子供のころ。
高校生って、大人だと思っていました。
子供のころ。
大人は何でも知っていると思っていました。

子供のころ。
もしかしたら今よりもっと単純に毎日を楽しんでいたかもしれませんし、けれど、今だったら笑い飛ばしてしまえるようなことで、悩んでいた日もあったような気がします。


今回弾き方を考えるのは、そんな幼いころの記憶を呼び覚ましてくれるような1曲、シューマンの「トロイメライ」です。

皆さんも、鍵盤に触れながら、幼いころの(できれば楽しい記憶を)辿ってみませんか。


■ 目次

難易度はどのくらい?


全音ピアノピースでは、「D(中級上)」で紹介されています。
楽譜は短く、テンポも速くありません。
オクターブ以上の音も出てきますが、ちょっとしたテクニックの使用で、難なく弾けると思います。

トロイメライのここが難しい!


楽譜は短く、テンポも速くないこの曲の、いったいどこが難しいかと言えば、ずばり「旋律(メロディ)がたくさんある」ところだと思います。

一番メインの旋律「ドファーミファラドファファ・・・」はもちろんのこと、それ以外の音も、ただの伴奏という感じではなく、旋律、流れをもって動いているものがほとんどです。(専門的な言葉でいうと、いわゆる「対位法」というやつです)

つまり主旋律を歌いつつ、ほかの旋律も歌わなければなりません。しかもその旋律というのは、時に右手と左手を超えて歌います。

私は、弾きながら「ああ!脳みそが2つ以上(2人以上)欲しいし、腕も6本くらい欲しい!」なんて思ってしまいました。

しかし、繰り返すようですが楽譜自体は短く、譜読み自体は、それほど困難というわけでもないと思います。

例えば、1度目の挑戦は「楽譜通りに指を動かすこと」を目標に。
そして数か月、数年たった時に、2度目の挑戦として「曲として奏でる、歌うこと」を目標に、改めて挑戦してみるのも良いかもしれません。

クラシックを知らない人でも、割と知っている方の多い、知名度の高い曲だと思いますので、なんにせよ挑戦しおいて損はないかな、と思います♪

トロイメライってどんな意味?


それでは、タイトルにもなっている「トロイメライ」とは一体どういう意味なのでしょう。
調べてみましたら、元々はドイツ語の「トラウム(夢)」から派生した言葉なのだとか。
意味は、「夢、夢見心地、空想」といったもの。

この曲は、「子供の情景」に収められている曲の1つでもありますので、子どもの頃を、懐かしく思い出しているような・・・そんなイメージで弾いてみるのはどうしょうか。

ヒューマンドラマ映画などで、さいごに主人公がふと、自分の人生を振り返るようなシーンで流れる・・・。私は、そんなイメージを持つと、弾きやすくなりました♪

主旋律を把握する

それでは楽譜にうつりまして。
まず、主旋律はどこなのか。それをちゃんと把握しておきましょう。

シューマン「トロイメライ」ヘ長調Op.15-7ピアノ楽譜1 (動画 0:01~)

主旋律は、まず間違いなく、迷いなくこの部分。
「ドファーミファラドファファーミレドファソラシ♭レファソラドソー・・・」です。

この旋律が、ニュアンスを変えて、次々とあらわれます。
(リピートで弾いた分も合わせて、合計8回も!)

逆に言えば、このフレーズをマスターしてしまえば、ほとんど弾けたようなものかもしれませんね!(^^)!

1回目(&3回目)。(最初の小節~)
ドファーミファラドファファ・・・

シューマン「トロイメライ」ヘ長調Op.15-7ピアノ楽譜2 (動画 0:01~,0:36~)

2回目(&4回目)。(4小節目~)
ドファーミファラドララーソファミ・・・
シューマン「トロイメライ」ヘ長調Op.15-7ピアノ楽譜3 (動画 0:18~,0:53~)

5回目(8小節目~)
シューマン「トロイメライ」ヘ長調Op.15-7ピアノ楽譜4 (動画 1:11~)

6回目(13小節目~)
ファシ♭ーラシ♭レファシシーラソ・・・
シューマン「トロイメライ」ヘ長調Op.15-7ピアノ楽譜5 (動画 1:26~)

7回目(16小節目~)
ドファーミファラドファファーミレ・・・
シューマン「トロイメライ」ヘ長調Op.15-7ピアノ楽譜6 (動画 1:45~)

8回目(20小節目~)
ドファーミファラドララーソファレ・・・
シューマン「トロイメライ」ヘ長調Op.15-7ピアノ楽譜7 (動画 2:03~)

8回あるテーマのうち、
1回目&3回目&7回目と、2回目&4回目は、ほとんど全く同じ動きですから、最初の8小節が弾けたら、ほとんど弾けたようなものです。8回目は、2回目4回目と途中まで同じですが、最後の2小節だけ、動きが異なります。

最初だけ譜読みを頑張れば、あとはほとんど頑張らなくてよい・・・。
そう思うと、とても簡単で、気楽に思えてきませんか?

