったのを感じました。
――とくにどこがっていうのは?
演奏会すべてを通してです。会場の空気感といいますか、音にのせた気持ちに対してのレスポンスを感じました。
――たしかにすごく完成度の高いものでした。
ありがとうございます。
たとえば、雨の音を弾き分けたいな、と思っていましたし、鐘の音も。
※ショパンの「雨だれの前奏曲」、ラフマニノフの「鐘」が演目にありました。
――選曲もすごくいいなと思いました。あのプログラムもすべてご自身で考えられたのですか?
考えました。いろんな曲を楽しんでいただきたくて、バラエティに富んだ選曲を考えました。クラシックは、ドイツ、ポーランド、ロシア、フランス、日本などできるだけ多くの国の作曲家の曲を聴いていただきたいなって。
――はじめてのショーですよね。
ジョイントはやったことあります。こんな1部2部も全部ひとりでやったのは初めてですね。
――そのジョイントというのはクラシック?
はい。1部はソロでコンサートして、2部からトランペットと一緒にやったりとか。
――クラシックだけではなくて、歌謡曲やロックもやられているとか。
そうなんです。何でも。ジャズ以外。即興とかはまだ習得していません(笑)
――ああ、譜面があればできるけど。
ジャズ風楽譜みたいなのがあればなんとか。
今日の「椰子(やし)の実」とか。あれはジャズ風の楽譜ですね。
※唱歌の「椰子の実」が演目にありました。
練習をしないと本当の楽しさがわからない
――3時間弱の演奏会でしたが、練習時間はどれくらいになるのですか?日程が決まってからは、講師の仕事、食事や寝ている時間以外は、ずっとピアノを練習している生活でした。
※日程は4ヶ月前に決まったそうです。
――時間にすると?
弾けるかぎり弾くという感じですね(笑)1日7から8時間、仕事がない日は10時間以上弾いていたと思います。
――そんなにするのですね!
まず暗譜をして、目をつぶっても弾けるようにしてから、見えてくるようになります。
――見えてくる?
音楽作りです。ある程度譜読みの段階でもやりますけど、暗譜というか楽譜を見ていたら見えてこないので。1音1音、ここの音は、こういう音色で弾きたいとか、そういうことに集中ができるようになります。ちゃんと聴きながら、音色を。
――雨の音とかが見えてくると。
そうですね。金平糖が転がっているとか。ここは森を、暗ーい森を馬で走っているとか、赤い光がはじけたり、黒い大蛇が出てきたりとか(笑)
※湯山昭の「金平糖」が演目にありました。
――それを1音1音やっていくというのは相当大変な気がします。
でも、そこまでいかないと音楽の楽しさがわからないです。本番では、献呈とかはもう弾きながら泣きそうになってました。自分で感動して(笑)
4ヶ月苦しんで、本番の3時間の幸せのほうが記憶の中で勝ってますからね。だから苦しくてもピアノを続けられるし、続けたいんです。
※シューマン=リストの「献呈」が演目にありました。
歌謡曲が好き
――前半はクラシックで、後半は歌謡曲やルパン三世があったり、お客さんも歌ったりしましたね。はい。歌謡曲は大好きです。
――歌謡曲がお好きだというのは何かあるんですか?
卒業してから、この仕事に就いてから歌謡曲の世界観に魅了されました。弾いてみたらすごい楽しくて、アレンジとかめっちゃして、それがいいと言ってもらって(笑)もちろん知らない曲もいっぱいあったんですけど(笑)知っている曲や気に入った曲をどんどんアレンジしていきました。
――アレンジするのが好き?
