クラシック音楽の弦楽器というと、あなたは何を思い浮かべますか?
きっと多くの方がバイオリンを想像したのではないでしょうか。
そう、バイオリンは弦楽器の代表的存在ですね!

では、ビオラという弦楽器はご存知でしょうか?
バイオリンほど有名ではないけれど、バイオリンによく似た楽器です。

今回はバイオリンとビオラ両方でアマチュア演奏経験がある私が、その違いをご説明します!
コンサートでバイオリンとビオラの違いがわからず恥をかいてしまった、なんてことがないように、2つの楽器についてしっかりと覚えていってくださいね!

大きさの違い

ビオラって、膝の間に挟んで演奏するやつでしょ?と思ったそこのあなた!
違います、それはチェロです!
バイオリンを弾くときもビオラを弾くときも、実は同じ構え方をします。
左肩に楽器を乗せて、右手で弓を持つというスタイルですね。

では違いは何かというと、ずばり、大きさと音程です。
バイオリンは小さくて音が高く、ビオラは大きくて音が低めです。
実際の大きさは、バイオリンは全長約60cm、それより一回り大きいビオラは約70cmです。
重さも、バイオリンは0.5kgなのに対してビオラは0.6kgと、ビオラの方が100gほど重いです。


とは言っても、これは遠くからだと見た目で判断しにくいと思います。
例えば小柄な人がバイオリンを持っていればビオラのように見えますし、大柄な人がビオラを持っているとバイオリンに見えます。

ですので、オーケストラのコンサートを聴きに行ったときに、バイオリンパートとビオラパートの見分けがつきにくい、なんてこともあるかもしれません。
でも演奏での役割にはちゃんと違いがあるので、後ほどご紹介しますね。

音程の違い

バイオリンとビオラは大きさだけでなく音程も違うと先ほどお伝えしました。

具体的には、バイオリンの弦は低い方から「ソ・レ・ラ・ミ」となっています。
一方ビオラの弦は「ド・ソ・レ・ラ」です。

ソ・レ・ラは両方に共通していますが、バイオリンには「低いド」の弦がなくて、ビオラには「高いミ」の弦がありません。
「高いミ」の弦はとても細いので、ビオラのような大きい楽器に張ろうとしたら切れてしまいます。
反対に「低いド」の弦は長くて太く、バイオリンほどの小ささの楽器に張ってもよく響いてくれません。

また、ちょっと専門的な言い方をすると、ビオラはバイオリンよりも5度低い調弦になっています。
「度」というのは音の距離の単位で、例えばドとレの距離は2度、ドとミの距離は3度という数え方をします。

さきほど挙げた音すべてを低い方から並べると ド・ソ・レ・ラ・ミ ですよね。
ドとソ、ソとレ、レとラ… それぞれ隣り合った音が5度の距離にあることに気づきましたか?
だから、音が低い左側から4つの音を取り出すと「ド・ソ・レ・ラ」というビオラの調弦になり、音が高い方から4つの音を取り出すと「ソ・レ・ラ・ミ」というバイオリンの調弦になるんです。

だからビオラとバイオリンの調弦は、弦1本分違うと同時に、それは5度違うという意味もあるのです。

ちなみにチェロの調弦はビオラと同じ「ド・ソ・レ・ラ」ですが、ビオラの方が1オクターブ高くなっています。
オクターブとは8度のことで、例えば「ドレミファソラシド」の最初の「ド」から最後の「ド」までの音の距離のことです。
楽器や音楽って意外とこういう法則に基づいていることが多いんですよ〜

ちょっと今の話は難しかったかもしれませんが、簡単に言うとバイオリンは高音域、ビオラは中低音域を担当しているんですね!

そして、弓にも違いがあります。
バイオリンとビオラの弓の長さだけを比べると、ビオラの方が若干長く見えますがあまり変わりません。
でも、重さはビオラの弓の方があります。
それは「低いド」の太い弦をはっきりと鳴らすのにそれなりの重さが必要だからなんです。

実は楽譜もかなり違います。
バイオリンの楽譜はすべてこのト音記号で書かれています。


でもビオラの楽譜を見ると、だいたいこちらのハ音記号です


ハ音記号は、あまり知られていませんが、高音域のト音記号と低音域のヘ音記号の間の、中低音域を楽譜に起こすのに適している記号です。

ちなみに、ヘ音記号とは、チェロやピアノの下段の楽譜に使われているこの記号のことですよ。


でも、ビオラでも高音域の部分だけはバイオリンと同じト音記号で書かれます。
高い音をハ音記号のまま書こうとすると、五線譜から上に何段も飛び出さなければならず、ぱっと見てわかりにくいのでト音記号に書き換えているんですね。

ビオラ奏者は元バイオリン奏者?


バイオリン奏者のことをバイオリニスト、ビオラ奏者をビオリストといいます。
よく、有名なバイオリニストは物心ついたときからバイオリンを持たされて、ハイレベルな音楽教育を受けてきたようなイメージがありませんか?
でも、あのビオリストは3歳でビオラを始めた、というような話はほとんど聞きません。
なぜでしょうか?

答えは、そんなに小さいビオラは存在せず、ソロ楽器としての需要が低いからです!

