金田一耕助シリーズでその名を知られる小説家、「横溝正史」。
今回はこちらを、2年間このシリーズをひたすら読み漁った私がオススメさせて頂きます。

「犬神家の一族」「八つ墓村」の作者といえば、知らない人はいないでしょう!
そして、横溝正史といえば「金田一耕助」という主人公も有名ですよね。
金田一耕助はシリーズ化されていてたくさんの本が出ています。

近年では、角川文庫から23冊が復刻版としてリニューアルされました。
しかも表紙は、色彩豊かな復刻版(ちょっと怖い絵ばかりですが)!

集めてソンはありません。・・・ということで2年買い集め、復刻版だけにとどまらず、普段手に入りにくいやつまで読みたくなって、Kindleまで買った私。(電子書籍ではオトクに、たくさん揃っています!)

本を貸したら、私の姉も見事にハマり、長男を出産する日もベッドで読んでいました。付き添う母も、読みながら孫が生まれるのを待っていたそうです。

◆金田一耕助 シリーズについて


時代は昭和20年代。戦後の日本が舞台です。新しい話がでるたびに金田一耕助もいっしょに年をとっていきます。

シリーズに登場した当初は24・5歳くらいですが、このシリーズが終わる頃は60歳くらいになっています。つまり36年間の彼の探偵人生を知ることができるってことです!この間に、金田一耕助は恋もすれば失恋もします。晩年は自分の職業に嫌気がさしたり・・・

歳をとるごとの変化を感じられるのもこの作品の見どころです。
2年も読んでいると、金田一耕助が家族の一員みたいになりますよ!

◆金田一耕助 その人の特徴

職業:探偵
出身地:東北か北海道
身長/体重 163センチ/52キロ
見た目:くたくたの帽子・よれよれの和服に袴・足袋に下駄(どちらもボロボロ)・もじゃもじゃ頭 「雰囲気がコウモリに似ている」と言われたエピソードがある。
行動の特徴:考えに詰まると頭を掻きむしりフケが飛ぶ・興奮するとどもる
学歴:東京私立大学中退し渡米。アメリカの大学を卒業。アメリカで看護師見習いのバイトをしていたので医療知識がある。

性格:控えめだが、許せないことには地団駄を踏んだり、強い口調で発言することもある
事件解決後はちょっとナーバスになり、旅にでる(そしてまた事件に巻き込まれる)。
非常に個性的で魅力的な金田一耕助です。

それでは、オススメしたい作品をランキング形式でご紹介します。

★「横溝正史を知るならコレ!金田一耕助 長編小説 ベスト3!」★

  1位:獄門島(ごくもんとう)

読む価値あり!映画化2回・ドラマ化はなんと5回もされた!人気作品


あらすじ
終戦から1年(昭和21年)。金田一耕助は戦友から「自分の故郷の獄門島へ行って、3人の妹たちを助けてほしい。」との遺言を受けて獄門島を訪れます(ついでに島でゆっくり養生しろよと戦友に紹介状まで書いてもらった金田一)。

戦友は乗っている船の中で病死する。到着した獄門島、島内は封建的で、漁師の網元が本家と分家2つに分かれて対立中。戦友の妹本家の3姉妹はとってもエキセントリック。控えめで聡明な分家の娘・早苗と対照的です。

金田一は戦友の死を家族に告げ、お通夜に参加します。その夜、3姉妹のうちの1人が行方不明に・・・・。狭い島内で不審な兵隊服の男も目撃され・・・戦後まもない時代背景を舞台に、「ザ・横溝正史」ワールド全開作品です!

●オススメのポイント:終わりに繋がるダイドンデン返しにびっくり。”実はこの人は○○だった!”とか”この人の最期は○○だった”系が好きな人にはピッタリです。

殺人のトリックはただただ、巧妙です。でも、風情があるともいえます(殺人が?)。
それは読んでのお楽しみ、です。

1977年の映画版では金田一耕助を石坂浩二さん、ヒロインは大原麗子さんです。
3姉妹は浅野ゆう子さん(当時17歳)と坂口良子さんが演じました!どちらもとっても可愛かったです。

