ヴァイオリン初心者いちばんの難関はなんといってもチューニングですよね?はい、はっきり言ってチャレンジです。ヴァイオリン教室に行く人はしばらくの間は先生にチューニングしてもらうものなんです。それをはじめから自分でやろうっていうんですから、たいへんですよ。
はじめから脅かしてしまってなんですが、それくらいヴァイオリンのチューニングは難しいです。とは言っても、一人でもできるやり方と、やり方のコツがありますので、みていきましょう。
■ 目次
毎回チューニングするのはなぜ?
ヴァイオリンのチューニングは毎回、弾くたびにします。練習の途中いったん楽器を置いて休憩して、また弾き始める時にもチューニングから始めるくらいしょっちゅうします。なぜでしょうか?ヴァイオリンの弦はこちら側と向こう側の両端から引っ張られてペグの部分の摩擦力でとまっているだけです。なので、時間がたつと自然に緩んでしまいます。弦そのものも伸びます。特に新しい弦を張ったときは2、3日伸びつづけます。
それにヴァイオリンは木でできているので、温度や湿度によって膨張、収縮します。
ヴァイオリンが膨張すると、その結果として弦はより引っ張られますから音が高くなります。逆に収縮すると弦が縮んで低くなるわけです。
~ちょっとおまけ~
グアムで弾いたときは大変でした。本番演奏中にも音がどんどん上がってくるのが分かるほどで、曲の途中で止まるわけにもいかず、音を少し低めにとるようにしてなんとか乗り切りました。ヴァイオリンは生きてるな、と思う瞬間ですね。
耳が大事
ピアノを弾く人、他の楽器を長年弾いてきた人、子供の頃からソルフェージュをやってきた人などは、普段から「聞く力」を訓練しています。訓練なしで、初めてヴァイオリンを弾く、という人はチューニングをすることで耳のいい訓練になりますから、一石二鳥ですよ。
チューニングするときの楽器の扱い方
どのやり方でチューニングをするとしても、共通して注意しなければならない楽器の扱い方を説明します。- 楽器を膝の上に置いて指で弦をはじきながらするチューニングは、弦を新しく張り替えるときと、ペグがなにかのはずみで完全に緩んでしまって大きな調整が必要な時だけです。弓で音を出さないときちんとしたチューニングはできません。
- チューニングは、弾きながら、音を出しながらペグを回してします。ペグを動かして、それから音を出してみて、と交互にやっていたのではチューニングはできません。
- ペグを回すときは必ず、ペグと反対側を他の空いている指で支えるようにします。ペグだけをそのまま回そうとすると、強い力がかかってペグを急に大きく回してしまうことがあり、細かい調整ができないだけでなく弦を切ってしまうこともあるからです。
- ペグを回すときはいったん少し緩めてから締めてみると、回しやすいし、弦も切れにくくなります。
- ペグは回しながら奥に押し込むようにすると止まりやすくなります。
- E線のペグを回すのは、大きくずれている時とアジャスターがどちらかに回りすぎている時だけで、普段はアジャスターでチューニングします。アジャスターはいつも真ん中あたりにくるようにすると扱いやすいですよ。
- 弦が切れたとき顔に当たらないように、顔をあまり近づけすぎないように気を付けてくださいね。
- めったに起こることではないですが、もし全部の弦が緩んでしまっている時はペグを回すたびに駒がネック方向に倒れるので、駒を起こしながら回します。駒が倒れると面倒なので注意してくださいね。
チューニングをするための道具類
ヴァイオリンのチューニングに使える道具はいろいろあります。- チューナー
- チューニングアプリ
- 音叉(チューニングフォーク)
- ピアノ、エレクトリックピアノ、キーボードなどの鍵盤楽器
チューナーについて
チューナーにはこんな種類があります。クリップ式は譜面台に挟んで使えます。
メトロノーム機能も付いているYAMAHAのチューナー
では、まずチューナーを使って弦を一本ずつチューニングしてみましょう。
チューナーでチューニング
- チューナーを、A-440Hzから442Hzにセットします。
- A線のペグを少しこちら側に回して緩めます。
- 弓でA線を弾きながら、チューナーの針が真上にくるようにペグを回し調整します。針が左よりなら低すぎ、右よりなら高すぎです。
- つぎにD線も同じようにまずペグを少し緩めてから、チューニングします。
- そしてG線も同様にチューニングします。
- E線は弦を緩めず、アジャスターを使ってチューニングします。左に回すと低く、右に回すと高くなります。
- すべて終えたら、もう一度A、D、G、Eの順に確認して、必要ならチューニングし直します。
☆コツ☆
