もうすぐピアノの発表会がやってくる!

弾きたい曲はたくさんあるけど、まだそんなにレベルも高くないし…

やっぱりかっこいい曲が弾きたい!!

でも難しいことはきるだけ避けたいしなぁ…。

練習面倒くさいしなぁ…(口癖)

あ、でも気に入る曲だったら練習するかも。


よくわかります。面倒くさいけどいい曲弾きたい気持ち、わかる~!
人間とは本当に欲深い生き物ですよね…(笑)
始めた当初は「嗜む程度に弾ければいい」とは言ったものの、いざピアノを始めると少しずつ上達していくとともに「欲」が出てくるものです。
大丈夫、音楽を愛する方々はきっと同じ考えを抱えているはず。

今回お勧めするのはスキルアップに欠かせないその「欲」、満たしてくれる名曲です。

シューベルト「セレナーデ(セレナード)」
(歌曲集「白鳥の歌」よりD957-4/ピアノ編曲:リストS.560-7)


それでは今回も「超ずぼらピアニスト&楽曲アレンジャー」の私と一緒に、この曲をもっと感動的な一曲にする為にはどうしたらよいか考えていきましょう!

■ 目次

難易度は?


あぁ~、何という甘美な響き…癒しのメロディにうっとりしてしまいそうですね。
全てを放り出して聴きながらこのまま眠れたらどんなに幸せなことか…
(ただただピアノの練習が面倒くさいだけ(笑))

この曲の難易度は、
「先生、そろそろピアノの発表会で曲らしい曲を弾きたいです!」
と少しずつ音楽に目覚めてきた頃の生徒さんにお勧めしている初中級クラスの曲です。

譜面もすっきりしていてとても見やすく、同じテーマを少しずつ展開していくので、「今どこを弾いているの私!?」というトラブルも起きにくい分かりやすい曲です。

初級の方でも十分にトライできる華やかな曲なのでお勧めです!

メロディラインは先に覚えてしまうと展開が早い


「先生、カエルの合唱や、チューリップ…なんかはよく知っている曲だから楽譜見なくても弾けるんですが、先生から課題に出されたこの曲は知らないから難しくて弾けません。どうしてですか?」

「あ、すごいね、その答え自分で気付いてるじゃん!すごーい!」

「…?先生の言っている意味全く分かりませんが。」

「だって自分で言ってるんだけどなぁ…。」

その答え、どこにあるかわかりますか?

「よく知っている曲だから楽譜見なくても弾ける」
この部分なんです!!

好きな曲はどんどん弾けるようになるのに、与えられたバイ○ルやハ○ンは思うように進まない。

その大きな原因は、「メロディラインを知っているか知らないか」
ここにあります。

昔は、「テープに頼って耳で覚えてしまうから、弾く前に音源は聞くな」

よくこんな指導を受けていました。
もっとも、私が生徒時代はテープの時代だったので参考音源など簡単に手に入らなかった…

だからこそ、その時やっとの思いで聞けた1つの音源が全てでそれに固執してしまうことを先生は避けようとしていたのでしょうね。

でも今は、CDやユーチューブ等で様々な方の模範演奏を聴ける時代です。

「いろんな方の演奏をたくさん聞いて、いいところ悪いところを整理して自分の演奏の参考にするのもいいですよ」

と、生徒さんにはお勧めしています。

勿論自力で楽譜から音符を拾う作業もとても大切ですが、耳で聞いた音から楽譜の音を判断していくのも一つの読譜の攻め方だと思うのでどんどん聞くべきだと思います!

全体のメロディの動きを口ずさめるようになるまで何度も聞いてから弾いてみると、今自分がどこを弾いているのかが手に取るようにわかるので、楽譜を読むのが苦手な方にはお勧めの作業ですよ!

三連符の弾き方をマスターしてつまずきを軽減!


大体この曲の難所であり最初につまずくところが、5小節目(動画00:13)から始まる三連符ではないでしょうか。

シューベルト(=リスト)「セレナーデ(セレナード)」ピアノ楽譜
左手八分音符二つに対して右手が三つという割り切れない数なので混乱する方が多いのが現状…。

左右の一音目はしっかりと合わせ、左手の二音目を右手の二音目(シ♭)と三音目(ラ)の間に入れ込むように意識して弾くと、リズムも崩れにくく弾きやすいですよ~!

三連符がこの曲の特徴ともいえるので、ぜひマスターしておきたい部分です!

スラーを意識するとまるで歌っているかのようにメロデイが変化!


この曲を歌っている動画です!

