ホルン吹きの皆さん、つば抜きに悩んだことはありませんか?
私はオケで仕事の多い1番ホルンを担当することが多いのでつば抜きは死活問題です。
お客様から「一人だけつば抜きの回数が多くて面白かったです。お疲れさま。」なんて言葉をいただいたこともあります。

練習中につばを抜こうと思って楽器をグルグルまわしたり、
大事なソロの前につばがたまった時特有の「ポコポコ」という音がして焦ったり、
どこにつばが溜まっているのかわからなくなったり。

つば抜きはホルン吹きの永遠の課題の一つであると言えると私は思います。
先日の本番も常に吹きっぱなしの曲があり、譜めくりとつば抜きが大変でした。
しかし、楽器の傾向と対策をつかめば、つば抜きで手間取ることはほとんどありません。

いくつかの、つば抜きのセオリーについて見ていきましょう。

■ 目次

なぜホルンのつば抜きはめんどくさいのか?


具体的な説明に入る前に、なぜホルンのつば抜きがめんどくさいのか考えてみましょう。
これが意外とつば抜きのヒントになります。


理由の一つはその「カーブの多い形状」です。
他の金管楽器に比べて直線が少なくほとんどの管が緩やかなカーブを描いているため、つばが管内をかなり流動的に動けてしまいます。
したがって、一か所に溜まらずに複数箇所に溜まったり、溜まっていたつばがどこに行ったのかわからなくなったりします。

また、カーブが緩やかなので、つば抜きのレバーもあまり効果がありません。
そして、長い管を丸く巻いているため、最終的にはハンドルのようにグルグル回す必要性が出てきてしまいます。


理由の二つ目は「管の細さ」です。
ホルンは主な金管楽器の中では管が最も細い楽器なのです。
もちろんベルの部分は太いですが、マウスパイプなどはトランペットよりも細く作られています。
したがって、つばの影響が受けやすく他の楽器よりもつばがたまった時の「ポコポコ」という音が鳴りやすくなってしまうのです。


理由の三つ目は「抜き差し管が多い」ということです。
一般的に使われるフルダブルホルンは、F管とB♭管の二つの管で構成されています。
極端な話、調が違う二つの楽器を一本にまとめているのです。
したがって他の楽器よりも管が多く、手間がかかるのです。

また、フルダブルの楽器は管が縦にも横にも組み合わされているため楽器によっては非常につばが抜きにくく、時折「こんなところから?」という管から大量につばが出てくることもあります。


このように、ホルンは楽器の複雑な特性上、非常につば抜きが厄介なのです。

一番簡単なチューニング管のつば抜き

効果的につばを抜く最も効果的な方法は、吹き口に最も近いチューニング管から抜くことです。
楽器を右に回転させ、チューニング管の抜き差しできる部分が下になったら管を外して中のつばを抜きます。
自分は基本的にこの方法を使っています。確実ですし、しっかりとつば抜きできます。
もちろんチューニング管なので音程に関わりますので、つば抜き後は元の位置まで管を戻すようにしています。

つば抜きのレバーいわゆるウォーターキーを自分は使いません。
確かに便利ですが、自分の楽器はカーブの関係上あまりつばが一か所に溜まらないので、レバーよりも楽器を傾けてマウスパイプかチューニング管から出すようにしています。

マウスパイプからつばを抜く際、心配な人はマウスピースを外して回すと良いと思います。
外さなくても良いらしいのですが、自分は何となく癖で外しています。安心してグルグルできるので楽しいです。

抜き差し管のつば抜き


抜き差し管のつば抜きはなかなか大変な作業です。
演奏会の時は開演前に全ての管をチェックしておきたいものです。

抜き差し管のつば抜きで重要なのは、
必ず抜き差し管が下になり管につばがたまるようになってから抜くこと、
抜く抜き差し管のロータリーのレバーを押しながら抜くこと
です。

前者を守らないとうまくつばが抜けませんし、つばが垂れてきて服を汚してしまうことがあります。
後者を守らないと楽器の気密の関係で楽器に負担がかかってしまいます。
対応するロータリーのレバーを正しく押せてないと、管を抜いた時に「ポンッ」という音が鳴ってしまいますので、本番中は注意してください。

最終手段はベルから!

全ての抜き差し管をつば抜きしても、つばが溜まっていることがあります。
そんな時は持っている楽器を時計回りに回してベルからつばを抜きます。
数回グルグルと回せばある程度つばが出てきます。意外とたくさんたまっていることがあるので、是非本番前にもチェックしてください。

もちろんベルは右手を入れる場所なので、抜いたつばはしっかりふき取っておきましょう。
個人的には抜き差し管に溜まったつばも右に回すとベル側に移動する経験があるので、気になる方は練習の時はこまめに抜き差し管でつば抜きすることをおすすめします。

つば抜きのヒント


さて、つば抜きに関していくつか補足します。

まず、一番大事なのは「楽器のお手入れをこまめに丁寧に行う」ということです。
抜き差し管やチューニング管を動かすつば抜きは楽器にとってストレスのかかる作業ですし、本番中は素早く行う必要があります。

そんな時に、楽器の手入れが不十分で抜き差し管の連結部分の滑りが悪かったり、グリスをちゃんと塗っていなかったりすると、最悪の場合は楽器を壊してしまうこともあります。
日頃のお手入れや調整はぬかりなくお願いします。


次に、抜き差し管についてですが、意外にも使用頻度の低い3番管が非常によくつばが溜まります。自分はクルスぺタイプのフルダブルホルンを使っていますが、よく3番管のつば抜きをしています。

また、フルダブルホルンは抜き差し管が二段になっていますが、時間に余裕があるならば、F管の抜き差し管をはずしてからB♭管の抜き差し管を外すのが安全ですし、よけいな音を立てずに抜くことができます。


つば抜きは楽器の形状によって効果的な方法が違うというのが難点の一つです。大切なのは自分の楽器をよく眺めて研究して、「ここにつばが溜まりそうだな」というポイントと、そこに溜まったつばを抜くための管を把握しておくということです。

もちろん溜まったつばをうまく動かすべく、どちらの方向に楽器を回転させるかなどもいろいろと試して把握しておく必要があるでしょう。


また、楽器を吹き終わった後や演奏の直前、曲と曲との間の時間で毎回しっかりとつばを抜いておくというのも重要なポイントです。楽器の為にも奏者の為にも習慣づけておくと安心ですし、楽器にも優しいです。

まとめ

ここまでをまとめてみましょう。

・つば抜きは奏者としての技術のひとつ
・ホルンは楽器の曲がり方、細さや長さという特徴からつば抜きが難しい
・基本はマウスピースに一番近いチューニング管でつば抜きをする
・ウォーターキーはあまり効率が良くない
・抜き差し管を動かすときは対応するレバーを押す
・最後はベルからつば抜き
・自分の楽器の特徴をつかむ
・お手入れはこまめに丁寧におこなう

つば抜きは普段何気なく行っている方も多いとは思いますが、ホルンを吹いていれば絶対に行わなければいけない仕事ですので、是非効率よくつば抜きをして演奏中に「ポコポコ」とやらかさないようにしたいものですね!


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