ピアノは音域の広い鍵盤楽器で楽器自体が自立しているため、楽器を持ち上げたり、支えたりする必要がありません。そして楽器を演奏するために弓やばちなどを持つ必要もないので、両手をフルに使うことができ、10本の指を全て使って演奏することができます♪
このような演奏スタイルのため、他の楽器よりも音域を広くすることができ、伴奏もメロディーも1人で弾くことができるのではないでしょうか。(音域の拡大には楽器自体の改良と進化ももちろんありますが…)
小さなお子さんでピアノを始めて間もない場合は、片手ずつ弾くということがありますが、それ以外でピアノを弾く場合、両手で弾くというのは必須ですね!
左手だけの作品もありますが、これは簡単に弾けるものではありません。左手だけで弾けるように考えられて作曲されていますが、左手だけでかなりの音域を弾かなくてはいけませんし、メロディーも伴奏も左手だけで弾き分けなくてはいけません。
左手のための作品は、バリバリ弾けていた人達が様々な理由で(戦争で負傷、ピアノの弾きすぎなどで痛めた、病気などの影響etc…)以前のように右手を動かせなくなってしまったため、左手だけで弾ける作品を作曲家に依頼したり、既存の作品を編曲してもらったり(あるいはピアニスト本人が自分自身で編曲、作曲)してできたものがほとんどだと思います。
そのためテクニック的にも曲想的にも難易度の高い作品が多く、かなりのスキルが必要なのです。(両手で弾いても難しい…。)
今回はピアノを弾くということはどういうことなのか、両手で弾くためには何が必要なのかについて私なりの考えを書いてみたいと思います!
ピアノを弾くときの指の動きと負担について
ピアノを弾くということは日常生活では、ほぼしない手指の動かし方をすることになると思います。日常生活の中でピアノに近い手の動かし方といえば、タイピングでしょうか。
パソコンに文字を打つ時のタイピングはキーに指が当たるように手を構え、指を1本ずつ動かすと思いますので、手の構え方と1本ずつ指を動かすという点では、日常生活の中では1番ピアノに近い動かし方なのではないかと思います。
私の場合、タイピングにもう慣れたので、手首が痛くなるということはありませんが、初めの頃は手首が痛くなっていました。原因はピアノを弾くのと同じような感覚で手首を持ち上げて、鍵盤を速いスピードで打つように力強くキーを叩いていたからだと思います…。
このやり方だと手首にかなり負担がかかってしまうようで、長時間パソコン作業をすると手首が疲れてきて、痛くなっていました。
手首の位置に置くぷにぷにしているマットを置くと変に力が入ることがなくなり、手首が痛いということがなくなりました。
必要以上に力を入れていたつもりはないのですが、力が入っていたんですよね…。
初めはどの状態が正しくて、どの状態が間違っているのかというのがわからなくて、肩が凝ったり、手首が痛くなったりしていました。
私の場合、力が入っているということに気づくまでが遅すぎるというのがあると思います…。長らく力が入っている状態が通常の状態だと思い込んでいたので、力が抜けている状態というものがどういうものなのかが理解できずにいました。
力んでいる状態と脱力している状態というものがどう違うのかが日常生活の中で少しずつ理解できるようになり、最近になってようやくピアノを弾く場合の力の使い方や体の使い方についても真剣に考えられるようになりました。(現在は脱力した状態がわからないと、正しい力のかけ方もわからないというところまでは理解できました。)
さて、話をピアノの方に戻しますね。
ピアノを弾くにはタイピングをするよりも、もっと個別に指を動かさなくてはいけません。親指、人差し指、中指、小指は独立して動かすことができると思いますが、薬指は独立して動かそうと思うと、とても難しいと思います。
小指とセットにしたり、中指をセットにしたりすると薬指は動かしやすくなると思いますが、単独で動かそうと思うと他の指よりはかなり動きが悪いと思います。薬指を単独で動かすというのは人間は元々得意ではないんですよ。
ピアノを弾く場合、薬指以外にも日常的な使い方とはちょっと違った使い方をしている指があるんですが、それはどの指かわかりますか?
答えは親指です!!
