オーケストラというと、あなたはどんな楽器を想像しますか?

「オーケストラのコンサートに行っても木管と金管の違いがわからない…」という方や、「趣味でオーケストラ(管弦楽)を始めたけど、そもそもオーケストラの楽器や編成のことをまだあんまり知らないかも…」という方、いるんじゃないでしょうか?

大丈夫です!
私も10年前にアマチュアのオーケストラでバイオリンを始めて、最初はオーケストラのことが全然わかりませんでした。
でも今は、演奏会を聴きに行ったとき友人に説明できるくらい色々知ってます!

今回はそんな私が、オーケストラの楽器と編成について解説します。
わかれば意外と簡単なので、ぜひこの機会に覚えていってくださいね!


■ 目次

オーケストラの楽器たち

まずはオーケストラにいる弦楽器・木管楽器・金管楽器・打楽器を紹介します。

弦楽器:第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス


これらの弦楽器は、木でできた楽器に弦を張って、弓の毛でこすって音を出します。
時々、弦を指ではじく「ピチカート」という奏法や、弓の木の部分で弦を叩く「コルレーニョ」という奏法で演奏することもありますよ。

さて、オーケストラの弦楽器は基本的に「弦五部」といって、上記のように5パートに分かれています。
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの順にサイズが大きく、音域が低くなっています。

ちょっと「あれっ?」と思いませんでしたか?
そう、ヴァイオリンが2パートに分かれていますね。

第1ヴァイオリンは、高い音で華やかなメロディーラインを弾く、オーケストラの主役です。
一方第2ヴァイオリンは、第1ヴァイオリンやヴィオラとハモったり、合いの手を入れたり、どちらかというと伴奏を担当する、奥が深いパートです。
ファーストヴァイオリン、セカンドヴァイオリンと呼ぶこともありますよ。

木管楽器:フルート、ピッコロ、クラリネット、バスクラリネット、オーボエ、コールアングレ(イングリッシュ・ホルン)、ファゴット、コントラファゴット


木管楽器はかつては木製だったことからこのように呼ばれます。

オーケストラの木管楽器は基本的に、フルート、クラリネット、オーボエ、ファゴットの4種類に分けられますが、上に挙げたそれ以外の楽器は、4つの主な楽器の奏者が持ち替えて吹くことが可能な、いわば仲間の楽器です。
この仲間は「属」という言葉でまとめられます。

ピッコロはフルート属で、フルートより高い音が出せます。
他の3つもそれぞれの仲間の楽器に属していて、バスクラリネットはクラリネットより、コールアングレはオーボエより、コントラファゴットはファゴットよりも低い音が出ます。
これは音域に幅をもたせる効果があります!

こうした仲間の楽器たちは、奏者が曲中に持ち替えることもありますし、1奏者1楽器じゃないといけないときもあります。

例えばフルートとピッコロ両方が登場する曲だとしても、フルートとピッコロが同時に出てこなければ奏者は1人で済みますよね。でもフルートとピッコロが同時に使われている曲では、それぞれに奏者が必要になるんです。

では、これらの木管楽器はどうやって音を出しているのでしょうか?
実は仕組みがフルート属とそれ以外の3つの属で少し違います。

フルート属は、エアリードと呼ばれる空気の流れを息で作り、それをマウスピースのふちに当てて音を出します。

一方、クラリネット属、オーボエ属、ファゴット属は、植物の茎でできたリードを振動させて音を出します。
クラリネットはシングルリードといってリードは1枚ですが、オーボエとファゴットはダブルリードといって2枚のリードを使っています。

同じ木管楽器同士でもこんな違いがあるんですね!

