ホルン吹きの誰もが遭遇する壁の一つは「高音」ですよね。
求められる音域が広い楽器なので「上吹き」「下吹き」という概念がありますが、結局「下吹き」の人も「高音」からは逃げられないのが現状です。
ホルンを始めて数カ月、数年、数十年の人全員が「高音」には悩まされます。
吹奏楽を演奏する中高生の皆さんも、ここ数年求められる演奏レベルが格段に上がったことによって、「こんな高い音吹けないよ」という曲を演奏しなければいけない、なんてことがよくありますよね?
実は自分も高校時代、同じ悩みを持っていました。が、今となってはオーケストラも吹奏楽も演奏会によってはずっと1番ホルンつまり「高音」を任されるようになりました。演奏上重要な仕事もたくさん任されるようになり、楽しくホルンライフを謳歌しています。
高い音を習得するのは確かに大変ですし、間違った方法で練習すると唇が壊れてしまう危険性もあります。しかし、ホルン演奏の可能性を広げる一番の近道でありますので、正しく楽しく無理なく「高音」の壁を乗り越える方法を考えていきましょう。
ホルンの「高音」って?
さて、具体的な話に入る前に、ホルンの「高音」ってどのあたりの事を言うのでしょう?答えは「人による」というのが正しいのですが、それではなんの解決にもなりません。
一般的には、ホルン(in F)の譜面で五線の上に乗っかっているソ(実音でのド、つまりCです)、いわゆる「ハイC」と呼ばれる音よりも高い音を指すことが多いです。
五線の上に乗っかっているハイCからその四度上のハイF(人によってはダブルハイFと呼ぶこともあります)までがいわゆる「高音」です。最近はこの五線の上のハイFまで要求される曲が多いのでここまで音域を広げたいものです。
逆に言えば、このハイFよりも高い音は超上級者向けのアンサンブル曲やソロ曲でないと要求されないので、この音域をマスターしてしまえばほとんどのオケ曲、吹奏楽曲を吹けると言っても過言ではないのです。
そして、オーケストラでも吹奏楽でもホルンが最も効果的に使われる音域、特に現代的な曲で絶大な力を秘めているのがこのハイCからハイFまでの高音域なのです。この音域を制する者がホルンを制し、ひいては楽団、楽曲を支配するとも言える大変オイシイ音域です。
私の高音克服法

まず、僭越ながら私の高音の克服過程について説明します。
高音を練習するきっかけは学生時代のコンクール曲にハイFが多用されていたことです。その曲のスコアには「B♭管コルネットで代奏しても良い」と書かれているほどの譜面でした。レッスンの先生にも「オケ曲でもこんなに音が高い楽譜は見たことない」と言われました。後にも先にもあれほど高い音がたくさん要求される曲は見ていません。
さて、そんな曲に出会ってしまった私が考えた解決策は「なるべく曲を練習しない」ことです。なぜなら曲の練習は合奏やパート練習でできますし、なにより高音を吹くのは疲れます。結果、個人では曲の練習はほとんどせず、高音のための基礎練習を取り入れました。
高音のための基礎練習といっても一日数分しかしませんでした。やはりエネルギーを使いますから、「毎日少しずつ」というのを大切に練習していきました。変な癖がつくと後々面倒なので、音出しの時や音出し後に数分というようにコツコツ続けました。
結局合奏で高音が出てくるので個人での高音練習は本当に数分だけというのを数カ月やりました。
その結果、上吹きとして機能できる安定した高音を吹けるようになりました。この後、具体的な練習方法について解説します。ただ、経験から一つ重要だと思うのは「必要に迫られる」ことがないと高音は練習しづらいということです。
皆さんは是非、何でもよいので「高い音」を吹く機会というものを作ってみてください。高音練習は決してラクなものではありませんので、このある種の動機付けや目標設定が意外にも重要な事なのです。
「高音」のための基礎練習 理論編
高音域を吹くためにはどんな練習をすればよいのか?よく聞く質問ですが、ポイントは2つあります
1. 長い管からスタートして半音ずつ管を短くすることで音域を上げていく
2. 遅いリップスラーとロングトーンを組み合わせる
というものです。
例えば、ハイFが目標ならば指はB♭管の開放ですよね?この音をいきなり出すのは正直きついと思います。ではその四度下のハイCではどうでしょう?ハイFよりも簡単に吹けそうですよね?
