ボウイングのテクニックはマスターするのに最低10年、というより10年からようやくスタート、と言われるくらい奥が深いです。いくら左指が達者に動いても右手のコントロールが悪ければいい音どころか音そのものが出せませんからね。
では、ヴァイオリン初心者にとってチャレンジの一つである弓の動かし方の基本を、持ち方を含めた初歩からみてみましょう。
■ 目次
手の形
まずは弓を持たずに手の正しい形を作ってみましょう。手のひらをリラックスさせて上に向けます。
親指と中指を丸めるようにしながら近づけます。
そのまま手をひっくり返して、他の3本の指も自然に下ろします。
弓の持ち方
手の形を作ったら、弓を持ってみましょう。【親指】巻き皮とフロッグの間に、指先に近い指の腹部分が当たるように置きます。
【中指】親指の反対側に置きます。第一関節と第二関節の間くらいが弓に触ります。
【人差し指】は第一関節と第二関節の間あたりにくるように置きます。
【薬指】指先がフロッグの目のあたりにくるように置きます。
【小指】指先が弓の上に丸くカーブした形になるように置きます。
☆ヒント
手や指の大きさ、形、長さなどはみんな違いますから、必ず同じになるわけではありません。ただ、どの指も突っ張っていないこと、逆に握りしめていないこと、すべての指の第一関節は曲がっていること、は必須のチェック項目です。
良くない例
例1-第一関節が伸びて指が緊張しています。例2-指が寝て、手全体が縮こまっています。
例3―手首が上がりすぎです。
例4―おまけ。握りしめた、アニメや素人が持つ写真でよく見る持ち方ですね。恥ずかしい…
弓の動かし方
では、実際に楽器を持って音を出してみましょう。YouTubeの先生のレッスンを動きの参考にどうぞ。
弓は駒と指板の真ん中あたりに置き、必ず弦に対して直角になるように動かします。直角になっていないと弓が弦にちゃんとあたらないので、かすれた音が出ます。言うのは簡単で、頭でも理解できることですが、いざやってみるとこれが結構難しいんですよね。
ではどう右腕を動かせば弓が弦に対して常に直角に動くのでしょうか?答えは肩と肘と手首の動きにあります。
肩と肘の役割
使う弓の場所によって、肘を固定したまま肩からの動きが必要な時と、肩は動かさず肘からの動きが必要な時、肩も肘もほとんど動かさず手首が動く時、に分かれます。すべての動きの境目がスムーズになるようにするのが練習の目的です。移弦の時は肩から!
弾く弦によって腕全体の高さが変わります。手首や肘だけを動かすのでなく、肩から角度を変えます。これは感覚で覚えていきます。他の弦があたってしまう場合は、手首や肘が不自然に上がっていたり下がっていたりしていないかチェックして、右腕全体の形を保ったまま肩の角度だけ変えるように意識してみましょう。ボウイングの練習
ダウンボウ(下げ弓)から始める場合、弓の元から半分あたりまでは肩の関節を後ろ側に回すようなかんじで動かします。そして弓の半分あたりから先は、肩は動かさず肘から動かします。最後の最後、弓を返す一歩手前の弓のほんの先のあたりでは手首を動かすことで弓をスムーズに返すことができます。
アップボウ(上げ弓)のときはその逆になります。まず肘から動かし、弓の半分のあたりからは肩から動かします。そして弓の根本で返すときも同じように手首を動かしてスムーズな返しにします。
4本それぞれの弦で練習してから、AからD、DからA、というふうに移弦の練習をします。
ペンキ塗りの要領で
弓の返しの時の手首の動きは、刷毛を持って壁のペンキ塗りをするところをイメージしてみるといいかもしれません。手の角度がすこし変わるだけで、動きそのものは同じなんですよ。ペンキを塗るときは手首をカクカクと動かしませんよね。返しをなめらかに、スイングするようなかんじですね。この動きだけを練習するために、まずは鉛筆を弓を持つように持って手首をペンキを塗るようなかんじで動かしてみましょう。鉛筆で慣れたら、もう少し重くて長い
棒や菜箸でも練習できます。そして弓を持って同じ動きの練習をしてみましょう。
~ちょっとおまけ~
右手の指の関節だけを屈折させる練習をするように、という先生方もいらっしゃいます。私も練習したのを覚えています。世界中でも一般的な弓の練習方法ですがロシアではそういう練習はしないようですね。
実際のところ、必要なのでしょうか?役に立つのでしょうか?
ロシアにも、日本や他の国々にも偉大なヴァイオリニストは散らばっていますから、ただのやり方の違いということですね。面白いですね。
練習、矯正のヒント
☆練習、矯正のヒント1
練習するときは鏡の前でするといいですよ。弓がどれくらい直角か、いつ曲がって滑ってしまうか、となりの弦にあたってしまうか、などチェックしながら練習できるので、矯正にもなります。☆練習、矯正のヒント2
どうしても肩が動いてしまうという場合は、壁に肩をつけて立ち、肩を後ろ側に動かすのが物理的にムリという状況を作ってしまうのも手です。弓の元から半分は肩が動かせますがその先は肩が壁に当たるので、弓を真っすぐ動かすためには必然的に肘を動かすしかない、というわけです。☆練習、矯正のヒント3
弓の矯正器具というものが存在します。弓が当たって物理的にそれ以上動かせないので、矯正になるということのようです。私は使ったことも実物を見たこともありませんが、興味がある人は試してみてください。Bow Right / バイオリン用 ボーイング矯正器具
同じ考え方を応用して、紙を筒状に丸めたものをF字孔の一番先の丸い部分に差し込んだもので代用することもできますよ。ちょうど駒と指板の真ん中あたりになります。楽器を傷つけないように必ず紙で、やさしく扱ってくださいね。
まとめ
弓は弦に直角に、真っすぐ動かします。そのために肩と肘と手首をなめらかに動かせるようになるのが練習の目的です。さて頭で理解できたらあとは練習あるのみです!紹介したいろんな写真やヒントを元に工夫して練習楽しんでくださいね!
弓の持ち方、動かし方についてとても論理的に説明しているビデオがあるので、ぜひ見てみてください。わたしは個人的にとてもすばらしいレッスンだと思います。*英語