金管楽器:ホルン、トランペット、トロンボーン、バストロンボーン、チューバ


金管楽器は華やかで力強い音色が特徴です!見た目も綺麗ですよね!
これらの楽器は、マウスピースに口を当て、唇を振動させることで音が出ます。

ここではトロンボーンだけでなくバストロンボーンを挙げましたが、これはトロンボーンより管が太く、ベルが大きく、トロンボーン属の最低音域を担当する楽器です。

実は、トロンボーン(バストロンボーン含む)とチューバは現在のオーケストラが形成される過程で加わった楽器たちなので、古典派の時代(18世紀後半〜19世紀初頭)、またそれ以前の曲には登場しないことがほとんどです。

例えば、ベートーヴェンの『交響曲第3番「英雄」』で使われている金管楽器はトランペットとホルンだけです。
でもオーケストラが発展したロマン派(19世紀)以降は、トロンボーンとチューバも大迫力の演奏会には欠かせない立役者となっていきます。

打楽器:ティンパニ、大太鼓、シンバル、スネアドラム、トライアングル、グロッケン、ゴング(銅鑼)、ウィンド・チャイム…etc.


打楽器は、打つ、振る、こするなどの方法で音を出す楽器たちのことです。パーカッションとも言います。

オーケストラでは、曲によって登場する楽器は様々ですが、一番多いのはティンパニですね。
失礼な例えかもしれませんが、コーヒーカップに足を生やしたような形の太鼓が2~4台並んでいるやつです。どれのことか、もうおわかりですね?

打楽器奏者は、そういった叩くだけの楽器だけでなく、グロッケンシュピールやシロフォンといった鍵盤のある楽器も、タンブリンやトライアングルといった手で持つ楽器も演奏できなければなりません。

また、バチのことをマレットといいますが、マレットの使い方や種類にも通じていないといけません。
マルチに活躍できる器用さが求められる分、すごくやりがいがありそうですね!


さて、ここまで色々な楽器を見てきましたが、曲によっては例外的にその他の楽器が加わることもあります。
例えば、木管楽器のサクソフォーン、金管楽器のユーフォニウム、コルネット、その他にハープ、ピアノ、チェンバロ、チェレスタ、オルガンなどです。

それは、作曲家が「この楽器の音がこの情景をより良く表現できる」とか「この楽器を取り入れてみよう」と思って楽譜に書いたからだったりします。


近現代の作品では、もともとオーケストラにはいなかった民族楽器なども、そのような例外的なゲスト楽器として使われるようになりました。

それだけでなく、なんとタイプライターや卓球など、楽器以外のものを使った曲もあります!一体どんなものなのか、興味のある方は調べてみてくださいね(笑)

オーケストラの編成の種類

オーケストラの編成、つまりパートごとの人数には決まりがあります。
その基準は、木管楽器の数なんです!
どういうこと?と思った方もいると思うので、今からご説明しますね。

編成とは

オーケストラの編成とは、その曲に必要なパートや楽器の構成のことです。
曲によって違うので、編成を知るにはその曲のスコアを見なければなりません(もちろん今はネットで調べればわかりますが、原典はスコアです。)

スコアとは、作曲家がオーケストラ曲を作曲するときに書く総譜のことですよ。
指揮者が演奏会のときにめくっている大きな本がそれです。
ちなみに各パートが持っている楽譜は、スコアから書き起こされたパート譜です。


さて、スコアの最初のページの左端を見ると、何か単語が並んでいます。
その段がどのパートの担当なのかが書いてあるんですね!

それを読むと、例えば「クラリネットの段には音符が2つずつ書いてある、クラリネットは2パートに分かれている、つまりクラリネット奏者が2人必要だ」と解釈できます。

その曲の楽譜に書いてあるすべての音を実演しなければその曲になりませんから、演奏するとなったら、すべてのパートの奏者をちょうどいい人数ずつ揃えることになります。これが、編成です。

ですので、例えばアマチュアオーケストラで「この曲をやりたい!」と言っても、編成によっては人数や楽器の問題でできないことがあります。

私が以前そういう曲を選曲会議で提案したら「うちの団はラチェットなんて打楽器は所有していないし、外部から借りられるあてもないので残念ですが今回この曲はできません」と却下されてしまいました。
編成がすべてを左右するということがおわかりいただけたと思います…(笑)

○管編成という呼び方


実は、木管楽器は各楽器が同じ数ずついることがほとんどです。
古典派の時代の管楽合奏において同じ管楽器が2本ずつ使われていたことが影響してこのような形になったのではないか、と言われています。

これが音量のバランスを考えるときに便利だ、ということで、弦楽器の編成も木管の人数を基準にするようになっています。

金管楽器は曲想によって本数が変わるので、一概に、木管が2本なら金管は何本、などという法則はないようです。
木管よりも音量があるので、数が少ないという心配はないでしょうしね!