スラー、タイ、主旋律以外の動きを丁寧に。

それでは、主旋律がわかったうえで、他の動きにも注目してみましょう。

右手の奏でる旋律、左手の奏でている旋律、右手と左手を跨いで演奏する旋律。
片手練習あるのみですね。指定された長さよりも音を延ばしすぎると、次の音への指づかいがうまくいかなかったり、音がにごって汚いものとなってしまいかねません。

速く弾く必要もありませんので、ひとつずつ確認していきましょう。

rit.とa tempo

そしてこの曲は、1つのフレーズの終わりに必ずといっていいほど、rit.(= ritardando、リタルダンド。だんだん遅く)があり、新しいフレーズが始まる際にはa tempo(=アテンポ。もとの速さで)の指示がでてきます。
(8小節目と9小節目、16小節目と17小節目。23小節目はrit.のみ。)

ここは、心の赴くままに、ご自身の気持ちよさを優先して、テンポをゆったりと揺らしてみてはどうでしょう。トロイメライは夢、夢見心地。
ゆりかごが、大きく揺れて、戻ってくるところなのかもしれません。

自由に揺れすぎて、もとのテンポを見失わないようにだけ注意してくださいね。


オクターブ以上の音が届かない!

そんな時の裏ワザは、ずばり下の音から順番に弾く!です。(アルペジオ)
22小節目にあります左手の和音(ソシシ)なんて、なかなか届く方は居ないのでは・・・?

そんな時は、下の音から弾いてしまいましょう。ソ→シ→シ。
右手の和音も同様に、ファ→ソ→レ→ラ。(楽譜によっては、ファソを同じ指で弾くことですべての音を和音として弾きやすくしている楽譜もあります)

シューマン「トロイメライ」ヘ長調Op.15-7ピアノ楽譜8 (動画 2:09~)

また、全ての音を全部しっかりと弾く必要もありません。
大事な音さえ鳴っていれば、他の音が鳴っていなくともなんとなくなっているように聞こえる・・・そんな事もあります。
ここでいうと、左手の一番下の音「ソ」そして、右手の一番上の音「ラ」さえしっかりと弾いておけば、間の音は、多少モゴモゴしてしまっても、あまり気にならないはず・・・?

幸い、テンポが揺れる直前の、「聴かせどころ」の和音でもあります。
いっそ、一音一音弾いて、フェルマータで存分にのばしてみる・・・そんな演奏も良いかもしれません。

まとめ

1. 難易度は中級上。
2. 曲の知名度からみても、挑戦する価値有。まずは自分の目標を定めて。
3. トロイメライは「夢」という意味。
4. 繰り返される主旋律を把握して。
5. スラー、タイ。伸ばす音と伸ばさない音の確認。
6. リタルダンドは心のままに。(元の速さを見失わないように注意)
7. 届かない音は裏ワザを使って!


今回は、「子供のころの情景を思い浮かべて・・・」といった形で紹介させていただきましたが、例えばあなたが一番感動した時のことや、大好きな人のこと。おいしい食べ物のことなどを考えてみても、また違った演奏になるのではないかと思います。

この曲は、子供の情景という作品集の中の1曲。
作曲者本人の語るところによりますと「子供心を描いた、大人のための作品」であるとか。

いろいろ考えずに、童心にかえって心のまま、気持ちのままに弾いてみるのも、また一興ですね♪



「トロイメライ」の無料楽譜
  • IMSLP(楽譜リンク
    本記事はこの楽譜を用いて作成しました。1839年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版されたパブリックドメインの楽譜です。「子供の情景」全13曲が収録されており、第7曲「トロイメライ」は10ページからになります。
  • Mutopia Project(楽譜リンク
    最近整形されたきれいなパブリックドメインの楽譜です。

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