ここで大事なのはF管の開放の指でハイCを吹いてみるということです。いつもと勝手が違いますけど意外と吹けるはずです。勘の良い方は何かを察しているのではないでしょうか?
そうです!
このF管開放のハイCが吹ければ理論上はB♭開放でハイFが吹けるのです。
疑い深い人のために証明しましょう
ハイC……F管開放(B♭管1・3番)
ハイD♭……B♭管2・3番
ハイD……B♭管1・2番
ハイE♭……B♭管1番
ハイE……B♭管2番
ハイF……B♭管開放(0番)
というように、ハイCからハイFに行くにしたがって「管が短くなっていく」ため音が高くなっていくのです!
このF管ハイCが個人練習の肝になりますので覚えておいてください。
「高音」のための基礎練習 実践編

ここで、私が実際に行っていた基礎練習について解説します。
テンポはゆっくりで、使う音符は二分音符、ゆっくりリップスラーを行います。
まずはF管の開放で五線の中のFとハイCをリップスラーでつなげます。「F~ハイC~F~」、ホルンの楽譜で言えば、「ド~ソ~ド~」というようにリップスラーで高い音に行って帰ってくるというパッセージをセットにします。
あとはこれを半音ずつ「管を短くして」高くしていくだけです。最終目標はB♭とハイFのリップスラーです。これを一日一回か二回無理のない音域+αというようにして続けていきます。
この練習、中音域や低音域でもかなり有効なので普段の音域でも日々の練習に取り入れてみてください。この単純な練習は本当に驚くべき効果を出してくれますので、是非お試しください。
もちろん教本があるならそれに掲載されている練習をするのも大事です。とくに倍音をなぞっていく練習も大きな効果がありますので、倍音列が乗っている教本や楽譜を見たりしながら音域を広げていくのも効果的です。
また、メトロノームはもちろん、時にはキーボードやハーモニーディレクターを使いながら練習することも試してみてください。
まとめ
さて、ここまでをまとめてみましょう。・高音域こそホルンが生きるオイシイ音域
・高い音を吹く機会を作る
・曲の練習よりも基礎練習で音域を拡張する
・管を長くして比較的吹きやすい音からスタート
・ゆっくりのリップスラーで安定して吹けるように練習
・焦らずコツコツと毎日少しずつ続ける
言葉で並べると簡単そうですが、ホルンは世界一難しい金管楽器。一朝一夕にはうまくはなりませんし、「忍耐」が上達への鍵の大きな部分を占める要素の一つとも言えます。しっかりと目標をもってコツコツ続ける事が本当に重要です。
高音をマスターすれば演奏できる曲も機会も確実に増えるのでチャレンジしてみてくださいね。
Third picture By familymwr via Visual hunt / CC BY.
高音域練習法
F管の開放で五線の中のFとハイCをリップスラーでつなげます。「F~ハイC~F~」、
そのあと、あとはこれを半音ずつ「管を短くして」高くしていくだけです
とありますが、よくわかりません。
F管の開放で五線の中のFとハイCの次は何の音からスタートするのか教えてください。
何の音を基準に”管を短くして”半音ずつ高くしていくのか解りません。
高音で悩んでいます。
コメントありがとうございます!
運営者のshirokuroです。
ご質問の件ですが、「F~ハイC~F~」の次は、
五線の中のG♭の音(Fより半音高い音)からスタートすることになります。
最初から最後までを具体的に書くと、
① F~ハイC(F管開放:B♭管1・3番)~F~
② G♭~ハイD♭(B♭管2・3番)~G♭~
③ G~ハイD(B♭管1・2番)~G~
④ A♭~ハイE♭(B♭管1番)~A♭~
⑤ A~ハイE(B♭管2番)~A~
⑥ B♭~ハイF(B♭管開放)~B♭~
ということですね。
執筆者のエルクさんにも確認させていただきました。
参考になりましたら幸いです。
練習応援しています^^
ありがとうございます。ハイcがでるようになりました。
よかったですね!
練習応援しています!
shirokuro