音楽療法を知る上で、気になることの一つがその歴史です。
日本ではまだまだ知られていない音楽療法ですが、発祥の地はどこなのでしょうか?
日本での現状とともに、簡単にご紹介したいと思います。
古くは神の時代から
音楽を使って治療を行うという考え方は、古くは神様の時代から始まっています。
ギリシャ神話に登場するオルペウスという神様は、竪琴を演奏し、それによって病気を治療したといわれています。
また、古代ギリシャの哲学者であるアリストテレスは、カタルシス効果を書き残したそうですが、これは、音楽には情緒を発散させる力があるとの考え方で、現代の音楽療法にも活かされている理論です。
情動障害のような神経性の障害に対して、音楽を、とくに和音(ハーモニー)を処方したアスクレピオスという医師もいます。
その後も、音楽は医師によって予防薬のように処方されていました。
様々な薬や治療法が確立されている現代よりも、大昔の方が、人は音楽の力を実感し、多くの症状に対して音楽を用いてきたようです。
現代の音楽療法の始まりは?
ご存じのように、現代では医師が音楽を処方することはありません。
音楽療法士の資格を持つ医師でさえ、音楽を処方するという表現をすることはないでしょう。
では、現代のような音楽療法はどこで、どのように始まったのでしょうか?
音楽がもたらす効果というのは、古代から現代に至るまで、多くの人によって研究されてきました。
それが、特に第二次世界大戦後のアメリカで、盛んに利用されるようになったそうです。
第二次世界大戦後のアメリカには負傷兵士がたくさんいました。
身体に傷を負った人はもちろんのこと、心にも傷を負ってしまっている人はたくさんいて、その治療のために、米軍当局が音楽療法を試みて、成功を収めたのだそうです。
その後、自閉症や統合失調症と呼ばれるようになった精神分裂病、精神薄弱児、身体障害者などに対しても音楽療法は行われるようになっていきました。
1940年代から、大学での音楽療法士の養成がはじまり、1950年には、全米音楽療法協会が誕生しました。
現在でも、アメリカの音楽療法は盛んで、施設や精神病院、ターミナルケアにと、いろいろなシーンで取り入れられています。
日本での現状
日本では、2017年に105歳で亡くなられた、日野原重明先生などが音楽療法に関する研究を行ってきました。ただ、音楽療法が盛んな諸外国ほど、音楽療法の効果が認められていたり、音楽療法士の資格が確立していたりするわけではありません。
一部の限られた病院や福祉施設、または一般企業でも音楽療法士を雇用しているところもありますが、まだまだ数は少なく、音楽療法士に出会い音楽療法を受けられる場所は多くないのが現状です。
また、音楽療法士の技術力についても、問題があります。
日本には2001年に日本音楽療法学会が設立されています。
日本音楽療法学会は音楽療法の啓発・普及活動や、音楽療法士の認定を行っている日本最大の機関ですが、この機関に認められた資格を持っているからといって、特別に何かが行えるということはありません。
大学や専門学校で音楽療法を学ぶことはできますが、日本音楽療法学会という機関が認定している養成校となると全国に18校しかありません。
日本音楽療法学会に認められた資格を持っていなくても音楽療法士を名乗ることはできますし、音楽療法を専門に学んでいなくても、音楽療法を行うことができるのです。
そんな状況ですので、日本で行われる音楽療法は技術力などがバラバラであり、結果、その効果についてもばらつきがあるといわざるを得ない状態です。
音楽療法の効果を期待したのに、効果があまり感じられなかったら残念に思えますよね。
そうならないように、将来的には音楽療法士を国家資格とし、一定レベル以上の技術を持った人でなければ音楽療法士を名乗ることができず、音楽療法を行えないようにしようとしているのが、今の日本での音楽療法の流れです。
とはいっても、法律を変えるのはなかなか難しいことですので、音楽療法士が国家資格になるにはまだ時間がかかりそうです。
それまでの間は、音楽療法士が個々のレベルをあげて、音楽療法の効果を世間に広めていく活動を地道に続けていくことが大切です。
まとめ
1.古代、音楽は薬を処方するように、医師によって処方されるようなものでした。2.現代のような音楽療法の発祥は、第二次世界大戦後のアメリカで、その後、様々な症状に対して音楽療法はその効果を発揮してきました。
3.日本での音楽療法は、いつでもどこでも一定レベル以上のものが受けられるというわけではなく、今後それを目指していく段階です。
日本で音楽療法を受けるということが一般的になるのは、もう少し先になるかもしれません。
でも、その人気が高まれば、音楽療法士の人数も増え、資格についての制度も整っていくでしょう。
そうなっていくのが楽しみですね。