…難しい歌詞の内容はさておき、歌には必ず「ブレス(息を吸う)」の作業がついてきます。
「ブレス」をして、一つの文の流れを一気に歌い、また新しい文の始まりで「ブレス」して歌い始める。

ピアノで演奏すると見落としがちになってしまう右手のスラーは、このブレスからブレスまでの流れになっています。

スラーを見落とすと、メロディにメリハリがつかず、だらだらとただ棒読みをしているように聞こえてしまいます。

スラーを守って演奏することで、曲にメリハリがつくのでまるで誰かが歌っているかのように、メロディが生き生きと変化しますよ!見落とさないように演奏してくださいね!

左手はベースを外さないことが鉄則!

この曲が弾きやすく感じる要因の一つとして、和音(コード)の進行が全体的に一定しているところにあります。

左手の伴奏はこの和音(コード)を分散させてできていることに注目しましょう!
例えば、5小節目(00:13)の和音は下からレ、ファ、ラ(Dm)の和音です。

まずは、和音の他の音は無視してベースの音だけ左手で弾いて、それに右手を合わせてみましょう。

ちょっと物足りない気もしますが、これだけでも和音のベースになる重要な音なので、十分に曲として成り立っていることに気付きましたか?


演奏の仕事、特に楽器の伴奏の仕事をしていて言われるのが、

「少々の音は省いてもいいから、ベースとリズムだけは外さないで!」

楽器の方は、ピアノの和音の内容については信頼しているからさほど聞いてないそう(一生懸命練習してるのに聞いてよ~)。

それよりも、左手のベースの音の動きとリズムに合わせてメロディを乗せているということです。ベースからコードの判定をする。それくらいベースの動きは重要ということ。

まずは左手はベースをきちんと取れるようになってから!
その後に和音(コード)の響きを感じながら他の音を入れ込む練習をしてみてくださいね!

アーティキュレーションは「自分らしさ」へのカギ!


「どうです、こんなに私指も動くし技術があるの、すごいでしょう!?」
たまにこんな生徒さんがいらっしゃいます。手はよく動くし指も長いものすごい技術の持ち主。

それなのに、確かに技術はあるけど、なんか心を打つものがイマイチ感じられない演奏…。

技術はもちろん必要なのですが、それ以上に私がピアニストとしていつも忘れずにいたいと思っていることは、

「自分らしい演奏」を常に心がけること。

そのために、その曲の持つアーティキュレーションの解釈をしっかりと説明できるくらいに研究しています。

一口に「フォルテ」と言っても、ただ単に強い感じなのか、優しくて揺るぎない母のような強さなのか、物理的に大きいものを表しているのか、気分が高揚しているのか、大きい対象が何なのか。

「クレッシェンド」はただ強くしていけばいいのか、気分が高揚していく感じなのか、風船が膨らむ感じなのか。

1+1は、本当に2と言っていいのか
(ありさん一匹ととぞうさん一匹足したら2になるの?ママ、本当にそうなの?と2歳の娘に問われて答えられずにいる今日この頃(笑))。

十人十色いろんな解釈が持てますよね!

ピアノだから「弱く」、フォルテだから「強く」の固定観念を一度捨てて、自分が感じるままに解釈してみませんか?

5小節目(動画00:13)からのテーマと37小節目(動画01:26)からのテーマは同じなので、
「1回目は少し寂しい気持ちで」
「2回目は少しだけ決意を持った感じで」
と、気分を変えてみたり(何も指示はありませんが)、

61小節目(動画02:22)からのクレッシェンドは、最後の結尾に向かって思い詰めていた気持ちが一気に揺れ動く(多分(笑))部分なので、少々アッチェレランド気味に弾いてみる

など自分なりのストーリーを考えてみるともっと自分らしい演奏に近づいていきますよ!

まとめ

1.難易度は初中級クラス。
2.メロディは先に覚えてしまうと練習が先に進みやすい。
3.三連符の弾き方をマスターすることで、つまずきを軽減できる。
4.スラーを意識することでメロディを歌っているように聞かせることができる。
5.左手はベースを外さないことが鉄則。
6.アーティキュレーションは自分らしい演奏をするためのカギになるので注目する。

どんなに弾きやすくて簡単な曲でも、弾き方次第で格段にレベルの高い曲に聞こえるので是非実践してみてくださいね!



シューベルト(=リスト)「セレナーデ(セレナード)」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1918年にペータース社から出版されたパブリックドメインのリスト編曲譜です。
  • IMSLP(楽譜リンク
    1895年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版されたパブリックドメインのシューベルト原曲譜です。歌とピアノのパートにわかれています。「白鳥の歌」全14曲が収録されており、第4曲「セレナーデ」は15ページからです。

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