どのようなジャンルにおいても、楽曲のテンポは、その曲の印象を大きく左右する要素の一つです。ゆっくり、しっとりとしたバラードから、アップテンポのウキウキする曲までテンポ(曲の速さ)は様々。テンポの違いだけで聞き手が受ける印象も大きく変わってきます。
夜景の見える高層ビルの高級ラウンジで、グラスを傾けながら美女と…そんな時は、バラードでしっとり、大人の雰囲気たっぷりのスローテンポなジャズが似合いそうです。って、行ったことはないので、勝手な妄想ですが…
一方、今日は朝から仕事がみっちり。さぁ、気合を入れて頑張るぞー、なんて時は、アップテンポの曲を聞きながら気持ちを高ぶらせる、といった音楽の楽しみ方をされている方もいるかもしれません。
ここでは、アップテンポの曲にスポットを当てて、ジャズスタンダード等で、アップテンポで演奏されることの多い曲をご紹介させていただきます。
■ 目次
そもそもアップテンポとは?
曲の速さの表現の一つにBPM(beats per minute)という表現方法があり、これは、一分間にどれだけ拍を打つか、メトロノームのカチカチをどれだけ打つか、といったものです。例えば、60BPMの場合、一分間に60回、拍を打つことになるので、時計の秒針と一緒、ということになります。なので、120BPMというと、秒針の倍の速さ、という事になります。
で、クラシックなどで使われる、速さの表現は、アレグロ(Allegro)が132BPM前後で「快速に」、プレスト(Presto)が184BPM前後で「急速に」といった表現かな、と思うので、今回の記事でも、アレグロ以上の速さで、テンポが速いと感じる速さの楽曲をご紹介させていただきます。
スペイン(チック・コリア)
CDアルバム「スペイン~ベスト・オブ・チック・コリア」に収録ピアニストであるチック・コリア作曲のこの楽曲。自身、スペイン系統の血をひいてらっしゃるようで、その熱いスピリッツ、ラテンの血、みたいな雰囲気がたまりません。テーマをユニゾン(各楽器が同じメロディを弾くこと)で弾くことが多く、アグレッシブな演奏が魅力の一曲です。
コンファメーション(トミー・フラナガン)
サックスプレイヤー、チャーリーパーカーの代表作の一つ。軽快なテーマが心地よく、また、モダンジャズの雰囲気たっぷりの旋律が、聴く人の心をひきつけます。個人的に大好きなピアニスト、トミー・フラナガンの演奏も是非聞いていただきたく、ご紹介。
トムとジェリー(上原ひろみ)
CDアルバム「アナザー・マインド」に収録世界的ピアニスト、上原ひろみ。かの有名なアニメの曲を、超絶技巧を駆使して、超絶なスピードで弾いちゃいます。そのスリリングな演奏スタイルは、聴く人の度肝を抜きます。
酒とバラの日々(オスカーピーターソン)
CDアルバム「プリーズ・リクエスト」に収録楽曲のテンポ自体はそこまで速くはないのですが、ピアニストオスカーピーターソンのソロが盛り上がるにつれて、鍵盤の上を軽快にアドリブフレーズが駆け抜け、聴いていてウキウキしてきます。
バラードでもアップテンポに!?倍テンのはなし
ここまでは、最初っからアップテンポで演奏される曲についてご紹介させていただきましたが、次に、ちょっと変則的な、バラード曲でも、途中からテンポを倍にして、アップテンポで演奏しちゃう、という手法についてご紹介。
例えば、80BPMのゆったりとしたバラード曲を演奏している途中で、伴奏のみ倍のテンポで演奏しちゃう、というテクニックがあります。
俗にいう、倍テン(倍のテンポ)といわれるテクニックで、上記のBPM80の場合、倍のテンポで演奏すると、BPM160といった具合。駅のキヨスク、売店じゃぁありません←分かってます!
ただし、小節数はかわらないので、一小節を駆け足で駆けていく、みたいな雰囲気を味わうことができます。
バラードを演奏していて、少し間延びしてきたかな、みたいなときに、スパイス代わりに取り入れたりすると演奏にメリハリが出てきて、表現の幅が広がります。ジャズセッションなどでも、ドラムの方が途中から倍のテンポで叩き出したりしたら、おおっ、これはテンポを倍にしたいのだな、ここらでちょっとスピード感を出したいんだな、とその気持ちを汲み取って、他の演奏者もそれに合わせる、みたいな具合です。
アップテンポの曲は思わず、体が動き出してしまうような、ウキウキするものが多いような気がします。素敵な楽曲に出会えて、そんな楽しい気分を皆様も味わえますように♫