そうですね。歌謡曲とか、特にお気に入りの曲に関しては。派手にソロ用にアレンジしたりとか・・・というのは好きですね。あと、もともとの曲に入っている裏メロみたいなやつあるじゃないですか。あれが入ってない楽譜が多いんですよ(笑)忠実に弾きたい。オンタイムで聴いてきたお客さんたちが、より当時のこととか思い出せるじゃないですか。
――上級アレンジを独自にやるような。
いえ、難しくしたいわけじゃなくて。原曲に近づけたい。あわよくばちょっとゴージャスにしたいみたいな(笑)
――歌謡曲自体の魅力というのは?たとえばノスタルジーとか?そういうわけではない?(笑)
独特?今の曲にはない歌詞とかエネルギー。わかりやすく言うと、ぐっとくるというか(笑)言葉では言い表せないですね(笑)
――クラシックとの違いは?さっき質問されてましたよね(笑)
突然のインタビューでしたよね(笑)こぶしがあるかどうかわからないですけど。
※ショーの合間で、クラシックと歌謡曲の違いについて聞かれた方がいました。
西口さんは、クラシックにもこぶしに近いものがあることや、歌謡曲ではドラムやベースの音を左手で弾くことになるためクラシックの左手よりも激しくなることなどをご説明されていました。
――うん。
あと歌謡曲には好きな和音がたくさん出てくるとか。
――ああ、好きな和音。
というか、コード進行の中の和音とメロディの関係性かな。岩崎宏美の「聖母(マドンナ)たちのララバイ」ってあるじゃないですか。あれは終始いいメロディーですよね(笑)
――そういうのがたくさんあると。歌謡曲には。
そう。ぐっとくる(笑)
伴奏が好きだった音大時代
――大学のときはクラシック一筋で?
そうだったと思います。金管楽器の伴奏をすごいいっぱい弾いてました。
――学校の中でソロをやったりとか伴奏をやったりとかあるんですか?課題というか。
課題じゃなくて、こう、「伴奏、弾いてよ!」みたいな。
――ああ、生徒同士でいろいろやっている感じなんですか?
そうですそうです。
伴奏が好き。ソロがあまり得意じゃないんですね。
だから今日これだけ集中して弾けたのは初めて。
――伴奏が好きってなんか珍しい気がする。
一緒にやりたいんです。誰かと(笑)だからバンドも好き。
――バンドはロック?
ロックも。でも、なんでも好きですよ。
――大学のときの、これっていう思い出はありますか?
いやー、伴奏がとにかく楽しかったですね。うまく息が合うととても気持ちいい音楽になります。トランペット、チューバ、あとはトロンボーンの門下全員弾いたくらい、トロンボーン伴奏はたくさん弾きましたね。
――ははは。
あとは、学祭オケでラプソディーインブルーをコンチェルトで弾かせてもらいました。ソロではそれが一番楽しかった。
――いまでも管楽器の伴奏をされているとか。
はい。KOSMAの管楽器コンクールで公式伴奏をしています。
※「KOSMA音楽愛好会」は神戸にある音楽事務所です。ピアノ、声楽、管楽器のアマチュアコンクールを手がけています。YouTubeには西口さんの演奏動画もあります。
ホームページ: http://kosma.sakura.ne.jp/
YouTube: https://www.youtube.com/user/KOSMAmusic
管楽器コンクール: http://kosma.sakura.ne.jp/brassconcours.html
ピアノ・声楽コンクール: http://kosma.sakura.ne.jp/pianoconcours.html
――管楽器では有名なコンクールなんですよね?
もう20年以上続いている老舗のアマチュアコンクールなんですが、賞を取った方で、海外に行かれたり、大きな賞を取られたりして活躍されている方が何人もいます。
私が伴奏を弾いた方が活躍されることになったとしたら、それは本人の演奏の力で私の力ではないんですけど、それをお手伝いできたとしたら、すごい嬉しいです(笑)
――ピアノや声楽のコンクールでも伴奏を?