親指の日常的な使い方は何かを持つ時に支えるように添えたり、物を握ったりする時に使うということが多いのではないかと思います。ピアノを弾く時はそのような使い方で親指を使うのではなく、他の指と同様に鍵盤を押して弾いています。(オクターブや和音を弾く時に少し掴むようにして弾く事はあります。)
親指だけが骨格的に指のつき方が違うので、必然的にキーが当たる位置が他の指とは異なります。そのような違いから親指は他の指とは違った動きになってしまいます。
親指は上から勢いよく振り下ろしてしまわないように気をつけなくてはいけません。気をつけないと音が必要以上に大きくなってしまったり、重くなってしまったりということが起こります。
普段とは違う指の使い方を日々の練習の中で訓練していき、習得していくことで、だんだんとレベルアップしたものが弾けるようになります。
元々、自然にできる手の動きとは少し違った動きを強いられるので、そこがほんの少し負担になる部分かなと思います。手首を浮かしておくということも負担の1つかもしれませんね。
まだ手が小さく、指がしっかりしていないお子さんの場合、必要以上に力いっぱい弾こうとすると手首や肘、肩もガチガチになってしまい、手を支えることができず手首も腕も下がってしまうことがあります。
このような弾き方を続けていると私のように、力をグッと入れたまま弾く状態に慣れてしまい、これが普通の状態だと思ってしまいます。そうすると故障してしまう原因となってしまうかもしれませんし、色んな音色を出すことが難しくなりますので、正しくない弾き方が癖にならないように気をつけて下さいね!
癖はなかなか直らないですよ!初めが肝心です!!
両手で弾く時にもいろんなパターンがある
両手で弾くと言っても大きく分けて3つのパターンがあると思います。
①右手:メロディー 左手:伴奏
②右手:伴奏 左手:メロディー
③右手、左手どちらともが独立した1つのパートを演奏する
ざっくり分けるとこのような感じかなと思います。
もう少し複雑なってくると右手の小指側にメロディーが来て、右手の親指側に伴奏が来ているものや逆に親指側にメロディーラインが来るものもあります。この弾き方は右手だけでなく左手で弾くこともありますね。
複雑なものはちょっと置いておくとして、どのタイプの弾き方が1番弾きやすいのかというと、やはり①の右手がメロディー、左手が伴奏パターンだと思います。
どうしてそうなのかというのは、右利きの人が多いというのが理由としてあるのではないかとは思います。
実際に両手で弾く初歩の教材の多くで右手→メロディー、左手→伴奏という形のものがまず出てきます。多くの曲は右手にメロディーが来ることが多いので、初歩の楽曲もそのようになっているのではないかと私は思います。
まずは右手でメロディーを弾いて、左手は全音符で1音だけという伴奏からスタートする教材が多いので、それによく慣れましょう。
右手→メロディー、左手→伴奏の形ができるようになったら逆のパターンもできるようになってくると思います。
とても個人差があることなのですが、幼稚園、保育園の小さいお子さんの場合、左手を動かすことをとても難しがるお子さんが中にはいます。
全然難しがることもなく自然に動かせる子もいれば、頑張って動かそうとしているのに脳と指の連動が思ったようにいかない子もいます。(だからと言ってそれほど気にすることはありません。これも何度も動かしていくうちに動きがスムーズになっていきます!)
この違いは何なのでしょう?
これは多分、日常生活の中で手をどのくらい使っているかの違いなのではないかなと私は思っています。小さなお子さんの場合で右利きだと日常生活でもまだそれほど左手を使って過ごしていないということがあるのかもしれません。
小さいなお子さんは指を1本ずつしっかり動かすというのはまだ難しいので、握ったり、ひらいたりという動きが主な手の動きだと思うのですが、それをどれくらいたくさんしているのかという経験値で差が出るのではないかなと考えています。
大人の場合で初めてピアノを習われる方もやはり左手の方が動かしにくいと言われることがありますが、小さな子供と違って日常生活で色んな動きを積んで経験値がありますので、子供のように難しがられている感じはありません。
いつも同じ右手ではなく、左手にもボールを握らせたり、何かを持たせたりという動きを遊びの中でさせてあげるだけでも、動かしやすさは少し変わってくるのかもしれません。
②の左手メロディーの弾き方に慣れて来たら③の両方ともが独立したパートの曲(バッハの作品など)にも挑戦できるようになると思います。
独立したパートが2つあるような作品はメロディーと伴奏とは別のスキルが必要になるので、また違った難しさがあるのですが、弾く事はできるようになります。
左利きの人は左手の方が動かしやすいのか?
様々な楽曲がありますが、右手にメロディーが来る作品の方が多いのではないかなと思います。「なぜ右手の方がメロディーを取りやすいのだろう?」と疑問に感じたことがあって、自分なりに色々考えてみたことがあります。
・音が高い方がメロディーとして聴きやすく、耳なじみがいいのかな?