現在では、木管が1本ずつなら「一管編成」、2本ずつなら「二管編成」、…というふうに「○
管編成」という呼び方をします。

この編成ごとの楽器数を、わかりやすく表に整理してみました!
ただし、あくまでこういう曲が多く標準的なだけですので、絶対にこの人数だ!というわけではないことだけご了承くださいね。

一管編成二管編成三管編成四管編成
木管楽器フルート1223
ピッコロ--0~11
オーボエ1223
コールアングレ--11
クラリネット1223
バスクラリネット--0~11
ファゴット1223
コントラファゴット--11
金管楽器ホルン22~44~66~8
トランペット1234
トロンボーン0~1333~4
チューバ-111~2
打楽器ティンパニ-111
その他の打楽器-数人数人数人
弦楽器第一ヴァイオリン8101416
第二ヴァイオリン681214
ヴィオラ461012
チェロ44810
コントラバス2468
合計人数約30人約50人約75人約100人


弦楽五部の編成

木管楽器の数に基づいて、弦楽器の人数も決まります。

スコアを見ると、弦楽器は確かに5つに分かれていますが、人数までは書かれていないことが多いですね。
絶対的な音量が管楽器・打楽器よりも小さいので、そもそも複数人で1つのパートを弾くことが前提になっているんです。
それなら木管の音量を基準に決めた方が合理的ですね!

ちなみに、弦楽器は2人で1つの譜面台を使います。
譜面台のことをドイツ語でプルトといい、その譜面台を使っている2人1組のこともプルトと呼びます。ですので、10人いたら5プルトいる、ということになります。


オーケストラの弦楽五部は、同じ形をしているけどサイズが違う楽器の集まりです。

サイズが大きければ大きいほど、出せる音量もより大きくなりますよね?反対に、楽器が小さかったら音量も小さくなります。

でもメロディーをよく担当するのは、そう、一番小さいヴァイオリンです!
ヴァイオリンのメロディーが聞こえないと困りますね…。そこで、第一ヴァイオリンの人数は弦楽五部の中で一番多くすることになっています。これなら安心です!

第一ヴァイオリンだけ?第二ヴァイオリンは?と思った方、いいところに気がつきましたね!

第二ヴァイオリンも確かに第一ヴァイオリンと同じでサイズは小さいですが、伴奏部分が多いので、同じ人数にすると第一ヴァイオリンが目立ちにくくなってしまいます。
だから1プルト分(つまり2人分)少ない人数になっているんです。

それ以下はヴィオラ、チェロ、コントラバスという順で楽器のサイズが大きくなるので、それぞれだいたい1プルトずつ減らした人数構成になります。

というわけで、基準となる第一ヴァイオリンの人数をとって、弦楽五部の編成を「10型」「8型」などと呼びます。
10型なら第一ヴァイオリンが10人、第二ヴァイオリンが8人、ヴィオラが6人…といった具合です。

私が入っていた学生オーケストラでは、演奏曲が決まると弦楽器のパートリーダーたちが「今回は14型にするからエキストラさんを2人呼ぼう」といった会話をしていました。
団員の人数が足りないパートは、OB・OGやプロの方にエキストラ出演をお願いしなければならないからなんです。

オーケストラで弦楽器をやっている人はこの「型」を知っておいた方がいいですよ!

時代と編成の関係


ここまでで、オーケストラ曲ではそれぞれの木管楽器の数は一緒で、弦楽器もそれに基づいて人数を決めている、ということがわかりましたね!