そうですそうです。高齢の方から小学生まで、幅広い年齢層の方に参加していただいています。わきあいあいとしたアマチュアのコンクールなので、ちょっとした力試しに受けてみられるといいかもしれません。私も一生懸命サポートさせていただきます。
歯科衛生士から音大へ
――もともとは、歯科衛生士だったんですよね?そうなんです。ふふふ。
――それから辞めて大学に入り直してっていう。
はい。
歯科衛生士にはあまり向いてなかったんですよね(笑)
――向いてなかった(笑)
そんな中、音楽の道へ進むきっかけがありまして・・・。
友達の結婚式で弾く機会があって、これを仕事にしたいな(笑)となって。あ、楽しいなって。
最初は・・・ピアノの生演奏が売りのレストランとかあるじゃないですか。そういう所で弾いてみたいなと。そしたらなんか肩書きじゃないですけど、音大卒みたいなのがいるんかなと。
そういうのから始まっています。
――でも、もともと音楽がやりたかったということなんですよね?
そんなことはない(笑)
中3までは、ピアノを3つの教室で習ってやってたんですけど、大変やったというか。
――そんな好きではなかった?好きだけど大変さのほうが勝っていた?
好きではなかったなー。大変だった。練習が大変だった。
――たしかにそうですよね。
自分でやりたいと思ったのがその歯科衛生士のときから。そこからはすごい、やりたいっ!に変わりましたね。すると上達も早いような(笑)
――何がそこで変わったんですか?
なんででしょうねー。とにかく弾きたいというエネルギーがみなぎってきましたね。
――まあいつから始めてもいいということですよね。
何か始めるのに遅いということは絶対にないです。
弾き続けていればチャンスが巡ってくる
――で、今はピアニストと講師を。はい。
――たぶんその、ピアニストとして生計を立てるというのは、結構大変なことですよね。
そうです。はい。
――何かアドバイスみたいなものって、ありますか?ブログの読者が、ピアノの学習者とか、ピアニストになりたいと思っている人がいるんじゃないかと。ピアノにかかわる職に就きたいと思っている人に対して、アドバイスみたいな。
やる気。(笑)
――やる気(笑)
とにかく弾きたいという気持ちがあれば、それを抑えようとせず、自分を信じて突き進むことではないでしょうか。
――弾き続ければチャンスが巡ってくると。
はい、そう思います。
私は友達がKOSMAにいて、面白い事務所があるから来てよ、みたいな感じで入れていただいて最初は大変でしたが、自分を信じて突き進みました。今はとてもやりがいを感じています。
まとめ
いかがだったでしょうか?
西口淑子さんのピアノショーに参加し、インタビューをさせていただきました。
歯科衛生士になりながらも、音大を経てピアニストになるという経歴の方で、子供のころはピアノはとにかく大変であまり好きではなかったとのこと。
一度別の仕事に就くことで、本当にやりたかったことが見えてきたのかもしれません。
今回のピアノショーは、4ヶ月前に突然、やってみないかと事務所から言われたそうです。1年後ねと言われるよりも集中して取り組めて良かったとおっしゃっていました。
個人でピアノ教室を運営される方、楽団に所属される方、保母さんや学校の先生になられる方、様々な方がいらっしゃると思います。
ですが、このような演奏会やショーなども手がける事務所に所属してみるというのも、選択肢を広げることにつながるのではないかと思いました。
また、生でピアニストの音楽に触れてみるのも良い刺激になると思います。ネットやCDにはない味わい深さがありますよ。
無料の演奏会なども探せばありますので、ちょっと足を向けられてみてはいかがでしょうか。
自分に合った音楽家が見つかれば、その人の講座やレッスンを受けてみられると、師事されている先生とはまた違って、学ぶものが多いのではないかと思います。
コンクールも敷居の高いものばかりではなく、今回記事中でご紹介させていただいたようなアマチュアのコンクールもありますので、試しに受けてみられるのもいいかもしれません。賞が取れれば自信にもなりますし、アマチュアのコンクールから始めて、名のある演奏家になった方もたくさんいらっしゃいます。
すばらしい演奏、そして楽しいショーを開いてくださった西口淑子さんに、あらためて感謝いたします!