・左利きの人よりも右利きの人が多いから、右手を動かすパッセージが多いのかな?
このようなことを考えていたら、「左利きの人は、ピアノを弾く時も左手の指の方が動かしやすいのだろうか?」という別の疑問が浮かんできました。
私のピアノ教室に来て下さっている生徒さんの中で左利きの子供さんがその時に3人(小学校低学年~高学年)いたので、右手と左手はどちらの指の方が動かしやすくて弾きやすいのか聞いてみました!
すると…
私が予想した、左手の指の方が動かしやすいと答えた生徒さんは1人もいませんでした(笑)
そして3人の意見は一致せず、「右手の指の方が動かしやすい」、「どちらかというと右手の指」、「どちらも変わりない」という結果でした。
利き手であるはずの左手の指と答えた子がいなかったことには驚きました!ピアノを弾くということは、それだけ日常生活とは違った手と指の動かし方なんだなと感じました。
ピアノの場合、初歩の教材は右手をメインに動かすものが多いので、左利きであっても右手の手指の方を動かすことに慣れてしまうのかもしれません。
この結果(3人にしか聞いていませんが…(笑))からピアノを弾くということは日常的な使い方とは違った少し特殊な指や手の使い方をするため、利き手はそれほど関係がないのかもしれないと思いました!
左利きの人の話を聞いているとほとんどのことは左手でするけど、習字の筆だけは右手で持つという人が多いように思います。
どうしてか聞いたところ、文字を書く時に「はね」や「はらい」が左だと難しいとのことでした。(少し調べてみると、左手で筆を持つ書き方もあるようです!右手で持つ時とは違う工夫が少し必要なようですが。)
左利きの人は右利きの人に比べると、利き手ではない方の手も比較的使っていることが多いのかもしれませんし、割と器用なのかもしれませんね。
左利きの人が、右利きの人よりも日頃から両方の手を動かして生活していたとしても、ピアノを弾く場合には全員が利き手の左手の方が動かしやすいという訳ではないようです。
右利きだから左手を動かすのは苦手だし、無理!!とは思わずに根気よく訓練して慣れていきましょうね。
全ては慣れです!!右手、左手ともものすごく速いスピードで全く同じように動かせる…とまでは行かないかもしれませんが、訓練すれば必ず同じような感覚で動かすことはできるはずです♪
初心者は何からやれば両手で弾けるようになるのか
特に小さな子供さんの場合は初めから両手で弾くというのは難しいので、まずはこのような左手と右手にメロディーを分けて弾く教本からスタートされると良いのではないかと思います。
左手と右手に分けて弾く事に慣れたら、だんだん両手にも挑戦していきましょう。
このピティナの教本は同じ曲だけど、編曲が違うAとBというバージョンが前後で入っています。Aは右手にメロディーが来ていますが、Bは左手にメロディーが来るようになっています。
右手でずっとメロディーを弾いてその弾き方にすっかり慣れてしまってから、左手がメロディーの曲を弾くと何だかいつもと違うなと思ってしまうでしょうし、難しいなと感じてしまうかもしれません。
この教本は簡単な曲で右手も左手もメロディーを弾くことができるように編曲されているので、初めの内からいろんな弾き方を学ぶことができます。そのためそこまで抵抗なく左手と右手をバランス良く動かすことができるので、かなりオススメです!!
※子供さんだけでなく、初歩の大人の方にもオススメ!音域がそれ程広くないので、指を動かすことに慣れるだけでなく、ドレミを書かなくても音を読めるように訓練することができます。
オススメなのですが…
改訂版が出るようで、今現在この曲集は楽器店で販売されていません。買いに行ったら楽器店の方にそのように言われました…。改訂版いつ出るのでしょう??なるべく早めにお願いします!待っています!!!
この曲集の良いところは緩やかにレベルアップしていくところにあります。初めは左手の伴奏がドとソのものが多く、リズムは全音符、2分音符、4分音符というものが多いです。
どんな曲もそうですが、譜読みをする時はいきなり両手で弾くのではなく、片手ずつよく練習して下さいね。音の動きがどのようになっていて、どのように指を動かせば良いのかをしっかり理解してから合わせる方が、効率よく進められますよ!!
