音楽療法を行う際に、頭を悩ませることの一つがプログラム作りです。

クライエントに楽しんでもらいたい、でも、どんな曲を選べばいいのかわからない。どの曲でどんな反応をしてくれるのかを知りたい時ってありますよね。

そんな時に参考にしてもらえるように、私が実際、ある年の9月にデイサービスで行ったセッションのなかで使用した、歌唱用の曲をご紹介します。

まずは9月に歌いたい童謡・唱歌


9月は秋の始まりです。まだ残暑が厳しい日であっても、季節を感じてほしいと思い、秋をテーマにした曲を選ぶことが多いです。

童謡や唱歌には秋を感じさせてくれる曲が何曲もあります。
私が使用したのは、『故郷の空』や『虫の声』、『赤とんぼ』などです。

『故郷の空』は、その歌詞を見ると「夕空晴れて、秋風ふき…」と始まる秋の曲です。ヨナ抜き音階が使われていて、歌詞もセンチメンタルなので、少し秋の寂しさを感じさせてくれます。

この曲の歌唱時には、歌詞に関する質問をしました。
「故郷はどこですか?」といった1番の歌詞に関する質問は、答えやすいこともあり、何人もの方が答えてくださいました。

しかし、2番の歌詞となると様子は違いました。あまり聞きなれない歌詞であり、歌詞を見ずに歌える方でも、実際歌ってみることはできても、なんの事を言っているのか歌詞の意味がわからないとおっしゃっていました。

クライエントと一緒に2番の歌詞について読み解いた後、もう一度最後に歌いました。

そして『虫の声』も秋を感じさせてくれる曲のうちの一つです。

この曲を、試しに歌詞幕なしで歌ってみると、何虫なのか、どんな鳴き方なのかがわからなくなって色々な答えが出てきて盛り上がりました。

この曲は、楽器を使用しやすいので、楽器演奏に使用するのもいいと思います。

また、『赤とんぼ』も秋ならではの曲です。
『赤とんぼ』というタイトルの曲は2つの曲があるということをご存知でしょうか?

よく知られているのは「夕焼け小焼けの赤とんぼ~」ではじまる、童謡の『赤とんぼ』です。もう一曲は「秋の水、すみきった~」とはじまる唱歌です。

私自身は、唱歌の方の『赤とんぼ』という曲を知りませんでした。でも、昔の音楽の教科書に載っていた曲だということだったので、クライエントである高齢者は知っているだろうと思い選びました。

その予想は外れでした。クライエントも大半が知らなかったのです。

本当は、歌詞を読み比べて、その後歌い比べたかったのですが、曲を知らないから歌えないという空気が、歌詞を読む時点から伝わってきて、結局歌詞の読み比べの時から、盛り下がってしまいました。

そして、クライエントが知らないこと以上に問題だったことは、私自身が知らない曲であったにもかかわらず、練習も不十分であった事です。

私には自分が知らない曲でも、クライエントに歌で助けていただけるという考えがいつもありました。この曲に関してはそうではなかった為、練習不足がより顕著になった形でした。

自分の知らない曲だからこそ練習を重ねる必要があることを改めて感じた曲でした。

その唱歌『赤とんぼ』の動画がありましたので、参考にしてください。


次は9月に歌いたい歌謡曲


秋の曲として選んだ曲は、『リンゴの唄』『夕焼けとんび』『旅の夜風』です。

『リンゴの唄』は戦後すぐに流行した曲です。
この曲には特徴的な少し長めの前奏がつけられています。私はこの前奏部分をすべて演奏するようにしています。

そうすることによって、認知症の症状が重い方でも、曲を思い出すきっかけになってくれるからです。
軽快に歌っていただけると、場の雰囲気が全体的に明るくなりますよ。

そして『夕焼けとんび』ですが、これは三橋美智也さんが歌った曲として有名です。
この曲を歌う際は、三橋美智也さんが歌っている他の曲を答えていただくクイズをしました。

三橋美智也さんはたくさんの有名な曲を歌っているので、たくさんの答えが返ってきました。ただ、中には間違った回答もあったりします。
そんな場合は他のクライエントが教えてくれたりしてコミュニケーションの輪が広がりますよ。

最後に『旅の夜風』ですが、この曲は映画『愛染かつら』の主題歌として発売された曲ですので、その映画についての話題に触れました。

また、この曲に関する雑学のひとつに、3番の歌詞に関するものがあります。

それは「肌に夜風が沁みるとも」という部分が、実は本来は「肌に夜風が沁みわたる」という歌詞だった、というものです。

歌唱した人が間違って歌ったとのことですが、現在では間違った方が定着しているので、この曲を歌いなれている高齢者は本来の歌詞では歌いにくい様子です。

このような、クライエントも知らないようなネタも用意していくと話が盛り上がるきっかけになりますよ。

歌うことの効果とは?

高齢者の音楽療法において歌唱することで得られる効果は様々あります。
歌うことでストレスの発散ができ、心肺機能を高めることにもつながります。
また、若いころに歌った曲を採り上げることで、その頃を思い出し、脳が活性化します。

今回ご紹介した『リンゴの唄』や『夕焼けとんび』のように、明るく軽快に歌われるような曲は、歌い手の気分を高揚させてくれます。

また『故郷の空』や童謡『赤とんぼ』など少ししんみりするような曲は、心を落ち着かせる助けになってくれるでしょう。

まとめ

1.9月に歌いたい童謡・唱歌は、秋を十分に感じさせてくれる曲をお勧めします。
2.9月に歌いたい歌謡曲は、『リンゴの唄』や『旅の夜風』、『夕焼けとんび』など。歌手についての話題や、曲の背景についての話などでコミュニケーションがとれますよ。
3.歌うことには様々な効果が期待されます。音楽療法は心身の機能維持・向上のために効果的です。

以上が、私が高齢者のデイサービスで9月のセッションの際に取り入れた曲の実例です。

音楽療法のセッションで、歌唱は、最も多く行われるプログラムのうちの一つです。楽器演奏や、体操と組み合わせながらプログラムを作ってみてください。

クライエントと秋を感じられるセッションになるといいですね。


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