最近ではNHKのBSプレミアム版で長谷川博己さんが金田一を、早苗は仲里依紗さんが演じました。う~ん、ラストの金田一と早苗に起きるエピソードを考えると・・・
大原麗子さんバージョンが一番しっくりくるかなあ。。。

●実写版でみる・麗しきヒロイン:早苗
映画版のヒロイン早苗は若かりし時の大原麗子さん。その美しさは今の女優さんにはないものがあります。今で言えば雰囲気は違いますが、美しさで言えば沢尻エリカさん級です。

服装はブラウスとスカート・ハーフアップの髪型といった清楚なヒロイン。
金田一耕助はこの早苗に対して恋愛感情を持つのですが・・・ラストは切ないです。



  2位:本陣殺人事件

これぞ「THE・横溝正史」! 密室殺人と、心に残る登場人物

あらすじ
昭和12年。岡山県の某村にある名家・一柳(いちやなぎ)家にもたらされた悲劇。一柳家の長男・賢三にとうとう嫁が来ることになりました。

けっこうな歳まで独身だった賢三。金田一耕助は自分のパトロン(彼にはパトロン:出資者が3人いる)である久保銀造の姪・克子が賢三に嫁ぐため、克子の親戚として結婚式に参加します。

式の準備中、3本指の不審な男が賢三に手紙を届けに訪れました。その手紙には「君のいわゆる生涯の仇敵」と書かれていました。

3本指の不審な男の存在を気にしつつも、式は無事に終わります。しかしその夜明け方近く、新郎新婦の部屋から悲鳴が!!

目を覚ました人たちが部屋を訪れると、そこで新郎新婦が血を流して死んでいました。そこには・・・。寝室で行われた密室トリックを金田一が解明していきます。

●この作品のオススメポイント:舞台も題材も「地方の村」・「名家」で、「密室トリック」ということでまさに「ザ・横溝正史」です。横溝ビギナーさんは、この「本陣殺人事件」からぜひともお読みいただきたいです!

●実写版でみる・愛らしきヒロイン:一柳家の長女(新郎の妹)鈴子ちゃん(すうちゃん)。17歳になるわりには精神年齢も低く、いつまでも少女のまま。

着物を着せられて、得意なお琴をひくか、お人形で遊んでいるような鈴子ちゃんですが、無邪気な姿で事件の大きなヒントを金田一に投げかけます。

可愛がっていた猫のタマが死んでしまうのですが、なぜか鈴子ちゃんはタマの屍骸に異常に執着します。私の心を一番つかんだ登場人物です。



  3位:悪魔が来りて笛を吹く

思い出すと、胃液逆流?!なちょっぴりエグい作品

あらすじ
昭和22年。宝石店で強盗殺人事件が起きました。

金田一耕助は、強盗殺人事件の容疑者とされた子爵・椿英輔の娘、美禰子(みねこ)から探偵の依頼を受けます。

美禰子の父は、信州で遺体となって発見されていました。

英輔は容疑者となったことを恥じて自害したものと思われていたのですが、外国の小説に挟んであった遺書には、こう書いてありました。

「父はこれ以上の屈辱、不名誉に耐えていくことは出来ない。これが暴露されると泥沼のなかへ落ちてしまう。 ああ、悪魔が来りて笛を吹く」と・・・。

そのうち、美禰子の母である秋子(本書では火へんに禾)が、亡くなったはずの父の姿を目撃したと怯えだし、砂占い(コックリさんのようなもの)で父が生きているかを占うことにしました。

砂占いに同席した金田一、そこで停電がおきて・・・

●この作品のオススメポイント
この作品も横溝ワールドです。密室殺人事件です。でもちょっと違う。
「殺人じゃないところで、エグい」です。

登場人物で最も印象的なのは、美禰子の母・秋子。この人をおいてはこの話は始まりません。この人のキャラクターが別のものだったらこの話は全く違ったものになります。

この作品が映画化されたとき、横溝先生は「この恐ろしい物語だけは映画化したくなかった」とコメントしたというエピソードがあります。

推理モノというよりは、愛憎劇に近いです。それも単なる愛憎劇ではなくもっと複雑。構成は「THE・横溝正史」のパターンではありますが、お決まりのパターンと言ってのけるにはもったいないほどの「陰惨さ」が溢れています。