一本ずつ確実にチューニングします。6をするのは、弦のどれかをチューニングしている間に他の3本の弦も微妙に動いてしまうことがあるからです。全部終わったら試しにAとD、DとG、AとEのように二本ずつ同時に弾いて響きをよく聞いてください。
この方法なら、耳に自信がなくても、チューナーの針を見ることで正しい音程がわかります。これを繰り返していくとそのうち耳が慣れてきて、それぞれの音を聞き分けられ、完全5度の和音が分かるようになりますよ。
~ちょっとおまけ~
周波数はA-440Hzから442Hzの間に合わせるのが標準です。最近はより華やかに聞こえる442Hzのほうが好まれるようです。オーケストラの中には444Hzくらいまで高く合わせるところもあります。聞こえ方がずいぶん違うのでチューナーの設定を変えて聴き比べしてみると面白いですよ。
チューニングアプリでチューニング
基本的にチューナーと同じ使い方ができます。ヴァイオリン用のアプリのいいところは、ヴァイオリンの電子音をだしてくれることですね。他の音や楽器の音ではヴァイオリンの音と音色が違うので、純粋に音程をとるのが難しい、と思う初心者の人にはぴったりだと思います。他に何もないときのピンチヒッターとしてもいいかもしれませんね。一弦ずつのチューニングに慣れてきたら、ヴァイオリニストがふつうにやるチューニングをやってみましょう。
音叉でチューニング
音叉。私はヴァイオリンケースの中にこの小さなツールを入れているので、いつでもどこでもチューニングできます。
音叉は、真ん中あたりをテーブルの角や膝など硬いもので打って、すぐにテーブルなどの上に置いて音を鳴らします。テーブルなどの上に置くと、残響を聞きながらチューニングできるのでやりやすいと思います。慣れれば、耳に当ててその音の記憶でチューニングできるようになりますよ。
使い方は簡単ですが、Aの音しか出ないのでまず音叉に合わせてAをチューニングして、Aを基準にして完全5度のD、そしてDの完全5度のG、というふうに二本の弦を同時に弾きながらチューニングします。そしてAとEの完全5度です。
☆コツ☆
完全5度の音の響きは、二本の弦を同時に弾いたとき耳に最も心地よく聞こえるはずです。低すぎたり高すぎたりするときは音の“うなり”が大きいのでにごって聞こえます。うちの子は、心がざわざわする、と表現していました。
とりあえず、初心者にとって二本の弦を同時にスムーズに弾くのは至難の業ですよね。それに加えて響きに耳が慣れるのに時間がかかりますが、チューニングはその両方のいいトレーニングになるんですよ。
440Hzと442Hzの音叉のセット
ピアノでチューニング
ピアノとアンサンブルをするなら、絶対にピアノでチューニングします。なぜなら、ピアノはその場でチューニングできないからです。ヴァイオリンの音程がピアノの音程と合っていないとアンサンブルできないので、とても大切な工程なんです。
これもやり方は簡単で、ピアニストにAを弾いてもらうか、自分で弾いて、それに合わせてA線をチューニングします。そして、D、G、Eの順です。
☆コツ☆
ピアノでチューニングするときは、鍵盤を押さえた瞬間の音を聞くようにします。ピアノは弾いたすぐから弦のうねりが聞こえるので、どの音をとったらいいかわからなくなってしまうからです。何度も弾いてもらうとやりやすいですよ。
~ちょっとおまけ~
オーケストラではオーボエのAにコンサートマスターが合わせ、それからそれぞれが合わせます。オーボエは、チューニングすると変えられないので、音がすぐに変わってしまう弦楽器よりも、音の基準にしやすいのです。でも、オーケストラにピアノが入る場合はピアノが基準になります。オーボエがかわいそう。。
トラブルシューティング
- ペグが戻る
→ペグは奥に押し込むように回します。それでもすぐ緩んでしまう場合は、チョークを塗ると滑り止めになりますよ。
逆に硬すぎて回せない場合はペグコンポジションというペグ用の潤滑剤があるので使ってみてください。
- 弦が切れる
→ペグを急に回すと弦に強い力がかかってしまって切れやすくなります。できるだけゆっくり、少しずつ回すことで防げます。とはいっても弦は切れるときは切れるものなので、安い弦をたくさんストックしておいて、切れてもいいや、くらいにリラックスしてやってみましょう。 - できない!
→できない理由が楽器の扱い方の場合は、「チューニングするときの楽器の扱い方」の項目をチェックしながらやってみましょう。音が分からない、という場合は…楽器はいったん置いて、チューナーでもピアノでもいいのでAを出して聞き、アーでもラーでもいいので歌ってAの音に慣れる練習をしてみてください。先生に助けてもらうのも手です。
YouTubeの先生方に助けてもらえるかもしれませんよ。