実は、時代の流れと編成の巨大化は比例している部分があります。
ここからは編成ごとの詳しい解説をしていくので、時代の流れにも注目しながら一緒に追っていきましょう。


まず一つ目、一管編成は珍しい編成です。
17世紀のバロック音楽はこのくらいのシンプルな編成だったと言われています。弦楽五部、木管4本、ホルン、トランペットという、室内楽的な小規模の合奏形態ですね。

のちに書かれた、ロマン派のワーグナーの『ジークフリート牧歌』や、近現代音楽の代表的な作曲家シェーンベルクの『交響曲第1番』もほぼ一管編成と言えます。
正確にはこれらは管弦楽ではなく室内管弦楽に位置付けられるという説もあります。


二管編成は、18世紀後半の古典派後期〜19世紀のロマン派、つまりハイドンやモーツァルトからベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ドヴォルザークあたりの時代の曲に見られる編成です。

この当時は楽器も編成も過渡期を迎えていました。

まず、古典派の時代は金管楽器やティンパニが現在のもののように改良される以前だったため、その楽器にはどうしても出せない音、というものがありました。
そのせいで当時はまだ活躍の機会に十分恵まれていませんでした…。

でも、楽器改良が進むにつれて、作曲家たちも「このメロディーをトランペットに吹かせたい!」といった構想を徐々に実現できるようになります。

また、18世紀後半の市民革命後、王侯貴族は落ちぶれ市民が台頭します。

作曲家は宮廷ではなく大衆が集まるホールでの演奏用にスケールの大きい曲を書くようになりました。
革命の影響を受けて自分の発想を曲に反映させる作曲家も多くなり、ドラマチックな曲や複雑な曲が増えました。
こうした音量や複雑さを求める過程で、彼らはそれまでより多い管数を指定するようになっていったのです!


三管編成は、そういったロマン派以降、つまりシューベルト(後期の作品)、ベルリオーズ、ブラームス、チャイコフスキー、ブルックナー、マーラー、ショスタコーヴィチなどの曲に見られる編成です。

この時代は、ハープを2台もつけたり、管弦楽と声楽(コーラス)と合体させたり、色々な試みが行われました。

また、表には書きませんでしたが、このころ「倍管(ばいかん)」という編成が考案されます。
その曲のもとの編成と比べて、弦楽器は1プルト多く、木管楽器は2倍の人数になります。

コンサートホールが大きいとか弦楽器が多いという理由で、木管楽器にももっと音量を出させよう、と考えたんですね。でも、もちろんソロの部分は1人で演奏しますよ!


上記の二菅・三管編成は現在でもよく見られる編成です。
でも、それ以上、つまり四管〜九管編成の編成はそんなにポピュラーではありません。
100人以上の人数が必要なので、人数を集めるだけでも大変ですし、その人数が乗れるくらい大きな舞台も用意しなければなりませんからね。

そういった曲を書いたのはベルリオーズ、ワーグナー、マーラー、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチ、リヒャルト・シュトラウスなどです。
時代的にはロマン派以降ですね。

こういう作品はあまり演奏されず生で聴ける機会が少ないので、もしコンサートに行くチャンスがあれば逃したくないものです!


まとめ


1. オーケストラの楽器たち
(1)弦楽器は第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの五部構成。
(2)木管楽器はフルート、クラリネット、オーボエ、ファゴットのほか、ピッコロ、バスクラリネット、コールアングレ、コントラファゴットが登場することもある。
(3)金管楽器は、ホルン、トランペット、トロンボーン、バストロンボーン、チューバ。
(4)打楽器はティンパニがよく出てくる。その他は、大太鼓、シンバル、スネアドラム、トライアングル、グロッケンシュピールなど。

2. オーケストラの編成の種類
(1)編成とは、その曲に必要なパートと楽器の構成のこと。
(2)オーケストラ全体の編成は、木管の本数を基準に「二管編成」「三管編成」などという。
(3)弦楽五部の編成は第一ヴァイオリンの人数によって「10型」などの呼び方をする。
(4)オーケストラの編成は時代とともに大きくなっていった。


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