時代は繰り返す・それも嫌な時代が・・・と言ったところでしょうか。
ちなみに上のフルートの写真ですが、この物語へのちょっとしたヒントでもあります。

●実写版でみる・魅力的なヒーロー:「金田一耕助」
この作品の実写版は、石坂浩二さんではなく西田敏行さんでした。当時は30歳くらいでまだまだ若い西田さんです。

当時の監督が「こんな金田一もありかな」と思って西田さんを起用したそうです。

西田さん、というとどうしても「釣りバカ日誌」のハマちゃんや「LOTO6」のCMのイメージが強い俳優さんですね。

西田さんからはシリアスな役を想像しにくかったのですが、実際観たら・・・あら素敵。

貧しい探偵のわりにはピチピチの顔とムチムチの身体つきに、ちょっと無理は感じましたが。健康的で男らしい、そんな新しい金田一耕助です。私的には、アリです!!



金田一シリーズ 「よくある質問」

Q1.シリーズは順番に読まないとダメ?

私は一番目に付いた表紙の「病院坂の首縊りの家」から読み始めました。これ、金田一シリーズでは最後の事件なんですよ。

でも大丈夫。本筋とは関係ないところで前の事件の名前が出てくることはありますが、毎回出てくるとすれば、警部さんと警察関係者くらいです。

ときどき「あの●●事件を解決した金田一先生ですか!」と過去の事件名はたしかに出てきますが「●●事件」を読んでいないからこの話についていけない、ということはないです。

私のように最後の事件から読んだりすると、次からは「回顧録」のようにも読めますし、だんだん若返る金田一耕助に新鮮さを感じたりして。そんな楽しみ方もアリかも。

Q2.おもしろポイントは?

私がつけた勝手なランキングを参考にして下さい。 「金田一シリーズあるある!」です。

1位: 金田一のよく言うセリフが、「しまった!」
次によく言うセリフは「よし、わかった!」

2位:事件に使われる小道具が多く、しかもそれぞれ結構入手困難。
現代日本では、どこに売っているかさえもわかりません。

3位:事件の疲れを癒しに来たはずの保養先で、あらたな事件に巻き込まれる
そして毎回首を突っ込み、知らない人から変人扱いされる金田一。

4位:出生に秘密がある人、多すぎ。
それもなかなかけっこうな、秘密です。

5位: 拗らせた中年男性、多すぎ。
「○○だったから殺した」ってアンタ!

6位:登場人物に必ず美女登場・そしてこの上なく不幸。
美しいだけでなく、過去にけっこうなことを、やらかしている。

7位:電車や船に乗ろうとすると、たいてい置いていかれそうになる。
わざとでしょ!!ていうくらい、ベストタイミングで出発!

8位:「湖から二本の脚が出ている、あの話」というと「八つ墓村」と答える人が結構いる。
頭に懐中電灯つけて走る男、というと「八つ墓村」って答えられる人は結構いる。

9位:金田一耕助は生涯未婚なので、金田一少年という孫はいないはず。
少年のライバルの警視庁・明智警視のじっちゃんは・・・明智小五郎、ではない。

10位:横溝正史先生自身が結構作品に登場している。S.Y先生と書かれていることもある。
映画では、横溝正史先生の奥様も登場していますよ!

以上のような「つっこみポイント」を念頭に、読みすすめても面白いかと思いますよ!

9位の金田一少年については、孫であるとの設定から一時期ご遺族の方とモメた、との話もありますが、いまだコミックが継続しているので決着がついたのでしょうか。

でもやっぱり、金田一耕助を知る(知っているつもりの)私からすれば、「金田一耕助はやすやすと女と結婚なんかしない(できるわけない)!」とちょっと残念な感情に。

でも、それだけ金田一耕助は感情移入しやすいキャラクターであり、それを生み出した横溝正史先生の力はすごいんだなあという気持ちになりますね。

まとめ

他にもたくさんおもしろい作品はあります。今回ご紹介したような、“地方の田舎の因習や因縁を舞台”にした「THE・横溝ワールド」とはまったく雰囲気の違う、現代的ストーリーの作品もあります。

今回は、横溝ワールドを知ってどっぷり浸かって頂けるよう、代表作とも言える名作をおススメピックアップしました!