小さいビオラは存在しない

まず、バイオリンは、大人が普通使っているサイズを4/4(よんぶんのよん)サイズといいます。
どんなに手が長い奏者がいたとしても、バイオリンにそれ以上のサイズはありません。
反対に、手や指がまだ届かない子供のために、3/4、1/2、1/4、1/8、1/10、1/16という小さめの「分数楽器」があります。

小さい頃から習っている人は、成長に合わせて買い換えたりしていると思います。
1/16サイズなんておもちゃみたいに小さくてかわいいですよ!


でも、ビオラは形も構え方もバイオリンと同じなので、小さくすると、サイズの面で言えばそれはバイオリンだということになってしまいます。
ビオラは、バイオリンの4/4サイズよりも大きいものなので、1/2サイズなどは存在しないんです。

ビオラのサイズは、分数ではなく、本体のひょうたん型の部分の長さをとってセンチメートルかインチで表します。だいたい39.5~42.0cm、15.5~16.5インチが一般的です。
バイオリンは35.5cm、14.0インチですので、ビオラは一回り大きいということがわかると思います。

では、小さい頃から練習できないのに一体どうやってビオリストになるのでしょうか?

実は、プロのビオラ奏者の多くは最初にバイオリンを習って、体が成長したのちに何かのきっかけでビオラに転向しています。
構え方が同じで、弦も4本中3本が同じなので比較的転向しやすいんです。

また、両方弾けるようになっておいて、声がかかったときだけオーケストラのビオラパートに加わるという人もいます。このように普段はバイオリン奏者の人がビオラに持ち替えることを「持ち替え」といいます。

ちなみに、私はアマチュアですが11歳のときにバイオリン4/4サイズを持てるくらいの身長があり、先生に「あなたは手が大きいからビオラをやってみたら」と勧められ、バイオリンと並行してビオラを習い始めました。
が、ビオラを構えた時に左手が届かず、最初の1年間はバイオリンにビオラの弦を張ってレッスンを受けていました。

背が伸びてからはちゃんとビオラにビオラの弦を張ったものを使うようになりましたよ〜

ビオラはあまり主役にならない

ビオラというのはオーケストラやアンサンブルで、バイオリンなどの高音とチェロなどの低音の間の音域を埋める役割を担っていて、主旋律ではなくリズムをきざんだり、裏メロを担当することがほとんどです。
このように合奏での必要度が高い楽器なので、ソロの曲は少ないんです。

それに、ビオラ特有の「低いド」の弦をしっかり鳴らすには、バイオリンとは違う力のかけ方を身につけなければなりません。
これは子供にはまだ難しいですし、それなら音を鳴らしやすいバイオリンを練習しておいた方が成長も早いでしょう。後から転向するのはいくらでも可能ですしね。
だから、ビオラを小さい頃からやる必要はないのです。

オーケストラでの役割


ここからはバイオリンとビオラの演奏上の違いについて、オーケストラの場合を例にご説明したいと思います!

バイオリンは言うまでもなく花形、主役の一人です。
主要なメロディをいつも担当します。
優雅な旋律や勇ましい旋律も弾きますし、有名な曲の有名なメロディというのはだいたいバイオリンのパートです。おいしいところを持っていくのがバイオリンなんですね!

楽器が比較的小さいので、速いパッセージに指が追いつきやすく、重音も取りやすいという利点を生かしているとも言えます。

一方、ビオラはどちらかというと裏方や隠し味的な存在です。
目に見える活躍は少ないけれど、絶対に欠かすことはできません。

楽器が大きいので大きさ・重さの面でバイオリンよりも不自由度が高いですが、縁の下の力持ちとしてオーケストラ全体を支えています。
時々、渋くてかっこいいメロディを弾いているときもあるので、ぜひ注目してみてくださいね!

人間は、高い音の方が耳に入ってきやすいと言われています。
ですのでバイオリンの音は、オーケストラに演奏者がたくさんいる中からでも突き抜けて聞こえてきて注目しやすい、メロディが追いやすいのだと思います。

でも、ビオラは人の声ほどの音域なのでも埋もれやすいのかもしれません。
作曲家も、そういう楽器の違いを踏まえてメロディを振り分けています。



このスメタナ作曲 交響詩『わが祖国』より「モルダウ」という、ブルタバ川の流れを描いた曲が良い例でしょう。
最初の部分でバイオリンがピチカート(弦を指で弾く奏法)でしずくが垂れるような音を表現しています。ビオラにはない「高いミ」の弦を使っていますね。

途中からビオラがチェロと一緒に中低音で伴奏パートを奏で、バイオリンがそれに乗っかる形であの哀愁漂う雰囲気の有名なメロディをゆったりと弾き始めます。この部分はいつ聴いてもうっとりしてしまいますね!

でもビオラにその有名なメロディは回ってこず、ずっとメロディの後ろで川のうねりを表現するような複雑な伴奏を弾いています。全然注目されない部分ですが、ビオラがそれを弾いていなかったら物足りない音楽になってしまうでしょう。やっぱりビオラも必要なんですね!

まとめ


以上のバイオリンとビオラの違いをまとめると…

1. 見た目は似ているがバイオリンは小さく、ビオラは大きい
2. バイオリンは高音域、ビオラは中低音域を担当
3. ビオラ奏者はバイオリンから転向した人が多い
4. オーケストラではバイオリンは花形、ビオラは縁の下の力持ち

似ているようでサイズや役割に結構違いがあるんですね。
コンサートに行ったり弦楽器を見たりする機会があれば、ぜひその違いを実感してみてくださいね!