私の場合、レッスンする時にまずは片手ずつを何度か練習させて、慣れて来たら右手パートを生徒さんに弾いてもらい、左手パートを私が弾いて、両手で弾いたらどのようになるのかを感じてもらうようにしています。その後、パートを入れ替えて弾いて、それができたら両手で1度挑戦させるという流れにしています。そこまでやってから宿題にします。
楽譜を読むことが苦ではない生徒さんや譜読みが自分でできるようになった生徒さんには、そこまで譜読みを手伝ってから宿題にするということはしませんが、まだそこまでできない生徒さんには「難しそうだけど、ちょっと頑張ればできそうだ!」というくらいまで気持ちを上げて帰れるように心がけています。
右手は指番号通りに動かせるのに左手の動きがイマイチだなと感じる場合にはピアノを弾かせるのではなく、まずは指を動かすことに集中させると良いのではないかと思います。
指を思い通りに動かすことができないのは「どの指が何番なのかをそもそも理解出来ていない」か「指番号自体は理解できているけど、指を1本ずつ動かすことに慣れていない」かのどちらかだと思います。
どちらにせよ指番号を紙に書いて机の上で指を動かす指練習をするとだんだん慣れていきますので、根気よく続けて下さい。
指番号は例えば123-321-のように書いて、それ通りに机の上で指を動かします。まずは1つの指番号を2拍ずつのばす感じでゆっくりと指を動かしていきます。止まらず動かせる速さで動かすのがポイントです。ーの横棒はのばす印です。他の指番号の倍の4拍のばすようにしてみましょう。
※これをやるときにはポイントが2つあります!
ポイント①子供と向き合うように座る。
ポイント②子供が右手を動かすときは、向かい合って座っている大人は逆の左手を動かす。
右手どうしで行うと混乱してしまうので、子供とは逆の手で必ず行って下さいね!!
まずは右手をやってみて、次は左手。それができたら両手でもやってみましょう。難易度が上がってくると両手が意外と難しくなってくるんですよ(笑)
ゆっくり動かすことができたら、少しずつテンポアップするのもいいですね!ただし速くなったり、遅くなったりしないで、一定の速さを保って下さいね。
順番に動かすのは簡単なので1つとばしで動かしたり、ランダムに動かしたりと難易度を上げていくと良い訓練になります。リズムも2分音符、4分音符だけではなく、8分音符、16分音符と徐々に速い音符も入れていくと指と頭の体操になります!
片手ずつは上手に弾けるのに両手になると思ったようにどうしても弾けなくて、両手で弾くことをとても嫌がる生徒さんがいたのですが、その生徒さんにこの方法を試してみると、両手で弾く事に抵抗感をそれ程感じなくなったのか、両手で弾くことを以前のように嫌がらなくなりました。
両手で弾きたいのに上手く弾けないというもどかしさが本人にとてもあったようで、両手でスムーズに弾けたときは、「弾けた!弾けた!!」と大喜びでした♪
この指練習をするときにはピアノを弾かないようにして下さい。音程をつけて歌うのはOKなのですが、鍵盤を弾いてしまうと右手の1番がドというように覚えてしまう子が出て来てしまいますので…。
右手の1番をド(ハ長調)にするのではなく、いろんな位置から弾き始めるのもアリなのですが、#や♭がつくと弾きにくいと感じさせてしまうかもしれません。指を動かすことに慣れさせるための練習というつもりで考えているので私は机の上で動かすだけにしています。
もちろん調性を養うという練習のために指番号を使うのであれば、鍵盤を弾かせるのはとても良いと思います♪
このような感じで少しずつ指を動かすことに慣れさせて、両手がそれぞれ違う動きをしても弾けるように徐々に訓練していきます。
初歩の場合は教材選びも重要なポイントだと私は思っています。小さなお子さんの場合は特に個人差があるので、ちゃんと理解できているか見極めながら進んでいくことがとても大切です。
今回は両手で弾けるようになるまでの流れや教材について書いてみましたが、いかがだったでしょうか?
小さなお子さんの場合はいっぺんに両手では弾けるようにはなりません。焦らずに徐々に徐々にレベルアップして、嫌にならないように進めることが大切だと私は思います。根気強くゆっくり丁寧に進めて行って下さいね!
まとめ
◆初歩の教材は右手が旋律で左手が伴奏のものが多い◆左手を動かすのが難しいようだったら、指番号を書いて机の上で指を動かす練習をすると良い
◆片手ずつがしっかり理解して弾けていないと両手で弾くのは難しい